アメリカでは被相続人(亡くなった人)が遺産税を払う。しかし、亡くなった人は、生きていないため行動することができない。そのために、故人を代理する遺産財団が作られる。 遺産財団は、故人の債権債務を精算し、財産の分配処理や、相続に関する税金の納付などを故人に代わって行なう。遺産財団は亡くなった時に設立され、財産が相続する人に渡され、申告手続きが終わるまで存続する。 この役割を担う人がExecutor/Administrator(執行人/管財人)として任命される。執行人は遺言書で記載され次のような表現がある。 Executor I name (Executor 1) to serve as my executor. If (Executor 1) is unwilling or unable to serve as executor, I name (Executor 2) to serve as my executor. No executor shall be required to post bond. 執行人 私は執行人として動く(執行人1)を任命する。もしも(執行人1)が執行人となることを望まず、あるいは、そうしようとしてもできない場合、私は(執行人2)を任命する。いずれの執行人も保証金を積むことを求められない。 実際には表現はいろいろ変わるが、趣旨としてはこうした条項が記載される。 (執行人・管財人の仕事) 執行人・管財人は次のような仕事を行う。 法的に遺産財団を代表する 遺言を裁判所に提出する 債務を弁済する 債権を回収する 債権公告をする 税金を支払う 役所や銀行に通知、クレジットカードを止めたり、賃貸契約の終了を行う 残った財産を相続人に渡す等々 執行人・管財人は故人の遺産税や所得税等の税金に対して責任を持つ。万が一、支払うべき税金の資金が不足していれば、執行人・管財人が代わって責任を果たすので責任は重い。
アメリカの遺産税、Estate taxesというのは誰かが亡くなって、その財産を相続する時に課せられる税金だ。それは相続税の事ではないかと思われるかも知れない。相続税はInheritance taxesと言われ、Estate taxesとは別のものだ。 同じように思うかもしれないが大きく異なる。 誰が税金を払うかが全く異なる。また課税される対象財産も異なる。 遺産税:故人が税金を払う 相続税:相続した人が税金を払う 遺産税:相続財産の総額に課税される 相続税:相続した分に課税される アメリカは遺産税方式をとるため、亡くなった人が死んでも、なお、自分で税金を支払う。亡くなった人は行為能力がない。ゆえに、自分では動けないので、亡くなった時に自分に代わる遺産財団が形成される。 遺産財団の執行人は遺言書に記載される。遺言書がない場合や執行人が先に亡くなっていたり、任に堪えない場合、そもそも設定されていない場合は裁判所が認める人が執行人となる。 故人に帰属する財産は自らの遺産財団に移転し、遺産財団の執行人が故人に代わって遺産税や未払いの負債を支払い、残った財産を相続人に渡す。故人の段階で相続財産総額に課税を受けているので、相続財産を相続した人は、税金を支払った後の財産を手にする。それ故に、相続人は自分の段階では税金を払う必要がない。それでも遺産の相続を辞退することができる。 あたかも、死亡時に自分に代わる清算会社が設立され、債権・債務をきれいにして、残余財産を相続人に渡たす。債務は支払が行われているので、相続する人は債務を相続することはない。しかる後に、清算会社そのものが消滅するといった段取りとなる。 相続税は、遺言があれば故人の遺志が反映されるが、遺言がない場合は、残った人たちの間で協議してどのように財産を分けるか決める。債務があれば債務まで相続する。相続税も相続人が相続した部分に課税を受けて税金を支払う。 アメリカは、遺産税は連邦の段階のみならず、州の段階で遺産税または相続税がある。遺産税方式はイギリスの方式が採用され、相続税方式はドイツやフランスの方式をとる州で行われる。 それぞれの州によりやり方が異なるため、必ず二段階で連邦と州で課税を受けるわけではない。州によっては課税をしない州もある。
2012年にITIN取得手続きの厳格化がなされた。Form W-7を記入するだけではなく、外国のステータスと本人確認のサポート書類が必要で面倒になっている。 13のサポート書類 サポート書類は下記の13の書類のいずれかで、外国のステータスと本人の確認の2つの要件を満たさなければならない。 オリジナルで本人の顔写真がなければならない。外国の運転免許証というのも含まれているが、本人確認では良いとしても、外国のステータスを満たさない。 日本にいる人ではパスポートと運転免許証程度になる。運転免許証は2つの要件を満たさないし、運転ができなくなってしまうので、結果的にパスポートしかない。 しかも、パスポートの原本をアメリカのIRSに送付しなければならない。 パスポートの原本をアメリカに郵送するのはものすごく難しい。本当にいつ・きちんと返してくれるのか、その間は海外出張に行けなくなってしまう、犯罪に使われるのではないか、事故はないのかとか気になる。 危なくてパスポートの原本を送る人はほとんどいない。 万事休すでITIN取得はあきらめないといけないのか。 そこで、解決策はCAA(Certified Acceptance Agent)を使うことになる。 パスポートを実際に見せなければいけないが、アメリカに送ることがなく、自分の手元に持っていることができる。 弊事務所もCAAですが、日米の他のCAA とネットワークがあるのでご紹介できます。
