遺産税・贈与税

2022.09.11
遺産税・贈与税

遺産税の統計を見る

アメリカの総人口は、2016年において約3.2億人で年間の死者数が約275万人だ。このうち、遺産税を納付する申告書が提出された件数が約5,300件で、亡くなった人の0.19%が遺産税納付の申告をしている。 統計では遺産税を納付する比率は、1976年の7.65%が過去90年近くで最も高い。2000年には2.18%で、2005年には0.97%と1%を下回った。2011年から2016年では、0.18%とか0.19%で推移している。1976年レベルの40分の1まで縮小している(出典:IRS、Tax policy center)。 いずれにしても2016年値で0.19%と言う事は、アメリカでは亡くなった人の1,000人に対し、2件しか遺産税を納付していない。さらに、ここ2・3年では課税の申告書は約1,900件まで落ちている。とすると1,000人に1件弱となってしまう。 日本では財務省の2019年データでは、死亡者数約138万人で相続税の課税件数が約11.5万件だ。相続人数が平均2.74人だと言うので死亡者数あたりに割り戻すと、課税件数は42.691件となる。亡くなった人の3.0%だ。1,000人に30件程度となってしまう。アメリカの遺産税は故人に対する課税で、日本では相続人に対する課税なのでレベルを合わせた。 アメリカの遺産税が課税されない原因の大きなものは基礎控除の大きさだ。2016年では545万ドル($1=113円で約6.2億円)だったが2022年現在では1,206万ドル($1=140円で約16.9億円)ある。さらに配偶者の未使用分も使おうとすると、今では最大でこの2倍の34億円弱となる。 アメリカの遺産税は外国人に対してはそんなに甘くはない。相続税条約を結んでいない場合は6万ドル($1=140円で8.4百万円)の基礎控除しかない。アメリカに不動産を持っていれば軒並み課税対象となってしまう。日本はアメリカとの相続税条約があるので、基礎控除が6万ドルとはならないが、それでもアメリカ市民と日本人の相続では差がある。 金持ちになったら、相続には課税せずに子々孫々金持ちでいられる社会が良いのか。亡くなったらお金を社会に還元して、社会に活力を持たせるべく遺産に対して課税をするべきか。

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2022.06.05
遺産税・贈与税

境目があやふや

他の人に対価を求めずにお金を与えることは贈与となる。お金ではなく、物、サービス、とか経済的な価値を持つものを与えても同じだ。 IRSは贈与とは次のように言う。 Any transfer to an individual, either directly or indirectly, where full consideration (measured in money or money's worth) is not received in return. これから見れば親がわが子を育てる事は贈与なのかと思うかも知れない。しかしこれはいかにもおかしい。 親が小さなわが子のために食べさせ、洋服を買い、学校に通わせ、医者に連れて行く。これは親として子供の養育義務を果たしているだけで、子供に贈与をしているとは言わないだろう。 しかし、いつしか子供も大学生になる。日本からアメリカの学校に通うこともある。学費や生活費を仕送りする。年間$30,000とかそれ以上、親が負担することもあるだろう。これは子供の扶養をしているのか、贈与に入るのか境目があやふやに思えるかもしれない。 教育費と言いながら、子供がそのお金で車を買ったり、投資の資金にしたりすると、目的外となり話が違ってくる。子供に全部渡して、贈与ではないかと言われると説明がめんどうだ。贈与と見なされないためには、子供にお金を渡すのではなく、親が直接、学校に振り込めばよい。 大学進学などで一人暮らしする子供への仕送りは、適切ならばアメリカの税金の心配しなくても良い。 アメリカの贈与税では教育費は控除されている。さらに年間非課税枠は2022年では$16,000ある。夫婦では2倍となり、$32,000を子供一人当たりに贈与しても、アメリカの贈与税の申告は不要だ。

