Form 1040には電話番号とメールアドレスを入力する場所がある。下図の一番下だ。ここは入れても入れなくても、申告書の処理に影響を及ぼすことはない。 IRSが連絡を取る必要がある場合は、米国郵政公社の普通郵便を使う。 IRSから電話や電子メールで突然、お金や個人情報を要求されたら、すぐに頭の中で警戒アラームが鳴るはずだ。しかし、アメリカの申告に慣れていなかったり、日本にいて外国語のメールをもらうと判断が難しいことがあるかも知れない。 原則:IRS を名乗って電話や電子メール個人に連絡し、個人情報やお金を要求する場合は詐欺だと思って良い。 IRSは決して次のことをしない。① 電子メール、テキストメッセージ、またはソーシャルメディアで納税者と連絡を開始し、個人情報または財務情報を要求する。② 納税者に訴訟や逮捕の脅迫電話をかける。③ 電話、電子メール、またはテキストメッセージで、納税者の社会保障番号やID PIN を要求する。 Form 1040でなぜこの欄を設けるのかには理由がある。IRSが税務調査、徴税、犯罪捜査など特定のケースで個人に連絡する場合だ。申告をきちんと適正に行っている人には縁がない。その目的だとしても最初は必ず手紙での連絡となる。 Form 1040を記入しなければならないという場合、とにかく律義に丁寧に記入しようとする。もちろんそれが当たり前で、それにより被害を受けないことが理想だ。現実的にはきれいごとだけではない。 この欄を記入するかどうかは自由で、必ず記入しなければならないことはない。大事な個人情報で、これを盗み取られて詐欺に巻き込まれることを未然に防ぎたい。この記入が強制とならない限りは、元から記入しない事が安全だろう。
2022年分の申告を延長申請せずに、延長申請の申告期限の10月17日に申告をして、$400($1=150円で6万円)の税金を納付したとする。ペナルティ・金利は含んでいないので、IRSから後日、ペナルティ・金利の請求があるのは織り込み済みだ。 ペナルティには次の2つがある。① Failure to file penalty (申告遅れ)月当たり残高の5%② Failure to pay penalty (納付遅れ)月当たり残高の0.5% さらに金利は現状で年7%だ。ならば概算で①は$20/月+②は$2/月+金利$2/月=$24の6か月で$144(同レートで2.2万円)と見る。ぺナルティ・金利は2万円ぐらいのものか、まあしかたないなぁ思う。 IRSからペナルティ・金利の請求が来てびっくりする。Original tax amount owed: $400Late filing penalty: $400Late payment penalty: $12Interest: $23.87 納付する元本の$400の2倍以上の合計$835.87の納付となる。 ペナルティだけで$435.87(同レートで6.5万円)だ。元本の6万円を越えてしまっている。仮に元本が100万円なら半年でペナルティがさらに100万円以上払うのか?あり得ない話で、間違いじゃないのかと思ってしまうだろう。 実はこの①Failure to file penaltyには次の条件がついている。60 日を超えて申告が遅れた場合、未払いの税金の 100%または$435(定数)のいずれか少ない方となる。$400前後の元本だと、ペナルティがその倍で2倍税金を払うことになってしまう。 延長申請さえ出していれば、支払い遅れ$12+金利$11.94=$23.94(同レートで3,600円)で終わっている。延長申請を出す・出さないで6万円の差は大きい。ペナルティの詳細はこちらを参照ください。
