2023年10月

2023.10.29
遺産税・贈与税

教育資金一括贈与

日本には教育資金一括贈与があり、1500万円までの教育資金の贈与は非課税となる制度がある。祖父母が日本に住むアメリカ市民権も併せ持つ孫に、教育資金の一括贈与を行った場合を考えてみる。 アメリカの贈与税はもらった人が課税を受けるのではなく、贈与を行う人が課税される仕組みだ。日本とは180度異なる。 では、もらう側の孫は何もしなくても良いのかと言えばそうではない。アメリカでは外国贈与の報告制度があり、その課税年に10万ドルを超える外国贈与がある場合、Form 3520で報告をしなくてはならない。この報告を行わなければペナルティの対象となる。 日本の教育資金一括贈与はアメリカの税務から見た時にどう扱うべきなのだろう。そもそも、この制度は贈与たり得るのか。贈与としたらいつForm 3520を提出するのか。 贈与とはあげましょうという人ともらいましょうという人の双務的な契約だ。祖父母が幼稚園、又は小学校に入学する子供に贈与をしますといっても、孫に行為能力がなく、何のことかわからなければ、祖父母の一方的な行為で贈与とは言い難いだろう。 また、贈与であるからには贈与を受けた人が完全に自分のものとして、自由に贈与を受けたお金を消費したり処分することができなければならない。 教育資金一括贈与は直接、その本人にお金が渡るわけではなく、金融機関にプールされている。その子供の自由になる個人の預金口座にお金が振り込まれているわけでもない。1500万円を金融機関の教育資金口座に払い込んでもらっても、その使途について入学金、入園料、授業料、教材とか制限がある。その事実を証する証票がなければその資金を払い戻してもらえない。お金が教育資金として使われなければこの制度の対象にはなり得ない。 こうした状況では、アメリカの税務から見た場合、1500万円の教育資金一括贈与の資金が金融機関に振り込まれた時に、贈与がなされたと認定するのは難しいだろう。 幼稚園・小学校・中学・高校・大学等に入学時に、お祝いとして贈与をもらうとか毎年の授業料を払ってもらうならば、その時点で、贈与が都度発生したと見るべきだろう。 さてForm 3520は1課税年で10万ドル以上の外国贈与が報告対象だ。現時点では$1は約150円なので、1500万円を一回に教育費として使えば、10万ドルとして報告の対象となる可能性がある。毎年授業料100万円とか、入学時に100万円とか200万円とか入学金として使っていたとしても、現状の為替水準では1年で10万ドルを超えることはない。 こうして考えてみると、教育資金の一括贈与をForm 3520で申告しなければならないケースはほとんどないと考えて良いだろう

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2023.10.22
所得税

IRSの作成する申告書

納税申告書を提出しない場合、IRS が代わりに申告書を作成することがある。IRS は、第三者から受け取った情報をもとにこの申告書を作成する。たいていは、 まともな申告書ではなく、大きな納税額を示す。 雇用主が W2 を IRS に送り、銀行も 1099-INT を提出する。利子、配当、キャピタルゲインも証券会社から個人にStatementが送られ、並行してIRSにも送られている。IRS はこの情報を使用して申告書を作成する。 その情報をもとにIRSが代わりに申告書を作成してくれるならば、どんなに楽であろうと期待してはいけない。 株の売り買いを繰り返しているとする。この譲渡益、譲渡損を計算して税額を算出する。当たり前だが、その計算をするためには、譲渡した時の金額と、株のコストがわからなければ計算できない。コストを紐づけられないから、コストゼロ=100%利益だ。RSUなど給与の中に入っていても、譲渡益の計算にも入れてお構いなしに二重計算する。 かくしてIRSの作成する申告書は納税額が数百万円、数千万円という言うお化けのような申告書ができる。これが納税者に送られてくることもあり得る。 これには30日の猶予期間があり、同意する場合は、通知に署名して返送する。 同意はできないわけだから、自分から正しい申告書を作成して提出する事になる。あるいは申告書の提出要件を満たさないのであれば、その理由を説明してIRSを納得させなければならない。 これに答えないで放置すると90日後にはIRS はもう一度、返答する機会を与える。これは最後の警告で、選択肢は、1) 同意する2) 正しい申告書を提出する 3) 提出する必要がない理由を説明することになる。90 日以内に応答しないと場合、IRS は税金を徴収する権利を得てしまう。きちんと正しい申告書を提出するしかない。 この手紙はIRSに通知している最も新しい住所にに送られる。すでに日本に帰国してしまい、本人は一切こうしたことを知らず、IRSはきちんと形式的な段取により、税金を徴収する権利を得ていたら大変だ。 こうした状況を避けるには、最新の住所をIRSに通知して、きちんと申告をしている事だ。もしも申告書を提出していなかったら、申告時期を過ぎていても、IRSから何かを言われる前に自分から申告書を送ればよい。きちんと申告すれば、そんなに心配するような事態にはならない。

