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2025.02.09
遺産税・贈与税

孫へのお祝い

日本では受験シーズンがピークで、小学生や中学生ではすでに進学先が決まっている人も多いと思う。この時期はまた祖父母が孫のためにお祝いを贈る時期でもある。 こうしたお金はアメリカの贈与税務上どのような形になるのか。大前提として、アメリカの贈与税は贈与する側が課税を受けることになる。一方、日本の贈与税は贈与された側が課税を受ける仕組みだ。 もともと親には子供に対する法的な扶養と教育の義務がある。そのため、親が未成年の子供のために支払う通常の生活費や基礎的な教育費は、通常、贈与とは見なされない。 一方で、祖父母には孫に対する法的な扶養義務はない。そのため、祖父母が孫に対して提供する経済的支援(教育費の支払い)は、贈与税の観点からは贈与と見なされることがある。特に多額のお金を子や孫に直接渡すことは贈与と見なされる可能性がる。 ただし、年間非課税贈与枠があり、2024年ベースでは$18,000/人までは非課税だ。この枠は贈与者ごとに設定されているため、祖父と祖母が孫に贈与する場合、合計$36,000まで非課税となる。 この枠を超えた部分は、贈与者の生涯贈与税控除額(2024年は$12.92 million)から差し引かれるか、贈与税(18~40%)が発生する事になる。 また、この枠を超えても、祖父母が孫の通う学校(小中高・大学など)に授業料を直接教育機関に支払う場合、その金額は贈与税の対象外となる。ただし、以下の条件が必要となる。•支払いが「授業料」に限定される(教科書代・寮費・生活費は対象外)。•支払いを祖父母が直接学校に行う(例:学校の口座に振込む)。•対象は「教育機関」のみ(IRSが認める学校・大学など)。 具体的に$50,000を贈与する例で考える。 •祖父母が学校に$50,000を直接支払う。この場合、贈与税の対象外となり、全額が非課税だ(授業料全額が対象外)。•祖父母が親を通じて孫に$50,000を渡す。この場合、年間非課税枠を超える$32,000が贈与税の対象だ。また授業料以外の費用(例:寮費・教科書代・制服代・生活費)は、年間$18,000の非課税枠内を超えると贈与税対象となる。たとえ教育機関に直接払っても非課税とはならない。 これはあくまでもアメリカの税務に焦点を当てた説明で、日米間では贈与税に関するルールが大きく異なる。そのため、日米両方の税務を考慮した上で、贈与計画を立てることが重要となる。

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2025.02.02
所得税

帰国時の不動産の譲渡益控除について

アメリカに不動産を保有している個人が日本に帰国する場合、夫が先に日本に帰国し、妻が子供の教育のためにアメリカに残ることがある。このように夫婦が日米で別々に住んでいる中で、アメリカの不動産を譲渡する場合、不動産の譲渡益控除を受けられるのだろうか。 アメリカの税法上の居住者は、以下の要件を満たす場合には、居住用不動産の譲渡益を控除できる。 要件: 所有要件(Ownership Test): 直近5年間のうち、2年以上その家を所有していること居住要件(Use Test): 直近5年間のうち、2年以上その家に住んでいること 控除額: 夫婦個別: 最大$250,000夫婦合算: 最大$500,000基本的に、日常的に住んでいる主たる住居(Main Home)であることが必要で、投資物件や別荘の場合には譲渡益控除を受けることはできない。 夫の日本の家が主たる住居となれば、アメリカの家はセカンダリー(secondary home)になり、別荘や別宅のような位置づけになってしまう。 アメリカに残っている妻と子供が、夫の帰国から数年後に日本に帰国し、その際にアメリカの家を売却する。家族として主たる家ではないので控除ができないかと言えば、譲渡益控除を完全に失うわけではない。 その理由は、夫と妻が別々に適用条件を判断できるという点にある。たとえ夫にとってアメリカの不動産がセカンドホームであっても、妻にとっては主たる住居であるため、妻が単独で所有要件と居住要件を満たせば、最大25万ドルの控除を受けることができる。ただし、妻に不動産の所有権がない場合は、この控除は利用できなくなる。 もし最大50万ドル(約7500万円)の控除を利用したい場合、夫婦の両方が所有要件と居住要件を満たす必要がある。夫が所有要件を満たして、過去5年間のうち2年以上住んでいる居住要件が問題だ。これを満たすためには、帰国後3年以上経過すると居住期間が2年未満になってしまうため、帰国後3年以内に譲渡する必要がある。 例外として、「やむを得ない理由」により売却する場合、居住期間の要件を満たしていなくても部分的な控除が認められることがある。健康上の理由、仕事上の理由、予期しえない理由などがあれば、部分的な控除が適用されることがある。 税務上の処理を簡単にするために、日本に帰国する前にアメリカの家を譲渡することを検討するのも一つの方法だ。日本の非居住者であるうちに不動産を譲渡すれば、日本での税務申告に直接影響しない。帰国後にアメリカの不動産を売却すると、譲渡益があれば日本の税金の対象になりえる。 最終的には税金の面だけで判断できるわけでもなく、税金以外の要素 (子供の教育、生活環境など)総合的に状況を考慮して判断することは言うまでもない。