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2022.03.06
遺産税・贈与税

コストがわからないと

この時期、孫が学校に入学したお祝いに株をあげる祖父母がいるだろう。アメリカの税務では贈与をする祖父または祖母が贈与税を支払い、贈与を受ける孫には贈与税はかからない。さらに、年間非課税枠の$15,000を越さない限り、贈与者にも贈与税は発生しないのだからこんないいことはないと思う。 さて、その孫が小学校、中学、高校、大学を経て社会人になる。その株式を売却して家の購入資金に充てることもあろう。その時期には、祖父母はもうこの世には生きていないが、孫のために少しでも役立つことができて喜んでいるはずだ。 そこまでは良い。もらった株式を譲渡した孫は、アメリカの居住者ならば、譲渡益があるとアメリカの所得税を申告しなければならなくなる。アメリカの非居住者(日本の居住者)ならば日本の所得税を考えることになる。 株を譲渡した人が譲渡損益の計算をして申告をしなくてはならない。株式を譲渡した場合、譲渡額から取得コストを差し引いて譲渡益、譲渡損を計算する。簡単な引き算だ。当たり前の話でどうと言う事もないように思える。 ところが、この取得コストがわからない。祖父母がいつその株を購入したのか、一体いくらだったのかという記録が残っていない。祖父母からしても、この株はいくらで買ったという記録と共にプレゼントするのは、何かひっかかり、孫や孫の親(自分の子供)の喜ぶ顔を見たいだけだ。 かくして、孫はいったいこの株の譲渡損益をどうして計算するんだという悩ましい話になる。株式市場で取引されている株ならば、調べられるかもしれない。しかし祖父母の取得日がわからないと困ってしまう。さらに、株式市場で取引がない株式だと、容易な話ではない。 孫の負担を考えるのであれば、その株をいつ購入して金額がいくらだったという記録を添えてあげたい。将来、孫はその記録があるゆえに二重に感謝するに違いない。

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2021.02.14
遺産税・贈与税

居住者かどうか

アメリカの所得税の申告を行う場合、アメリカの居住者であるかどうかと言う事はとても大きな意味を持つ。全世界の所得に課税を受けるかアメリカ源泉所得だけが課税対象になるのか分かれ道になる。 アメリカの市民権やグリーンカードを持っている場合は、所得税においては居住者となるし、一定期間アメリカにいるとアメリカの居住者となるのが原則だ。 しかし、遺産税において、アメリカ市民以外の人がアメリカの居住者となるには実態と居住意志を見ての判断となる。 そうすると所得税においてグリーンカードを持っている人や実質滞在テストで滞在者となっても、遺産税においては必ずしもアメリカの居住者とならないこともある。税目によって居住者と非居住者が泣き別れてしまう。 仮に難民が自分の生まれた国を捨ててアメリカに入国したとする。そして、アメリカに入国して1週間後にアメリカで亡くなる。所得税の観点ではアメリカ市民でもないし、グリーンカードを持っているわけでもない。実質滞在テストでも183日に満たない。しかしながら、帰る国を捨ててアメリカに入国しているために、遺産税の上ではアメリカの居住者と判断されるという極端な話にもなりうる。 一方、日本で生まれ日本に家族が住んでおり、財産も日本にある人が、グリーンカードを取得して10年も20年もアメリカに住んでいる。しかしアメリカ人の配偶者が亡くなると、日本に帰国すると決めている。この場合は遺産税の上ではアメリカの居住者ではないと言うことも十分にありえる。

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2021.01.31
遺産税・贈与税

遺産税の増税

2021年では遺産税の生涯控除が11.7百万ドル(夫婦では2倍の23.4百万ドル)だ。日本円で言えば約12億円(夫婦で約24億円)の控除があるために、そこまでは遺産税が発生しない。最高税率は40%で2025年末まで継続されることになっていた。 大統領選挙で現バイデン大統領は、この控除を3.5百万ドル(夫婦で7百万ドル)、税率を45%に上げることを提案していた。この生涯控除(基礎控除)と最高税率の変更にとどまらず、相続財産の取得コストを取得コスト方式にかえようと言う大きな変更もある。 現状ではコストとは個人の相続開始日の市場価格に塗り替え(ステップアップ方式)となる。例えば故人が30万ドルで取得した不動産が、相続開始日に100万ドルになっているとする。相続人がこれを譲渡すればざっと70万ドルの譲渡益が出るが、その不動産をすみやかに譲渡すれば、コストが70万ドルに持ち上げられるので譲渡益は発生しない。かくして残された人の生活を守ることができる。 一方、取得コスト方式に切り替えられると、譲渡益が70万ドルとなり課税を受けることになる。大雑把に20%の税率として14万ドルの税金が発生する。日本ではこの方式なので、違和感はないかも知れない。 コロナウイルスで混乱している中で、実際にいつ立法化されるかどうかはわからない。しかし、時間の問題と考えた方が良いのではないか。通常は立法化された以前に完了した申告は、そのままで影響を受けない。しかし2021年の初めから遡って対象とすると言う事になれば申告が終わったものと安心できなくなる。 いずれにしても日本の相続から考えると異次元の話だ。日本人が亡くなった時にアメリカ遺産税でアメリカ居住者と見なされる場合、日本を含む世界中の財産が遺産税の対象となる。日本の相続税もあるために、アメリカの遺産税だけではなく日本の相続税が大きな課題になりえる。

