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2025.06.29
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国境を越えると

アメリカはカナダやメキシコと国境を接している。カナダに住んでいる人が毎日、国境を越えてアメリカで仕事をしたり、逆にアメリカからカナダに行って仕事をしたりする人々がいる。 アメリカで働けば、その給与は「アメリカ源泉所得」となり、アメリカでの課税対象になる。カナダに住んでいれば、カナダでも全世界所得の申告義務があり、つまり両方の国に納税義務が生じて「二重課税」の状態が発生する。 実際の納税は「勤務国」でまず行い、「居住国」では申告時に外国税額控除を適用する。これにより実質的な二重課税を回避しようとする。 興味深いことに、この国際間の税務ルールは、アメリカ国内で州をまたいで働く場合の考え方と非常によく似ている。原則として、まず所得を得た勤務地の州(源泉地州)で納税し、その後、住んでいる州(居住地州)の納税額からその分を控除する、という手続きを踏む。 例えばニュージャージー州(NJ州)に住んでニューヨーク州(NY州)で働いている人は、まずNY州に非居住者として申告をして、NY州で得た所得に対する州税を納める。次に、住んでいるNJ州に対して、居住者として申告を行う。NJ州の税額から、NY州およびニューヨーク市に払った税額を控除する。 多くの場合、NY州・市の税率の方が高いため、控除額がNJ州の税額を上回ることがある。結果として、税率の高いNY州・市に税金を全額納めたのと同じような結果となる。 もしNY州を東京都、NJ州を神奈川県や千葉県と読み替えた場合、日本ではどうなるか。アメリカの仕組みは、まるで東京都にだけ地方税を納めるように見える。日本の税制は大きく異なる。日本では都道府県をまたいで通勤しても、所得税は国が全国一律のルールで課税する。そして、住民税は勤務地に関わらず、その年の1月1日時点で住んでいる自治体に納めるのが原則だ。 このように比較すると、アメリカの州が、税務上はあたかも一つの国のように独立した課税権を持っていることがよくわかる。

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2025.06.22
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困っていませんか

今年の申告で税額の支払いを銀行振替で行った。4月15日にはきちんと支払いが行われすべてが終わった。ところがIRSの手紙が来る。税金の納付がされていないので、いついつまでに支払えと言う督促状だ。丁寧にもペナルティ・金利がついている。 そんな馬鹿なと思うも仕方ないので、とりあえず言われる税金を納付して、これ以上の事態の悪化を防ぎ、足元から調べ直すことになる。 口座番号・納税者情報の不一致金額・年度・口座番号のミス過去の未払い税金があり充当されてしまった銀行側の誤送金IRSのシステムエラー第三者の詐欺等 自分での処理はわかるものの、相手があることは容易に調べることができない。大変な労力をかけて一つ一つ問題と思う所をつぶしていかなくてはならない。 ところが何とIRSは2025年6月12日に次の一部の電子決済処理の遅延に関するIRSの声明を出した。 IRS は、一部の電子支払いの処理に遅延が生じており、期限内に支払いが行われたにもかかわらず、一部の納税者が未払い残高を示す IRS 通知を受け取っていることを認識しています。 影響を受ける納税者:電子申告で納税申告書に記載された納税額を納付した納税者は、IRSが金融機関を通じて納税額を受領しているにもかかわらず、口座上で納税額が「保留中」と表示されることがあります。この通知は、納税額が口座で処理される前に開始されたか、納税額は処理されたもののエラーが発生し、納税額口座を更新する前にエラーを修正するための追加手続きが必要となる可能性があります。 電話は不要です:納税通知書を受け取った納税者が、電子的に全額かつ期日までに納税した場合、現時点では通知書に返答する必要はありません。納税者は、IRSオンラインアカウントの納税アクティビティページで納税状況を確認できます。このページでは、納税履歴や処理中の保留中の納税状況を確認できます。オンラインアカウントを確認しても7月15日までに納税が処理されていない場合は、通知書に記載されている電話番号に電話をかけることができます。 支払いが IRS によって正しく適用されると、関連する罰金と利息は自動的に調整されることに注意してください。 申告書に記載された納税額の一部のみを支払い、残りの未払い額を全額支払うことができない納税者は、IRS.gov/opaにアクセスして残りの残高の支払い計画を立てるか、通知の指示に従って追加の徴収代替手段を要求する必要があります。 影響を受ける納税者の皆様、IRS は支払い処理の遅延により生じたご不便をお詫び申し上げます。 何と何と、これは。

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2025.05.11
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割り切れない