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2025.01.26
その他

内国歳入庁 (IRS)

IRSは、米国財務省の機関である内国歳入庁 (Internal Revenue Service) の略称だ。IRSは、連邦税の徴収、納税者が納税義務を理解し履行することを支援すること、そして公平な税負担を確保するために税法を執行することを任務としている。 Internal Revenue Service(=IRS) という名称を見て、昔からなぜ Internal があるのに External Revenue Service(=ERS) がないのかと、素朴に疑問をもっていた。 トランプ大統領は、関税、外国からの収入を含むあらゆる収入を徴収するための新しい機関として「外税庁」を設立するという計画を発表している。大統領選挙中から繰り返し関税について言及し、「関税」を「辞書の中で最も美しい言葉」と呼んでいた。そのため、彼が大統領に就任してすぐにこのような動きに出たスピードには驚いた。 トランプ大統領は、関税を「米国経済の周囲に保護の壁を作る」ものだと表現し、グローバリゼーションによって打撃を受けた地域に雇用を取り戻すことができるとしている。さらに、1900年代初頭から続く所得税中心の制度から脱却し、関税を連邦政府の歳入源として増やすことに関心を示していた。 トランプ大統領の支持者の中には、関税によって外国が税金を負担するため、自分たちの税負担が軽減されると考える人々がいる。「関税によってアメリカの税収が賄えるならば、自分たちが支払っている税金を払う必要がなくなる。税金は外国が払うもので、自分たちが払うものではなくなる」というわけだ。まるで「おとぎ話」のように聞こえるのだが、実際にこのようなメッセージを受け取り、支持していた人々がいたことは事実だ。 関税は、輸入品に課される税金であり輸入者が支払う。外国の貿易相手国に関税を課す言う場合、実際には米国の輸入者がその関税を支払う。それを商品の価格に上乗せするため、米国の消費者が間接的に負担することになる。海外旅行で外国産高級ワインを持ち帰ったとする。税関に申告すると、税金を課せられるのは持ち帰った人であり、ワインを作った外国のブドウ園ではない。 関税引き上げによって保護される産業がある一方で、輸入品を原材料とする産業はコスト上昇に苦しむ可能性がある。さらに関税引き上げは、貿易相手国との報復合戦を招き、世界経済に悪影響を及ぼす可能性がある。 今まで関税をつかさどる機能は米国関税国境警備局(CBP)や米国国際貿易委員会(ITC)が果たしている。これを一つの組織としてERSを作ることは、できるだけ組織の無駄を省こうとするイ―ロン・マスクとは逆の立場だ。 関税により個人所得税が無くなるとも思えない。トランプ大統領の政策が引き起こすかもしれない変化と混乱にもかかわらず、現状を変えようとする姿勢には注目すべき面もある。どんな結果になるかは別として、その試みは一部の人々の支持を集めている。