祖父母はできるだけ早い時期に、自分の財産を子や孫に残したいと考える。しかしながらアメリカの相続では、遺産税を考えなければいけない。2023 年現在、遺産税には生涯控除額があり、 1,292 万ドル($1=150円で約19億円)以内の遺産ならば税金は発生しない。夫婦を合わせると2倍となるので約38億円までは遺産税がかからない。これだけでも大変な数字で普通の人には縁のない数字だ。但し、この数字はアメリカ市民とかそれに準ずる人に適用される。外国人である日本人が必ずしもこの金額の控除を満額使えるわけではない。 このラインを超えると税金を払って子が相続した財産が、さらに将来孫に渡されるとまた遺産税が発生してしまう。ならば自分の子供ではなく孫に相続させると、遺産税を払う機会が1回で済んでしまうと考えるかも知れない。 スキップさせて財産をもらうのは孫や孫だ家ではなく、曾姪や甥など、他の近親者も対象となる。また血縁関係、結婚関係、または養子縁組のない受益者も、祖父母より 37 歳半年下であれば、スキップ対象とみなされる。 これは良さそうだが、アメリカ連邦税では世代を飛ばす相続にはGeneration Skipping Transfer Tax(GST)が存在する。GSTは遺産税とは別であり、遺産税が課された後に追加される。一律 40%で計算される。 親から子へ、子から孫へと相続すると遺産税が二回発生する。子を飛び越えて孫に相続させると遺産税一回+GST一回で二回課税が発生する。GSTは税率が40%で遺産税がもう一回あるのと変わらない。 仮に、生涯控除を使い切ってフル課税を受けると仮定して、100万ドルを孫にあげようとするとどうなるか。きわめて大雑把な単純計算だが、遺産税が40%で40万ドル、GSTが同じく40万ドル、遺産税の上乗せ分にもGSTがかかるので16万ドルだ。税金は合計96万ドルとなる。祖父母が196万ドル払って、孫は100万ドルを手にする。これではどうしようもない。 Generation Skipping Transfer Taxは、祖父母が子をスキップして遺産税を回避するのを防ぐように機能する。
エンゼルスの大谷翔平選手が11月9日、日本国内約20,000校の全小学校に各3つのジュニア用グローブ約60,000個を寄贈するというニュースが流れた。すごくインパクトが大きく、さすがに大谷選手だと拍手を送らずにはいられない。 アメリカの贈与では年間非課税枠があり、2023年では$17,000となっている。何とか非課税にしたいと考えている時に、この天文学的なニュースを聞いたら一体どうなっているのかと驚くかもしれない。 アメリカは日本と異なり、贈与をする人が贈与税を払う。アメリカの贈与で2023年の非課税贈与枠は、もらう人の一人あたり1年間に17,000ドルだ。もらう人の数の制限はないので、何人でも非課税で贈与ができる。 ただし、年間控除額を超える贈与は課税対象の贈与とみなされ、贈与者の生涯控除額(現在 1,292 万ドル;$1=150円で約19.4億円)と相殺することになる。1,292万ドルの免除は、贈与と遺産税を合わせたものに適用される。贈与に免除を使用すると、遺産税に使用できる生涯控除額が減額される。このため、財産が約19億円もない場合、通常はアメリカの贈与税・遺産税を払うことがない。 これは良い話だと、日本に住んでいる祖父母がアメリカに住んでいる子供や孫に一人当たり300万円/人(同上レートで$20,000)をあげたらどうなるか。$20,000-$17,000=$3,000が課税対象となる。税率が$10,000までは18%なので$540の納税となる。 さて、$540の納税と言うけども、生涯控除の約19億円がある。$540の税額が出てきたところで、生涯控除額のために、全く余裕でアメリカの贈与税を払うことはないと思うかも知れない。 ところがこの生涯控除額はアメリカ市民(グリーンカード所有者等)を対象にしている。残念ながら日本に住んでいる日本人の祖父母を対象にしているのではない。そのために、アメリカの外国人たる祖父母には課税がなされてしまう。 大谷選手の天文学的な贈与には贈与税がかからず、何で自分が課税されるんだと思わないためには、アメリカの非課税贈与額の金額に納めなければならない。さらに重要なことは、日本の贈与税があるため、日本の非課税贈与枠を忘れてはいけない。
