アメリカの税金を日本から納付する場合、クレジットカード払いが一番手軽だ。下記から入って、ネットショッピングの支払いをするように支払いができる。https://www.irs.gov/payments/pay-your-taxes-by-debit-or-credit-card さてこのクレジットカード払いを行う時に、あれ?と思うかも知れない。オンラインショッピングの場合、クレジット会社からショッピング会社に直接お金が支払われる。IRSの税金を払う場合は、クレジット会社とIRSの間に中間会社(Pay1040、PayUSATaxなど)が入る。そして2%程度の手数料がかかる。大きな金額ではないので気にはならないかも知れないが、普通のオンラインショッピングとは異なる。 クレジットカード会社は加盟店に対して、取引ごとに一定の割合の手数料を請求する。これでクレジットカード処理サービス、不正利用防止、顧客へのポイント還元などのコストを賄う。 クレジットカード会社は同じようにIRSに手数料を求めると、IRSは税額が$100ならば手数料を引いた金額しか収受できない。しかし、IRSは政府機関であるため、税金納付における決済手数料を直接負担することができない。IRSは税額の$100(それ以上でもそれ以下でもなく)収受する必要がある。 そこで登場するのが中間会社となる。(例えば、Pay1040、PayUSATaxなど)こうした会社はIRSと納税者の間に立ち、クレジットカード決済を行う。中間会社自体にも自社の技術的なインフラ、リスク管理、運営費用などの費用が発生する。 納税者がこれらの費用をバラバラに払うのは面倒だ。仮に中間会社が納税者から2%の手数料を徴収する場合、その中には自社のサービス費用とクレジットカード会社への手数料が含まれる。中間会社は、この2%の手数料から必要な分をクレジットカード会社に支払い、残りの分を自社の収入とする。 したがって、IRSは決済手数料を直接負担することはなく、中間会社がこれを管理し、納税者に転嫁する形で運用されている。 こうして考えてみるとまあ仕方がないかと思う。
2024年大統領選でトランプ次期大統領は税金の政策で、2017年減税の継続、法人税減税と特に社会保障給付の非課税化、残業代の非課税化、国際的二重課税の解消等を打ち出した。しかし政策をどうやって実現するのかには踏み込んでおらず、果たしてどこまで実現できるのだろうか。 中間層向けの減税は幅広い支持を得やすく、共和党の伝統的な政策にも合致するため実現可能性は高いだろう。さらに法人税減税を継続し、企業活動を活性化させる政策は、共和党の支持基盤であるビジネス界からも歓迎され、これも実現の可能性は高いと言える。 一方で、社会保障給付の非課税化や残業代の非課税化は、有権者へのアピールとしては効果的でも、財政負担や企業への影響などを考慮すると、実現可能性は低いのではないか。 さて、その施策の中で海外在住の米国人に対する二重課税の解消をあげられている。これはアメリカの市民権をベースとする課税に踏み込む。基本的にはアメリカ市民であるならばアメリカに申告、納税しなければならないと言う建国以来の基本の考え方を、根底から覆そうというのだろうか。 日本に住んでいるアメリカ市民は日本の申告を行い、同時にアメリカの申告も行う。税金を二カ国に支払えば二重課税になる。これを日本の税金だけ払い、アメリカの税金を払わなくても良いとする狙いだとする。 現実的に言えば、現状でもForm 2555や外国税額控除があるので、ほとんどアメリカには納税することがないのが実態だ。Form 2555の効果は日本で働いていれば、2024年ベースでは給与を1900万円程度は課税対象から差し引いてくれる。 アメリカに住む人には給与から1900万円程度、課税対象から差し引く優遇はない。それならば自分たちも同じように扱ってほしいという声が起きるかもしれない。それができないならば、海外に住んでいる人の優遇をなくして平等にしてほしいと言うかも知れない。扱いを間違えると両刃の剣になりかねない。 アメリカは日米租税条約や多くの国際条約を結んでいる。租税条約にも波及すると両国政府が合意し国内的な手続きも必要になる。日本だけではなく世界に与える影響は極めて大きい。膨大な作業が必要になるだろう。 個人の税金に関する項目では社会保障給付の非課税・残業代の非課税・チップの非課税とかアメリカ市民の生活に直結する。約6,700万人が高齢者・障害者向けの退職年金や医療保険(メディケア)を受給しており、そのうち約4割が給付に対する所得税を支払っている(約2,680万人) 海外に住んでいるアメリカ市民は約300万人だ。影響する範囲は限られる。国際的二重課税の解消は、ごく限定的な結果で終わるかも知れない。