アメリカの税務申告をしなければいけないと思いつつ、申告をしていない方より、相談を受けることがある。1年とか短期間だとまだ簡単なのだが、過去3年とか5年とか申告をしていないケースがある。場合によっては10年以上と言うこともありえる。 なんとなく、後ろめたい気がしながらついつい税務申告を怠ってしまい、なかなか元に戻れないと言うことがある。また、別の場合は、日本にいるのだから、アメリカに税務申告はしなくても良いと誤解されているケースがある。意識的に申告がなされていない場合、無意識にそうなった場合でも、IRSから見れば無申告者ということに変りはない。 もともと、IRSの対応は、とにかくきちんと税金の仕組みの中に、自ら戻ってくることを奨励している。自ら進んで過去の分を申告しても、それなりにリーズナブルな扱いをしてもらうことを期待できる。しかしながら、IRSが無申告を発見し、悪質で意図的だと判断されると容赦ないことになる。 グリーンカードやアメリカ市民権を持っている人が日本に住んでいる場合、全世界所得課税の対象で、アメリカの申告が必要になる。計算をしてみると、税金は発生せず書類だけの提出となることが多い。 延滞税とかペナルティは納税額に対して何%という形だ。納税額がない場合、それに何%かけようとゼロとなる。 また、リファンドになるケースもあるが、これは正当に申告を行う期限から3年を経過すると、請求の期限切れとなり国庫の中に組み入れられてしまう。 過去にさかのぼって申告をする場合、この請求権を失効させることはないため、とにかく、1日も早く申告を行うことが必要だ。リファンドの場合は、申告期限に間に合わないと言うことで、加算税の対象になることはない。 納税額が発生する場合は早く手を打たなければならない。そのためには、過去にさかのぼり所得や経費のデータを集めることがスタートだ。
トランプ次期大統領の主張している、法人税の最高税率引き下げは実現すると歴史的なものになるかも知れない。 もしもそのまま実現されると、トランプ案なら法人の最高所得税率を35%から15%まで下げる。主要各国の中でアメリカの税率は一番高かったものがカナダと同じ15%となる。 2016年の法人税最高税率 トランプ案では法人税は15%にする。自営業やパートナーシップの事業所得も15%だという。現在、事業所得を入れて個人ベースで最高税率39.6%の課税を受けている人は、15%で済むことになる。 もともと個人所得税の最高税率は39.6%から33%に下げると言っている。だけども、自営業になれば15%で済む。これだと、会社の従業員という立場を捨てて自営業として外注扱いになると、個人は18%分をセーブできる。これは、本当にそうなるのかわからない。 多国籍に事業を行う会社の外国所得で、まだ課税を受けていない部分には、一度の特典で10%の課税とする。これにより、外国に本社を移している会社は、アメリカに戻るかも知れない。そうすれば国内での雇用が生まれるという筋書きだ。 さらに減価償却は、全額一年で落とすことができ、借入金利息は控除できない。減価償却という言葉がなくなるのかもしれない。 減税で景気は良くなってほしいという期待感がある。減税した分は財源を探さなければいけないし、そもそも絵に描いたように物事が展開するのだろうか。トランプ次期大統領は期待を集めて一気に大統領に上り詰めた。それだけに、景気が良くなったと人々が実感できなければ、逆に、あっという間に日が落ちてしまうのではないだろうか。
日本からアメリカの会社に辞令を受けて出向することになる。あわただしい時間の中で、まずは仕事がいかに滞らず回っていくかを考える。ビザの問題がある。さらに、家族を帯同するので、家を探さなければいけない。子供の学校をどこにするのかも大きな問題だ。さらに引っ越しの準備もある。 会社が面倒を見てくれるとよいが、それでも自分で動かない事にはどうしようもない。そうした中で、出向に伴いアメリカの税務はどうなるかというアメリカと電話会議があるというので参加する。 説明は国際的に動く人向けにサービスを行うアメリカの会社だ。向こうは日常的にそうした税務の説明をしているので、自分を基準にして、こっちは英語はもとより、税法もある程度わかっているだろうという思い込みがある。 それ故に、SSNは持っているか、ITINはあるか確認され、いきなりDual statusの話でSPT(Substantial Presence Test)になる。アメリカの滞在日数はどうだといった質問がなされる。それによって税法上の取り扱いがどうだという事も説明される。源泉徴収もあるのでForm W-4でどうこうというあたりになると、話についていくのが容易ではない。 だが、残念なことにもともと我々は2つの問題がある。 1. 英語が分からない(電話で英語を聞いて話す) 2. 税務の知識がない 1については、話をするアメリカ人は、我々がどれだけ英語・話の内容を理解しているかわからない。相手の立場に立って、話すとしても相手がどれだけ理解しているか把握するのは容易ではないし、説明する基本事項があるので、とりあえず説明する側は一通り説明せざるを得ない。 2については言葉を理解したから、話の内容を理解したとは言えない。大体、日本では自分が確定申告書を毎年出さなくても、会社が年末調整をやってくれる。自分で手を動かすことはない。毎月の源泉徴収額も自分がForm W-4で源泉徴収額を決めるなど、見たことも聞いたこともない。申告したことがないのだ。 結局、電話会議に臨んでも、よくわからないというフラストレーションが残る。あたかも自動車を一度も運転したことのない人が、教科書を読み上げられ、交通法規を一部聞かされ、あとは自分で運転してくださいと、いきなり自動車のキーを渡されるようなものだ。 要は、何だかわからず問題があり、なんとかしなきゃという気持ちが残るだけでも良しとするか。他の会社の人にはこうした機会さえも提供されていないかも知れない。 でも、税務は今日・明日動かなくてもすぐに困らない。それより冒頭のことが待ったなしで重要だ。かくして、税務は何も動かず、年明けとともに申告シーズンに突っ込んでいくことになりかねない。
