2023年1月

2023.01.29
情報申告

足取りが重くても

外国に住んでいる米国市民でも、自分がアメリカ市民だと理解していない事があり得る。いわゆる事故でアメリカ市民になった人だ。出生地がアメリカならばアメリカ市民だが、赤ちゃんの時だけ・子供の時だけアメリカにいてアメリカにいた記憶がないと言う人がたくさんいる。さらにアメリカ市民の親から生まれた子供は潜在的にアメリカ市民たり得る。親が外国にいれば子供はアメリカに行ったことがないこともあり得る。 さて、こうした人たちはアメリカ市民としてアメリカへの申告義務があり、外国の金融情報の開示の義務がある。アメリカに足も踏み入れたことがないのにこうした義務を果たさなければいけないし、失念すると罰則があると言われると大きなストレスをかかえて困ってしまう。 その義務を果たすため、いの一番に出る話が、アメリカの社会保障番号だ。出生した時に親が社会保障番号を申請し取得しているならば問題がない。しかしながら、アメリカの手続きをされていないことがある。社会保障番号は各種手続きをする時に欠かせないし、税務でもこれがないとスタートラインに立てない。 心情的には事故でアメリカ市民になった方は、手続きに時間がかかり、重くなる事は理解できる。しかしアメリカ市民としての納税義務を、それ故に果たさなくても良いとすれば、アメリカの税制の根本が崩れてしまう。 うまく社会保障番号を取得できないと、外国金融機関は口座を持っている人がアメリカ市民であると知っていても、その社会保障番号を報告することができない。これは外国金融機関にペナルティが課される状態となると、これも困ったことになってしまう。 この事態に対して、2022年12月30日に救済措置がIRSから発表されている。2022年から2024年の3年間については、要件が満たされれば、口座を持っているアメリカ市民の社会保障番号を金融機関がアメリカに提出しなくても、金融機関が大きな義務違反をしたとはしないと言う(FATCAモデル1締結国を対象とする)。 アメリカがFATCAを結んでいる国を見ると113カ国ある。この中は2つのグループに分かれる。モデル1とモデル2という区分だ。ほとんどの国がモデル1に該当し、外国の金融機関は顧客の情報を外国の税務当局に報告し、外国の税務当局はその情報をアメリカのIRSと共有する。このモデル1に該当しない国がモデル2で、13カ国という少数派だ。日本はこのモデル2のグループに入っている。今回の救済措置の対象国モデル1ではない。

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2023.01.22
所得税

IRSの為替レート発表を待つ

1月23日からITSは2022年分の2023年分申告を受け付ける。これは世界中から申告書がIRSに送られる。当然、日本に住んでいる人もこの対象だ。日本に住んでいれば日本円で生活している。日本円のまま申告はできないわけだから、アメリカの申告をするためにはドルに換算する。 すると為替レートが必要になる。この為替レートはいろいろな政府機関や民間会社が発表している。 Governmental Resources • Treasury Department’s Currency Exchange Rate • Federal Reserve Bank • U.S. Department of Agriculture External Resources • Oanda.com • xe.com • x-rates.com しかしながら、IRSが発表する2022年の年間平均為替レートは、1月22日現在、まだ発表されていない。IRSのサイトにあるのは2021年の2022年申告用のデータで、これは1年前の申告シーズンに使ったものだ。 申告書を明日から提出してくださいと言うのに、為替レートが発表されていなければ計算できない。何か、外国からの申告は2の次と言わんばかりだ。IRSから見れば、海外からの申告期限は6月15日と2か月の延長があり、猶予があるじゃないのというかも知れない。 Federal Reserve Bankの2022年平均為替レートは発表されている。  $1=131.4589円だ。またFBARやForm 8938に用いる年末日の為替レート$1=131.83円だ。 いずれにしても円安のおかげでドル換算した時に、数字が小さく出る。課税所得が小さい方向になるので、なんとなく気持ちが楽になる。 おそらく数日以内にIRSは平均レートをIRSのサイトで発表するだろう。従来、IRSの年間平均レートを使っていれば、継続性を大事にしてIRSのレート発表を今しばらく待ち、それを使うのが安全コースだろう。

