
アメリカに本来納税義務がないにもかかわらず、年金などに対して源泉徴収が行われ、結果として過大に税金を納めているケースが散見される。特に年金の場合、源泉徴収額が大きくなることがある。 これらの誤りを修正すれば、源泉徴収された税金を還付してもらえる。しかし、還付請求には期限があり、IRS は「原則として当初の申告期限から3年以内」に限り還付を認めている。2026年5月時点では、還付可能な年度は次のとおりだ。 2022年度の還付申請:2026年4月15日まで 2023年度の還付申請:2027年4月15日まで 2024年度の還付申請:2028年4月15日まで 還付期限の原則: IRS の還付請求は「申告書提出日から3年以内」または「納税後2年以内」のいずれか遅い方である。ただし、申告書を未提出の場合は「原申告期限(4月15日)に提出したものとみなされ」、還付可能額はその3年前までに限定される。 この原則から、2022年分の還付期限は 2026年4月15日 であり、2026年5月時点ではすでに期限切れとなっている。 では、日本居住者の自動2か月延長(4/15 → 6/15)はどう扱われるのか。 海外居住者は申告期限が自動的に6月15日まで延長される。しかし、これはあくまで「提出期限の延長」であり、税金の支払日や還付期限を延長するものではない。 源泉徴収税や予定納税は、法律上 4月15日に支払われたものとみなされる。 したがって、提出期限が6月15日に延びても、源泉徴収の支払日(4月15日)は動かない。 結果として、還付期限も動かず、2022年分の源泉徴収税は2026年4月15日で還付期限を迎える。 しかし、救えるケースもある。 海外居住者が、例えば 2023年6月15日に実際に税金を納付していた場合、この納付は「実際の支払日」がそのまま支払日として扱われる(源泉徴収とは異なる)。 2026年6月15日までに修正申告を提出すると、提出日から3年以内に支払われた税金として扱われ、この部分は還付対象となる。 つまり: 源泉徴収 → 支払日は 4/15 に固定 → 期限を過ぎれば救えない 実際の納付 → 実際の支払日が採用される → 期限内なら救える このため、今からでも修正申告を行えば、源泉徴収分は救えなくても、実際に納付した税金の一部は還付される可能性がある。

米国の税務では、外から見ると合理的に見えて、内側に踏み込むと急に別の論理が支配している領域がある。FBAR(FinCEN Form 114)は、その典型例だ。 たとえば、次のようなケースを考える。 • 2025年1月1日:グリーンカード保持(=U.S. person) • 2025年1月2日:正式に放棄(極端な話だが) 税法の世界では、この瞬間に非居住者へと戻る。 しかし2025年に一度でもU.S. personだった。よって2025年全体のFBAR提出義務がある。日本の感覚では、義務は「その期間に応じて発生する」のが自然だ。1日だけ居住者なら 1日分の義務があると考える。ところがFBARは違う。 1月1日にU.S. personであったという事実だけで、その年の365日分の最大残高の報告を求められる。その年は丸ごと報告対象だ。この“丸ごと”という発想こそが、個人の直感と最もズレる部分だ。 FBARの1万ドル基準は 年間最高残高 で判定される。 しかし、その最高残高の大半は、たいてい US personではなかった期間の残高 だ。 それでもFBARは言う。 • 「最大残高は1年間を通じて報告する」 • 「換算は12月31日の為替レートを使う」 このズレこそが、FBARという制度だ。税法は、滞在日数や生活の中心を細かく見て、居住者か非居住者かを日単位で判定する。市民権やグリーンカードを放棄した日で居住者期間は終わり、その後は非居住者にもなれる。 しかしFBARは違う。居住者期間の扱いは税法のように日単位ではなく、“その年のどこかでUS Personだったか” だけを見る。そのため、1月1日にグリーンカードを持っていたというだけで、その年は丸ごとU.S. person扱いになる。税法は実態を見て丁寧に区切るのに、FBARは身分だけで一発アウト。金融犯罪を見逃すわけにはいかないという厳しさだろう。しかしながらこのズレには、どうしても違和感が残りやすい。

