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2026.01.11
所得税

年をまたぐ給与

2026年1月5日に日本から米国へ入国したとする。日本で働いた2025年12月分の給与が、1月5日に日本の口座へ振り込まれた場合、この給与は「2025年所得か、2026年所得か」という疑問が生じる。国境を超える場合、年またぎ給与は直感と税法上の扱いが混乱しやすい。 米国税務では、「どの課税年の所得か」を確定し、「連邦税で課税されるか」「州税でどう扱われるか」を検討することになる。 1.年分判定 ― 現金主義が出発点 米国の個人所得税では、原則として現金主義が採用される。所得は「いつ働いたか」ではなく「いつ受領したか」により課税年度が決まる。したがって、2025年12月勤務分の給与であっても、入金日が2026年1月5日であれば、米国税務上は2026年度の所得となる。 2.年分が2026年でも、連邦課税は自動ではない もっとも、2026年所得と判定されても、直ちに米国で課税されるとは限らない。 非居住者から居住者へ移行する年(dual-status year)では、受領時点の居住ステータスが課税権を左右する。 米国外源泉で、米国内事業と実質的関連のない所得について o 非居住者期間中に受領 → 課税なし o 居住者期間中に受領 → 非居住者期間に稼得されたものであっても課税対象になる 3.「受領日」と「居住開始日」の前後関係 1月5日に入国・移住している以上、原則的な居住開始日は1月5日である。その受領時点で居住者か否かは、その年の居住者判定に依存する。 居住者として扱う場合: 1月5日を居住開始日(Residency Starting Date)とするなら、同日の入金は「居住者期間の所得」となり、米国で申告対象。 非居住者として扱う余地: 入金が「入国手続き完了(=居住開始)の前」であれば、非居住者期間の国外源泉所得として除外できる可能性がある。 4.市民権・グリーンカード保持者の場合 市民権保持者やグリーンカード保持者は、居住地に関係なく、原則として常に全世界所得に対して米国連邦税が課される。そのため、日本勤務分給与であっても、引っ越し時期とは無関係に連邦税の課税対象となる。 5.州税の取り扱い 州税は連邦税ほど一律ではないが、一般的に以下の傾向がある。 居住者期間:原則として全世界所得課税 非居住者期間:州源泉所得のみ課税 という枠組みを採りつつ、配分規定を設けている。 多くの州では「その州に居住している期間に稼得した所得を課税対象とするため、その州に入る前の日本勤務分給与については、州税の申告対象から除外できるケースが多く見られる。 年またぎ給与は、年分・ステータス・源泉地・連邦と州の二層構造を意識することが大事だ。

