アメリカに不動産を保有している個人が日本に帰国する場合、夫が先に日本に帰国し、妻が子供の教育のためにアメリカに残ることがある。このように夫婦が日米で別々に住んでいる中で、アメリカの不動産を譲渡する場合、不動産の譲渡益控除を受けられるのだろうか。 アメリカの税法上の居住者は、以下の要件を満たす場合には、居住用不動産の譲渡益を控除できる。 要件: 所有要件(Ownership Test): 直近5年間のうち、2年以上その家を所有していること居住要件(Use Test): 直近5年間のうち、2年以上その家に住んでいること 控除額: 夫婦個別: 最大$250,000夫婦合算: 最大$500,000基本的に、日常的に住んでいる主たる住居(Main Home)であることが必要で、投資物件や別荘の場合には譲渡益控除を受けることはできない。 夫の日本の家が主たる住居となれば、アメリカの家はセカンダリー(secondary home)になり、別荘や別宅のような位置づけになってしまう。 アメリカに残っている妻と子供が、夫の帰国から数年後に日本に帰国し、その際にアメリカの家を売却する。家族として主たる家ではないので控除ができないかと言えば、譲渡益控除を完全に失うわけではない。 その理由は、夫と妻が別々に適用条件を判断できるという点にある。たとえ夫にとってアメリカの不動産がセカンドホームであっても、妻にとっては主たる住居であるため、妻が単独で所有要件と居住要件を満たせば、最大25万ドルの控除を受けることができる。ただし、妻に不動産の所有権がない場合は、この控除は利用できなくなる。 もし最大50万ドル(約7500万円)の控除を利用したい場合、夫婦の両方が所有要件と居住要件を満たす必要がある。夫が所有要件を満たして、過去5年間のうち2年以上住んでいる居住要件が問題だ。これを満たすためには、帰国後3年以上経過すると居住期間が2年未満になってしまうため、帰国後3年以内に譲渡する必要がある。 例外として、「やむを得ない理由」により売却する場合、居住期間の要件を満たしていなくても部分的な控除が認められることがある。健康上の理由、仕事上の理由、予期しえない理由などがあれば、部分的な控除が適用されることがある。 税務上の処理を簡単にするために、日本に帰国する前にアメリカの家を譲渡することを検討するのも一つの方法だ。日本の非居住者であるうちに不動産を譲渡すれば、日本での税務申告に直接影響しない。帰国後にアメリカの不動産を売却すると、譲渡益があれば日本の税金の対象になりえる。 最終的には税金の面だけで判断できるわけでもなく、税金以外の要素 (子供の教育、生活環境など)総合的に状況を考慮して判断することは言うまでもない。
(申告開始と申告期限) 2025年1月27日(月)が申告開始日 2025年4月15日(火)が申告期限 (海外からの申告) 2か月の自動延長可能 2025年6月16日(月)が申告期限・ただし納付は4月15日期限 (延長申請した場合) 2025年10月15日(水)が申告期限・ただし納付は4月15日期限 (州税) 州税の申告期限は連邦と一致している。下記の州は一致していない。 (連邦と異なる申告期限) ハワイ州:2025年4月20日 デラウエア州:2025年4月30日 アイオワ州:2025年4月30日 バージニア州:2025年5月1日 ルイジアナ州:2025年5月15日
今年のアメリカの申告シーズンは1月27日(月曜日)に始まり、IRSへの申告書の提出と納付の期限は例年通り4月15日だ。日本からは2か月の申告書提出の自動延長がある。6月15日が日曜日なので、6月16日が申告期限となる。 初めてアメリカの申告をされる方もいるだろうし、アメリカの申告をしなければいけないという事を初めて知ったという人もいるはずだ。 アメリカ市民またはグリーンカード保持者であれば、世界中のどこに住んでいても、毎年アメリカの連邦所得税の申告義務がある。その理由は、アメリカが「全世界所得課税」を採用している事による。これは、アメリカ市民またはグリーンカード保持者は、世界中の所得に対してアメリカの税金を支払う義務があることを意味する。