2016年12月

2016.12.31
所得税

これには驚いた

日米の税務でのトラブル対応が多い。いろいろなケースがあるのだが、驚いたケースがあった。 日本に住んでいるアメリカ人がアメリカに申告をする。アメリカの申告ゆえにアメリカ本国にいるアメリカ人の専門家に依頼をしている。コミュニケーションもアメリカ人同士なのできわめて円滑に行っているに違いない。 しかし、どういうわけかアメリカ人の方が私のところに相談に見えられた。その方は配当の金額が大きい方で、日本で得られている配当がほとんどだ。話を聞くと、何か日本の所得の申告について、アメリカにいる専門家と話しても違和感があり、日本人の専門家が良かろうと思ったとのことだ。 さて、特定口座年間取引報告書を見せてもらった。日本語を十分に理解できない方は、このフォームを見ても何が何だかわからないだろう。ましてや、それをアメリカ本国にいる日本語が全く分からない専門家がその書類を受け取っても困ったに違いない。 果たして、株式の譲渡損失が1000万円以上あるのだが、譲渡益として認識されてしまっていた。さらに、日本で課税を受けた税額を外国税額控除として控除を取っていない。これにより、アメリカにサラリーマンの年収ほどの税金を払っていた。これには驚いた。実際にはほとんど税額が発生しない。 これは言うまでもなく日本語という言葉の問題によって起きている。特定口座年間取引報告書をもらってもほとんど理解できない。そしてそのデータをアメリカ本国にいるアメリカ人の専門家に渡されても、その専門家も理解できない。お互いに本当に困っていたのではないかと思うものの、初めからボタンが掛け違っていたわけである。 日本語が日本人以上にわかり読み書きもできるアメリカ人もいる。それだけでは税務申告ができるわけではない。さらに日米の税法の知識も無ければどうしようもない。言葉が分かり、税法の知識がある税務専門家に依頼できていたらこういう状態にはならなかったに違いない。 でも“言うが易く行い難し”だからこうした事態が起きているのだろう。ここまで極端ではなくても、類似ケースはあるのだろうと思わずにはいられなかった。

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2016.12.30
遺産税・贈与税

検認裁判(Probate)

Probateはラテン語の”Prove”という意味から発している。検認裁判は亡くなった人の財産がその相続人に移転する法的なプロセスだ。 財産は遺言で相続人へ移転する。検認裁判では、故人が遺言を残していればその遺言が裁判所に提出され、検認裁判の手続きが始まる。遺言がないこともあるわけで、遺言が無い旨を裁判所に申請し検認裁判となる。 遺言が無い場合は、財産が存在する州の無遺言相続法で財産が相続人へ移転する。無遺言は、全く遺言がない場合もあるし、部分的に遺言に規定されていない場合に起きる。 遺産検認の手順 第一ステップ:遺言が存在するか否か、また遺産管理人が指名されているか否かの確認が行われる。遺言執行者(遺言ありの場合)か管財人(遺言なしの場合)が任命される。第二ステップ以降が裁判所の管理の下で遺言執行者か管財人により行われる。 第二ステップ:故人の財産目録を作成する。 第三ステップ:故人の債権・債務を調査され、債権者、債務の目録が作成され、債権の回収や債務の支払いが行われる。 第四ステップ:債権、債務が精算された後に相続人に対しての財産の移転が行われる。 すべての財産が検認裁判を経由するかと言えば、必ずしもそうではない。生命保険の死亡保険金の受取人が設定されている場合や、共有財産である場合などがその例だ。 検認裁判は故人が亡くなったときに住んでいた州の検認裁判で行われる。ところが、不動産については、相続分割主義で不動産の存在する州の検認裁判で行われる。そのため不動産のある場所が複数の州にまたがる場合は、複数の検認裁判が必要になりえる。 検認裁判は、法的な手続きの積み上げになるので時間がかかるし費用もかかる。正式な検認裁判となると1年では終わらない事もある。 一つの手順で債権公告だけで4か月とかかかる。 アメリカの遺産税の申告期限は個人の死亡日から9か月以内、日本の相続税申告期限は同じく10か月以内だ。アメリカの遺産税申告に関しては申告期限の延長を申請して処理せざるを得ないことが頻発する。

