Tsuchida & Associates日米にわたる国際税務

Tsuchida & Associateshaは日米に渡る国際税務に関する問題を解決いたします。

お知らせ

2026.03.15
所得税

日本のポイントは課税されるのか

日本ではポイント還元が生活の一部になっている。クレジットカードのキャッシュバックだけでなく、楽天ポイントやPayPayポイント、航空マイルなど、さまざまな形で消費者への還元が行われている。では、こうしたポイントは米国税務上どのように扱われるのだろうか。 結論から言えば、日常のカード利用や買い物によって得られるポイントの大半は、米国税務上課税所得にはならない。 米国国税庁(IRS)は、クレジットカードの報酬を「支出に基づく還元(rebate)」と「支出を伴わないボーナス(income)」に分けて考えている。カード利用によるキャッシュバックやポイントは、通常は購入代金の値引きとして扱われる。例えば1,000ドルの買い物をして20ドルのキャッシュバックを受けた場合でも、税務上は20ドルの所得があったとは考えない。あくまで980ドルで商品を購入したのと同じという扱いである。 この考え方は日本のポイント制度にもほぼ当てはまる。楽天市場のポイントやQR決済の還元など、購入金額に応じて付与されるポイントは、米国税務の観点でもリベートと考えられるため、通常はForm 1040に申告する必要はない。 ただし例外もある。銀行口座の開設ボーナスやクレジットカードの紹介報酬のように、支出を伴わずに受け取る報酬は所得として扱われる可能性がある。米国ではこうした支払いに対してForm 1099-MISCや1099-INTが発行されることもある。日本の金融機関は通常これらを発行しないが、1099が届かなくても所得は申告義務がある点には注意が必要である。 ポイントの税務判断は実はそれほど複雑ではない。確認すべき点は一つである。そのポイントが支出によって得られたものかどうかである。買い物の結果として付与されたポイントであれば通常は非課税であり、支出を伴わないボーナスであれば課税の可能性がある。 キャッシュレス社会が進むなか、ポイント還元はますます身近な存在になっている。その多くは税務上問題にならないが、報酬の性質を理解しておくことは、日本に住む米国市民やグリーンカードホルダーにとって大切なポイントと言えるだろう。

