7月4日にトランプ大統領がthe One Big, Beautiful Billにサインして立法化された。Social Security Agency (SSA)の7月3日付のプレスリリースが何ともセンセーショナルな書き方をしている。https://www.ssa.gov/news/press/releases/2025/#2025-07-03 この法案の中で高齢者向けの減税が盛り込まれている。社会保障年金受給者の90%は連邦所得税を払う必要がなくなり「これは高齢者の経済的安定を守る歴史的な進歩だ」と称賛している。 これを読むと、アメリカの社会保障年金が課税対象ではなくなったと読んでしまうかも知れない。しかし、これは社会保障年金自体が課税の対象ではなくなったという事ではない。無税になるのではなく、控除額の上乗せにより高齢者の課税所得がゼロになる人が増えるという仕組みだ。標準控除額の違い:2024年:個人 $14,600/夫婦 $29,200+高齢者控除($1,950/人)2025年では2024年のベース金額がインフレ調整されて、高齢者控除が大幅増加($1,950→$6,000/人)するので、中〜低所得の高齢者に大きな免税効果がある。結果的に課税所得がゼロになる高齢者が大多数という意味だ。2025〜2028年分の確定申告(申告は2026年春から)での期間限定の所得控除だ。 実際には 社会保障年金は引き続き課税対象であり、年金そのものが無税になるということではない。 この発表は「社会保障年金に課税されない」という印象を与え誤解を招きやすい。実際には、一時的な控除措置によって結果的に課税所得がゼロになる仕組みだ。 さて、アメリカの年金を日本でもらっている日本人にとってはどんな影響があるのか。もともとアメリカの社会保障年金は日米租税条約で居住している国で課税を受ける。即ち日本の確定申告でアメリカの社会保障年金に課税されている。 アメリカで社会保障年金に課税を受けなくなったとしても、日本の課税であることには変わりがない。基本的には従来の申告と変わることはない。
アメリカはカナダやメキシコと国境を接している。カナダに住んでいる人が毎日、国境を越えてアメリカで仕事をしたり、逆にアメリカからカナダに行って仕事をしたりする人々がいる。 アメリカで働けば、その給与は「アメリカ源泉所得」となり、アメリカでの課税対象になる。カナダに住んでいれば、カナダでも全世界所得の申告義務があり、つまり両方の国に納税義務が生じて「二重課税」の状態が発生する。 実際の納税は「勤務国」でまず行い、「居住国」では申告時に外国税額控除を適用する。これにより実質的な二重課税を回避しようとする。 興味深いことに、この国際間の税務ルールは、アメリカ国内で州をまたいで働く場合の考え方と非常によく似ている。原則として、まず所得を得た勤務地の州(源泉地州)で納税し、その後、住んでいる州(居住地州)の納税額からその分を控除する、という手続きを踏む。 例えばニュージャージー州(NJ州)に住んでニューヨーク州(NY州)で働いている人は、まずNY州に非居住者として申告をして、NY州で得た所得に対する州税を納める。次に、住んでいるNJ州に対して、居住者として申告を行う。NJ州の税額から、NY州およびニューヨーク市に払った税額を控除する。 多くの場合、NY州・市の税率の方が高いため、控除額がNJ州の税額を上回ることがある。結果として、税率の高いNY州・市に税金を全額納めたのと同じような結果となる。 もしNY州を東京都、NJ州を神奈川県や千葉県と読み替えた場合、日本ではどうなるか。アメリカの仕組みは、まるで東京都にだけ地方税を納めるように見える。日本の税制は大きく異なる。日本では都道府県をまたいで通勤しても、所得税は国が全国一律のルールで課税する。そして、住民税は勤務地に関わらず、その年の1月1日時点で住んでいる自治体に納めるのが原則だ。 このように比較すると、アメリカの州が、税務上はあたかも一つの国のように独立した課税権を持っていることがよくわかる。
