子供税額控除を取るのは当たり前だと思うのだが、日本からアメリカに子供を連れて赴任する場合などはハードルが高い。 何が問題かと言えば社会保障番号だ。 子供の税額控除や追加子供税額控除を申請するには、子供が社会保障番号を持っていることが前提になっている。しかし、EビザやLビザ等でアメリカに滞在する人の子供は、アメリカで働くわけではなく社会保障番号は難しい。 子供が社会保障番号を取得できない場合、唯一の代替手段は、個人納税者番号(ITIN)になる。これはもともと社会保障番号を持たない人が、所得を申告する場合にITINを用いることになっている。しかし、学校に通っている子供に申告をすべき所得はない。控除を取るためにだけITINを申請するのはハードルが高い。 仮に子供がITINを取れたとしてどうなるか。 IRSのQ&A社会保障番号 (SSN) ではなく個人納税者番号 (ITIN) を持つ子供に、子供税額控除を取ることができますか?IRSの答えいいえ、ITIN を持つ子供に子供税額控除を取ることはできません。その子供が社会保障番号 を持っている必要があります。 ITINでもダメだと言う。 ITINを持っている場合、その他扶養家族税額控除を取る道は残っているが、これは最大で1人あたり500ドルの控除に過ぎない。これは非還付型であるため、税額を超えた場合、超過分を還付として受け取ることはできない。 子供税額控除の1人あたり最大2,000ドルに比べてはるかに少ない額だし、こっちは還付金として受け取り可能だ。この制限があるのでその他扶養家族税額控除はあまりメリットがない。 それでも、ITINを取得しようとすると、申請のプロセス自体が複雑であり、書類の手間や処理の遅延が発生しやすく簡単ではない。投入する時間や労力、ストレスと得られるものが見合うのか容易ではない。
IRSは申告書が提出されていないと、申告をするように手紙で通告をする。この通告に応じない場合、さらに申告書を出すように通告をする。それでも応答がない場合、IRSは税金の申告しなかった人に代わって、その人の申告書を作成することがある。 申告書を作成しなくても、IRSが代わりに申告書を作ってくれると楽でいいではないかと思ってはいけない。 IRSが作る申告書は、フォームW2またはフォーム1099からの納税者に関する情報と、IRSが第三者から取得できる他のすべての情報を使用する。 IRSがわかるのは所得に関する情報だ。Form W-2にしてもForm 1099や株式の譲渡の情報は、個人に対して発行されている。同時にIRSにも並行してその情報が提供されている。所得に関する情報をIRSはかなりわかる。 問題は税額控除やコスト等をIRSがわかっているわけではないことだ。これは大変だと思ったのは株式のキャピタルゲインの計算だ。キャピタルゲインは、当然のことながら譲渡金額から取得額を差し引いて譲渡損益を計算する。IRSはその人が3年前・5年前にその株をいくらで購入したかと言う情報を取得額に入れてくれるとは限らない。 すると譲渡額が即ち100%利益となってしまう。譲渡額が$300,000額で取得額が$350,000だとすると譲渡損失が$50,000発生する。当然このケースでは損失が出ているので税額は発生しない。ところが取得額はゼロとされると譲渡額の$300,000が利益となってしまう。 IRSが購入情報を持っていない場合、売却益が短期譲渡所得として扱われる可能性も否定できない。短期譲渡所得は通常の所得税率が適用されるため、最大37%の税率が適用されることがある。 例えば、$300,000が短期譲渡所得として扱われ、最高税率の37%が適用される場合、税額は約$111,000になる。譲渡損失で税金が全く発生しないのに、逆にこれだと$111,000を払うように言われてしまう。 納税者には、IRSがSFRを提出した後、IRSが徴収しようとしている税額に対して上訴して、納税申告書を提出する権利がある。ただし、申告書の提出期限は30日であるため、時間が限られている。 これは大変だと言う前に、進んで自主的に申告することが重要だ。