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2026.03.08
遺産税・贈与税

アメリカの遺族年金

国境を越える年金は資産か権利か 日本に居住するアメリカ市民とその配偶者にとって、米国のSocial Securityは、老後だけでなく配偶者の死亡時にも生活を支えるセーフティネットとして設計されている。 ​ 米国国内法のもとでは、老齢給付から遺族給付への移行も受給者が変わるだけであり、いずれも公的社会保障として一貫して扱われ、連邦遺産税の課税財産にも原則含まれないと整理されている。 ​しかし、日本の相続税法の世界では別の姿をとる。東京地裁は、米国遺族年金の受給権を相続税法3条1項6号の「契約に基づかない定期金に関する権利」、すなわちみなし相続財産に該当すると判断している。 米国で生活の糧として設計された給付が、日本では評価可能な金融資産として切り出され、国境を越える社会保障の難しさが凝縮されている。 日本の遺族年金との違い 日本の厚生年金や共済組合の遺族年金については、各制度の根拠法において相続税を課さない旨の非課税規定が明示されている。 ​一方、米国遺族年金には、日本の国内法上そのような特別規定が存在せず、その結果として「日本の遺族年金は非課税、米国の遺族年金は課税」という取扱いの差が生じている。 外国の年金をどこまで自国の遺族年金と同様に保護するかは、日本の立法裁量の範囲内であると裁判所は位置付けており、在日米国人に対して、母国制度による保護は日本国内では自動的には保障されないという現実を突きつけている。 「見えない未来」への一括課税 将来受け取る年金の総額を、相続時点における年金額、統計上の余命、予定利率などを用いて現在価値に引き直し、その金額に対して一括で相続税を課す仕組みとなっている。 しかし、その背後には為替変動や制度改正、期待寿命より早く死亡するリスクなど、多くの不確実性が潜んでいるにもかかわらず、税は「相続時点の理論上の価値」を求める。 ​遺族は、月々の年金で生活しているにもかかわらず、まだ手にしていない将来の給付に対応する多額の相続税を、現金納付しなければならない可能性がある。 求められる「一貫性」 生前の年金も遺族年金も常に課税する、あるいは社会保障給付は生前・死亡後を問わず原則非課税とする、といった一貫したルールの方が、納税者にとってははるかに理解しやすいだろう。 ​しかし現実の制度は、税目ごと・国ごとの二重構造になっている。 米国では、Social Securityは所得税については一定条件のもとで課税対象となる一方、estate税の課税財産には原則含めない。​ 日本では、自国の公的遺族年金は相続税・所得税とも非課税とされる一方、米国遺族年金の受給権は相続税の対象となり得るという構造である。 このずれは、国境を越えて暮らす人々にとって、その継ぎ目をどのように埋めるか大きな課題であるといえる。 東京地裁 令和8年(2026年)2月25日判決 (事件番号:令和6年(行ウ)第465号) 争点: 米国の公的遺族年金を受給する権利が、日本の「相続税」の課税対象になるかどうか。 背景: 日本の法律に基づく遺族年金(厚生年金など)は、個別の法律によって相続税が「非課税」とされている。しかし、米国の遺族年金にはそのような日本の法律上の免除規定がない。 判決の結論: 「相続税の課税対象(みなし相続財産)となる」 東京地裁は、米国の遺族年金受給権を「定期金に関する権利」とみなし、日本の相続税が課されることを適法と判断した。 「日本の遺族年金は非課税なのに、外国の遺族年金に課税するのは平等原則に反する」という原告側の訴えも退けられた。

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2026.03.01
所得税

もう一つの4月15日

4月15日は、米国市民や税務上の居住者にとっては、個人所得税申告の締め切り日である。日本で生活しながら米国の申告義務を果たす人にとっては、二重課税の調整や計算ミスによる「払いすぎ」が起こりやすく、後から修正が必要になることも珍しくない。 正しく手続きを行えば、払いすぎた税金は還付として戻ってくる。しかし、この還付を受けるには期限があり、時間の経過とともに消滅する「時限付きの権利」であることを忘れてはならない。 1. 還付を受けられる期限は「3年」 修正申告(Form 1040 X)によって還付を受けるためには、オリジナルの申告期限から3年以内に手続きを完了する必要がある。 たとえば2022年分の申告であれば、還付を受けられる期限は 2026年4月15日 である。 海外居住者が陥りやすい誤解がある。「日本に住んでいるから申告期限は自動的に6月15日まで延びる。だから還付の期限も6月15日まで延びるはずだ」という思い込みである。しかし、これは誤りである。6月15日の自動延長は、あくまで「遅延ペナルティを課さないための猶予」であり、還付請求の時効を延ばす効果はない。 一方、Form 4868 による正式な延長申請を行った場合は、法定期限そのものが10月15日まで延びるため、還付期限もそれに合わせて延長される。 この仕組みが、海外居住者を含む多くの納税者を混乱させている。 2. もうひとつの壁「Look back Rule」 3年以内に修正申告を提出しても、還付が必ず受けられるわけではない。Look back Rule(遡及期間ルール) と呼ばれる規定が存在するためである。 IRS は、修正申告を受け取った日から遡って 過去3年間に“支払われた”税金 しか還付の対象にしない。 ここで重要なのが「支払日」の扱いである。給与からの源泉徴収(W 2)や予定納税は、実際の支払日がいつであっても、税法上はその年の4月15日に支払われたものとみなされる。 例:Look back Rule によって還付が消えるケース 2022年分の税金(みなし支払日:2023年4月15日) 申告期限:2023年4月18日 延長申請あり2023年10月15日まで延長 修正申告の提出日:2026年5月1日 • 還付請求の時効:2026年10月15日 → 3年以内で問題ない • Look back Rule の遡及期間:2023年5月1日まで • 税金の「みなし支払日」は 2023年4月15日 → 遡及期間より前である このため、還付を受ける権利が消滅してしまう。還付を確実に受けるには、みなし支払日から3年以内(2026年4月15日まで) に修正申告を提出する必要がある。 3. 還付と納付の「非対称性」 還付には3年の時効があるが、納付にはこのルールはない。申告から原則10年間(無申告や虚偽の場合は無期限)追いかけてくる。「還付は3年で時効だが、納付は10年経っても逃げられない」。これが米国税制の現実である。