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2023.01.15
所得税

多難な2023年申告シーズン

IRSは1月23日(月曜日)から、2022年の個人所得税の申告書を受付ると発表した。 それにしても気になるのは、前年分までの申告書がいまだに処理されていないことだ。昨年の申告での未処理申告件数は、IRSによればピーク時に1150万件で、これが2022年12月中旬には約400万件まで減少いる。逆に言えば、まだ400万件ぐらい残っているともいえる。 今年の個人所得税申告件数は1億6800万件程度とみられる。昨年の申告書の処理が全て終わっていないのに、新たな年の申告書が雪崩を打って押し寄せてくる。 IRSは予算が増加し、職員数が増えるので、今年は昨年よりも良くなると言う。2023年はコロナウイルスの給付金の支給がなくなるので、今年はIRSの職員の負担も減り、本来の申告書の処理に集中できる。 機械ならば設置したらすぐに動くだろう。しかし、職員数を増やしても、申告書を処理する人は、税金の勉強をしなければいけないし、トレーニングを受けなければならない。雇用された翌日からバリバリと仕事をこなせるとはならないだろう。 2023年も引き続き、申告はトンネルから抜け出せず、地下鉄の電車に乗り続けるようなもので、電車は地上を走ってくれないだろう。2023年も甘くは見ずに、相変わらずの混乱の中での2023年申告シーズンになるに違いない。 さてこうした中で、日本からのアメリカへの申告だ。ありがたいことに、日本からの申告期限は6月15日だ。還付も納付もない申告の場合、せめてピーク時の満員電車(4月15日期限)を避けて申告をしたらどうだろう。ピークを外してすいている電車に乗るように、IRSの負担を軽くすることができるかもしれない。

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2023.01.08
遺産税・贈与税

気をつけたい外国贈与

外国贈与とはアメリカの税務では、アメリカ市民・グリーンカード所有者・長期居住者が外国に住んでいる人から贈与を受けることをいう。日本に住んでいる日本人の祖父母や親が、子供・孫にお年玉やら教育費や不動産購入等のお金や不動産そのものをあげることが一例だ。 アメリカの税務で考えてみる。初めに、あげる方ももらう方も日本人同志で、対象の財産がアメリカにはなく日本にある場合では、通常はアメリカの税務を考えることはない。日本の贈与税を考えればよい。 しかし、あげる方が外国人(日本人)で、もらう方がアメリカ市民、グリーンカード所有者、税務上の居住者の場合、外国贈与としてアメリカの税務を考えなければならない。 アメリカ税務上、贈与に対する課税は贈与者に行われる。即ち、贈与を行う外国人(日本人)が税金を負担することになる。日本では正反対でもらう人が税金を負担する。あげる方にしてみれば贈与をしてなおかつ、それに対する税金を自分で払う形だ。 すると日本に住んでいる日本人の祖父母や親が、アメリカの贈与税の申告をするのかと言う事になるが、外国からの贈与はアメリカの贈与税の対象となっていない。外国からアメリカにどんどんお金や財産が無償で流入して悪かろうはずがない。外国からの贈与に税金をかけて、わざわざブロックすることはないと言う事だろう。 これからすれば、外国贈与はほとんど気にしなくていいと思うかも知れない。こんな良い話はないと思うかも知れないが、実は頭を抱える事がある。 贈与を受けるアメリカ市民、グリーンカード所有者、税務上の居住者は、贈与税を払うことがない。しかし、10万ドル以上の贈与または相続をForm 3520で開示する義務がある。 10万ドルは1件での金額ではなく、その年に行われた、受取人一人当たりの金額だ。3万ドルを4回もらえば12万ドルで開示義務に該当し、Form 3520の提出対象となる。3万ドルを3回と4回目が$1万に満たない金額ならば、10万ドルに達しないので、このフォームの提出要件を満たさない。 その年の申告で失念したり遅れて開示すると、ペナルティを受ける可能性があるので慎重に処理をしたい。また、日本の金融口座にお金が振り込まれたら、FBARやFATCAでの申告対象になり得るので、これも合わせて気をつけたい。外国贈与は意外なところで注意が必要だ。

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