アメリカの歴史を見てみると、ちょうど今から100年前に贈与税が初めて誕生している。20世紀初頭、アメリカは歳入の確保と公平な税制を目指していた。第一次世界大戦の戦費調達もあり、遺産税は1916年に導入された。しかし、富裕層は生涯にわたって資産を贈与することで課税対象となる遺産を縮小し、多額の税務上の負担を回避することができた。 これを防ぐために1924年に贈与税が導入された。即ち、贈与税は、遺産税を補完するように設計されており、財産の移転が生前か死後かに関わらず、課税の対象となるようにした。 贈与税は政治的・経済的な圧力で1926年に廃止された。しかし、廃止は生涯贈与による税の回避につながるため1932年に贈与税を再導入している。 再導入以来、贈与税はさまざまな変更と調整を受けてきた。1976年には贈与税と遺産税を統合し、生涯贈与を通じた遺産税の回避を制限している。 贈与税 は生きている間、遺産税は死後での財産移転だが、人の一生で財産を移転することに生涯控除を使う。この控除が2024年では$13,610,000($1=140円で約19億円)あり、ほとんどの人は事実上、贈与・相続では税金がかからない。アメリカは財産を移転する人が課税され、日本は財産をもらう人に課税される。 しかしながら、これはアメリカ市民の控除だ。日本に住んでいるアメリカ非居住者の方が贈与を行う場合は話が違う。贈与においては2024年では年間非課税贈与額は$18,000でこれを超えると課税を受ける。 贈与税と遺産税の通算で一生涯いくら控除ができると言う形はなく、死亡時に$60,000までの控除しか使えない。仮に遺産の総額 $100,000なら、免除額$60,000で課税対象額は $100,000 - $60,000 = $40,000だ。適用税率22%で遺産税額$8,800となる。 アメリカ市民には寛大でも非居住外国人にはそうではない。
日本に帰国して日本の居住者となっている方が、アメリカの申告書を提出する時に、アメリカの知り合いの住所を使って申告をして良いだろうかと質問さる。アメリカでのことで、なんとなく縁遠いと言うか、判断がつかないのでそう思うのかも知れない。 日本に住んでいるのに、アメリカの住所を使用することは、不具合を引き起こす可能性がある。 困って相談されたケース: ① 州税の申告と支払いを求められた。日本に住んでいる人は、実はその州に足を踏み入れたことがない。その州での所得もない。普通ならば、その州の申告とは無縁だ。しかし、その州の住民として住所を記入しているので、全世界所得を申告しなさいと言われた。 ② Form 2555において、外国(日本)で働いて得た所得は2023年ベースだと12万ドルの控除が取れる。条件としては330日以上、外国に居住していなければならない。実際にこの控除を取ることができるのにも関わらず、外国に居住している人が日本に330日以上居住しているのは説明がつかず、せっかくの控除を使えない。 ③ 申告後、IRSからの還付小切手や書類はアメリカの住所に送られる。税額の追加払いや書類の追加提出を求められることもある。30日以内に回答を求められても、書類が転送されないので本人は全く分からない。自分の手元に書類が届いた時には回答期限が過ぎてしまっている。書類をタイムリーに確実に受け取れるかどうか何とも言えない。結果的にペナルティが雪だるまということもあり得る。 実際に居住していない州で申告することは、税務上の虚偽申告と見なされる可能性があり、将来的な税務調査のリスクがある。 このケースを立ち位置を変えて考えてみたらどうだろう。仮に日本に住んで日本の確定申告書を提出する人がロサンゼルスやニューヨークの住所で日本の税務署に申告すると置き換えてみる。そもそも不自然で不可能と思うだろう。少なくとも頭の中では注意信号が灯り、赤信号がともってもおかしくはない。 アメリカの州の住所を使って申告をする場合、それなりの理由があってのことかも知れないが、慎重な判断が必要だ。