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2025.01.19
その他

グリーンカードの放棄日

グリーンカードを持っている人がその放棄手続きをすると、出国税(Form 8854)を提出する必要がある。出国税で国外退去日を間違えるとForm 8854の提出時期をあやまることになりかねない。 出国税における国外退去日は、次のうち最も早い日付とされる。 ① Form I-407 を提出した日Aさんは2024年11月1日にForm I-407 を郵送した。この場合、2024年11月1日が国外退去日になる。 ② 永住権放棄の最終的な行政命令の日付Bさんの永住権が2024年12月15日に行政命令で取り消された。控訴は行わなかったため、この日付が国外退去日になる。 ③ 米国からの退去命令の日付Cさんは裁判所の命令により、2025年1月20日に米国からの退去を命じられた。この場合、2025年1月20日が国外退去日になる。 ④ 米国との租税条約に基づく扱いを通知した日Dさんは2025年2月10日に IRS に通知を行い、租税条約に基づいて日本の居住者として扱われることを選択した。この場合、2025年2月10日が国外退去日になる。 仮に次のケースで具体的に考える。 2024年11月1日に Form I-407 を提出し、その後、2024年12月15日に行政命令が下る。2025年1月20日に退去命令があり、2025年2月10日に租税条約に基づく通知を送った場合、最も早い日付である 2024年11月1日が国外退去日となる。 永住権を自発的に放棄するために Form I-407 を提出した場合、米国移民局 は受領通知として Form I-797C を発行する。この場合、重要なのは I-407 を提出した日付であり、Form I-797C(Notice of Action)は、米国移民局から申請者に送付される受領通知だ。Form I-797C は永住権の終了や国外退去日そのものを直接決定するものではない。 Form I-797C は、永住権の終了に関連する手続きの途中で受け取る通知書にすぎない。国外退去日を決定する4つの基準(I-407 の提出日、行政命令の日、退去命令の日、租税条約に基づく通知の日)には該当しない。 例えば、2024年中にForm I-407を提出し、2025年になってからForm I-797Cを受け取った場合でも、国外退去日はForm I-407を提出した2024年内の日付となり、2024年分の出国税申告(2025年提出)が必要となる。これを誤って2025年分の申告(2026年提出)としてしまうと、予期せぬ遅延ペナルティが発生する可能性があるため注意が必要だ。

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2025.01.19
所得税

申告期限

(申告開始と申告期限) 2025年1月27日(月)が申告開始日 2025年4月15日(火)が申告期限 (海外からの申告) 2か月の自動延長可能 2025年6月16日(月)が申告期限・ただし納付は4月15日期限 (延長申請した場合) 2025年10月15日(水)が申告期限・ただし納付は4月15日期限 (州税) 州税の申告期限は連邦と一致している。下記の州は一致していない。 (連邦と異なる申告期限) ハワイ州:2025年4月20日 デラウエア州:2025年4月30日 アイオワ州:2025年4月30日 バージニア州:2025年5月1日 ルイジアナ州:2025年5月15日

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2025.01.12
所得税

2025年のアメリカの申告シーズンは、1月27日(月曜日)に始まる

今年のアメリカの申告シーズンは1月27日(月曜日)に始まり、IRSへの申告書の提出と納付の期限は例年通り4月15日だ。日本からは2か月の申告書提出の自動延長がある。6月15日が日曜日なので、6月16日が申告期限となる。 初めてアメリカの申告をされる方もいるだろうし、アメリカの申告をしなければいけないという事を初めて知ったという人もいるはずだ。 アメリカ市民またはグリーンカード保持者であれば、世界中のどこに住んでいても、毎年アメリカの連邦所得税の申告義務がある。その理由は、アメリカが「全世界所得課税」を採用している事による。これは、アメリカ市民またはグリーンカード保持者は、世界中の所得に対してアメリカの税金を支払う義務があることを意味する。世界中の所得と驚くかもしれないが、日本も同じで、日本に住んでいる人は世界中の所得が申告対象になり得る。 アメリカに住んでいれば、社会生活でアメリカの税金と接点があるため、申告・納税について社会生活の中で身につく側面がある。しかし、海外在住者は、アメリカの社会や文化、税制から離れた生活を送っているため、アメリカの税務申告の必要性を実感しにくい。特に、アメリカで生まれたが、生まれてこの方ほとんど日本に住んでいる人には、アメリカの税金は意識されていないこともあろう。 アメリカの税金に関しては膨大な情報があるものの、日本語のものは少なく、内容も複雑で理解しにくい。アメリカの社会や文化、税制から離れた海外で生活しているため、アメリカの税務申告の必要性を実感しにくい状況にある。 それでも申告・納税をしていなければ、ペナルティの対象になってしまう。ペナルティがあるから申告をすると言うのも一面的過ぎるが、交通ルールと同じで信号を守らないと交通事故にあってしまう。 アメリカ市民やグリーンカード所持者でない、ごく普通に日本に暮らしている人でも、アメリカに不動産を持ち、賃貸をしたり、不動産を譲渡すれば、アメリカの申告をしなくてはならなくなる。 あと、2週間もすればアメリカの個人所得税の申告が始まる。交通事故にぶつかって初めてアメリカの申告義務を知るという事がないように、微力ながら今年もサポートしたいと思いを新たにしている。

