不動産を譲渡した場合には、譲渡益または譲渡損が発生して申告書で処理を行う。さて、年内もあと1か月だ。この時期になると、契約が結ばれても、最終的に決済が行われ引き渡しが来年になることもあろう。 申告書ではどこの時点で譲渡がなされたことになるのか。例えば2021年の12月15日に譲渡契約書にサインされ、頭金が支払われる。残債が支払われるのが2022年1月15日になるとする。 譲渡を証するものが契約書だから、契約書にサインされた日と考える。即ちサイン日が2021年12月15日ならば、税務処理は2021年分の申告で2022年の申告時期に申告して税金を支払う。 不動産の残債が支払われ引き渡しが2022年1月15日ならば、譲渡をこの日と考える。税務処理は2022年分の申告で2023年の申告時期に申告して税金を支払う。税金の処理が1年も違ってしまう。 考えてみると契約書通りに物事が進むので、どっちの日なんだという疑問を持つのだろう。現実には契約書通りに行かないことがある。例えば契約してから最終的な決済の間に条件がつく。 マンションの住民の管理組合が、新入居者の審査を行い、OKを出さないと入居出来ない。住宅ローンが却下されたとか、地震で壊れた、火事になったとか天変地変もあれば、契約が途中で履行できなくなってしまう。 と言う事は、途中の様々な要件がクリアされ、最終的に残債が支払われ、不動産の引き渡しがなされない限り譲渡は完結しない。譲渡が完結しない時点で、譲渡損益を計算して申告を行うわけにはいかない。 不動産を譲渡した場合にForm 1099-Sをもらう。そのbox1に譲渡日が記載され、引き渡し日となっている。契約日ではなく引き渡し日を待って申告を行うことになる。
自分の住む家を譲渡した時に、キャピタルゲインから最大$ 250,000(独身)、最大$ 500,000(夫婦合算)を控除できる。これはアメリカの家だけではなく、日本の不動産も対象になる。あくまでアメリカの税務の話だ。 この控除を使うには、譲渡日の5年前から譲渡日までに、少なくとも2年以上、自分の家として所有して住んでいなければならない。しかし、様々な理由でこの要件を満たすことができない事もあるだろう。 2年の要件を満たさない場合、控除を諦めるしかないのか。そんなことはなく、要件を満さなくとも、転勤や健康上の理由や、予期せぬ理由であれば、満額ではないが控除を取ることができる。 転勤の場合は距離が問題で、以前の勤務地より少なくとも50マイル離れた勤務地へ引越すことが必要だ。 健康では、自分や自分の家族だけではなく、親兄弟姉妹を含む家族の怪我、病気、ケアのために引っ越しをする事でも良い。 予期せぬ理由では、自然災害や家族の増加、減少、仕事を失ったり、コロナウイルスの影響とかいろいろあるだろう。思いもかけない出来事で、自分や家族の住む家としては不向きになることもあり得る。 こうした場合には、最大$ 250,000(独身)、最大$ 500,000(夫婦合算)の控除を、2年に対する月割りで控除できる。1年で譲渡すると50%だし、9か月なら37.5%の控除となる。最大値なので、実際のキャピタルゲインが、それよりも小さいと、その小さい控除額が限度になる。
アメリカの市民権やグリーンカードを放棄した場合に、Form 8854(出国税)を提出する。Form 8854の申告期限は、放棄をした年の申告期限と同じで、申告書と一緒に提出する。Form 8854で出国税の対象となる人が定義されている。 対象になる人は、次の3つの基準で判断される。 ①税額基準:放棄より前5年の平均所得税が下記を超えているか。 2018年は165,000ドル 2019年は168,000ドル 2020年には171,000ドル ②純資産基準:純資産が200万ドルを超えているか。 ③適正申告基準:放棄より5年前からすべての連邦税義務を遵守しているか。 ①と②の基準ではNoでも、③の申告基準を満たさないことが散見される。即ち、放棄した年の前5年を適正に申告し、納税している基準を満たしていない。この場合はすみやかに過去に遡り適正に申告をして、税額があれば納付する。 せっかく3つの基準に適合したけれど、Form 8854を提出していない。この場合は、税務上はアメリカ居住者であり続けるのだろうか。以前においてはその扱いであった。しかしながら、現在ではForm 8854を提出していない場合でも、放棄手続きにより税務上はアメリカ非居住者となる。結果的に、アメリカの市民権やグリーンカードを放棄した年以降は全世界所得課税から外れる。 Form 8854を提出していないと、上記の3つの基準をパスしていると宣言しないために、出国税の潜在的な対象となってしまう。しかし遅れてForm 8854を提出しても、3つの基準をパスすれば出国税の対象ではない。 出国税を免れても、Form 8854を提出遅れのペナルティはどうなるか。上記3条件をパスして出国税の対象とならない場合は、ペナルティをほぼ心配しなくても良さそうだ。出国税対象になってしまう人にはペナルティは残る。 IRSがペナルティに動くかどうかは個々の事情も勘案されるし、アメリカ市民については救済もあり手続きも発表されている。流れはForm 8854をきちんと提出するように背中を押していると思える。
9月中旬に米国下院のHouse Ways and means Committeeが税制改正案を提出している。個人の所得税の主なところでは、2022年から次のような課税強化を打ち出す。現状のまま上下両院を通過し、大統領が署名するかはわからないので、このまま立法化されるかどうかは不明だが、高額所得者への課税は足元まで近づいて来ている。 ①個人所得税率の引き上げ 個人所得税の最高税率は、現行の37%から39.6%に引き上げとなる。課税所得が45万ドルを超える夫婦合算申告、独身では課税所得が40万ドルを超える場合に適用される。夫婦合算申告の場合、2021年では37%の適用は628,301ドル以上だが、2022年では39.6%の区分が450,000ドルで適用になる。 ②事業所得に純投資所得税(Net Investment Income Tax)を適用 現状では受動的投資所得(利子、配当、キャピタルゲイン)に純投資所得税(Net Investment Income Tax) 3.8%が課税されている。夫婦合算申告では50万ドル、独身では40万ドルを超える修正調整総所得(MAGI)の場合、事業所得にも課税を拡張する。 ③高額所得者に対する上乗せ 修正調整総所得(MAGI)が500万ドルを超える個人の場合、3%の追加上乗せが課せられる。既婚者が個別に申告する場合は250万ドルを超える場合となる。 ④適格事業所得控除の制限。 20%の適格事業所得控除は、夫婦合算申告の場合は50万ドル、独身の場合は40万ドルに制限される。 さらに遺産税・贈与税では、現状で11.7百万ドルある遺産税・贈与税の生涯控除額は2022年1月から500万ドルとされる。 いずれもこの通り立法化されるとは限らないながら、高額所得者には増税の足音が聞こえている。
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