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2016.12.29
遺産税・贈与税

貸金庫を開ける

多くの人が重要な書類を銀行の貸金庫に入れている。遺言も貸金庫の中に入れられていることがある。遺言を開けなければならないことになったら、貸金庫を開けることが必要になる。これを開けるにはどうするか。 州によってそのやり方は異なるのだが、大きくは次の二つのやり方による。 1.裁判所の命令で貸金庫を開ける 2.裁判所の命令なしに貸金庫を開ける 裁判所の命令で貸金庫を開ける場合 検認裁判所は故人が貸金庫を借りていた場合、故人の代理人に貸金庫の中に遺言があるかどうか確認することを認める。裁判所が命令を出し判事と銀行が同席する前で代理人は貸金庫をあらためることになる。遺言書が貸金庫の中にあれば、判事は銀行に対し、遺言を代理人に渡すように命令する。遺言を手にした代理人は、検認裁判所の職員に遺言を届ける。 裁判所の命令なしに貸金庫を開ける場合 裁判所の命令がなくても貸金庫を開けられるのだが、開けることができる人は、貸金庫の鍵を持っている人か故人の身内か遺産管財人だ。故人の配偶者、両親、成年に達している子供、孫等になる。 貸金庫の鍵を持っている人は、故人の死亡証明書と、自分の身分証明書を銀行に提示する。こうした人が銀行同席のもとに貸金庫を開けて遺言書があれば遺言をその検認裁判所か遺産管財人へ届ける。 裁判所の命令なしに銀行が動く場合、銀行は文書のコピーを取り最低4年間は保存する。

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2016.12.28
遺産税・贈与税

贈与の年間非課税額

アメリカの贈与にも年間非課税額があって、この金額以下ならば課税対象にならない。2018年から2021年までは$15,000で、2022年では$16,000だ。 Aさんに、贈与をしてくれる日本の祖父母、父母、おじさん、おばさん、その他親戚で合計10人いたとする。それぞれ$10,000を贈与してくれると、Aさんは10人×$10,000=$100,000贈与されたことになる。2018年から2021年までの$15,000と言うのは、贈与する人についての枠なので、贈与された人は全く贈与税を心配することがない。 ただし贈与を受けたAさんは日本の贈与税を考えなければいけない。

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2016.12.27
情報申告

外国金融口座の報告(FBAR)とは

1.目的・背景 海外に隠し口座を持ち、様々な投資で利益を上げていても、アメリカにその所得を申告していない人が問題になっている。アメリカは海外の所得にもきちんと税金を払わせるように力を入れている。また9・11以降、テロ資金の国際的な監視がアメリカの安全保障にとって非常に重要となっている。 2.報告 Fin CEN Form 114というフォームで、金融口座の所有者名、住所、口座(対象口座をすべて)、残高、金融機関名、支店名、支店住所等をオンライン情報申告で行う。 (オンラインサイト) BSA E-Filing System 3.対象者 アメリカ市民とアメリカの居住者(グリーンカード所有者も含む) アメリカ国内のパートナーシップ アメリカ国内の会社 アメリカ国内のトラスト、遺産財団 4.報告の金額要件 外国銀行、証券会社あるいは他の金融機関の口座(複数口座)の合計残高が、その年のどこかの時点で、$10,000以上あれば報告義務が生じる。一つの口座が$10,000未満でも、複数の口座を合計して$10,000以上ならば対象となる。 外国の銀行が、アメリカの銀行の支店の場合は報告より除かれる。 5.報告期限 2016年対象の2017年申告分からは申告書の申告期限と同期する。即ち、2017年4月18日期限となる。 ただし申告書提出の6か月延長を申請した場合、延長された期限となる。 6.罰則 この金融口座の報告をしなかったり、虚偽の報告をした場合は罰金や実刑を受ける。罰金は報告をしていない金融口座の最高残高の何パーセントという計算をする。納税額よりも大きくなる可能性がある。 7.その他 税金の申告だけに目が行き、この報告制度を知らない人が多くいる。ペナルティから見れば、税金の納付額よりも簡単に大きくなることもあり得る。

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2016.12.25
遺産税・贈与税

手書きの遺言書

手書きの遺言は、遺言者が自分の手で書いたものだ。一般には遺言は公証されたものでなくてはならないが、多くの州では公証されていない遺言であっても最低限の要件を満たせば、公証された遺言と同じように扱われる。 (手書きの遺言が有効となる要件) 1.その手書きの遺言は、確かに遺言を作った人が書いたものだと言う証拠がなければいけない。 2.遺言を作った人は、遺言を書くだけの知的能力がなければいけない。 3.遺言を作った人は、財産を相続人に相続するよう指示していなければならない。 手書きの遺言は緊急の時に作られる事が多い。公証のない遺言を認めない州であっても、緊急な場合に書かれた遺言は認められる。これは当然だと思える。なぜかと言うに、戦争時に突然戦闘に巻き込まれて命を落とすこともあろう。緊急の時において公証など考えようもない。 タブレットに書いた遺言を認める判断も出されている。 有名な話で1948年6月8日にカナダで起こった話がよく紹介される。 農業を営んでいたセシール・ジョージ・ハリスという人が自分が運転していたトラクターの事故で命を落とす。そのトラクターのフェンダーに“この事故で私が死んだらすべては妻に遺す。セシール・ジョージ・ハリス”と書いた。このフェンダーは立派に遺言として認められている。 フェンダーはタイヤを覆うカバーのこと。昔の車はしっかりとタイヤをフェンダーが覆っていたが、今はボデーの一部になってしまっている。

