申告書を作る入り口で困ってしまう事がいくつもあり得る。例えばデータが手元にないとか社会保障番号(SSN)や納税者番号(ITIN)がないとか、申告の第一歩が踏み出せない。 そうした中で、何と自分の名前でうまく行かないことがある。違う名前を記入するとか、ローマ字の綴りを間違える。社会保障カードの記載・グリーンカードの記載・預金口座の記載・免許証の記載・パスポートの記載・マイナンバーの記載等々で微妙に異なることもある。 名前が違う、綴りが違うと言うのは基準とのずれになる。では基準は何かと言えば社会保障カードが基準となる。この社会保障カード又は納税者番号通知ときちんと合っていないといけない。納税者、その配偶者、またはその子供の名前がそうした記録と一致しない場合、IRSは申告書を受け付けない。 結婚した時に名前が変わる。しかし、社会保障カードの情報は昔のままだ。結婚して姓を変えても、離婚してもそのままになっている。変更はSocial Security Administrationで行える。 電子申告なら、送信時に申告書が受理されないので間違いがすぐわかる。日本から電子申告ではなく紙での申告をすると郵便局等での発送が簡単ではない。お金もかかる。IRSに届いても、紙の申告書がいつ処理されるのかわからない。半年くらいたって、あるいは1年たってIRSから連絡をもらって、申告書を受理できないと拒絶される。一生懸命、何とか申告をしようと時間をかけても取り付く島もない。 気持ちをくじけさせないで、また同じことを繰り返す。処理をされる時は1年先、2年先になっているかも知れない。特に日本にいる人にとっては、一見簡単な事が容易ではない。余計な時間もかかり、エネルギーも注がねばならない。これだけでIRSはハードルを高くして、まるで申告を遠ざけているようにすら思える。 自分の注意で不必要な手間を避ける事ができる。申告書を作成する時には落ち着いて名前をチェックすることをお勧めする。
申告書を正確に作成して提出したはずなのに、申告書を出した後で、間違いや修正したい所を発見することがある。しまったと思う事があってもおかしくはない。 以前に提出した申告書を修正するためには、修正申告書を提出できる。たとえば、500ドルの還付の申告書を提出して還付を受ける。その後よくよく見たら、さらに300ドルの還付金があることがわかる。後日800ドル還付として修正申告書を提出し、追加の300ドルを還付してもらう。この場合は申告書としての記録は当初の500ドルの還付の申告書と、追加の300ドル還付の申告書の二つとなる。 これと同じ効果を持たせるために、申告書を差し替えることができないかと思う。つまり最初の申告書ではなく、後から提出した申告書だけを有効なものとさせる。 実はこれは可能だ。但し時間の制限がある。例えば今年の申告期限が4月18日として、2月とか3月に申告をしているとする。この4月18日の前なら、新しい申告書を提出して、そっくり申告書を取り換えることができる。申告期限の延長をかけて申告書を提出していれば、10月15日期限なので、その間いつでも申告書の取り換えが効く事になる。 還付金の修正で少額ならば、二度も申告書を提出してかえって面倒と思うこともあるだろう。何でそんなことをしなければいけないのかと思うかも知れない。それは確かにその通りで、少額の還付より面倒なことを避けたいと言う判断が優先しておかしくはない。でも納付の場合は、面倒だから税金を納付しないと言うわけにはいかない。 オリジナルの申告書を提出してそのままとしていると、後から変更ができない事がある。例えば夫婦合算申告をしていて、夫婦別々に申告をする方が良いと言う事がわかっても、一度、申告書を提出してしまうと夫婦別々の申告書は提出できない。 あるいはForm 8938を提出していなかったとか、Form 3520で日本の相続や贈与で、10万ドル以上の報告義務があるのに報告していなかった場合は、それゆえにペナルティの対象とされてしまう事もあり得る。 そこで、この差し替え申告書が有効となる。つまり、夫婦個別の申告書も再度提出できる。提出するべきFormを提出していなかったという事実も根こそぎ抹消してくれる。ペナルティを心配しているなら、申告期限までに、新たに差し替え申告書を提出すれば、この差し替え版がオリジナルとなり心配もなくなる。 しまったと言う事があれば、申告期限日の前ならば申告書を差し替えることができる。