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2026.01.04
その他

2025年排他的市民権法案

2025年12月、モレノ上院議員が提出した「Exclusive Citizenship Act of 2025」(2025年排他的市民権法案)は、従来認められてきた二重国籍、すなわち米国市民と他国市民権の同時保持を事実上禁止するものだ。 1. 法案の概要と背景 この法案は、米国市民権と他国市民権の同時保持を原則禁止し、主に次のような規定を含んでいる。 同時保持の禁止:米国市民権と他国市民権を同時に保有することを認めない。 施行と対応措置:法律成立後180日後に施行され、既存の二重国籍保持者には1年以内に外国籍または米国市民権のいずれかを放棄するよう求める。 猶予期間後の措置:期限内に外国籍を放棄しない場合、米国籍は自発的放棄とみなされる。また、施行後に自発的に外国籍を取得した場合は、直ちに米国籍を喪失する。 これにより、従来の二重国籍容認という枠組みが大きく転換される可能性があり、国籍の選択が個人の生活に大きな影響を与えることが懸念される。 2. 対象者と法的影響 米国で生まれ、他国市民権も持つ二重国籍者(例:米国市民+日本国籍) 米国市民と外国人の親を持つ外国生まれの二重国籍者 外国人と結婚し、配偶者の国法で自動的に外国籍を取得した米国市民 海外で帰化して二重国籍となった米国市民 これらの規定により、法的地位の再構築が求められ、各個人が国籍の選択を迫られる可能性が生じる。 3. 日本人および日米二重国籍者への懸念 特に日本国内に居住する米国市民や日米二重国籍者にとって、この法案が成立した場合の主な懸念は次の通りだ。 Exit Tax(出口税):日本在住の米国市民が米国籍喪失とみなされた場合、Exit Tax が適用される可能性がある。不動産、株式、退職金、保険などの保有資産が仮想売却課税の対象となる。 贈与・相続税への影響:米国籍の喪失により、贈与・相続における税負担が増加し、家族にも経済的な負担が及ぶ。 移動や就労の制限:米国籍を喪失すると、米国内への居住や就労にはビザが必要となり、選挙権や一部の公的給付、職業資格の取得など、米国市民に限定される権利を失う。生活設計全般の見直しが求められる。 これらは、日米間で生活している家族にとって、教育、医療、保険、相続、資産管理といった複数の側面に影響を及ぼす。 4. 税務・資産管理の見直し 法案が成立した場合、米国市民としての全世界所得に対する申告・納税義務が改めて問われる。 米国関連資産の整理:IRA、401(k)、米国不動産、株式など、米国関連の資産について、Exit Tax を含めた見直しが求められる。 税務コンプライアンスの徹底:Covered Expatriate に該当する可能性があるため、FBAR、FATCA、所得税申告の適正な履行が重要になる。 これらは、長期的な資産管理や生活設計におけるリスクを最小限にする対策となる。 「Exclusive Citizenship Act of 2025」は、米国における二重国籍の従来の容認枠組みを根本的に変えうる法案だ。現時点では成立しておらず、従来の二重国籍容認の枠組みは維持されている。今後の動向を注視し、税務・資産管理の見直しや適切な生活設計の調整を行うことが大切だ。

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2025.12.28
遺産税・贈与税

すべてを妻に:遺言だけでは不十分な場合

アメリカで「すべての財産を妻に相続させる」と遺言書に記載していても、実務上、必ずしもすべての財産が妻に渡らないことがある。 ​その代表的な理由の一つが、IRAや生命保険等における受益人指定(beneficiary designation)の扱いである。 ​1. 受益人指定は遺言より優先される IRA・401(k)・生命保険・一部の銀行・証券口座などは、契約に基づき、受益人指定によって承継先が決まる「非プロベート資産(non‑probate assets)」と位置付けられる。 ​これらの資産は、原則として遺言やプロベート(検認裁判)を経由せず、金融機関等が「死亡時に有効な受益人指定フォーム」に従って支払う義務を負う。 ​そのため、遺言で「IRA を妻に相続させる」と書いていても、IRAの受益人指定が前妻や第三者のままであれば、金融機関は、原則として指定された受益人に支払うことになる。 ​2. 離婚しても自動的に変わらない場合が多い 離婚しても、IRAや一部の退職年金等の受益人指定が自動的に無効になるとは限らず、州法・連邦法・契約条件によって取り扱いが異なる。 ​離婚判決や合意書に「受益人を変更する」旨を定めていても、当人が実際に受益人指定フォームを更新しなければ、前配偶者が契約上の有効な受益人として扱われる可能性がある。 ​3. 死亡後の実務上の取り扱い 被相続人の死亡後に、「遺言には『妻にすべてを渡す』と書いてあるので、前妻に支払うべきではない」と主張しても、多くの場合、金融機関は有効な受益人指定に従って支払う。 ​遺言とのギャップが生じた場合、その調整は相続人・利害関係人間の問題とされ、裁判所も、詐欺・強要・無効な署名等の特段の事情がない限り、受益人指定による権利を覆すことは容易ではない。 ​4. 予防的に行うべき見直し こうした事態を避けるためには、以下のようなライフイベントのたびに、IRA・401(k)・生命保険・年金・投資口座等の受益人指定を定期的に見直すことが重要になる。 ​結婚・離婚・再婚 子や孫の誕生・養子縁組 受益人として指定していた人の死亡・大きな事情変更 「すべてを現妻に承継させる」という設計にしたいのであれば、各口座の受益人を現妻に変更し、必要に応じて第二順位(contingent)の受益人も整えておく必要がある。 ​前妻や第三者に IRA・401(k)・生命保険等を残すのが本来の意図であれば、そのように指定を維持しても差し支えないが、遺言書や受益人指定が古いままで現時点の希望と合致していない場合には、速やかな修正が不可欠である。 ​年末の「大掃除」に合わせて、財産目録や遺言書とともに、各口座の受益人指定を改めて確認することは、将来の紛争を防ぎ、家族の負担を軽減するうえで意味のある作業と言える。