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2016.12.19
遺産税・贈与税

遺産税の税率

アメリカの相続が起きた場合、2016年現在での連邦遺産税の税率は下記の通りだ。 なお、表の右端の税額は、一番左の金額に対する税額となっている。 遺産税額の計算の仕方:40万ドルの場合 ①25万ドルまでの税額は70,800ドル ②25万ドルを超え40万ドルの15万ドルは34%の税額で51,000ドル 40万ドルの税額(①+②)=121,800ドルとなる。 ただし、故人がアメリカ市民であれば545万ドルの生涯控除額がある。 税額に引き直すと2,125,800ドルの税額控除となる。 という事は、税額が発生したら常に40%の最高税率となる。 40万ドルは545万ドルより少ないので税金は発生しない。 さらに、545万ドルを超えても、相続がアメリカ市民の夫婦では配偶者控除額は無制限だ。 アメリカ市民の夫婦では相続によって遺産税を払うことがない。 しかし、アメリカ市民ではない日本人の場合は545万ドルの生涯控除額はそのまま使えず、 無制限の配偶者控除も適用されない。

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2016.12.15
所得税

IRSからの手紙

IRSから手紙をもらうことは多くの場合、愉快なことではない。名前と社会保障番号が不一致になっているとかならまだしも、IRSからは税金を追加納付しなさいという内容の手紙が来ることが多いからだ。個人の所得税では、当然ながら所得金額の大きい場合の方がチェックを受ける可能性が高い。遺産税の申告では、金額が大きくなるので、税務調査の対象になる可能性が高い。 手紙にIRSの電話番号が記載されており、英語を話すことに問題がなければ、IRSに電話をして教えてもらう事が出来る。ただ、日本から電話をする時間は、日米の時差のおかげで夜中になる。電話をかけたものの、サポートセンターに電話してつながらないように、30分とかそれ以上平気で待たされる。 やっとIRSに電話がつながってもかなり怪しげな答えが返ってくることもある。あるいは、電話をたらいまわしにされて答えがもらえない。 電話は大変なので、どうして税金が過少なのかと電子メールで質問すると、技術的な内容には答えら得ない?と訳の分からない回答をもらうこともある。パソコンや税務ソフトの使い方で正しい税額となっていないから、同じ環境にないIRSがそれを説明するのは無理だと言っているのかも知れない。 特にアメリカ非居住者の税務申告になると、どこまで適正な回答をしてくれるか疑問が残る。回答している側があやふやな答えをしても、答えをもらう側はそれを評価できないと、ボタンを掛け違ってしまう。 にもかかわらず、納税者が税金を払っていなければ、IRSは督促状を出す。マニュアルどおりの動き方だ。困るのはIRSは必ずしも正しいと言っているとは限らないことがある。また、その処理も大勢の人を相手にしているので機械的になる。IRSから手紙が来た場合は、どうしてよいのかわからずに放置しておくとえらいことになる。 彼らは問題ありとデータをコンピュータに入力しているので、そのデータがなくならない限り機械的にフォローしてくる。請求書がどんどん送りつけられるようになるし、高圧的な内容となるものだから、ストレスも大きいし、どうしてよいのか途方に暮れてしまう事がある。IRSから手紙が来たら、専門家に相談するのが無難だと思う。

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2016.12.15
所得税

所得とは

アメリカの連邦税の課税標準は所得である。所得は税法や規則では直接的な定義がなされていない。連邦税法セクション61は“総所得は次のものを含み、いかなる源から生まれた所得も含む”と定義する。 1.役務対価 2.事業所得 3.資産売却益 4.利子 5.家賃 6.ロイヤルテイ 7.配当 8.慰謝料と離別の支払い 9.年金型貯蓄 10.生命保険からの所得 11.年金 12.負債免除の所得 13.パートナーシップ所得のパートナー持分 14.故人の所得 15.遺産財団やトラストの持分からの所得 その他に所得の中に入れるべきものとして、内国歳入庁の解説書は次のものも挙げている。 *賄賂を受け取ったら所得に含める。(あげる方は控除できない) *薬物などによって得られた不法な所得 *キックバック、サイドコミッションなど *盗んだもの、盗んだ年にもともとの所有者に盗品を返さなければ、盗んだものの公正市場価格を所得に入れる。 要は、出所を問わないので、所得があった場合には、すべて申告しなさいと言う立場である。

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