亡くなってしまったらすべてそれでお終い。何もしたくてもすることができない。行為能力がないのだから、はいさようならとなるのだろうか。そんなことはなく遺産管理人や相続人が、亡くなった人の代わりに申告義務を果たすので、そうはいかないだろうと考えるだろう。 Form 8854(出国税)は、米国市民や米国長期居住者が市民権や永住権を放棄した場合に、資産や税の情報をIRSに報告するためのフォームだ。このフォームは通常、自発的な市民権放棄を原因として提出される。 アメリカ市民が死亡した場合、死亡はアメリカ市民権の喪失の事由となる。市民権を喪失したのだから亡くなった方は、出国税の対象と言えるのだろうか。 死亡: 自然に市民権を失う。これは出国とは異なり、故人が意図的に行うものではない。市民権放棄: 本人が生前に意図的に市民権を放棄する。 死亡による市民権喪失は自然なプロセスだ。しかし市民権放棄は本人が生前に意図的に行うものであり、出国税の手続きが必要だ。 結果的に市民権の喪失は同じでも、生前に自発的な意図のもとに放棄を行う場合と、死後では話が違うということにならざるを得ない。 すると亡くなった場合はほとんどの場合、出国税の提出を要さないだろう。 しかし死亡の場合でも、死亡前に市民権放棄の手続きを完了して、死亡によって出国税が未完となった場合だ。IRSはForm I-407が提出され、その後の手続きがないために税務上の処理としてForm 8854の提出を求めて来るかもしれない。状況によっては遺言執行者がForm 8854を提出する義務が発生することもあり得ると言う事だろう。 出国税に関しては、亡くなってしまったら、珍しくはいさようならかも知れない。しかし、基本中の基本のForm 1040は亡くなったから、決して何もしなくても良いということにはならない。遺産管理人や相続人が、亡くなった人の代わりに申告義務を果たすことが鉄則だ。
米国で生まれた場合、自動的に米国市民となる。米国社会の一員として果たさなければならない義務が発生する。米国の憲法や法律を守るのは当然として、税金の申告納税を行わなければならない。 しかし、幼児期に日本に帰国し、それ以降米国に足を踏み入れたことがない人もいるだろう。米国への申告義務が全く頭になく知りませんでしたということもあり得る。 交通ルールで考えると、私たちは赤信号では交差点を渡ってはいけないとみんな知っている。どうして知っているのだろうか。 教育: 親から「赤信号では渡ってはいけない」と言われるし、幼稚園、小学校でも教わる。社会体験: 信号無視をして事故を起こしたり、警察官に注意されたりすることで、そのルールを守る重要性を身をもって体験する。法制度:自動車の免許を取れば、 道路交通法で、赤信号で進行が禁止されていることが常識的にわかる。 社会生活の中の様々な場面を通じて、交通信号のルールを学び、それを守る行動をとる。 米国に住んでいれば、同じように税金が認識される。 教育:税金は、民主主義社会を支える重要な要素の一つで、税金は、社会を支える基礎となる。社会科の授業で税金がどのように集められ、どのように使われているかについて学ぶ。社会体験:買い物をすれば売上税がかかる。アルバイトをすれば、給与から税金が差し引かれることを実感し、税金について否応なく理解を深める。 学校教育、社会体験等を通して多角的に認識する。 さて、米国では市民権をベースに申告納税制度ができている。たまたま米国で生まれただけの人でも、全く同じく普通の米国な市民だ。ただ、日本に住んでいて米国に足を踏み入れたことがほとんどなければ、米国の社会体験もなく、米国の納税義務は縁遠いだろう。 しかし、米国から見れば、米国の申告義務を知らなかったことを免罪符に、申告から除外することはできない。一般の米国市民が納税義務を知らないから、税務申告をしないと言うことに歯止めをかけられなくなる。これは足元から社会の基盤を崩壊させかねない。 いろいろ気の毒な事情があっても、米国市民であるならば、最後はきちんと米国の申告の義務を果たしてくださいとしか言いようがない。日本に住んでいる場合は、米国の申告を行ってもほとんど税金が発生しないことが多い。あまりその点は心配せずに、きちんと申告義務を果たしてくださいと申し上げたい。
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