まさかのトランプ次期大統領の選出と上下両院を共和党が抑えたことにより、税制改革で大きな減税につながっていく。実際に選挙期間中に主張していた通り、そのままになるかどうかはわからない。大統領が税率等を決めているのではなく、議会が決めているからだ。しかし、金持ちが優遇される減税になるのは間違いない。 個人の所得税への影響 1. 税率区分減少・最高税率引き下げ・オバマケア 夫婦合算の場合 現行では10%から39.6%までの7段階で、高額所得者にはオバマケアの3.8%付加税があるので、実際は43.4%だ。 しかし、トランプ大統領だと12%・25%・33%の3つの税率しかない。オバマケアの3.8%は廃止となる。 2. 標準控除・項目別控除・人的控除 現状では標準控除は独身$6,300で夫婦合算の場合$12,600だ。それに一人当たり$4,050の人的控除がある。 これが標準控除は独身$15,000、夫婦合算の場合$30,000となり、一人当たり$4,050の人的控除が廃止だ。 夫婦2人で子供3人という例だと、現行では$12,600+$4,050×5人=$32,850だ。これが$30,000ちょうどでお終いになってしまう。 最低の税率は10%が12%と引き上げられている。 3. その他 Alternative minimum tax(代替ミニマム税)が廃止される。 Head of household(所帯主)がなくなる。 遺産税 遺産税は廃止されてなくなる。従来は545百万ドル(ざっと5.5億円)を超えると40%の遺産税対象になったが、これがなくなってしまう。 相続した財産の取得コストは死亡日の市場価格に付け替えられる。右左に譲渡すれば課税所得は発生しない。 トランプ案だと、相続した株式や不動産で10億円を超える場合、譲渡額と10億円の差は課税される。譲渡しなければこの課税はない。 遺産税に関して言えば、次の4年はお金持ちにとってはビッグチャンスとなる。
アメリカの連邦個人所得税は累進的な税金と言われる。課税される所得が大きくなればなるほど高い税率が適用される。 25%の税率で課税されるというと、全額がストレートに25%で課税されると思いがちだが、そういう形にはならない。 仮に独身者で$50,000の課税所得だと次の計算となる。 ① $9,275までは10%で$927.50 ② $9,276から$37,650は15%で$4,256.25 ③ $37,651から$50,000は25%で$3,087.25 ④ ①から③までの合計で$8,271 Mariginal tax rate(限界税率) 課税所得の税率区分で自分の所得の最も高い税率区分だ。上記例で25%の税率で$50,000から$60,000に昇給して$10,000多くなるとする。増分$10,000は25%の限界税率なので、税金を差し引いた増分は$7,500となる。 Effective tax rate(実効税率) 税額の課税所得に対する割合で、上記の例では$8,271÷$50,000×100=16.542%だ。
先月の話になるが、アメリカではオリンピックやパラリンピックのメダル、賞品、賞金には課税しないことが立法化された。 アメリカはメダルを取った人に褒賞を与える。次の金額だそうだ。 金メダル $25,000 銀メダル $15,000 銅メダル $10,000 そうすると、単純に考えると次の税額までが発生する。 金メダル $9,900 銀メダル $5,940 銅メダル $3,960 アメリカではメダルは公正市場価格で評価され、金は$600、銀は$300、銅は実体的な価値がないのだそうだ。 従来の考え方は、アメリカの場合には、こうしたものも所得として認識をするのが基本だ。 そうした課税をするべきか、非課税にするべきか決めるのは難しい。役務の対価としてメダルを手にした。すると、リオ・オリンピックでは役務はブラジルで提供されている。ブラジル源泉所得として、ブラジルが課税するのが基本で、アメリカも同じ所得に課税しても外国税額控除でアメリカでは限りなく税金が発生しないと思える。 でも、租税条約では短期で訪れている場合は、その国は免税にするだろうから、そのままアメリカで課税となってもおかしくはない。とするとやはり、アメリカでは非課税としないといけなかったのだろう。 実際、オリンピックで金メダルを取る選手は、一握りで、すでにライセンス料などで高額の所得があると言われる。そうした選手には非課税は追い風ではあるが、ほとんど影響がないだろう。むしろ、多くの人は苦労を積み重ねても、なかなかメダルに手が届かないわけだから、そうした人が報われるべきだろう。
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