アメリカの税務申告の観点の話だ。アメリカの居住者は全世界所得課税となる。居住者は市民権やグリーンカード等をベースで判断する。この基準に合えば、世界中どこに住んでいても基本的にはアメリカの税務上の居住者だ。 アメリカの申告をしなければならない人が、日本に住んでいるから日本の確定申告を行い、これで責任を果たしたと思っているかもしれない。しかしアメリカに申告をしていない。 さあ大変だと思っても、申告をする必要がない場合がある。病気やその他の理由で所得が申告基準に達していないこともあろう。所得額の基準で申告をしないことがある。 しかし、この基準に達していなくても申告をすべき時もある。一例がコロナの支給金を受給する時だ。申告をしなければ2020年$1,800と2021年$1,400をもらうことができない。2023年時点では、今から遡ってこの給付金をもらうことができる。 FBAR(Form 114)とFATCA(Form 8938)の情報申告も注意が必要だ。FATCAの申告要件は海外(日本)に住んでいれば口座残高が年末で20万ドル、期中では30万ドル以上だ。FBARは口座をすべて合わせて$10,000だ。 Form 8938は税務申告書の一部を構成する。所得が少なく申告書を提出しない人にとっては、口座残高が50万ドルだろうが100万ドルだろうがForm 8938を提出することはない。そうすると、これを提出しなかったからとしてもペナルティの対象ではない。 しかしFBAR(Form 114)は税務申告書とは別に提出する。FBARは申告書の一部を構成していない。単純に独立している。FBARは口座をすべて合わせて$10,000だ。となると、FATCAの申告基準金額よりもずっと小さいにもかかわらず、この申告だけは避けて通ることができない。しかも申告をしていなかったらペナルティもあり得る。 申告をする側から見ると何だかわかりにくい。
2023年2月28日、アメリカ最高裁判所は、FBARを故意ではなく提出しなかったことに対する上限10,000ドルのペナルティは、口座単位ではなく、報告ごとに計算すると決定した(ビットナー対合衆国)。 (経緯)ビットナーは2007年から2011年のFBARを報告していなかった。この5年間で問題となった口座数は全部で272件だった。その結果、IRSは2,720,000ドルの罰金(272口座×10,000ドル)を課した。 これに対してビットナーは、ペナルティは口座ごとではなく、毎年の報告に対して適用されるべきであると法廷に持ち込んだ。これならば、ペナルティは50,000ドル(5年×10,000ドル)となる。 地方裁判所はこれに同意し、ペルティは口座ごとではないとしたが、IRSは控訴し、二審は口座ごとにペナルティが計算されるとした。矛盾した判断が示されたことにより、最高裁判所で審理することになった。 (判決)米国最高裁判所は2023年2月28日火曜日、外国口座の外国銀行および金融口座(FBAR)を故意でなく提出しなかった10,000ドルの罰金は、口座ごとではなく、報告ごとに発生するという判決を下した。 FBARを報告していなかったことに対してのペナルティはどう計算されるのかについては、これで決着を見る事になった。しかし、賛成5対反対4というギリギリの判断だ。 シンプルに考えると、外国の口座を持ち、報告要件を満たす残高ならばFBARを提出する。口座がなくなれば報告はしない。その口座ごとに動いている。とすればペナルティは口座ごとではないかと言う見方もわかる。 マネーロンダリングや国際テロへの資金提供ならば、すべてのアカウントが報告される事が重要だ。非公開のアカウントごとにペナルティを課すことは理にかなっている。 通常のケースでは、それぞれの年を単位としてペナルティを計算すると言うのは歓迎される。年当たりのペナルティ10,000ドルは上限で、実際は個別の状況を勘案することになっている。適正に申告することが何よりも大事だ。