アメリカの個人所得税の大原則は市民権課税だ。アメリカ市民、グリーンカードを持っている人ならアメリカの申告を行い納税してくださいとなる。 アメリカ市民(含むグリーンカードを持つ人)で、日本に住んでいる人は日本への申告が必要になるし、アメリカにも申告をしなくてはならない。多くの人はこの仕組みを変えてもらいたいと望んでいるのは確かだろう。 10月に入り、ドナルド・トランプ前大統領はこの問題を認め「海外アメリカ市民の二重課税を終わらせる」と述べている。しかしながら、新しい政策がどのようなものになるのか詳細は一切、明らかにしていない。 アメリカ市民はどこに住んでいて、どこでお金を稼いだかに関係なく、全世界の所得に課税される。課税はされるが、現実に二重課税が起きているのかと言えばそうではない。外国所得控除(Form 2555)や外国税額控除(Form 1116)があるためだ。 海外に住むアメリカ市民は、2024年に1人あたり最大126,500ドルの外国所得を除外することができる。一年以上日本で働いている人で言えば、$1=150円として約1,900万円程度までの働いて得た所得を、申告を行うことにより控除してもらえる。 この金額を越えても、さらに外国税額控除も一定部分は利用できる。結果として多くの人には、その所得に対して二重課税とならない。それゆえに税金の負担と言う点ではあまり変わり映えしないだろう。 申告と言う点では、さらにFBARやFATCAの情報申告がある。これは海外の金融口座を報告させるもので、海外に住んでいる人は、アメリカ国内に住んでいる人に比べて圧倒的に申告をしなくてはならない。 税金の二重課税と言う点では、現状でもほとんど手が尽くされている。申告書の作成や提出の負担を軽減すると言っても、情報申告が残っている限り効果は限定的だろう。 看板は良いかも知れないが、実際はなかなか容易ではないだろう。
日本に帰国して日本の居住者となっている方が、アメリカの申告書を提出する時に、アメリカの知り合いの住所を使って申告をして良いだろうかと質問さる。アメリカでのことで、なんとなく縁遠いと言うか、判断がつかないのでそう思うのかも知れない。 日本に住んでいるのに、アメリカの住所を使用することは、不具合を引き起こす可能性がある。 困って相談されたケース: ① 州税の申告と支払いを求められた。日本に住んでいる人は、実はその州に足を踏み入れたことがない。その州での所得もない。普通ならば、その州の申告とは無縁だ。しかし、その州の住民として住所を記入しているので、全世界所得を申告しなさいと言われた。 ② Form 2555において、外国(日本)で働いて得た所得は2023年ベースだと12万ドルの控除が取れる。条件としては330日以上、外国に居住していなければならない。実際にこの控除を取ることができるのにも関わらず、外国に居住している人が日本に330日以上居住しているのは説明がつかず、せっかくの控除を使えない。 ③ 申告後、IRSからの還付小切手や書類はアメリカの住所に送られる。税額の追加払いや書類の追加提出を求められることもある。30日以内に回答を求められても、書類が転送されないので本人は全く分からない。自分の手元に書類が届いた時には回答期限が過ぎてしまっている。書類をタイムリーに確実に受け取れるかどうか何とも言えない。結果的にペナルティが雪だるまということもあり得る。 実際に居住していない州で申告することは、税務上の虚偽申告と見なされる可能性があり、将来的な税務調査のリスクがある。 このケースを立ち位置を変えて考えてみたらどうだろう。仮に日本に住んで日本の確定申告書を提出する人がロサンゼルスやニューヨークの住所で日本の税務署に申告すると置き換えてみる。そもそも不自然で不可能と思うだろう。少なくとも頭の中では注意信号が灯り、赤信号がともってもおかしくはない。 アメリカの州の住所を使って申告をする場合、それなりの理由があってのことかも知れないが、慎重な判断が必要だ。
亡くなってしまったらすべてそれでお終い。何もしたくてもすることができない。行為能力がないのだから、はいさようならとなるのだろうか。そんなことはなく遺産管理人や相続人が、亡くなった人の代わりに申告義務を果たすので、そうはいかないだろうと考えるだろう。 Form 8854(出国税)は、米国市民や米国長期居住者が市民権や永住権を放棄した場合に、資産や税の情報をIRSに報告するためのフォームだ。このフォームは通常、自発的な市民権放棄を原因として提出される。 アメリカ市民が死亡した場合、死亡はアメリカ市民権の喪失の事由となる。市民権を喪失したのだから亡くなった方は、出国税の対象と言えるのだろうか。 死亡: 自然に市民権を失う。これは出国とは異なり、故人が意図的に行うものではない。市民権放棄: 本人が生前に意図的に市民権を放棄する。 死亡による市民権喪失は自然なプロセスだ。しかし市民権放棄は本人が生前に意図的に行うものであり、出国税の手続きが必要だ。 結果的に市民権の喪失は同じでも、生前に自発的な意図のもとに放棄を行う場合と、死後では話が違うということにならざるを得ない。 すると亡くなった場合はほとんどの場合、出国税の提出を要さないだろう。 しかし死亡の場合でも、死亡前に市民権放棄の手続きを完了して、死亡によって出国税が未完となった場合だ。IRSはForm I-407が提出され、その後の手続きがないために税務上の処理としてForm 8854の提出を求めて来るかもしれない。状況によっては遺言執行者がForm 8854を提出する義務が発生することもあり得ると言う事だろう。 出国税に関しては、亡くなってしまったら、珍しくはいさようならかも知れない。しかし、基本中の基本のForm 1040は亡くなったから、決して何もしなくても良いということにはならない。遺産管理人や相続人が、亡くなった人の代わりに申告義務を果たすことが鉄則だ。