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2026.02.22
情報申告

FATCAと上手に付き合うために

日本で銀行口座や証券口座を開設すると、必ずといっていいほど目にするのが FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)に関する確認書 だ。 多くの人にとっては単なる事務手続きに見えるが、米国市民権やグリーンカードを持つ方、米国に居住している方にとっては、非常に重要な意味を持つ書類 になる。 FATCAは、米国納税義務者の海外口座を把握するための制度で、日本の金融機関も協力することが義務づけられている。 そのため、口座開設時に「米国納税義務者か?」と質問されるのは、単なる形式ではなく、将来のトラブルを避けるための大切な確認 だ。 「少しだけなら…」が不安の種になることも 金融機関の窓口で「米国納税義務者か?」と聞かれたとき、つい迷ってしまう人は少なくない。 • 日本で暮らしているし • もともと日本人だし • わざわざ言わなくてもいいのでは…? こうした“その場の迷い”が、あとで説明の負担や予期せぬトラブルにつながることがある。 米国の税務は“うっかり”に厳しい 米国の税務申告書には、Schedule Bで海外口座の有無を尋ねるシンプルな質問がある。ここでの「いいえ」は、単なる記入ミスとして扱われないことが多いのが現実だ。裁判例などでも、「知らなかった」「深く考えていなかった」といった説明は通りにくく、“無視した”と見なされるリスクが指摘されている。結果として、状況によってはペナルティにつながる可能性もある。これが米国ルールの厳しさだ。 いちばんシンプルな対策は「正直に書く」こと 対策は複雑ではない。口座開設時に、該当するなら「米国納税義務者だ」と正しく伝えること。これは、金融機関にとって必要な情報であるだけでなく、自分自身にとっても「隠していない」「正しく申告している」という明確な証明になる。 アメリカの法律は遠い世界の話に思えるが、いまは国境をまたいで情報がつながる時代だ。FATCAの書類を渡されたら、それを「面倒な紙」と捉えるのではなく、将来の安心を守るための一手として、正しい一筆を入れることが大事だ。