今年の申告で税額の支払いを銀行振替で行った。4月15日にはきちんと支払いが行われすべてが終わった。ところがIRSの手紙が来る。税金の納付がされていないので、いついつまでに支払えと言う督促状だ。丁寧にもペナルティ・金利がついている。 そんな馬鹿なと思うも仕方ないので、とりあえず言われる税金を納付して、これ以上の事態の悪化を防ぎ、足元から調べ直すことになる。 口座番号・納税者情報の不一致金額・年度・口座番号のミス過去の未払い税金があり充当されてしまった銀行側の誤送金IRSのシステムエラー第三者の詐欺等 自分での処理はわかるものの、相手があることは容易に調べることができない。大変な労力をかけて一つ一つ問題と思う所をつぶしていかなくてはならない。 ところが何とIRSは2025年6月12日に次の一部の電子決済処理の遅延に関するIRSの声明を出した。 IRS は、一部の電子支払いの処理に遅延が生じており、期限内に支払いが行われたにもかかわらず、一部の納税者が未払い残高を示す IRS 通知を受け取っていることを認識しています。 影響を受ける納税者:電子申告で納税申告書に記載された納税額を納付した納税者は、IRSが金融機関を通じて納税額を受領しているにもかかわらず、口座上で納税額が「保留中」と表示されることがあります。この通知は、納税額が口座で処理される前に開始されたか、納税額は処理されたもののエラーが発生し、納税額口座を更新する前にエラーを修正するための追加手続きが必要となる可能性があります。 電話は不要です:納税通知書を受け取った納税者が、電子的に全額かつ期日までに納税した場合、現時点では通知書に返答する必要はありません。納税者は、IRSオンラインアカウントの納税アクティビティページで納税状況を確認できます。このページでは、納税履歴や処理中の保留中の納税状況を確認できます。オンラインアカウントを確認しても7月15日までに納税が処理されていない場合は、通知書に記載されている電話番号に電話をかけることができます。 支払いが IRS によって正しく適用されると、関連する罰金と利息は自動的に調整されることに注意してください。 申告書に記載された納税額の一部のみを支払い、残りの未払い額を全額支払うことができない納税者は、IRS.gov/opaにアクセスして残りの残高の支払い計画を立てるか、通知の指示に従って追加の徴収代替手段を要求する必要があります。 影響を受ける納税者の皆様、IRS は支払い処理の遅延により生じたご不便をお詫び申し上げます。 何と何と、これは。
6月16日は日本からの申告期限だ。同時にこの日は2025年分申告の第2期予定納税の申告期限でもある。2024年分の申告も青息吐息でやっとたどり着いているのに、2025年分の予定納税まではとても手におえないと言う事もあるかも知れない。 アメリカの estimated tax(予定納税) の納付期限は下記となっている。 現行の期限は、各課税期間の終了から15日後に設定されている。第1四半期(1月~3月):4月15日第2四半期(4月~5月):6月15日(2か月分)第3四半期(6月~8月):9月15日第4四半期(9月~12月):1月15日(翌年) 第2四半期が2か月分と短く第4四半期が4ヶ月分と長い。 第2四半期が短い(2か月分)アメリカの個人所得税の確定申告期限は4月15日だ。この時期は税務処理が非常に集中する。第2四半期の対象期間を短くすることで、予定納税額を計算・準備する時間的余裕を持たせている。 第4四半期が長い(4か月分)年末にかけて、その年の総所得や控除額が固まってくる。投資収益の確定や年間の税額に影響することがこの時期に集中することが多い。4か月という期間で、それまでの3回の予定納税で過不足があった場合に調整しやすくなる。 歴史的、実務的な経緯もあり現状の形になっているが、分かりにくいと言うのもその通りだろう。 6月15日までの予定納税が準備できていなくとも、次の条件に合致していれば、もともと予定納税は必要がない。 ① 源泉徴収額や税額控除を差し引いて、当年の税金が$1,000未満となる。$1,000未満なら予定納税は必要がない。② 源泉徴収等で納付している金額が当年の税金の90%をカバーしている。③ 前年(フル12ヶ月)の税金の100%(高額所得者は110%)以上を納付している。いずれにしても2024年分の申告で、頭がいっぱいになっているかも知れないが、2025年分の申告も同時並行で動いている。