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2025.12.21
その他

2025年分申告で還付金がさらに遅延する可能性

2025年9月30日以降、IRSは個人納税者向けの紙による還付小切手の発行を段階的に廃止する。これは、大統領令14247(Executive Order 14247)に基づく「Payment Modernization」施策の一環だ。 還付金は原則として、銀行振込またはその他の電子送金方法により支払われる。したがって、2025年分以降の申告では、還付を受けるために還付先の銀行口座情報(routing numberおよびaccount number)の記入が標準となる。 電子化を推進する3つの理由 IRSが還付金の電子化を急ぐ背景には、以下の理由がある。 安全性:紙小切手は紛失、盗難、改ざん、遅延などのリスクが高い。 スピード:電子申告と銀行振込の組み合わせで還付処理が迅速に行われる。 コスト:電子支払いは、印刷、郵送、処理にかかるコストが低く、政府と納税者の双方にとって効率的である。 なお、申告内容自体は変更がないが、還付の受取方法のみが電子化される方針となる。 銀行口座情報の記入が必須 2025年分(2026年提出)の申告から、還付を受ける場合、銀行口座情報欄を空欄のまま提出することは推奨されない。還付を受けるためには、申告書に正確なrouting numberとaccount numberを記入し、direct deposit(電子振込)を選択することが必要となる。 口座情報なしの場合の推定される流れ IRSが還付金額を確定する。 口座情報がないため、追加の銀行情報提供を求める通知が郵送される。 約30日以内に回答があれば、還付方法が電子払いに切り替えられる。 回答がない、または電子払いが困難な状況(hardship)と判断された場合に限り、例外的に紙小切手等での対応となる。 このプロセスにはかなりの時間がかかるため、IRSの内部処理や判断によっては還付が大幅に遅延し、1年以上の遅れが生じる可能性もある。 日本在住者が直面する課題 日本に居住する納税者にとって、本変更は特に大きな影響を及ぼす。還付を受け続けるためには、実質的に米国の銀行口座が必要だが、これを用意するのは容易ではない。日本の銀行口座を記載しても還付金は振り込まれない可能性が極めて高く、選択肢は非常に限られる。 2025年申告に向けた準備 Payment Modernizationに伴い、2025年分の申告では下記の点に注意が必要である。 米国の銀行口座を事前に用意する。 還付金が受け取れない場合の対応策(翌年への繰越など)を検討する。 その他、解決策があれば事前に準備する。 これらの対策を講じ、申告書作成時に正確な口座情報を記入することで、還付の遅延リスクを最小限に抑えることが求められる。

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2025.12.14
その他

USPS消印ルール変更(2025年12月24日施行)