アメリカの新しい$6000のシニア優遇税制は、奇妙に思える点がある。 日本在住の非居住者(Form 1040-NR 提出者)は標準控除を使えないのに、条件を満たせばシニアボーナス控除だけは利用できる構造になっているからだ。 1. 非居住者は「標準控除」を使えない 日本在住の多くの日本人は nonresident alien(NRA)であり、Form 1040-NR を使う。 このフォームでは次の制限がある。 • 標準控除は使えない • 65歳以上・盲人の追加標準控除もなし • 夫婦合算申告(MFJ)も不可 つまり、非居住者は標準控除をそもそも使えない。 2. 新制度「シニアボーナス控除」は別枠の追加控除 OBBBA によるシニアボーナス控除)は次のとおりだ。 • 対象:65歳以上 • 金額:1人最大 6,000 ドル(夫婦とも 65歳以上なら 12,000 ドル) • 所得制限:所得に応じて段階的に減額 重要なのは、この控除が 標準控除の延長ではなく、まったく別の「追加控除」 として扱われている点である。 3. Schedule 1-A 追加控除をまとめているのが新フォーム Schedule 1-A(Additional Deductions) である。シニアボーナス控除が含まれる。 Schedule 1-A の上部には次の文言がある。 Attach to Form 1040, 1040-SR, or 1040-NR. さらに最終行には、 Form 1040-NR の line 13c に転記せよ と明記されている。 つまり、Schedule 1-A は 非居住者用の 1040-NR にも添付する前提で設計されている。 4. なぜ「3階だけ」使えるのか • 標準控除(1階)と高齢者追加標準控除(2階)は → 標準控除システムという同じ建物 → 非居住者はこの建物に入れない • シニアボーナス控除(3階)は → 「追加控除」という別棟 → 入口は Schedule 1-A → 1040-NR line 13c つまり、標準控除の建物には入れないが、別棟の「追加控除の建物」には入れる構造になっている。 法律文書では対象を citizen/resident と説明しつつ、フォーム側では 1040-NR にも入口を設けているため、制度としては変則的である。 5. 日本在住の非居住者は実際に使えるのか フォーム構造だけを見ると、次を満たせば 1040-NR でも利用可能となる。 • 65歳以上 • 所得が基準以下 • 法律上の適格な個人に該当 • 社会保障番号を保有 ただし、日本在住の 非居住者は ITIN のみで 社会保障番号がなかったり、要件を満たさないことが多い。 制度上の入口は存在するが、実際に適用できる人はかなり限られる。 外国に住む65歳以上非居住者に対して6,000ドルの控除を与えなければいけない理由はない。そうした人を救うならば1階と2階を使えるようにするべきだ。アメリカに住んでいる税務上の非居住者を救おうとしたのだと思うが、外国に居住する高齢者も結果として救われる。とても違和感があるシニアボーナスだ。

日本で暮らす米国市民や米国居住者の家庭において、子供名義の金融口座はしばしば見落とされる領域である。特に「子供には社会保障番号(SSN)や納税者番号(ITIN)がないから、何もできない」と考えてしまうと、必要な手続きが遅れ、結果として税務上のリスクを抱えることになる。子供であっても、米国税務の制度が適用されるため、その仕組みを理解しておく必要がある。 1. 子供は「米国人」かという最初の分岐 税務上の義務は、子供自身が米国人かどうかで決まる。米国生まれで米国籍を持つ子供、あるいはグリーンカードを保有する子供には、年齢に関係なく米国税務の報告義務が生じる。一方、日本生まれで米国籍もグリーンカードも持たない子供には、米国税務の義務は発生しない。 2. FBAR:所得も年齢も関係なく義務が生じる FBAR(FinCEN Form 114)は、所得の有無や年齢に関係なく、子供名義の外国口座の残高が年間で一度でも10,000ドルを超えれば提出義務が発生する。幼い子供であっても例外ではない。子供が自ら手続きを行えない場合、親が “Parent/Guardian filing for child” として代行提出することが認められている。また、SSNやITINがない場合でも、パスポート番号と発行国を記載することで提出ができる。 3. FATCA(Form 8938):FBARとは異なる制度 FBARと混同されがちな制度がFATCA(Form 8938)だ。こちらは提出義務の判定は、資産額と所得税申告義務の有無の二つで決まる。 海外居住者の場合、子供名義の金融資産が年末で20万ドル以上、または年間最大残高で30万ドル以上であれば報告対象となる。しかし、ここで重要なのは、Form 1040の提出義務がない人は、資産額に関わらずFATCAの提出義務が免除されるという点だ。つまり、資産が基準を超えていても、1040を提出しない限りFATCAは発生しない。 4. 扶養家族の標準控除という落とし穴 2025年度の標準控除は、自立した納税者であれば16,500ドルだが、扶養に入っている子供の場合、利子や配当などの不労所得に対する標準控除は1,350ドルに制限される。したがって、子供名義の口座で年間1,350ドルを超える利子や配当が発生している場合、子供であってもForm 1040の提出義務が生じる。そして、1040の提出義務が生じたら、FATCA(Form 8938)の判定も必要となる。扶養であるがゆえに申告義務が発生するという逆転現象が起こり得る。 5. SSN/ITINは本当に必要なのか SSNやITINの取得は「1040の提出義務があるかどうか」で判断することになる。 利子や配当が1,350ドル以下で1040が不要であれば、FATCAも不要であり、SSN/ITINを急いで取得する必要はない。 一方、1,350ドルを超えて1040が必要となる場合、FATCAの可能性が生じ、SSN/ITINの取得が不可欠となる。 ただし、FBARだけは所得に関係なく提出が必要であり、ここに制度上の「ねじれ」が存在する。 6. 三つの制度を一つの視点で捉える 子供名義の口座に関する米国税務は、FBAR・FATCA・扶養控除という三つの制度が複雑に絡み合う。 FBARは所得も年齢も関係なく義務が生じる FATCAは1040の提出義務があるかどうかで決まる 扶養家族の標準控除は1,350ドルと低い この三点を押さえて必要な手続きを進めることになる。