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2025.01.05
その他

2025年が始まる

アメリカのトランプ次期大統領の就任式が、今月20日に行われる。大統領選挙期間中、彼は2017年の減税の継続、法人税の減税、特に社会保障給付の非課税化、残業代の非課税化、チップを課税対象から外すこと、そして国際的な二重課税の解消などをアピールしていた。 しかし、トランプ次期大統領就任後に早期着手が予想される政策は、不法移民対策やエネルギー生産の規制緩和、ウクライナの停戦などであり、減税や税制改革は最優先課題ではないと思われる。 2017年に成立した税制改革(減税・雇用法)の多くの条項が2025年末に期限を迎えるため、2025年中にトランプ減税の延長などの税制改革法と予算の成立を目指すと考えられる。個人所得税の改革に関しては、財源確保が大きな課題となり、進展は遅れる可能性が高い。 日本に住んでいる人に対するアメリカへの申告への影響については、国際的な二重課税の解消や社会保障給付の非課税化は注目されるが、現状ではあまり影響がないと考えられる。 海外在住の米国人に対する二重課税の解消は、アメリカの市民権に基づく課税制度に触れることになる。アメリカは歴史的に、市民ならばアメリカに申告・納税しなければならないという市民権課税を採用している。 領土的課税は、個人が居住する国で課税される制度であり、アメリカではこの制度に移行したことは歴史的にない。アメリカ市民や永住権保持者は、どこに住んでいても米国の税法に従う必要があるという原則が維持されている。 個人の申告の観点では、現状でもForm 2555や外国税額控除があるため、アメリカに納税する必要はほとんどないのが実情である。Form 2555の効果では、2024年を基準にすれば、日本で働いていれば給与を約1900万円程度までは課税対象から控除される。 これが実現されれば、アメリカへの申告書の提出の手間が削減されるが、それ以上の効果は期待しにくい。同様に、日本への申告義務は変わらず続くことになる。 また、社会保障年金は日米租税条約で居住地課税となっているため、日本に住んでアメリカの年金を受給している人は、アメリカではなく日本で課税される。 ここで思い出されるのは2018年のForm 1040の変更である。当時、トランプ大統領は「葉書サイズの申告書」にすると約束した。これは期待を抱かせたが、実際には従来と大差ないものであった。申告の骨格のみを1ページにまとめたが、詳細を記入し税額を算出するためには従来通りの手続きが必要であり、結局複雑な作業が残った。また、計算が自然な流れに沿っていないため、ページ間を行き来する使いづらい形式となっており、案の定、2019年からは元のフォーマットに戻された。 野心的でチャレンジする所はさすがと思うも、実際は現状の変革は難しいと言わざるを得ない。選挙期間に公約しているだけに、何らかの結果を出そうとするだろう。 ともかくも1月末には従来通り2024年分の2025年申告が始まることになる。

