2023年6月

2023.06.25
その他

何か腑に落ちないが

アメリカ市民とかグリーンカードを持っている人で、市民権やグリーンカードを放棄した人(出国者)がForm 8854を提出する。この税務上の出国の時に、一定の条件に合う人の株や不動産等の実現していないキャピタルゲインに課税を受ける仕組みだ。 と言うのはアメリカの居住者(市民権・グリーンカード)はその放棄により、株等のキャピタルゲインに課税されなくなる。アメリカの不動産のキャピタルゲインは非居住者として課税を受ける。これを狙っての放棄に歯止めをかける。アメリカに居住してその間に潜在的キャピタルゲインを持つ人にはアメリカで課税が行われて、しかる後に出国を認める。 さて、アメリカに居住している時に株等の含み益を得るのは米国市民、グリーンカードを持つ人に限らない。ビザを持って長期間アメリカに住んでいる人だって、同じことではないか。この人たちも同じように扱われなければ、おかしいのではないか思うだろう。場合によっては市民権・グリーンカードを持っている人よりも長期間アメリカに住んでいて大きなキャピタルゲインを持っているかも知れない。 通知2009-85は出国者を次のように定義する。 セクション877A(g)(2)で出国者とは、 (1)市民権を放棄した米国市民、 (2)米国の合法的な永住者でなくなった米国の長期居住者 を言う。 さらにセクション877A(g)(5)で長期居住者とは、出国日を含む課税年度で終了する15課税年度の期間に、少なくとも8課税年度に米国の合法的な永住者である個人だ。 所得税でアメリカの183日以上の滞在日基準で居住者となるが、出国税の居住者とは一線を画す。E-2ビザでL-1ビザ等で米国に10年以上住んでいるとする。長期居住者であることは間違いないが、移民としての合法的な永住者たるグリーンカードの保有者ではない。あくまでも非移民だ。 セクション877Aの出国税規則は対象となる出国者にのみ適用される。E-2ビザやL-1ビザ等でグリーンカードを持たない人は、出国税を考えずに米国を離れることになる。かくしてForm 8854の財産基準200万ドル以上で、大きな含み益を持っている人であっても、出国税の対象とはならない。 そういう割り切りだ。市民権やグリーンカードを持つ意味合いは重い。

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2023.06.18
所得税

あわてずに

IRSよりこのところレターが来るようになった。コロナウイルスのおかげで倉庫に山積みになっていた申告書が、やっと処理されるようになったからだろうか。よい兆候だと思える。 IRSより手紙が来た場合は、内容がわからないと何もせずに放置しておくことは良くない。あわてることはないので、まずはしっかり手紙を読むことだ。 その手紙には税額の変更(不足・過払い)、さらに必要なデータを提出するようにとか、具体的な指示が書いてある。 何を問題にされているのか、何が必要なのかは手紙を見ればわかる。 例えば、金融機関からIRSと本人に提出されている年間報告書と申告書の内容が異なる。配当や落ちているとか譲渡益が落ちていると言う内容なら、何が正しいのかはっきりした話だ。 納付している税額で相違がある事がある。 例えば予定納税で$10,000納付しているにも関わらず、IRSは納付を受けていないと言うのであれば、納付した時の支払いの証拠を見せればよい。予定納税をしたつもりが実際には納付し忘れていたとか、どちらが正しいのかすぐにわかる。 提出している情報に不足があり、さらにこの情報やFormを提出するように求められていたら、それに従って提出する。 手紙の内容に合意して追加納付をするならその金額を納付すればよい。延滞金とか金利を考えて余分に納付すると、金額が一致しないと受け取りを拒否されることもあるので、きっちりその金額だけを納付する。延滞金や金利がかかるのであれば、さらに納付を求められるので、その時点で納付すれば良い。 もちろん、納付するだけではなく、税金の払いすぎと言うこともあるわけだから、その場合は還付金を受け取る。そのまま受け取れば良いだけなら、何も動く事はない。 白黒がはっきりしていれば議論にはならない。しかし、一方でそのレターの内容に関しては首をかしげざるを得ないものがある。IRSの言っている内容は正しいこともあれば、正しくないこともある。手紙の内容に合意できない場合はIRSに連絡をする。どこがどう違うのか丁寧に説明することになる。 IRSは申告書に記載されている住所あてに連絡をしてくる。住所が変わっているならば住所変更手続きをしっかりしておかないといけない。IRSのレターが旧住所に届いて、自分の手元に届かない。やっとのことで手紙を手にして納付だと、その間の延滞税や金利が膨らんでしまう。たかが住所と軽く考えてはいけない。 行動を起こす必要がある場合は、真摯に処理をすればよい。IRSの手紙を握りつぶしてそのままにすることは、事態を一層悪化させる。行動を起こさなければいけない時は、きちんと行動を起こせばよい。避けなければならないのは、IRSの手紙をそのまま放置してしまうことだ。

