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暑い夏の夜に

2023年07月16日

米国市民権やグリーンカードを放棄した人は、やれやれ、これで一切のアメリカ税務から縁が切れたと思うかも知れない。しかしながら、税務上の出国した後でも気を許せないことがある。

外国贈与では、もらった人は、多くの場合、Form3520で贈与を受けたことを報告するだけで、贈与税を支払うことはないと書いた。しかしながら、物事には例外がありうる。良かれと思って行った贈与が、贈与された側にとんでもない影響を及ぼすこともあり得る。

贈与した側は納税をしなくてはならないと分かっている。しかしながら、全く予期しない事態が出来し、納税する資金がないとか、資金はあっても健康状態が悪化して動くことが難しくなってしまうこともあろう。

贈与者が納税できなくなってしまった場合、贈与を受けた人がその税金の支払いを求められることになる。

さらに全く意識をしていないところに、とんでもない悪夢が顔を出すかも知れないことがある。アメリカ市民権やグリーンカードを放棄した人が、贈与又は相続に絡む場合だ。

米国税法2801での贈与・相続への課税がある。この条項で「対象となる出国者」とされると、贈与・相続額に対して現時点では40%の税金が財産をもらった側に課されてしまう。さらに驚く事は、出国時の財産でお終いになるわけではなく、出国以降の財産も課税対象になり得る。

財産をあげる側はアメリカに住んでいないこともあり、相続なら亡くなっている。そのため、上述の対象でない出国者たることの証明が、財産をもらった側に発生すると言うややこしい話だ。

あたかも自分が潔白であることを、相手のデータで証明する話なので大変だ。一例がForm 8854で出国前5年の申告を適正に行い、納税額があれば納税をしていることだ。これを証明する責任が財産をもらった側にある。

アメリカ市民権やグリーンカードを放棄したのが10年前、20年前と言うこともあろう。財産をあげる方も、もらう方も、こんな話は聞いたことがないと言うはずだ。相続なら事実を究明しようにも、本人が亡くなっている。かくして財産をもらった人は客観的な証拠書類を提出できない。結果的にもらった財産の40%の課税と言うのはあまりにも過酷だ。

これを避けるためには、財産をもらう人の手元に、財産をあげた人の出国税の申告書や出国前5年の申告書、その申告のために必要なデータ、契約書などの関連データがないといけない。

アメリカ市民権やグリーンカードを放棄した人は、そうした書類を財産と共に財産をあげる人に対して、きちんと整理して渡さないといけない。財産をもらう人が複数いれば、そのデータを複数揃えなくてはならない。

そもそもこんな話を聞いたこともないと言うのが普通だろう。だからと言って免罪符にはならないのが悩ましい。アメリカ市民権やグリーンカードを放棄した人は、すべてForm 8854を提出していないと、それ以前の話でアウトになってしまう。

暑い夏の夜の怪談みたいな話である。

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