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2024.12.29
遺産税・贈与税

クリスマスプレゼント・お年玉のシーズン

この時期にはクリスマスプレゼントやお年玉をもらったり贈ったりする機会が増える。アメリカの税金の観点ではこれに対しては税金がかかるのであろうか。 結論から言うと、多くの場合、クリスマスプレゼントやお年玉のような少額の贈与であれば、税金の心配をする必要はない。 アメリカの贈与税は、贈与者が負担する税であり、年間控除額や生涯免税額を超える場合にのみ課税される。贈与を受ける側は税金を払う人ではない。 アメリカには「年間贈与税控除額」(Annual Gift Tax Exclusion)という制度がある。この制度では、毎年一定額までの贈与は税金の対象外となる。2024年では、年間非課税額は1人当たり$18,000だ。この金額までは贈与税を支払う必要はない。この金額は贈与者一人当たりの金額で、例えば贈与をする子供が3人だとすると、$54,000までが非課税で贈与できる。 多くの場合、クリスマスプレゼントやお年玉の金額は非課税贈与の枠内だろうから、税金の心配をすることはまずない。 さらにこれからの時期、祖父母が孫の小中高や大学の入学祝をあげたり授業料を払ってくれることがある。入学祝いや教育費として受け取った贈与は、直接教育に使用される場合や社会通念上妥当と認められる場合には、贈与税の対象とならない可能性が高い。 しかし、高額な贈与の場合には注意が必要だ。高額な入学祝いをしたり、多額の教育資金を一度に贈与する場合、年間非課税枠を超えてしまい、贈与税の対象となる可能性がある。 贈与税の対象となるかどうかは、贈与の金額、贈与者と受贈者の関係、贈与の目的など、いくつかの要素によって総合的に判断される。 特に、贈与者と受贈者の関係は、税法上、親族間での財産の移転を優遇する傾向があるため、重要な要素となる。これは、親族間の助け合いを促進し、家族の経済的な安定を図るという政策的な意図があるとされている。 年間非課税枠を超える贈与を行ったとしても、すぐに贈与税が発生するわけではない。贈与者には生涯の贈与と遺産に対する総非課税枠(2024年時点で1,361万ドル)があり、この枠内であれば、実際に税金を支払う必要はほとんどの場合ない。 しかし、注意が必要なのは、贈与者がアメリカの非居住外国人である場合だ。生涯非課税枠を利用できない事を知っておく必要がある。 さらに、アメリカ市民やグリーンカードホルダーが、非居住外国人から年間$100,000を超える贈与をもらった場合には、Form 3520を提出する必要がある。これを怠るとペナルティの対象となる可能性がある。 多くの場合、贈与税の心配は必要はないが、年間非課税控除額を超える贈与の場合は注意が必要となる。

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2024.12.22
遺産税・贈与税

雲間から光が差したが

アメリカの税務では、アメリカ市民または居住者が外国から贈与や相続を受けた場合、必ずしもその財産に対して税金を支払う必要はない。日本とは異なり、課税を受けるのは財産をあげる人で、財産を受け取る人は基本的には課税されない。しかし、財産を受け取る人には報告義務があり、基準となる年間受領額が10万ドルを超える場合には、Form 3520を提出しなければならない。これを怠るとペナルティを受ける可能性がある。 従来は、Form 3520を適切に提出しなかったり遅れて提出した場合、その理由に関係なく、機械的にペナルティが課されることがあった。 2024年でこの度、IRSは納税者のForm 3520遅延に対して事前に理由を審査する手続きに変更したようだ。問答無用ではなく、理由を聞く姿勢に改善されたのはありがたいことだ。 しかし、その理由を認めてくれるかどうかは別問題となる。 遅れて提出するForm 3520に対するペナルティを回避するためには、納税者は「正当な理由」を立証する必要がある。これは、その不履行がわざとやったのではないと示さなければいけない。 Form 3520の提出をしていないことの合理的な理由を挙げるのは必ずしも容易ではない。あえて考えられる合理的な理由としては、死亡や重篤な病気によるものだ。本人や家族の死亡により手続きをすることができなかった場合や、肉体的、精神的に動く事がままならず、助けてくれる人がいなかった場合などだろう。また、天変地異により書類や記録が失われ、その回復に時間がかかった、あるいは戦争や内乱に巻き込まれたといった理由も考えられるだろう。 こうした理由は、どうしようもなかったと思えるものの、ほとんどの場合はForm 3520の提出義務があることを知らず、何もしていなかったと言うのではないだろうか。 「知りませんでした。ごめんなさい。」と言うしかない事は合理的な理由となるのだろうか。子供の場合はそうかも知れないが、大人の場合にはそうも簡単にはいくまい。一生懸命に調べたがわからなかった、普段から適正に申告を行っており、未払いの税金もなく、いつもすみやかに対応していると言えれば、IRSの印象も多少は良くなるかも知れない。 ケースごとに事情が異なり、IRSの担当者ごとに判断が異なる現状では、明確な一線を引くのは難しいだろう。同じようなケースである人がOKで、別の人はダメということでは公平性が失われる。IRSの立場としては「法を守らないことに対する言い訳はない」となってしまうかも知れない。 確かに、フォーム3520の提出遅延にIRSは機械的なペナルティ処理をしないと明言しものの、合理的かつ正当な理由を主張することが残っている。雲間から太陽が差し込んでも、雲一つない青空ではない。確実にForm 3520を提出することが肝心だ。

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