先日、新聞に社宅としてマンション借りて家賃を払っていたら、マンションのオーナーが外国人だったので、源泉課税を行っていなかったために追徴課税が発生したという記事があった。マンションを借りて、さらに税金が発生したという日本国内の話だ。所得税法では非居住者から日本国内の不動産を借りて賃料を支払う場合、その金額の20.42%を非居住者の所得税分として借主が源泉徴収し納税しなければならなかった。言われるとなるほどと思うも、法人だったわけで、自然人の場合はどうなるのかとわかりやすくはない。アメリカの場合では、外国人(自然人・法人)が所有するアメリカの不動産を譲渡した場合、源泉課税が発生する。1980 年に制定されたFIRPTA(外国不動産投資税法)がある。外国人投資家が米国の不動産(土地、家屋など)を売却する場合、通常、譲渡益に対してキャピタルゲイン課税が発生する。仮に日本人がアメリカの不動産を30万ドル以上で譲渡すると、譲渡契約の履行時に売却価格の15%が源泉課税されてしまう。売主がキャピタルゲインの税金を支払うことを確実にするために、FIRPTA では、不動産の買主が譲渡価格の 15% を源泉徴収し、 IRS に納めることを義務付けている。これは、売主の税金の支払いの保証金のような役割を果たす。多くの場合は譲渡益の20%課税(1年以上保有)になるので、売却価格の15%は税金の払いすぎになる。そのため譲渡した年の申告を行い、過大支払い分を返してもらうことになる。日本人が当事者であっても、譲渡者がアメリカ市民・グリーンカードホルダー等ならばこの源泉徴収義務は除外される。万が一、米国の不動産を日本人の間で売買し、譲渡した人が15%の源泉税を払わず、購入した人が源泉徴収義務者なのに源泉徴収していないとなると面倒なことになりかねない。しかし、この不動産が外国に存在する場合、FIRPTAからは除外されている。日本に居住するアメリカの不動産のオーナーがアメリカの不動産を賃貸しても、テナントが賃料の源泉徴収を行うことはなく、オーナーは自らアメリカの税務申告を行うことになる。
アメリカの税金を日本から支払う事の煩雑さは、アメリカに申告を行う事が面倒であることの象徴のようだ。 いろいろ苦労してアメリカの申告書を作る。税額が発生して、いざアメリカに納税しようとする。アメリカに支払う税金はドルで納付しなくてはならない。日本からどうやって納税できるのか。 アメリカに住んでいた人で、アメリカに預金口座が残っていれば簡単だろう。しかし、そうでなければかなり面倒だ。 アメリカの税金はドルで支払わなければいけない。しかし、そもそもドルを持っていない。ドルを持っていて近くのコンビニで払えるなら簡単だろうが、日本のコンビニではアメリカの税金を払うことができない。 アメリカの税金をドル小切手で支払うことができる。アメリカに銀行口座があり小切手帳を持っていれば小切手を発行すれば良い。小切手帳がなければ、銀行に出かけてドル小切手を作ってもらうが、うまく行くのかどうか簡単ではない。 こうしてみると、クレジットカード払いが唯一の選択肢ではないかと思える。税金とは言えども、あたかもネットショッピングと同じだ。自分の家にいて自分の空いた時間で手続きができる。 ここから手続きができる。Pay your taxes by debit or credit card or digital wallet | Internal Revenue Service (irs.gov) これも慣れていれば良いのだが、英語の画面と対話して情報を入れていくのもストレスがないとは言えない。年配の方の場合だと、クレジットカード決済になじみがないことがある。 銀行に出かけて銀行から送金を依頼することも選択肢としてある。しかし多くの銀行ではこうした業務には対応しておらず、うまく対応してもらえないか、できたとしても手続きにとても時間がかかる。 若い時には体力的にも大丈夫だったものが銀行まで出かけて、結構な時間を費やすのも簡単ではないこともある。 日本に住んでいる人がアメリカに申告するのは、申告書の作成だけではなく周辺の事柄でも越さなければならないハードルがある。