米国で生まれた場合、自動的に米国市民となる。米国社会の一員として果たさなければならない義務が発生する。米国の憲法や法律を守るのは当然として、税金の申告納税を行わなければならない。 しかし、幼児期に日本に帰国し、それ以降米国に足を踏み入れたことがない人もいるだろう。米国への申告義務が全く頭になく知りませんでしたということもあり得る。 交通ルールで考えると、私たちは赤信号では交差点を渡ってはいけないとみんな知っている。どうして知っているのだろうか。 教育: 親から「赤信号では渡ってはいけない」と言われるし、幼稚園、小学校でも教わる。社会体験: 信号無視をして事故を起こしたり、警察官に注意されたりすることで、そのルールを守る重要性を身をもって体験する。法制度:自動車の免許を取れば、 道路交通法で、赤信号で進行が禁止されていることが常識的にわかる。 社会生活の中の様々な場面を通じて、交通信号のルールを学び、それを守る行動をとる。 米国に住んでいれば、同じように税金が認識される。 教育:税金は、民主主義社会を支える重要な要素の一つで、税金は、社会を支える基礎となる。社会科の授業で税金がどのように集められ、どのように使われているかについて学ぶ。社会体験:買い物をすれば売上税がかかる。アルバイトをすれば、給与から税金が差し引かれることを実感し、税金について否応なく理解を深める。 学校教育、社会体験等を通して多角的に認識する。 さて、米国では市民権をベースに申告納税制度ができている。たまたま米国で生まれただけの人でも、全く同じく普通の米国な市民だ。ただ、日本に住んでいて米国に足を踏み入れたことがほとんどなければ、米国の社会体験もなく、米国の納税義務は縁遠いだろう。 しかし、米国から見れば、米国の申告義務を知らなかったことを免罪符に、申告から除外することはできない。一般の米国市民が納税義務を知らないから、税務申告をしないと言うことに歯止めをかけられなくなる。これは足元から社会の基盤を崩壊させかねない。 いろいろ気の毒な事情があっても、米国市民であるならば、最後はきちんと米国の申告の義務を果たしてくださいとしか言いようがない。日本に住んでいる場合は、米国の申告を行ってもほとんど税金が発生しないことが多い。あまりその点は心配せずに、きちんと申告義務を果たしてくださいと申し上げたい。
Form 1040のバリエーションにForm 1040-SRがある。このForm 1040-SR は、米国の申告を行う65歳以上の納税者が利用できる所得税申告書だ。始まってもう5年は経過している。 年齢を重ねるにつれて視力が低下することが多く、小さな文字を読むのが難しくなる。この申告書のフォントは大きく、ゆったり書いてあるので高齢者には間違いなく見やすい。 しかしながら、見た目と言っても、片手に電卓を持って紙の申告書を作成する人は、現在どれくらいいるのだろうか。多くの人はPC の画面でフォームを見る。フォントの大きさを任意に変えられる。画面で見ている人にはあまり関係ないだろう。 見た目以外に税務上、Form 1040-SRのメリットはあるのだろうか。 65歳以上になれば標準控除の金額が増額される。2023年の実績では次のとおりだ。65才以上の増額:独身 $13,850+増額$1,850結婚して夫婦別々 $13,850+増額$1,850所帯主 $20,800+増額 $1,850夫婦合算 $27,700+増額 $3,000 この増額は機械的に適用される。Form 1040-SRだからこの金額で、Form 1040なのでこの金額を使えないというものではない。 さらに65才以上の高齢者であれば、老齢のクレジットを取れる可能性はある。老齢のクレジットを使うために必ずしもForm 1040-SRを使わなければならないということはない。Form 1040を使うことに制限はない。 申告書のフォームをForm 1040からForm 1040-SRにかえたので税金が小さくなったということはない。課税年度の最終日の時点で65歳以上であれば、Form 1040でもForm 1040-SRでも、どちらのフォームも使用できる。 Form 1040SRはすべての状況に対応できず、複雑な申告の場合、Form 1040を使用する場合がある。何とか高齢者の申告を簡潔にして、分かりやすくするという狙いはわかるのだが、見た目以外にこのフォームのメリットを感ずることがない。何かもったいない気がする。