年内も2か月を残すのみで、グリーンカードを放棄する場合は、年内にできるならばその方が良い。最終申告が2023年分(2024年提出)となる。放棄が来年の1月に入ると、最終申告が2024年分(2025年提出)となり、さらに1年先送りとなる。 放棄時に使うフォームがForm I-407だ。ごく簡単なフォームで、午前中に作成して、午後に郵送すればその日のうちにグリーンカードの放棄ができてしまう。もちろんそれに伴う税務上の処理は、通常の申告と出国税があり、2024年の申告シーズンまでは完了できない。 さて、このForm I-407だ。ダウンロードしてみると分かるのだが、そのForm の右上にExpires 07/31/2023とある。このフォームが今年の7月末で有効期限切れとなっている。このフォームを改訂するということで、改定案も見ることができる。 この新フォームがいつアップロードされるのか、明日なのか、年内か、来年になるのかわからない。 それを待っていられない場合、この旧フォームを使ってグリーンカードの放棄をするのか悩ましい。まだ年末までは少し時間があるので、しばらく待っていようというのも一案だ。しかし、年末になってもこの状態だと悩ましい。 旧フォームで提出した故に、Form I-407は無効だと言われては困ってしまう。単に手続きのフォームがないために、放棄そのものがブロックされてしまうことは不自然に思える。 あるところまで待って、仕方なしに旧フォームで提出しても、おそらくは受理してもらえるだろうと思う。旧フォームで提出した人には新フォームが発行された時に、もう一度新フォームを、年をまたいで再提出するように言われることもあるかも知れない。ただその確信を持てないのが悩ましい。 そうすると、一体いつ出国していつまで税務申告をしなくてはならないのか迷う。形式ではなく実態で判断すれば、旧フォームでの提出日が有効とされるのではないだろうか。
日本には教育資金一括贈与があり、1500万円までの教育資金の贈与は非課税となる制度がある。祖父母が日本に住むアメリカ市民権も併せ持つ孫に、教育資金の一括贈与を行った場合を考えてみる。 アメリカの贈与税はもらった人が課税を受けるのではなく、贈与を行う人が課税される仕組みだ。日本とは180度異なる。 では、もらう側の孫は何もしなくても良いのかと言えばそうではない。アメリカでは外国贈与の報告制度があり、その課税年に10万ドルを超える外国贈与がある場合、Form 3520で報告をしなくてはならない。この報告を行わなければペナルティの対象となる。 日本の教育資金一括贈与はアメリカの税務から見た時にどう扱うべきなのだろう。そもそも、この制度は贈与たり得るのか。贈与としたらいつForm 3520を提出するのか。 贈与とはあげましょうという人ともらいましょうという人の双務的な契約だ。祖父母が幼稚園、又は小学校に入学する子供に贈与をしますといっても、孫に行為能力がなく、何のことかわからなければ、祖父母の一方的な行為で贈与とは言い難いだろう。 また、贈与であるからには贈与を受けた人が完全に自分のものとして、自由に贈与を受けたお金を消費したり処分することができなければならない。 教育資金一括贈与は直接、その本人にお金が渡るわけではなく、金融機関にプールされている。その子供の自由になる個人の預金口座にお金が振り込まれているわけでもない。1500万円を金融機関の教育資金口座に払い込んでもらっても、その使途について入学金、入園料、授業料、教材とか制限がある。その事実を証する証票がなければその資金を払い戻してもらえない。お金が教育資金として使われなければこの制度の対象にはなり得ない。 こうした状況では、アメリカの税務から見た場合、1500万円の教育資金一括贈与の資金が金融機関に振り込まれた時に、贈与がなされたと認定するのは難しいだろう。 幼稚園・小学校・中学・高校・大学等に入学時に、お祝いとして贈与をもらうとか毎年の授業料を払ってもらうならば、その時点で、贈与が都度発生したと見るべきだろう。 さてForm 3520は1課税年で10万ドル以上の外国贈与が報告対象だ。現時点では$1は約150円なので、1500万円を一回に教育費として使えば、10万ドルとして報告の対象となる可能性がある。毎年授業料100万円とか、入学時に100万円とか200万円とか入学金として使っていたとしても、現状の為替水準では1年で10万ドルを超えることはない。 こうして考えてみると、教育資金の一括贈与をForm 3520で申告しなければならないケースはほとんどないと考えて良いだろう
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