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2023.10.15
所得税

便りがないのは良い知らせ

2023年アメリカ個人所得税の延長申告期限がいよいよ明日となっている。 やっと申告書を提出してIRSは何か言ってくるのだろうか。半年しても何も連絡がない。便りがないのは良い知らせと考えてよい。 還付金をもらえるタイミングは、IRSが申告書を処理するタイミングで異なる。電子申告では大体1か月ぐらいで、紙の申告だと3か月程度と考えられる。しかしあくまで目安なので、個々のケースでは様々だ。 さて、IRSから何かを言ってくる場合だ。申告書に関して電話をしてくる、メールで言ってくることはなく、もしもそうしたことがあれば詐欺だと考えてよい。 IRSはコンタクトを行う手段として手紙を用いる。還付以外でIRSから手紙をもらう場合は、大体何かうまく行っていない場合だ。申告書を処理するために不足しているデータを提供してほしい・申告書の内容はIRSとしては同意できない・IRSが計算するとこれだけ税額を納付してほしいといった内容だ。あるいは、延滞税・金利が発生しているのでこれだけ払って欲しいということもある。 IRSから手紙をもらった場合は、無視をしてはいけない。IRSの手紙で足りない情報を提出するように求められた場合は、その情報を提出すれば良い。 さて、税額が過少なので、これだけ払うようにと言ってくる手紙は、正しい場合もあるし正しくない(IRSが間違っている)場合もある。IRSが正しいならば、IRSの言うとおりにすみやかに納付する。時間が経つほど延滞税・金利が増えるからだ。 IRSが正しくない場合は、自分の正当性を主張してIRSに認めさせなければならない。認めさせることができないと、どうにもならない。自分だけではどうにもならない場合は、専門家の力を借りて反論することもあり得る。この場合、経済合理性がなければならない。道路上に100円玉を1個落とし、それを回収するに1,000円かかるなら、動かない方が傷は浅いだろう。金銭はいくらかかっても、自分の正しさを証明したいとなれば別の話だ。 さて、IRSに申告書を提出して何も便りが無いことを願う。これからIRSと事を構える事になると、半年、1年とかかかってもおかしくはない。年内はあと2.5か月だ。来年の1月末には2023年分の2024年申告が始まってしまう。何もなく無風で終わってほしいものだ。

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2023.10.08
所得税

延長申請の効果

10月16日は申告期限の延長をした場合の申告期限だ。ちょうどあと1週間で期限がくる。何としてもこの期限までに申告を終わらせなければいけない。 さてこの延長申請をして申告をすることは税金の面でどんな影響があるのか。 仮に納付額を$500として、次の3ケースを考えてみる。 ① 4月17日の申告期限までに申告をして納税する場合 ② 延長申請をせずに10月16日に申告をして納税する場合 ③ 10月16日までの延長申請をして、10月16日に申告をして納税する場合 ① の場合は簡単で$500を納税する。期限内の申告なので税額$500を支払い、延滞ペナルティ・金利はない。 ② の場合は元々の税額に加えて、申告遅れのペナルティ・納付遅れのペナルティ・金利を支払うことになる。大雑把な計算で、それぞれ$500+$435+$15+$28=$980となる。 この6か月で元本$500の倍近い$480のペナルティと金利が発生する。 ③ は②に準ずる。 同じ計算で、$500+$0+$15+$15=$530だ。違うのは遅れて申告をしたペナルティがゼロだ。延長申請していると、申告遅れのペナルティはなく、③と②の差は$450となる。 実は②の中に申告遅れのペナルティ$435が潜んでいる。60 日を超えて申告が遅れた場合、申告遅れのペナルティは、$435または税金の100%のいずれか小さい方となる。この場合、$500より$435が小さいので、これがミニマムペナルティとなってしまう。 IRSの年間の金利は7%なのだから、ざっと目安で$500×7%×6か月÷12か月=$17.5程度(2千円程度)のコストなら構わないと思っていたとする。実際は計算式も違って$450(6万円以上)というコストだ。 今年はどうしようもないが、来年からは延長申請を申告期限内に行う事が大事だ。

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2023.10.01
所得税

延長戦の特別ルール

税金の計算は、通常は1回行い、算出された税額を払えばよい。野球で言えば1回から9回まで終わればゲームセットだ。しかし、それで終わりにさせてくれないことがある。10回から延長戦に入り、延長戦での税金を計算する。9回までの税金と延長戦の税金を比較して、どちらか高い方の税金を支払わせてはじめてゲームセットとなる。 AMT(Alternative minimum tax)は、特定の高所得納税者に最低額の所得税を支払わせるようにできている。 野球のタイブレーク制のようなものだ。延長戦でランナーを2塁とか得点圏にランナーをおいて始めるというルールだ。当然、得点は入りやすくなり、早く試合が決着する。 2塁にランナーを置いておくには、通常の税金計算で算出された課税所得(9回で算出されたもの)を発射台に置く。それに通常の税金の計算で使われた州税、標準控除、Net operating lossなどを埋め戻して課税所得を出す。 ここからAMTの免除額を差し引く。免除額を超える部分に26%か28%の税率で税額を計算する。この税額に外国税額控除を引いてAMTの税額が出る。AMTの所得税が通常の所得税よりも高い場合は、高い税額を支払う。 誰もがAMTの対象となるわけではないが、適格ストックオプションの行使では、AMTによる税額が出ることもある。即ち、株式を譲渡するまでお金が手元にないにもかかわらず、AMTの税金が先行して発生する事もあり得るので要注意だ。 このAMTによる税額は、全く意識していない事が多い。まるでレーダーに映っていない飛行機が、気が付いた瞬間には自分の背後にいて、一瞬のうちに狙い撃ちされる。まさに見えないStealth taxのようだ。 何としても税金は払ってもらいますよと言う仕組みになっている。

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