結婚することにより二人の人間が運命共同体として、あたかも一つのユニットとして生きていく。こうなると、夫婦としてそれぞれが所得を得ていたとしても、右のポケットにお金を入れても、左のポケットに入れても一つのユニットとしては変わりがない。 そこでアメリカの税法には、日本にない夫婦合算というファイリングステータスがある。申告を行う時になれば、二人で一つの申告書を作成すれば良い。なにも時間をかけて申告書をそれぞれの人間が提出する事もない。 昔から一人口は食えなくても、二人口は食えると言うわけではないが、標準控除をフルに二人分使えて税額控除を取る幅も広がる。 一方の配偶者に所得がないとか少ない場合で考えると、所得の少ない配偶者は申告も要さず、税額も発生しない。2022年分で言えば個人としての標準控除$12,950を捨ててしまっている。 ところが、夫婦合算での申告をすれば、二人の所得は合計で不変でも、標準控除が2倍となり、使える控除は$25,900となる。もしも、限界税率37%のケースなら$12,950の37%で$4,792($1=130円なら約60万円)税金が少なくなる。結婚がボーナスを与えてくれる。 片方の配偶者が単身赴任をしていて、例えば日本とアメリカにいるとしても夫婦の合算申告は可能だ。 ではファイリングステータスを後から変更して修正申告を提出できるだろうか。ありがたいことに過去3年以内の申告書ならば還付が可能だ。 申告書を提出する事は、納付するべき税金を支払う責務を持つことになる。夫婦であれば、一方の配偶者に、もしも仮に税金を支払う力なない場合は、もう一人の配偶者が支払うことを約している。これはIRSにとっては間口が広がる。 しかしながら夫婦合算で申告していたものを、夫婦個別の申告に修正することは認められない。夫婦個別にすることはその税金の支払いから除外することになりかねない。それは容易には認めますとは言えない。
先週、出国税(Form 8854)で救済措置があることを書いた。重複するがもう少し補足したい。 出国税の対象から救済があって外されるケースが2つある。1つは出生による米国と外国の二重国籍者であり、放棄日がある課税年度の前15課税年度で、10年以上アメリカの居住者ではなかった人だ。もう1つは、18.5才未満で出国する未成年者で、放棄前に10年以上アメリカの居住者で無かった人だ。救済措置が適用されると、従来申告書を提出しなかったことにペナルティを受けないし、税金の支払い(25,000ドル未満の場合)が免除される。 救済手続きプログラムの資格を得るには、次の資格基準をすべて満たす必要がある。 1 2010年3月18日以降に米国市民権を放棄した、または放棄する予定の人 2 米国市民または米国居住者としての申告書を提出したことがない。しかも申告書を提出しなかったのは故意ではない。過去に非居住者として申告書を提出した場合でも、対象たり得る。 3 出国時点前の 5年の平均所得税額が2022年ベースでは$178,000を超えていない。 4 出国時点の純資産は2,000,000ドル未満である。 5 出国前5課税年と出国年で、支払うべき税額が累積で25,000ドルを超えない。 6 対象6課税年度の申告書をすべて提出することに同意する。 基準を満たしていない場合は、この救済の資格がなく、それでも提出する場合、IRSは通常の処理で申告書を処理する。結果として、すべての税金、罰金、および利息に対して納付義務を負う。 FATCAは救済の要件だが、FBARの提出は救済の適格要件ではない。しかしFBARの申告要件に合致する場合は、FinCENにファイリングする必要がある。適格にFBARを提出した場合、IRSはFBARのペナルティを課さない。 もともと救済措置だけではなく、Form 8854の申告基準額を下回っていているからForm 8854を提出しなくても良いと考えると間違いだ。逆に、すべての基準値を下回っている事、適性に申告をしているとIRSに通知をして受理してもらうのがForm 8854だ。
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