2024.02.11
所得税
夫婦合算又は個別申告
アメリカの申告書Form 1040を見ると、真っ先に申告をする人の名前を記入するようになっている。自分だけではなく配偶者の名前も書く欄がある。日本の申告はあくまで一人一人なのに、アメリカの申告書は夫婦が一緒に申告できる。
さて夫婦が一緒に申告をするのが良いか、それとも別々に申告するのが良いか? どちらでも良いのでメリットのある方を選択すれば良い。
2023 年課税年では、夫婦合算で申告をする 65 歳未満の夫婦には 27,700 ドルの標準控除がある。個別に申告すると、それぞれ 13,850 ドルの標準控除となる。
夫婦が個別に申告をするケースだ。片方の配偶者には所得がない場合、もともと申告要件を満たさずに、申告書を提出しないで終わる。標準控除の出番もない。
もう一方の配偶者には所得がある。この場合は、標準控除を13,850 ドルを二人分使える。しかし片方の配偶者には所得がないので、夫婦合算にしても所得は増えない。しかし控除額は13,850 ドル増加するので、税額が減少することになる。
夫婦が一緒に申告すれば申告書は一通でお終いだ。別々ならそれぞれ申告書を作るので、手間のかかり方が異なる。総論としては夫婦が合算で申告するのが良いだろう。
しかし、必ずしもそうでないこともあり得る。
アメリカの不動産を譲渡する。日本に住んでいる人ならば、日本の申告の対象にもなる。日本の申告はあくまで個人単位だ。アメリカで支払った税金を日本の外国税額控除として使い、何とか二重課税を免れたい。アメリカの申告書を証拠書類として日本で提出しようとする。するとアメリカの申告書は二人の名前になっている。そのままでは一人分がわからない。いろいろ手間をかけて申告書を分離するのも大変だ。こういう時は夫婦が別々に申告をしていれば、そのまま日本の申告に直結できる。
夫婦が一緒に申告をするということは、その申告の結果についても夫婦が責任を持つ。税金が発生しても相手方に支払い能力がないこともあり得る。能力があっても税金を納付しないと、その責任はもう一方の配偶者に遡及される。申告書の内容をよく確認もせず、言われるままにサインして提出した場合、思いがけない負債を背負い込むこともあるので要注意だ。
また、一定額以上の金融資産があれば、付随する情報申告で日本の金融資産の開示を行う。これを配偶者に開示したくないこともあり得るだろう。
要は夫婦合算でも個別でもメリットのある方を使えばよい。但し、目先で良いと思ったことが、中長期的にはそうでないこともあり得る。そのため、夫婦合算で申告するのが良いではないかと思えても、無条件にそうだというわけでもない。
またこの選択は年ごとに行うことができる。一度選択したらずっと変えることができないというものでもない。
なお、アメリカの税務上の非居住者が提出するForm 1040NRでは、配偶者と一緒に申告することはできず、あくまで個人としての申告となる。