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2026.02.15
その他

今年の米国申告、いつもより時間がかかる

今シーズンの米国申告について、IRSの為替レートがようやく発表された。例年より遅れたため、申告の準備が進められず足止めとなった方も多かったはずだ。 IRSが抱える未処理申告の状況は深刻で、TIGTAレポートによれば、2026年申告シーズンの開始時点で約200万件の個人関連在庫(バックログ)を抱えている。内容は修正申告、紙によるオリジナル申告、納税者からの問い合わせ、エラー処理中の案件、拒絶案件など、人手を要するものが中心で、コロナ前の2019年末と比べて約129%に膨れ上がっている。さらに追い打ちとなったのが、2025年の政府閉鎖と構造的な人員不足だ。閉鎖後も滞留案件を抱えたまま2026年シーズンの準備に入ったため、今季の処理遅延リスクは例年以上に高いと見ておくべきだろう。 日本在住の納税者が特に意識すべきなのは、「紙の申告書」と「人手」を可能な限り避けることだ。2025年末の時点で、紙で提出された個人申告の在庫は約29万件あり、修正申告の在庫は50万件以上になっている。日本からの申告は、海外住所・海外口座、ITIN取得や更新、Form 1116、条約適用などの要因から紙提出になりやすい。いったん紙の申告書になると、バックログの渦中に組み込まれるリスクが高まる。また今シーズンから、個人所得税の還付は原則として「米国内銀行口座への振込」のみとなり、米国口座がない場合は例外処理として小切手が発行される。日本からの申告は電子申告ができないケースも多く、米国預金口座も持たない方が多い。加えて申告内容が複雑になりがちなため、IRSにとっては初めから「標準処理」から外れやすい構造にある。 特に米国不動産の譲渡が絡む場合、過大な源泉徴収の還付を受けるケースがあるが、バックログが大きい局面では還付遅延が生活費やローン返済に影響する可能性もある。本来は電子申告と米国口座への直接振り込みで、紙提出や修正申告による遅延要因を事前に排除することが重要だ。しかし現実には、日本からの申告は電子化に乗らないことがあり、米国口座も持てず、内容も複雑化しやすい。 IRSの処理遅延、米国口座以外への還付小切手送付、国際郵便の配送や日本側での取立てなどを考えると、今シーズンは日本からの申告で還付が生じる場合、相応の時間がかかると覚悟しておく方がよいだろう。

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2026.02.08
所得税

6,000ドルの高齢者追加控除に注意

アメリカの標準控除は、まず誰れにでも適用される「基本部分(1階)」がある。従来の「高齢・盲人の追加標準控除」は、65歳以上や視力に重い障害がある人なら、原則、誰だれでも少しだけ標準控除が増える“基本の上乗せ(2階部分)”だ。 OBBBA の新しい6,000ドル控除は、夫婦がともに65歳以上で、双方が SSN を持ち(ITIN は不可)、 MFJ (夫婦合算申告)を選択し、所得が一定の範囲内に収まっている人だけがもらえる“ボーナス的な増額(3階部分)”になっている。 しかし、この3階部分は MFS (夫婦個別申告)では完全に適用外となる。1階・2階部分はMFJでもMFSでも中立なのに、3階部分だけ MFJ 専用という非対称性は、非常に分かりにくい。 なぜ IRS はこのような構造を採用しているのか。 その理由は、フェーズアウト(所得制限)の管理にある。高齢者追加控除は、所得が一定水準を超えると段階的に減額される仕組みになっている。具体的には、単身の場合は MAGI 75,000ドル以下で満額、175,000ドルでゼロ。MFJ では 150,000ドル以下で12,000ドル満額、250,000ドルでゼロとなる。 このフェーズアウトは、世帯の合算所得を前提に設計されている。つまり、制度は夫婦の所得を一体として把握し、その世帯の経済状況に応じて控除額を調整する。MFJ であれば、夫婦の所得が一つの申告書にまとまり、フェーズアウトの計算も一貫して行える。夫婦が別居・別住所・別会計でMFSの申告すると、相手の申告内容を知らずにフェーズアウトで満額$6,000 をとれないのに、両方が $6,000 を申告しても IRS は判断がつかない。 この フェーズアウトを正確に適用するには、夫婦の合計所得を正確に把握すること、減額幅を世帯単位で計算すること、夫婦双方の申告内容が整合していることを確認することとなる。 日本在住者への影響 日本に住む米国市民・永住者にとって、この構造は特に影響が大きい。配偶者が非居住者である、情報提供が難しいなどの理由で MFS を選ばざるを得ないケースは少なくない。この高齢者追加控除は、原則として SSN 保有者のみが対象であり、ITIN しか持たない高齢者は対象外とされる。MFS を選ぶと、その時点でこの6,000ドル控除は二人とも使えない(SSNであっても対象外)。MFJならSSNの1人分6,000ドルまでは取れることになる。

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