世界中の所得と驚くかもしれないが、日本も同じで、日本に住んでいる人は世界中の所得が申告対象になり得る。 アメリカに住んでいれば、社会生活でアメリカの税金と接点があるため、申告・納税について社会生活の中で身につく側面がある。しかし、海外在住者は、アメリカの社会や文化、税制から離れた生活を送っているため、アメリカの税務申告の必要性を実感しにくい。特に、アメリカで生まれたが、生まれてこの方ほとんど日本に住んでいる人には、アメリカの税金は意識されていないこともあろう。 アメリカの税金に関しては膨大な情報があるものの、日本語のものは少なく、内容も複雑で理解しにくい。アメリカの社会や文化、税制から離れた海外で生活しているため、アメリカの税務申告の必要性を実感しにくい状況にある。 それでも申告・納税をしていなければ、ペナルティの対象になってしまう。ペナルティがあるから申告をすると言うのも一面的過ぎるが、交通ルールと同じで信号を守らないと交通事故にあってしまう。 アメリカ市民やグリーンカード所持者でない、ごく普通に日本に暮らしている人でも、アメリカに不動産を持ち、賃貸をしたり、不動産を譲渡すれば、アメリカの申告をしなくてはならなくなる。 あと、2週間もすればアメリカの個人所得税の申告が始まる。交通事故にぶつかって初めてアメリカの申告義務を知るという事がないように、微力ながら今年もサポートしたいと思いを新たにしている。
アメリカは市民権をベースにした課税を行う。アメリカ市民や永住権保持者は、世界中の所得に対してアメリカに税金を納める必要がある。海外で働いている場合、その国でも所得税を納めるため、同じ所得に対してアメリカとその国の両方で税金を支払うことになる。これが二重課税の問題だ。 この二重課税を避けるために、アメリカには外国所得控除(Foreign Earned Income Exclusion)という制度がある。一定の条件を満たせば、海外で得た所得の一部または全部をアメリカの課税所得から除外することができる。2024年の場合、除外できる最大額は$126,500となっている。 一方で外国税額控除(Foreign Tax Credit)という制度もある。これもアメリカ市民や永住権保持者が海外で得た所得に対する二重課税を緩和する。 外国税額控除は1962年の歳入法で導入され、外国所得控除は1978年の税制改革法(Revenue Act of 1978)で設立されている。歴史的には最初に外国税額控除があるのに、なぜ外国所得控除という制度が追加されたのだろう。 この理由をアメリカ市民が日本で働いて所得を得ている例を考えてみる。日本での所得が50,000ドルであり、日本の所得税率が20%、アメリカの税率が25%という仮定だ。 外国税額控除:日本で支払う税金は50,000ドル x 20% = 10,000ドルだ。アメリカでの税金は50,000ドル x 25% = 12,500ドルだ。アメリカの税は、外国税額控除後に 2,500ドル(12,500ドル - 10,000ドル)となる。 外国所得控除:2024年の外国所得控除の上限は126,500ドルなので、50,000ドルの外国所得はこの限度内で全額除外され、アメリカでの税金は発生しない。 この例からわかるように、外国税額控除は外国で支払った税金を控除するが、すべてを控除できるわけではなく、追加でアメリカの税金を支払う可能性がある。 一方、外国所得控除は海外で稼いだ所得そのものを除外するため、二重課税を回避する効果が高い場合がある。ただし外国所得控除を使った部分は外国税額控除と二重使用はできない。外国所得控除を超える部分について超える部分については外国税額控除を使うことができる。 外国所得控除があることで、海外で働くアメリカ市民や永住権保持者は、より効果的に二重課税を回避し、税負担を軽減することができる。
2024年のStandard Deductions [wpsm_comparison_table id="2" class=""]