2025年12月24日から郵送でUSPSは消印ルールを変更する。消印は郵便物をUSPSが所有していた日を示すが、必ずしも実際の投函日と一致しない点を明確化する。これがメールボックス主義に微妙な影響を与える。 メールボックス主義への影響 現状では、申告書や納付金が期限後にIRSへ到達した場合でも、「USPSの消印日」が期限内であれば、その消印日をもって提出日または納付日とみなすメールボックス主義となっている。しかし、今回の変更では次の問題が生じる可能性がある。 消印日と投函日の乖離 物理的な投函日は期限内であっても、処理センターでの機械的な処理により付与された消印が期限後となるケースが増える可能性がある。 具体的な例 納税者は 4月15日(申告期限)夕方に青いポストへ Form 1040 を投函 夜間〜深夜にかけて集配局が回収し、トラックで処理センターへ輸送 処理センターに到着後、大量の郵便物がまとめて機械処理され、そのタイミングで日付付きの機械消印が付与される このケースでは、納税者は期限内に申告書を提出したにもかかわらず、消印日が翌日となり、法律上は期限後の提出と判断される可能性がある。週末や祝日を挟む場合、この差はさらに大きくなる可能性もありえる。 影響 IRSは、条文に従い「消印日=提出日」と解釈するため、本来の投函日と乖離が生じた場合、申告書や納付金が期限後とみなされ、延滞ペナルティ・利息が発生するリスクが高まる。また、修正申告や還付請求における時効判断にも影響が生じる恐れもある。 日本発国際郵便とUSPSの関係 日本から発送される国際郵便は、日本側で通関・航空輸送された後、アメリカ到着時にUSPSに引き渡される。メールボックス主義は「差出先と差出人」を基準に適用されるため、USPSの取扱いの有無だけで判断されるわけではない。これを避けるには、次の民間配送サービスを考えることになる。 民間配送サービスの選択肢 FedEx、UPS、DHLなどの民間配送サービスは、タイムリー・メーリング(期限内投函)をタイムリー・ファイリング(期限内提出)として認められる。

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2025.12.07
遺産税・贈与税

ホリデーシーズンの贈与

ホリデーシーズン、特にクリスマスは、家族や友人への贈与が根付いた文化である。この温かい習慣の裏では、米国税務では贈与税のルールが適用される。国際化が進展する現代において、このルールは米国居住者に限らず、日本在住の米国市民やグリーンカード保持者など、国境を越える人々にとっても重要な意味を持つ。幸いなことに、クリスマスプレゼントのような日常的な贈与の多くは非課税となるが、税務上の影響の理解は大事である。 贈与税の基本概念: ホリデーシーズンにおける贈与では、以下の3点の概念を把握することが重要である。 課税主体:誰が税金を負担するか 米国税務の場合はギフトを贈与する者(贈与者)が課税される。 日本税務の場合はギフトを受け取る者(受贈者)が課税される。 この課税主体の違いは、日米間で財産を移動させる際の最も重大な注意点である。 年間非課税贈与枠(Annual Exclusion) 受取人1人につき年間最大 $ 19,000 (2025年時点)が非課税の限度額である。たとえば、子供が3人いる場合、子供1人あたり $ 19,000の贈与であれば、合計 $57,000まで非課税となる。夫婦が共同で贈与する場合、受取人1人につき最大 $ 38,000まで非課税で贈与可能である。子供が3人いる場合はこの3倍となる。 クロスボーダーの配偶者贈与:国籍による影響 米国市民同士の場合 米国市民同士の配偶者間では、無制限婚姻控除により贈与税の課税対象外で、配偶者への贈与は無制限で行える。 米国市民から非米国市民配偶者への贈与 無制限の婚姻控除は適用されない。その代わり、2025年の年間非課税枠は $ 190,000(約30百万円程度)となる。この額を超える贈与は課税対象となり、Form 709により申告し、贈与者の生涯免税額(2025年 $ 13,990,000 )から控除される。 日本人(米国非居住者)から米国市民配偶者への贈与 この場合、無制限の婚姻贈与免除は適用されず、一般的な年間贈与免除額(2025年 $ 19,000)のみが非課税枠となる。ただし、課税対象は米国内に所在する不動産、株式、有形財産に限定され、日本国内資産の贈与は米国贈与税の対象外とされる。 日米クロスボーダー贈与における注意点:二重課税の可能性 グリーンカードホルダーは基本的に米国市民同様に扱われるが、居住者判定にあたっては実態が重視され、単なるカード保有だけでは不十分とされることもあり得る。 日本に居住する場合、米国の贈与税だけでなく、日本の贈与税も適用される点に留意すべきである。具体的には、年間基礎控除額(110万円)を超える贈与は、日本側で課税対象となる。米国で非課税とされた贈与が、日本の税法により課税される可能性があるため、国際的な贈与については両国の税制を十分に理解することが求められる。