あなたがアメリカ市民と結婚しており、二人とも日本に住んでいる場合、これがアメリカの申告にどのような影響を与えるのか疑問に思ったことがあるかもしれない。アメリカの市民権やグリーンカードを持っておらず、一般の日本人として日本に暮らしている人のケースだ。 アメリカでは日本にはない夫婦が一緒の申告を行うことができる仕組みがある。行うことができると言うだけで、そうしなければならないということは一切ない。 たとえ二人とも日本に住んでいても、日本人配偶者は税務上アメリカ居住者として扱われることを選択すると、アメリカ市民のようにアメリカの税の世界に飛び込んでしまう。 これは、世界中の所得がアメリカに課税されることを意味する。つまり日本で得ている所得もアメリカの課税対象となってしまう。申告を行うためにはアメリカの納税者番号を取得しなくてはならない。これがそもそも一仕事だ。 日本で税金の申告を行い、日本の所得に日本で課税されたうえに、さらにもう一回アメリカの課税を受ける。外国税額控除で二重課税を回避しようとしても、100%回避できるかはわからない。夫婦の所得を合計すると、所得は大きくなる。大きくなるほど税率は高くなる。配偶者と一緒に申告を行い余分な税金をアメリカに納めることになりかねない。 税務上のメリットが全くないというわけではない。日本人の配偶者も標準控除を取り、課税所得を 2023年ベースで$13,850減少できる。日本人の配偶者に所得がなければ標準控除を活用できる。 しかしその税金の支払責任は、アメリカ人の配偶者だけではなく、日本人の配偶者にも共同で発生する。もしも経済的な能力のない人がアメリカの税金の支払いを求められたらどうなるか。さらにその時にはアメリカ人の配偶者が亡くなっているかも知れないし、婚姻関係を解消しているかも知れない。面倒な話になりかねない。 金銭だけの話ではなく、申告を行うための時間・労力・エネルギーも必要だ。経済的な損得を脇に置けば、わざわざ進んでアメリカの税の世界に飛び込んで、申告や納税の義務を負うことはないだろうと思う。
日本の居住者がアメリカに申告する時はForm 1040NRを用いる。日本の居住者とは税務上の概念で、アメリカ市民やグリーンカードホルダーは日本に住んでいても、税務上、アメリカの居住者なので、Form 1040NRを用いることはない。 日本に住んでいる人は、アメリカ市民でもなくグリーンカードホルダーではないので、Form 1040NRを使う。 Form 1040とForm 1040NRの違いの一つにStandard Deductionがある。Form 1040にはありForm 1040NRにはない。Form 1040NRではSchedule A(Itemized deduction)を用いるしかない。 日本の申告をする時に医療費控除が大きいので、アメリカの申告でも医療費控除を取ろうと、たくさんの時間を使ってデータを整理するかも知れない。しかし、日本に住んでいる人には、医療費控除は日本の申告書で使えても、アメリカの申告書ではほぼ使えない。 固定資産税などもアメリカの固定資産税なら対象だが、日本の固定資産税は無関係だ。住宅ローン利息は、日本の不動産を対象として日本で払っている利息は使えない。寄付はアメリカで適格団体と認められている団体以外の日本の団体への寄付は、原則として控除対象とはならない。 こうやってみるとSchedule Aで控除を取れるものはほとんどない。この場合、たくさん時間を使ってレシートを集めて整理しても、ほとんど無駄に終わってしまう。 Form 1040ならばStandard deductionがある、2023年ベースで$13,850/人があるので、これ以下の所得ならば申告要件を満たさない。ところがForm 1040NRならStandard deductionはなくSchedule A(Itemized deduction)も使えないことになると、アメリカの所得があると、金額にかかわらずアメリカの申告を行うことになる。 そうすると100円・200円の所得で税額が$1に満たない場合が出る。IRSは$1以下の税金は払わなくても良いという。では申告をしなくても良いとは明快に言っていない。きちんと申告をしているという実績を残すには、申告をするという事になるが面倒だ。
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