所得を得た時に税金を払うやりかたを言う。会社に雇用されている場合、毎月の給料から税金が引かれている形が一例だ。会社が税金を源泉徴収してIRSに支払っている。 給料の他に自営業の所得、投資、賃貸事業、退職口座からの分配などがあれば、予定納税を行う潜在的な対象となる。給料をもらっていない自営業の人は、会社にかわって自分が予定納税を行うことになる。 Form 1040を提出する際に、少なくとも$1,000の税金を支払う必要があると予想される場合、IRSは通常、年間を通じて予定納税を行うことを求める。 IRSは、前年の納税額の100%または今年の納税額の90%のいずれか少ない方を支払うことを求めている。ただし夫婦合算申告で調整後総所得が$150,000(夫婦個別の申告では$75,000)を超える場合、前年の納税額の110%を支払う必要がありある。これが満たされていれば、予定納税のペナルティは生じない。 前年度が12か月の課税年度でなかった場合、または個人が前課税年度に申告書を提出していなかった場合には、前年の納税額の100%は適用されない。 予定納税の支払いスケジュール4月15日:1月1日から3月31日までの収入に対して6月15日:4月1日から5月31日までの収入に対して9月15日:6月1日から8月31日までの収入に対して翌年の1月15日:9月1日から12月31日までの収入に対して さて、例えば年末に大きく所得が増加するかも知れない。今日現在は11月半ばなので2025年1月15日まで待たないといけないのか? 冒頭のように、もともと所得を得た時に税金を払う形がベースだとすると、年に4回は少ないと思うかも知れない。所得があったら支払うとなれば4回ではなく、5回でも6回でも良さそうなものだ。 年間の予定納税額が過少と判断されたら、いつでも追加の支払いを行うことができる。標準の4回の支払いよりも多くの支払いを行うことは問題ない。仮に月1回支払いをすれば、給与所得者の毎月の給与での源泉徴収と回数では同じとなる。 余裕をもって納付しておきたい。
アメリカから日本に帰国する場合、アメリカの不動産をどうするかと言う選択に迫られることがある。 日本に帰国して新たに日本で家を購入する資金が必要で、帰国前にアメリカの家を譲渡するならはっきりしている。しかし様々な理由で日本に帰国して、それからアメリカの家を譲渡せざるを得ないということもあるだろう。 帰国前に家を譲渡して良かったということもあれば、帰国後の譲渡で価格や為替変動で良かったということもあるだろう。税務は判断する軸の一つだが、実態に合わせて処理をすることになる。 仮に日本に帰国してからの譲渡だと、アメリカの申告だけではなく日本の申告も発生する。これがとても大きい。二カ国の課税となり税額が発生すると、外国税額控除を使って二重課税を受けないようにしなくてはならない。 2024年の不動産譲渡では、アメリカの申告・納税は2024年分(2025年申告)で発生する。日本も同じなのだが、申告期限が異なる。日本の確定申告の期限が日本は3月15日で、アメリカの申告期限は4月15日とアメリカの申告期限が遅い。さらに日本からの申告は2か月の延長があり、6月15日期限となる。 日本の確定申告書では、アメリカの納税の証拠書類として申告書を添付する。この場合、アメリカの申告が日本よりも遅くなると、日本の2024年分税額がアメリカに先行して発生してしまう。すると2024年分の申告では二重課税が起きてしまう。 もちろん、アメリカで納付した税金により日本で外国税額控除を取ることができる。これが2024年の申告ではなく、2025年分(2026年申告)の申告となると、1年の期ずれで2026年にアメリカの税額を還付してもらうことになる。還付まで2年間かかると、資金計画上予期しない負担が発生することになりかねない。 この点からは日本に帰国する前の不動産譲渡だと、アメリカだけの申告で日本の税務が入らずにシンプルだ。