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2020.11.08
遺産税・贈与税

バイデン候補が勝って

バイデン候補の勝利がほぼ決まったようだ。これによってアメリカの税金は増税にかじを切ることになる。 連邦遺産税においては生涯控除が減額されると見られている。2017年税法のもとで2020年の遺産税の控除額は$11.58百万($1=105円で約12億円)あり、夫婦の場合はこの2倍で$23.16百万(同じく約24億円)の控除がある。この控除額を超えた場合は40%の税率で課税を受ける。この控除額はインフレ調整を受けながら2021年から2025年まで増加していくのが足元の状態だ。 しかし、これは2025年末までの話で、2026年以降については新たな法律がない限り、2017年法以前に戻ってしまう。バイデン候補が大統領となって、2017年当時の控除額$5.491百万か、更に踏み込むと控除額がもっと減少し、最高税率60%とかに向かう可能性がある。 控除額は生前(贈与)でも死後(相続)でも使える。今の状況では、仮に約12億円の財産があり、2025年末までに亡くなれば、控除により遺産税は発生しない。何もせずに時間が経過してしまうと、約12億円の控除は使えず、課税対象遺産税額が約6億円増加して約3億円前後の増税となる可能性がある。 では今のうちにこのメリットを取ろうと、約12億円を贈与して、2025年までに亡くなれば贈与は無税となる。ところが2025年を超えて2026年になっても生きていれば、約6億円の控除しかない。この場合、6億円は課税対象になって最高税率で課税されてしまうのか。基本的な考え方は、12億円の控除は取り上げられることはない。 しかし、バイデン大統領になり、2025年末ではなく早期に終了させて、控除額も約6億円ではなくもっと少なくすると決めたらどうなるのだろうか。法律が成立するまでに行われたことまで無効とはしないだろう。そのため新たな法律が決まる前に、駆け込みの贈与が増加すると見られる。 上記の控除額はあくまでアメリカ市民や遺産税・贈与税法でアメリカ居住者とみなされる人が対象だ。日本に住んでいる人は、同じ控除額を享受できるわけではない。また、日本の相続税・贈与税も考えなければいけない。

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2020.09.20
遺産税・贈与税

これはいかがなものか

アメリカの市民権やグリーンカードを持つ人が相続で財産をもらう。アメリカは贈与・相続を受けた場合に、財産を受け取った人は課税を受けない。何もしなくてもいいというわけではなく、外国人からの贈与・相続であれば、その財産額が10万ドル以上だと Form 3520で報告義務が生ずる。 相続でForm 3520を提出したら、IRSから相続人が相続財産に対する最高40%の税金を払うように言われる。そんなことはあり得ないはずだ。なぜなら相続人は遺産税を払わないからだ。 ところが、亡くなった方がアメリカの市民権やグリーンカードを放棄した人だった。この場合には、日本の相続と同じように、相続人が税金を払う可能性が残る。 但し、被相続人が出国税でCovered expatriateに該当する場合だ。該当する要件は3つある。 ①納税額基準 過去5年の平均納税額が2019年の場合だと$168,000以上 ②財産額基準 市民権・グリーンカード放棄時に純資産$200万以上の人 ③適正申告基準 過去5年の申告納税義務をきちんと果たしていない人 Covered expatriateではないということを証明すればいいではないか。 しかし、故人が市民権を放棄したのは30年前だったとする。適正に申告をしていたという証拠をどうやって提出し、該当しないと証明するのか。30年前に財産が$200万以下と説明するのも容易ではない。 IRSに30年以上も前の申告書を第三者が求めてもどこまで開示してもらえるかわからない。証明するのは至難の業で、IRSの言うように40%の税金を払うのか。これはあまりにも乱暴な話だ。 IRSもやたらと刀を抜いて振り回すことをしないとは思う。しかしいざという時には、市民権・グリーンカードを放棄した人からの相続や贈与は、面倒な話になることもあり得る。頭の片隅にでも置いた方が良いだろう。