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2023.06.11
その他

税務の年齢制限

アメリカの税金の申告に年齢制限はあるものだろうか。何歳になったら申告デビューし、何歳になったら申告の定年になるのか。 言われなくてもわかっていると言われるだろうが年齢制限はない。子供であろうが高齢者であろうが年齢に関係なく、申告すべき所得があれば申告しなくてはならない。 70才申告定年とか80歳申告定年とかあれば、楽でいいのかも知れないが、そうはいかない。アメリカの場合は亡くなってさえも申告をしなくてはいけない。亡くなった年の所得税申告はしなければならないし、相続の遺産税申告には何年もかかることがある。本人は亡くなっているので、代理人が本人になり代わって申告をするのだが、あくまでも本人(代理人)が申告をする。 子供だってこの世に生を受けて生まれた瞬間から、所得があれば申告しなければならない。赤ちゃんや幼児に申告書にサインができるかと言えばなかなか難しい。となれば親なり法的代理人が申告を行う。子供が個人として申告をしてよいし、親が子供の所得を取り込んで一緒に申告をすることもできる。 子供にこうした税務関係の義務を負わせるのに忍びないと親が思い、子供の市民権を親が放棄できるかと言えばこれは難しい。市民権を放棄するのは子供が自分で決めることで、親が決めることはできない。しかも16才未満の子供はその意思決定を認められない。 なかなか面倒なものだが、行うべき事を行わないと予期しない結果があり得るので、代理人や親がしっかり見てあげないといけない。

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2023.06.04
その他

馬車がカボチャに戻る時

出国税の計算をする時に、一体いつ出国したのかがはっきりしないと、計算の基準日がわからない。 グリーンカードでは、それを持っている期間が過去15年の期間のうち、8年を超える場合にForm 8854を提出する。この基準を満たした上で、財産要件、納税額要件、適正申告要件に抵触するとForm 8854で出国税の計算をする事になる。 出国日がいつなのかにより、正味の財産額や為替レートも変わり、出国税が発生する・しないという事にもなる。 この出国日はいつなのかを長期居住者(グリーンカード)の場合で見たい。 次の日付のうち最も早い日に長期居住者(グリーンカード)を放棄したと見なされる。 1.米国領事館または入国管理官にForm I-407を提出することにより、合法的な永住権を自発的に放棄した日付。 2.合法的な永住権を放棄したという最終行政命令の対象となった日(または、そのような命令が上訴された場合は、そのような行政命令に関連して発行された最終的な司法命令の日付)。 3.移民国籍法に基づく米国からの退去に関する最終的な行政命令または司法命令の対象となった日付。 ケースにより出国日は変わるが、通常は1のForm I-407を提出することにより、合法的な永住権を自発的に放棄した日付と言うのがほとんどだろう。と言うことはForm I-407を提出した日となる。つまり発信した日(発信主義)で到着した日(到着主義)とは言っていない。 では仮に6月5日にForm I-407を郵送するとしたら、財産額の確定はいつ行うか。6月4日で次の瞬間に6月5日にかわるタイミングが基準の刻限となる。童話で言えばシンデレラの馬車が、夜中の12時の鐘をきくとカボチャに変わってしまうギリギリのタイミングで財産額を確定すると言うことになる。

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