Form 2555は、外国に住んでいるアメリカ人やアメリカの税務上の居住者が、外国で働いて得る所得を控除してくれる。2023年では$120,000だ。 外国での所得を控除してくれるなら、不動産譲渡益や株式譲渡益までも控除してくれると良いのだがそうはいかない。しかしながら、所得は給与がほとんどと言うことになれば、$120,000は$1=150円だと1,800万円まで差し引いてくれて、課税対象の所得が無くなる事になる。 多くの人がこの恩恵を受ける。これ以上の金額の場合、控除が使えないという事ではなく2000万円の給与だと1800万円を差し引いて、200万円だけが課税となる。 では、給与が1000万円で、所得がこれだけと言う場合、課税される所得がゼロになってしまうので、申告書を提出しなくても良いのだろうか。 これらの申告書類を提出しないと、IRSから見れば課税所得があるにもかかわらず、無申告の状態でしかない。これをそのまま見過ごすことはできない。 Form 2555を提出して初めて課税所得がゼロになる。Form 1040にForm 2555を添付して提出しなければならない。また何の条件もなくForm 2555を使えるという事ではなく、適用の条件もある。 何気なくForm 2555を使っているかも知れないが、一度このForm 2555を使うと、この先、継続して使うことが前提になっている。Form 2555を使えるのに、使わない場合、向こう5年間はForm 2555を使えなくなる。 今年は使うことがなくとも、この先5年間どうなるのか見通すことができない。向こう5年間はForm 2555を使いませんと言えない場合は、権利を失効させるのはもったいない。 アメリカ国内にフルに住んでいる人には使えないForm 2555だ。外国に住んでいる人だけが恩恵を受けると言われるかもしれない。しかし、その土台は世界中に住んでいるアメリカ市民やグリーンカード所有者が、アメリカへの申告・納税の義務を持っている。Form 2555で外国との二重課税を緩和するありがたい仕組みだ。
ScheduSchedule Bは、利子と配当を記入する付表だ。フォーム1099-INTおよび1099-DIV等の情報からSchedule Bを完成させ、付表はForm 1040のline 2aや2bやline 3aや3bにつながる。 アメリカの金融機関からはForm 1099-INT, Form1099-DIV, Account statementをもらう。報告対象はそれだけにとどまらない。日本に住んでいる人、または海外に住む日本人なら日本に金融口座を持っている。日本の利子や配当もForm 1040申告の対象だ。自分で情報を集めて申告をすることになる。 一生懸命、時間をかけてSchedule Bを作った。ところが利子又は配当のいずれかが$1,500を超えないとSchedule Bの提出要件を満たさない。Schedule Bを出す必要がないと気づく。この場合は、最初からForm 1040に記入すればそれだけの話と思うかも知れない。 しかしこのSchedule BのPart 3は、情報申告とつながっている。情報申告は税務申告の他に、様々な情報を報告する制度で、外国金融口座の残高報告もその一つだ。つまりPart 3が何なのか意識もせずに読み飛ばし無視をすると、最悪の場合、情報申告のペナルティに跳ね返ってくる可能性がある。 Schedule BでPart 3の申告要件を意図的に失念し、口座や残高を隠そうと努力することは申告義務を無視したとされ、意図的な無視となり得る。 一方で、Schedule Bで間違えて違うボックスにチェックを入れたり、どこにもチェックを入れなかったりしたことだけでは、意図的に無視したことにはならない。 外国金融口座の申告を行わないペナルティには二つある。Willful Conduct(意図的な行為)とNon Willful Conduct(意図的でない行為)の二つに対するものだ。 これによってペナルティの重さが異なる。Willful Conductは申告漏れの対象財産の上限50%か$100,000の大きい方であり、場合によって刑事罰もある。Non Willful Conductは上限$10,000だ。もちろん機械的に適用されるかどうかはあるにせよ、可能性は排除できない。 Schedule B Part 1, Part2に情報を記載してお終いではなく、むしろPart 3を忘れずに記入することが必要だ。
日本からアメリカに申告をするケースの話だ。Form 1040の最初の行1aはForm W-2のボックス1のデータを入れると書いてある。そもそもForm W-2とは何だと調べて、日本で会社からもらう給与の源泉徴収票の事だと理解する。 早速、日本の源泉徴収票から給与を報告するため、Form 1040とにらめっこして支給金額をline 1aに入れる。日本の源泉徴収票の情報は日本語でも良く分からない。何となくアメリカとは関係なさそうだから、まあいいかと思い、源泉徴収額はPayments line 25aの所に入れると判断する。 Form 1040のline 12で標準控除を入れ、line 15で課税所得が出る。課税所得に税率が掛けられてline 16で税額が発生する。この税額からline 25aで源泉徴収された分を引く。 税額と源泉徴収された額との大小比較する。税額<納付金額 ⇒差分を還付税額>納付金額 ⇒差分を納付 大枠はこれで良いと思う。アメリカに住んでいる人でForm W-2の場合はそれで良いだろう。 しかし、日本に住んでいる場合、源泉徴収額はアメリカに対して支払っているものではない。日本に払っているものだ。それを税額の精算をする時に使って話はおかしくなる。そんなの当たり前じゃないかと思うだろう。