米国で申告を行う際、納税者が直面する驚きがある。それは、「4月15日の期限までに税金を100%支払ったのに、なぜペナルティを請求されのか」という事だ。一見理不尽に思えるこの仕組みの背後には、米国の「申告納税制度」の根幹をなす考え方がある。 1.所得発生時に納税する原則 米国の税制は、所得を得たその時に支払うという原則に基づいている。これは、1年分の税金を翌年の4月にまとめて払えばよいということではなく、所得が発生したら、その分に見合う税金を国に納める義務があるという考え方だ。 • 会社員の場合: 毎月の給与からの源泉徴収で、この義務を自動的に果たしている。 • 自営業者・投資家の場合: 源泉徴収がないため、自ら計算して年に4回予定納税を行う。 2. なぜ「全額納付」でもペナルティになるのか 問題は、納税の「タイミング」だ。例えば、年間の最終的な税額が $2,000 だとする。これを4月15日に一括で支払った場合、IRSの視点では本来、4月・6月・9月・翌年1月に分割して受け取るべきだった資金を、最長で1年間貸し付けていたとみなす。この「支払いの遅れ」に対して利息が課される。 3. ペナルティを回避する安全策 IRSは、予測困難な所得変動に配慮し、以下のいずれかを満たせばペナルティを免除する仕組みを設けている。 1. 当年度の税額の90%以上を期中に納付していること。 2. 前年度の税額の100%(調整後総所得が15万ドルを超える高所得者は110%)を期中に納付していること。 4. 実務的な対策 ペナルティを回避するためには、以下のやり方が有効だ。 • 給与の源泉徴収額の調整 会社員は、勤務先に提出するW-4で、給与からの源泉徴収額を多めに設定することで、予定納税の手間を省く。源泉徴収は「年間を通じて均等に支払われた」とみなされる。 • 予定納税 自営業者の場合、4月・6月・9月・翌年1月の各期限に、自ら予定納税として納付する。 4月15日に税金をまとめて払えばいいと考えると、米国ではペナルティを伴うことがある。所得が発生したら、その時点で払わなければならないという意識を持つことが大切だ。

交通事故で身体的な傷害や休業、精神的苦痛、懲罰的損害を含む 10 万ドルの和解金を受け取ったとする。一見すると「事故の補償」としてまとめて受け取るだけのように思えるが、アメリカ税務ではどの部分が非課税で、どの部分が課税かを明確に区分する必要がある。 アメリカ税務の基準となるのは IRC §104(a)(2) で、ここでは「身体的傷害または身体的病気に起因する損害賠償金は所得から除外される」と定められている。つまり、治療費や休業補償など、身体的損失を回復するための金銭は「原状回復」とみなされ、非課税となる。 ただし、すべてが非課税になるわけではない。身体的傷害を伴わない精神的苦痛の補償や、加害者への制裁として支払われる懲罰的損害賠償は課税対象となる。 10 万ドルの和解金が次のようになっていたとする。 身体的傷害・医療費:3 万ドル 休業・給与損失:2 万ドル 精神的苦痛:3 万ドル 懲罰的損害賠償:2 万ドル このうち、医療費、休業補償、身体的傷害由来の精神的苦痛は 非課税となる。事故による身体的損傷とその結果生じた損失は、すべて「身体的傷害の延長」と考えられる。しかし和解金であっても、それが「身体的傷害・病気」を補償する部分に当たらない限り、和解金は課税所得として扱われると考えられる。この区別がわかりにくいことがある。また、懲罰的損害賠償の 2 万ドルは課税される。これは被害者の補償ではなく、加害者への制裁としての性質を持つため、税務上は「所得」と扱われる。 交通事故の和解金は、単なる「補償金」ではなく、税務上は複数の性質を持つ金銭の集合体だ。和解金の課税・非課税を明確にするためには、和解契約書や控訴状などで、「身体的傷害」「精神的苦痛」「給与の未払い」などどう割り振られるかを明記しておくことが重要とされる。

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