アメリカの遺産税、Estate taxesというのは誰かが亡くなって、その財産を相続する時に課せられる税金だ。それは相続税の事ではないかと思われるかも知れない。相続税はInheritance taxesと言われ、Estate taxesとは別のものだ。
同じように思うかもしれないが大きく異なる。
誰が税金を払うかが全く異なる。また課税される対象財産も異なる。
遺産税:故人が税金を払う
相続税:相続した人が税金を払う
遺産税:相続財産の総額に課税される
相続税:相続した分に課税される
アメリカは遺産税方式をとるため、亡くなった人が死んでも、なお、自分で税金を支払う。亡くなった人は行為能力がない。ゆえに、自分では動けないので、亡くなった時に自分に代わる遺産財団が形成される。
遺産財団の執行人は遺言書に記載される。遺言書がない場合や執行人が先に亡くなっていたり、任に堪えない場合、そもそも設定されていない場合は裁判所が認める人が執行人となる。
故人に帰属する財産は自らの遺産財団に移転し、遺産財団の執行人が故人に代わって遺産税や未払いの負債を支払い、残った財産を相続人に渡す。故人の段階で相続財産総額に課税を受けているので、相続財産を相続した人は、税金を支払った後の財産を手にする。それ故に、相続人は自分の段階では税金を払う必要がない。それでも遺産の相続を辞退することができる。
あたかも、死亡時に自分に代わる清算会社が設立され、債権・債務をきれいにして、残余財産を相続人に渡たす。債務は支払が行われているので、相続する人は債務を相続することはない。しかる後に、清算会社そのものが消滅するといった段取りとなる。
相続税は、遺言があれば故人の遺志が反映されるが、遺言がない場合は、残った人たちの間で協議してどのように財産を分けるか決める。債務があれば債務まで相続する。相続税も相続人が相続した部分に課税を受けて税金を支払う。
アメリカは、遺産税は連邦の段階のみならず、州の段階で遺産税または相続税がある。遺産税方式はイギリスの方式が採用され、相続税方式はドイツやフランスの方式をとる州で行われる。
それぞれの州によりやり方が異なるため、必ず二段階で連邦と州で課税を受けるわけではない。州によっては課税をしない州もある。
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