日本からアメリカの連邦個人所得税の申告を行う場合は、2か月の自動延長が認められている。ちょうどあと1週間で期限がくる。 もともと 米国の個人所得税(Form 1040)の通常の申告期限は、毎年4月15日だ。 米国市民やグリーンカードホルダーなどが米国外(海外)に居住している場合、IRSによって自動的に2ヶ月の延長が認められる。これにより、申告期限は6月15日となる。 さらに申告期限が土曜日、日曜日、または米国連邦政府の祝日に当たる場合、期限は翌営業日に繰り延べられる。2025年6月15日は日曜日なので、申告期限は翌営業日である2025年6月16日(月曜日)に繰り延べられる。 Form 1040-NRの申告期限はどうか。Form 1040-NRは非居住外国人が申告を行う場合に使用する。Form 1040-NRと言えども、米国内に住んでいる人で、居住者の要件を満たさない人がこのフォームを使うことがある。申告期限は、通常の個人所得税申告期限と同じく4月15日となる。 多くの場合、Form 1040-NRを提出する人は、米国に居住していない。非居住者外国人は、6月15日の申告期限で、米国市民や居住外国人が海外に居住していることで得られる2ヶ月の自動延長に相当すると考えられる。 もしも、6月16日までに申告が間に合わない場合は、Form 4868を提出する。これで10月15日まで申告期限が延長される。税務は通常、発信主義となっている。紙でForm 4868を提出する場合は、6月16日までの日付のスタンプがあれば大丈夫だ。時間が必要な場合は、迷わず延長申請を行うのが良い。 6月16日の期限で、わずか一日と言えども申告期限が延びて助かっている人も多いはずだ。
税金の申告データとしてForm 1042-Sが提供されることがある。Form 1042-S の目的は、アメリカの源泉徴収義務者(大学や企業など)が、アメリカの非居住者外国人対して支払った所得(利子、配当、奨学金、報酬等)とそれにかかる源泉所得税を報告するための書類だ。受け取る側はアメリカの税務上の非居住者としてForm 1040-NRを提出する事が通例だ。 しかしながら米国市民や米国居住者に対してForm 1042-Sが発行されていることが散見される。アメリカ市民や居住者(resident alien)はForm 1042-Sをもらうことはなく、Form W-2やForm 1099をもらう。それにより米国市民や米国居住者はForm 1040-NRではなくForm 1040を提出する。 支払いを受ける側と支払う側のいずれにも情報が不十分だったり間違いがありえる。結果として1042-Sによる支払では、30%の固定源泉徴収税(あるいは租税条約による軽減)が適用され、アメリカ市民や居住者としての源泉徴収率より高額の源泉税が差し引かれる場合がある。 仕方なしにForm 1042-Sの内容をForm 1040に手動で転記すると、申告ミスのリスクが出てしまう。Form 1042-Sの所得がForm 1040に反映されないと、所得の落ちを指摘される。また、源泉徴収税額がForm 1040に記載されないと過少納付とみなされる。 さらに支払い元が租税条約を誤って免税処理すると、IRSから否認される。日米租税条約の「教授条項」(廃止済み)を根拠に免税 すると 追徴課税の対象になってしまう。 米国市民や米国居住者が、支払を受けた際に米国市民や居住者であることを証明できる書類(たとえばW-9等)を提出せずに、Form W-8BENを提出する事もあり得る。 支払者側が外国住所をもとに機械的に非居住者とみなし1042-Sを発行するケースも多い。これを防ぐには支払者と市民権やグリーンカードの有無、住所・ビザステータス・実質滞在テスト(183日テスト)判定結果等を共有し、書類の誤発行を防止することが必要だ。
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