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2025.11.30
遺産税・贈与税

将来贈与

将来贈与とは、受贈者がすぐに資産を自由に使用できず、将来的に受領できる権利として受け取る贈与を指す。受贈者が即時かつ無条件の権利を取得せず、特定の条件や時期が到来して初めて受益権が発生する贈与形態を指す。たとえば、子どもや孫が、大学入学後に授業料・生活費として使用できるように、1000万円を贈与するというような事例が相当する。 基本的な特徴 • 受領時期の遅延: 受贈者がすぐに権利を行使できず、将来時点で実際に受領できる贈与だ。 • 不確定性: 口約束のような曖昧な合意では、贈与者や受贈者がその将来時点まで存命しているか、財産が存在しているか、さらには受贈者が実際にその権利を行使するのかなど不確実なため、単なる意向表明に過ぎない恐れがある。 • 支配権の継続: 贈与者が受益者を自由に差し替えることが可能な状況や、支配権を完全に放棄していない場合は、贈与が「完成」していないとみなされ、贈与税の課税対象とならない。 アメリカ連邦贈与税 アメリカでは、将来贈与は、不可能ではないが、明確かつ法的拘束力のあるものでなければならない。 • 正式な文書による権利の移転: 将来贈与は、口約束のような曖昧な約束ではなく、取り消し不能な信託契約書などによって正式に権利が設定される必要がある。これにより、贈与者は取り戻しや支配を行う権限を完全に放棄し、贈与が「ガチガチの確定状態」となる。 • 贈与の成立と課税タイミング: 贈与財産が取消不能信託に移された時点で、受領権が未来に限定されていたとしても、贈与者がもはやその権利を取り戻すことができないため、贈与は成立したとみなされる。この場合、税務上の申告はForm 709を用いて行われる。 • 税額計算上の違い: 完全な将来贈与は、現時点での受領権移転として認識される一方で、年間の非課税贈与枠$19,000は適用されない。現行のルールでは、受領権が現時点で行使可能な「現在贈与」の場合にのみ、年間非課税枠が利用できる。将来贈与に対しては生涯控除(2025年では約$1,399万)のみが適用される仕組みとなっている。 国際的な視点:日本人贈与者の場合 もともと、贈与や相続の場合、アメリカの税金は財産をあげる人(贈与者/被相続人)に課税を受け、日本では財産をもらう人(受贈者/相続人)が課税を受けるので全く逆となる。 贈与者が日本に居住している日本人で、かつアメリカ市民権やグリーンカードを有していない場合、贈与する財産がアメリカ国内の「有形資産」(不動産など)に該当しない限り、アメリカの贈与税は適用されない。Form 709の提出も不要だ。しかし、受贈者がアメリカの市民、永住権保持者(グリーンカード保持者)、または居住者である場合、非居住外国人からの贈与額が年間合計 $100,000 を超えると、受贈者には情報開示のためのForm 3520による報告義務が発生する。 まとめ アメリカの税務では、将来贈与の成立には契約書等による明確な権利移転が必須である。受贈権が将来に限定される場合であっても、贈与者が一切の支配権を放棄している状態であれば、法的には既に「贈与」が成立していると解釈される。さらに、将来贈与はその特性上、非課税贈与枠は適用されず、贈与税の課税方法も現時点での贈与とは異なる。 国際的な面においては、贈与者がアメリカ非居住外国人である場合、アメリカに存在しない財産にはアメリカの贈与税は適用されない。このためForm 709の提出は不要だ。ただし受贈者はForm 3520の報告義務($100,000超)を負う。