毎日、とても暑いのだが、今年の夏はオリンピックの応援でTVを見ながら、一緒になって盛り上がり応援している。勝っても負けてもわが事のように喜んだり悲しんだり、興奮して一層暑苦しい夏だ。 さて、盛り上がっている時に税金の話も合ったものではないと思うが、アメリカの申告書Form 1040は、しっかりとオリンピックと結びつきがあることをご存じだろうか。 Form 1040を見るとSchedule 1- Part 1, line 8mにオリンピックとパラリンピックのメダルとアメリカオリンピック委員会の賞金をしっかり記入する欄がある。パリ・オリンピックでの金メダリストなら、現時点での評価額は約$1,027とか記入しなさいと言う。 書かなければいけないなら、書かざるを得ないのだろうが、メダルは、単なる金属ではなく、名誉や象徴の価値や、希少性、歴史的価値、経済的な価値を持つとみなされる。メダルを獲得した選手には金銭で表せない価値があるはずだ。 オリンピックに出て活躍した選手は、申告書に記入する所得を得るためにオリンピックに出場したはずではない。しかし、アメリカの税法はすべからく、メダルの価値や米国オリンピック委員会から支給される賞金をForm 1040に記入しないといけないという。 これは多くの方の感覚から見ればいかがなものかということになろう。そこで2016年以降、Adjusted Gross Incomeが100万ドルを超えない選手の場合、メダルや賞金に課税を免除するようになっている。現実にはほとんど課税をされないということだ。 日本においては、オリンピックメダルに対して、直接的な課税を行っていない。これは、メダル獲得が国民全体にとっての喜びであり、選手を励ますためという考え方だろう。日本人のメンテリティからすれば、アメリカのメダルをもらったら、申告書に記載して提出することには距離を感じてしまうのではないだろうか。 アメリカでは、メダル獲得が必ずしも非課税とは限らないという事実を知って、少し意外に思われたかもしれない。しかし、このことは、メダルというものが、単なる名誉や象徴ではなく、経済的な価値を持つ財産であるということを示唆している。 他の所得と同様に、メダルによって得られる経済的な利益に対しても税金を課すことは、税制の公平性という観点から妥当であるという考え方が根底にあるからだろう。
アメリカの市民権をベースとする課税とForm 2555はブレーキを踏みながらアクセルを踏んでいるように思える。市民権課税ではアメリカの市民であれば、全世界の所得をアメリカに申告することになる。一方で、外国で働いて得た所得は一定の条件下で所得から除外してくれる。この金額の上限は2023年で$120,000、2024年で$126,500ある。住宅費を加算するともっと大きくなる。 歴史的に見れば独立戦争時でも、外にいる人にも応分の負担を求めていた。独立戦争で命を失いたくない人たちは、現在のカナダに逃れたという。銃を持って戦わないならせめてお金を出してもらいたいという事だったようだ。 一方でForm 2555はいつからあるのかと見ると、1958年のForm 1040の説明書に出てくる。1958年に始まる年に、総所得は米国以外の源泉から得た所得も計算するとある。つまりアメリカ国外源泉の所得も、全部入れるように言い、除外すべきと信ずる外国源泉所得はForm 2555で申告をするように言っている。 1958年以前は、米国外源泉の所得は総所得から除外されていた可能性があった。しかし、1958年以降、この除外はなくなり、総所得は米国外の源泉から得た所得を含めて計算すると明記した。 1958年は考えてみれば、第二次世界大戦の終結から10年以上たち世の中が落ち着いてきた時期だろう。極端な言い方かもしれないが、第二次世界大戦で戦場で戦っている人に戦場から申告書を提出してと言えたか。自分の命を国に捧げて、闘っている人が、戦場で申告書と向かい合うとはとても思えない。原則はそれでも申告書の提出義務があったが、現実論はなかなかそうもいかなかっただろう。1958年時点では第二次世界大戦の終結から10年以上たち、世の中が落ち着いて市民権課税の原則を貫く環境ができたという事か。 しかし、一気に外国所得をアメリカ課税としてしまう事も難しかったのだろう。1958年Form 1040はForm 2555で現実的な救済としたものと思える。除外できる限度額は$20,000だった。今から見れば$20,000は小さいように思えるも、消費者物価指数を考えると現在の20万ドル近い金額だったようで、かなりの金額だ。 このForm 2555は海外で働く人には利益をもたらすが、米国内で働く人には利益を提供しないため、納税者の間に不公平を生み出すと主張する人もいる。もしかしてあの人が何かの声を上げたらその影響は計り知れない。
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