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2020.09.06
遺産税・贈与税

民主党のバイデン候補が勝ったら

増税に潮目が変わりそうだ。日常生活の身の回りで何が影響するのだろうか。 バイデン候補が勝つと、個人所得税の最高税率が40万ドルを越すと37%から39.6%となり、100万ドルを超えるキャピタルゲインの税率が20%から39.6%となると言われる。 所得税だけではなく遺産税・贈与税の影響も出る。現状では約12億円/人(夫婦だと約24億円)の基礎控除が取れるが、2010年レベルの基礎控除が約6億円(上乗せはあるかも知れない)に戻る。 この中に、ステップアップの廃止もあるというのだが、この影響は大きい。ステップアップは財産の取得コストを、故人の死亡した日の市場価格に持ち上げてくれるものだ。 例えば親が30万ドルで不動産を購入し、亡くなった時の市場価格が100万ドルとする。相続した人が、右左に100万ドルで譲渡すると取得コストが100万ドルに塗り替えられているために、譲渡益がゼロで税金は発生しない。これをやめてしまおうというものだ。結果、取得コストは30万ドルのままなので、譲渡益が70万ドルに税額が発生する。 問題は、代々受け継いできた財産で、取得コストがわからないケースだ。日本はいよいよになれば5%を取得コストとみなす。ところが、アメリカの場合は、きちんとした資料を提示しない限りは取得コストをゼロとする。いくら何でも取得コストゼロで財産を取得することはあるまい。しかし親や祖父母の時代の資料が手元にあるのか。そうなると、譲渡額の100%が課税対象となることもあり得る。富裕な層にとってはきちんと管理がなされて資料が残っているかも知れない。ところがそうしたデータが残っていないと、むしろ所得の低い人が影響を受けてしまうかも知れない。 今のステップアップだと通常では相続時にアメリカの税金は発生しない。残された相続人の生活が守られ、相続人が財産を譲渡した時に初めて税金が発生する。財産を譲渡した時のお金が手元にあるので、そこから税金を払うことができる。それが相続時点で納税が起き、更に譲渡時点で税金が発生する事もあり得る。それでも日本の相続ではステップアップしないので、日本人には違和感がないかも知れない。

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2020.08.23
遺産税・贈与税

そうはうまくいきません

米国人は居住している場所とは無関係に全世界所得課税を受ける。日本に住んでいる米国人も米国に申告をする。米国では夫婦合算申告をすることが多い。そこで米国人の配偶者と日本人の配偶者でも夫婦合算申告を自然に考える。そのためには最初にその宣言を行い、IRSに認められることが必要な例外措置だ。 本来、日本人の配偶者は非居住外国人なので、米国源泉の所得がない限り米国に申告することはない。それをわざわざ米国居住者扱いをして、日本の所得まで米国の課税所得に入れる。2019年ベースでは標準控除の$12,200を利用できる。そこだけに限るとメリットがある。しかしながら、それが最良かどうかは別問題だ。 さて話は米国の遺産税となる。米国市民の夫婦間の相続では、税金がかからずに無制限に財産を相続できる。米国だけではなく、世界中でも同じ扱いなので、日本に住んでいる米国人の夫婦でも米国の遺産税では同じだ。日本の相続税は別の話だ。 米国遺産税では、米国人の配偶者と日本人の配偶者のケースでも同じと思うかも知れない。なぜなら米国に所得税の申告をする時に、日本人の配偶者を米国居住者として夫婦合算申告を行っているからだ。 日本人配偶者を米国居住者として所得税を申告を行い、これで相続対策ができたというわけにはいかない。いかに所得税では認めても贈与や相続では一線を画している。所得税での宣言が米国遺産税に及ぶことはない。

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