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2025.11.23
その他

アクシデンタル・アメリカン

アメリカは市民権を基盤とした課税制度を採用しており、出生により自らの意思に反して米国市民権を取得する場合がある。こうしたケースの人々を一般にはアクシデンタル・アメリカンと呼ぶ。意図せずに米国市民になることから、米国市民としての税務上の義務やその他の法的義務に直面することになってしまう。 このような状況にある方が日本に居住し、子どもがいる場合、その子どもにも米国市民としての義務が発生する可能性がある。 海外で生まれた子供の米国市民権 米国の市民権取得に関する法的枠組み($8;U.S. Code;§;1401(g)$)においては、以下の条件が定められている。 出生地外での市民権取得 子供が米国領土外で出生し、一方の親が外国籍、もう一方が米国市民である場合に、市民権が自動的に与えられる。 物理的滞在要件 米国市民の親は、子供の出生前に合計5年間(そのうち少なくとも2年間は親が14歳以降の期間)米国に物理的に滞在していることが求められる。 例外規定 1952年12月24日以降に生まれた者については、親が米軍で勤務していた場合、または米国政府や国際機関に勤務していた場合など、特定の海外在住期間を滞在要件に算入できる例外が認められている。 米国市民としての継続的義務とリスク これらの規定に合致するかどうかが重要だ。要件を満たしながら米国市民として登録していない場合、一時的に煩雑な手続きを避けられるかもしれない。しかし、法的には米国市民であり続けるため、米国税務当局の管轄下に置かれ、将来発覚した際のペナルティというリスクを背負うことになる。 市民権放棄による対応策 市民権放棄は、子どもが将来的に複雑な税務報告義務から解放され、米国市民権に基づく義務を終了させるための選択肢となる。18歳以上であることや脱税目的でない証明が必要であり、出国税の対象となることもある。 政策変更と最新の動向 近年、出生地主義に関して議論が続いており、今後は出生による自動市民権付与の在り方が見直されるかもしれない。現行法では変更されておらず、司法判断でも合憲性が維持されている。仮に将来、政策変更が試みられても、憲法改正なしでの実現は困難と考えられる。

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2025.11.16
所得税

なぜMFJ(夫婦合算申告)を選択するのか

多くの夫婦はアメリカの申告でMFJを選択しているが、結婚していてもMFS(夫婦個別申告)という選択肢もある。MFJを選ぶ主な理由は、税制上の優遇を受けられる可能性がある点にある。 日本在住の国際夫婦の場合 日本に住んでいる夫婦がアメリカの申告を行う場合、グリーンカードを保持している間はアメリカへの申告義務がある。年齢を重ね、万が一配偶者に何かあれば、自分がアメリカの申告をすべて行わなければならない。今まではアメリカ市民である配偶者に任せていた申告を、突然自分が担うことになる可能性がある。 グリーンカードを持っていれば、いつでもアメリカに戻ることはできる。しかし、50歳、60歳となり、日本で生活基盤を築いた家族が日本の生活を捨てて新たにアメリカで暮らすことは容易ではない。日本に住むグリーンカード保持者と米国市民の夫婦の場合、グリーンカード保持者には毎年米国への申告義務があり、これが負担となる。 グリーンカード放棄の影響 グリーンカードを放棄すると、MFJによる税制優遇(標準控除の増加など)を失う可能性がある。標準控除を一人分使えなくなるため、例えば2025年の標準控除額は15,750ドルである。実効税率を20%とすると、税額は3,150ドル減少する。為替レートを1ドル=150円とすれば、約50万円近くの税額軽減効果がある。これは大きな影響であり、グリーンカードを放棄しないよう勧められることもある。 非米国市民配偶者のための選択肢 米国税法には、非米国市民の配偶者を米国居住者として扱える特例がある。これを利用すれば、グリーンカードを放棄してもMFJで申告でき、標準控除のメリットを享受できる。 この選択の重要なポイント 税制優遇の継続:標準控除などの優遇を引き続き受けられる 選択の継続性:一度選択すると、特定の終了条件に該当するまで有効 終了条件: 配偶者の死亡 離婚または法的分離 夫婦とも米国居住者でなくなる 明示的な撤回 注意点 再選択不可:この選択を終了すると、同じ夫婦では二度と選択できない 社会保障税:所得税上は居住者扱いだが、FICA(社会保障・メディケア税)では非居住者扱いのままとなる この選択により、グリーンカードを放棄しても税制上の優遇を受けつつ、米国申告義務から解放される可能性がある。比喩的にいえば、この選択をすれば今までと同じように「バスに乗り続ける」ことができる。しかし、いったんバスを降りてしまえば、再び同じバスに乗ることはできない。目的地まで何度もバスを乗り降りすることは許されない。

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