その判断がつくなら良い。 この場合は、日本の給与はLine 1aではなくline 1hのOther earned incomeに入れてline 1aには入れていないだろう。もちろんline 25aにも入れない。 ところが、税務ソフトを使って申告書を作ろうとする場合だ。画面と対話して情報をどんどん入れていく。税務ソフトはアメリカの実態に合うようにできている。海外の個別的な状況を必ずしも全部取り込めずに限界がある。機械的に日本の源泉徴収額をTax withheldという所にうっかり入れかねない。 その結果、出てきた答えが還付だ。でも、アメリカに税金を払っていないのに、税金の払いすぎだから、アメリカから還付ってどんなことかわかるだろう。 すると一つの給与に対して日本の税金を払い、アメリカの税金を払うことになって二重課税になってしまう。これを避けるためには外国税額控除を使ってとかになると、いきなり複雑な領域に足を踏み入れることになりかねない。 ソフトを使う側がある程度の知識があり、ソフトの出す答えが正しいのかどうか判断できなければいけない。これはAIが出してくれる答えを、そのまま飲み込んではいけないと言う事に通じる。
申告書を作るにはデータを集めなければいけない。データが集まったら申告書に記入していく。この申告書は本表であるForm 1040とその部分を構成する付属表から成り立っている。 Form 1040は個人の所得税を申告するフォームの名前だ。さらにその部分を構成する次のような付属表がある。 Schedule A: 項目別控除Schedule B: 利子・配当Schedule C: 個人事業主の事業損益Schedule D: 譲渡損益Schedule E: 賃貸事業Schedule SE: 自営業税計算その他 さて、集まったデータをもとに、本表であるForm 1040に記入する。頭から単純に数字を記入できると良いのだが、個人事業や賃貸事業などがあったり、株や不動産などの譲渡損益があると付表に記入することになる。 例えば個人事業を行っているとSchedule Cを使う。賃貸事業を行っていればSchedule Eを作る。株式の譲渡損益だとSchedule D なのだが、その前にForm 8938を作ることになる。 これらの付属表を作っているうちに、所得や経費が漏れていたり、減価償却計算が間違っていたりとかすれば、その都度付属表を直していく。 付属表と本表は連動しており、付属表の中身が変わるごとに本表が変わってしまい、その修正を何度も行うことになる。やっているうちに何がどこまで連携しているのか迷子になりかねない。 と言うことは付属表をしっかりとまとめてから、本表に転記すれば良い。付属表ごとにブロックとしてまとめ、そのブロックを積み上げて申告書Form1040が出来上がる。付属表ごとに下から積み上げて出来上がった申告書を、さらに上から見直して全体がきちんと整合しているか確認する。
日本に住んでいるのでアメリカに申告しなくて良いということは正しいだろうか。正しくもあり、間違ってもいる。申告をしなくて良いケースがあれば、申告をしなければならないケースもある。 基本的に申告の要否は居住者と非居住者で別れる。居住者とは住んでいる人のことだから、アメリカに住んでいない。だからアメリカに申告することはないと単純には言い切れない。 アメリカの税務では居住者を属性で判断する。アメリカ税務上の居住者か非居住者か判断する時に、次の3条件のいずれかを満たせば居住者となる。すべて当てはまらないとアメリカ非居住者となる。 (1)アメリカ市民権を持っている(2)グリーンカードを持っている(3)Substantial Presence Testによりアメリカ滞在日数が183日を越えている㊟ アメリカは属人的に居住者・非居住者の判断を行う。アメリカを除くほとんど世界中の国は属人的な判断をしない。その国に足を載せて住んでいる人が居住者だ。国外に転出するとその国の居住者ではなくなるという属地的な考え方を取る。 アメリカは属人的に判断するので、住んでいるところは影響しない。日本に住んでいても上述のアメリカ市民権を持っている人、グリーンカードを持っている人は税務上のアメリカ居住者だ。アメリカの申告の対象者となる。 では、全くアメリカ市民権やグリ―ンカードと縁がない人はどうだろう。アメリカの税務と接点がないと考えると間違えることがある。次のようなアメリカを源泉とする所得があれば、アメリカの申告対象となるからだ。 給与所得: アメリカで役務を提供して得た給与、賞与、退職金など事業所得: アメリカで事業を営んで得た所得不動産所得: アメリカにある不動産から得た賃貸料など譲渡所得: アメリカにある資産を譲渡して得た所得配当所得: アメリカの投資から得た配当その他 日本に住んでいる人であっても、アメリカを源泉とする所得があればアメリカの申告が必須となる。 アメリカに1週間、10日出張してアメリカで役務を提供した人もすべてアメリカの申告をしなくてはならないのか。理屈はそうなるが、日割り計算をすることになり、あまりにも申告の負担が大きくなる。この場合は183日以内の滞在で、自国から給与が払われている場合、日米双方で出張にかかわる給与は相手国の所得税の非課税としている。 日本に住んでいるからアメリカの申告の対象外、と単純に考えると間違えることがある。㊟(Substantial Presence Testの数え方) ①当年度の滞在日数が31日以上ある②申告対象年のアメリカ滞在日数+申告対象年の前年のアメリカ滞在日数×3分の1+申告対象年の前々年のアメリカ滞在日数×6分の1≧183日
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