子供税額控除を取るのは当たり前だと思うのだが、日本からアメリカに子供を連れて赴任する場合などはハードルが高い。 何が問題かと言えば社会保障番号だ。 子供の税額控除や追加子供税額控除を申請するには、子供が社会保障番号を持っていることが前提になっている。しかし、EビザやLビザ等でアメリカに滞在する人の子供は、アメリカで働くわけではなく社会保障番号は難しい。 子供が社会保障番号を取得できない場合、唯一の代替手段は、個人納税者番号(ITIN)になる。これはもともと社会保障番号を持たない人が、所得を申告する場合にITINを用いることになっている。しかし、学校に通っている子供に申告をすべき所得はない。控除を取るためにだけITINを申請するのはハードルが高い。 仮に子供がITINを取れたとしてどうなるか。 IRSのQ&A社会保障番号 (SSN) ではなく個人納税者番号 (ITIN) を持つ子供に、子供税額控除を取ることができますか?IRSの答えいいえ、ITIN を持つ子供に子供税額控除を取ることはできません。その子供が社会保障番号 を持っている必要があります。 ITINでもダメだと言う。 ITINを持っている場合、その他扶養家族税額控除を取る道は残っているが、これは最大で1人あたり500ドルの控除に過ぎない。これは非還付型であるため、税額を超えた場合、超過分を還付として受け取ることはできない。 子供税額控除の1人あたり最大2,000ドルに比べてはるかに少ない額だし、こっちは還付金として受け取り可能だ。この制限があるのでその他扶養家族税額控除はあまりメリットがない。 それでも、ITINを取得しようとすると、申請のプロセス自体が複雑であり、書類の手間や処理の遅延が発生しやすく簡単ではない。投入する時間や労力、ストレスと得られるものが見合うのか容易ではない。
IRSは申告書が提出されていないと、申告をするように手紙で通告をする。この通告に応じない場合、さらに申告書を出すように通告をする。それでも応答がない場合、IRSは税金の申告しなかった人に代わって、その人の申告書を作成することがある。 申告書を作成しなくても、IRSが代わりに申告書を作ってくれると楽でいいではないかと思ってはいけない。 IRSが作る申告書は、フォームW2またはフォーム1099からの納税者に関する情報と、IRSが第三者から取得できる他のすべての情報を使用する。 IRSがわかるのは所得に関する情報だ。Form W-2にしてもForm 1099や株式の譲渡の情報は、個人に対して発行されている。同時にIRSにも並行してその情報が提供されている。所得に関する情報をIRSはかなりわかる。 問題は税額控除やコスト等をIRSがわかっているわけではないことだ。これは大変だと思ったのは株式のキャピタルゲインの計算だ。キャピタルゲインは、当然のことながら譲渡金額から取得額を差し引いて譲渡損益を計算する。IRSはその人が3年前・5年前にその株をいくらで購入したかと言う情報を取得額に入れてくれるとは限らない。 すると譲渡額が即ち100%利益となってしまう。譲渡額が$300,000額で取得額が$350,000だとすると譲渡損失が$50,000発生する。当然このケースでは損失が出ているので税額は発生しない。ところが取得額はゼロとされると譲渡額の$300,000が利益となってしまう。 IRSが購入情報を持っていない場合、売却益が短期譲渡所得として扱われる可能性も否定できない。短期譲渡所得は通常の所得税率が適用されるため、最大37%の税率が適用されることがある。 例えば、$300,000が短期譲渡所得として扱われ、最高税率の37%が適用される場合、税額は約$111,000になる。譲渡損失で税金が全く発生しないのに、逆にこれだと$111,000を払うように言われてしまう。 納税者には、IRSがSFRを提出した後、IRSが徴収しようとしている税額に対して上訴して、納税申告書を提出する権利がある。ただし、申告書の提出期限は30日であるため、時間が限られている。 これは大変だと言う前に、進んで自主的に申告することが重要だ。
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