米国の市民権やグリーンカードを放棄する際、出国税(Form 8854)の対象となる可能性がある。この制度では、出国時に株式等の保有資産の「未実現利益(含み益)」を強制的に実現させ、米国で課税する。通常、課税は資産売却時に発生するが、出国税では未売却の資産も売却済みとみなす独特のルールが適用される。これにより、実際の現金収入がない幽霊利益に対しても課税が行われる。 出国時には資産の「含み益」を強制的に実現させ、アメリカで課税を行う。この含み益が実現するのは、本来は実際に資産を売却した場合だ。売却した場合には、売却代金が手元に入り、そこから税金を支払うことになる。 しかし、出国税では実際の売却は行わない。売却したとみなされ、いわゆる幽霊利益に対して課税が行われる。たとえば、株を50万ドルで購入し、市民権やグリーンカードを放棄する時にその株の価値が100万ドルだとした場合、この含み益50万ドルが実現したものとして課税される。手元に納税資金がなければ、借入をして税金を支払う必要がある。 さて、資産を5年後や10年後に実際に売却したとする。その時、日本に居住して日本の税金の対象となる。この資産の取得原価は100万ドルに引き上げられ、そのときの売却価格が30万ドルだとすると、譲渡損70万ドルが発生する。 ここで問題となるのは、アメリカで出国税が課された未実現利益と、日本で実際に発生した譲渡損失との関係だ。日米の税制を単純に合算すると、実際には70万ドルの損失が出ているにもかかわらず、アメリカでは先行して50万ドルの未実現利益に対して課税が完結しているという状況になる。 アメリカ政府の観点から見ると、市民権またはグリーンカードを放棄した人が未実現利益を抱えたまま出国すると、将来的にその資産を売却した際に得られる譲渡益に対する課税が困難になる。アメリカ非居住者の株式譲渡益は、原則としてアメリカの課税対象とならないためだ。 アメリカの市民権またはグリーンカードを保持している場合、資産の譲渡によって実現する利益には課税され、その税収はアメリカの社会インフラを支える財源となる。しかし、市民権またはグリーンカードを放棄した人は、アメリカの社会インフラを享受して財産を増やしたにもかかわらず、その果実の課税を受けないまま国外に持ち出すことになる。 結局のところ、国としての割り切れなさと個人としての割り切れなさが残る。アメリカが選択した結果は、国としての割り切れなさを優先したものといえるだろう。

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2025.03.16
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どの為替レートを使うか

米国の申告書に記載される金額は米ドルで表示することが義務付けられている。これは、日本で得た給与、事業所得、利子、配当金など、あらゆる種類の収入に適用される。収入が日本円で支払われた場合でも、Form 1040に報告する際には、適切な為替レートを使用して米ドルに換算しなければならない。 内国歳入庁(IRS)は、外国通貨の換算に関して、一貫して使用されている公表された為替レートであれば受け入れている。 次のようなレートが使われている。もちろん日本の金融機関のレートでも問題ない。 IRSのサイト:https://www.irs.gov/individuals/international-taxpayers/yearly-average-currency-exchange-rates米国財務省のウェブサイト:https://fiscaldata.treasury.gov/datasets/treasury-reporting-rates-exchange/treasury-reporting-rates-of-exchange連邦準備制度(Federal Reserve):http://www.federalreserve.gov/RELEASES/XE.comなどの為替レート: http://www.xe.com/ 収入が年間を通じて均等に得られている場合は、その課税年度の年間平均為替レートを使用して日本円を米ドルに換算することが認められる 。一方、不動産や株の売却など、単一の日に発生した取引については、その日の為替レートを使用する必要がある 。 年間平均レートが一般的に適している収入の例:給与所得: 年間を通じて毎月または隔週など、定期的に支払われる給与年金: 年間を通じて定期的に支払われる年金収入定期的な賃貸収入: 毎月定期的に受け取る賃貸収入 情報申告のFBARでは12月31日のレートが指定されている。換算した時の小数点以下は四捨五入とされている。一方FATCAでは12月31日のレートが指定されているわけではなく、小数点以下は切り上げとされる。 FBARは指示がはっきりしていて、たとえ日本円の残高が最も大きい日が6月30日であっても、為替換算レートは12月31日のレートとなる。 結果として、同じ申告書の中でFBARとFATCAでは異なる数字になってしまう可能性がある。しかしながら日本円では同じなのに、FBARとFATCAでは異なるドル金額と言うのは違和感があるので、FBARの数字に合わせるのが落としどころと思える。

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2025.01.26
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内国歳入庁 (IRS)

IRSは、米国財務省の機関である内国歳入庁 (Internal Revenue Service) の略称だ。IRSは、連邦税の徴収、納税者が納税義務を理解し履行することを支援すること、そして公平な税負担を確保するために税法を執行することを任務としている。 Internal Revenue Service(=IRS) という名称を見て、昔からなぜ Internal があるのに External Revenue Service(=ERS) がないのかと、素朴に疑問をもっていた。 トランプ大統領は、関税、外国からの収入を含むあらゆる収入を徴収するための新しい機関として「外税庁」を設立するという計画を発表している。大統領選挙中から繰り返し関税について言及し、「関税」を「辞書の中で最も美しい言葉」と呼んでいた。そのため、彼が大統領に就任してすぐにこのような動きに出たスピードには驚いた。 トランプ大統領は、関税を「米国経済の周囲に保護の壁を作る」ものだと表現し、グローバリゼーションによって打撃を受けた地域に雇用を取り戻すことができるとしている。さらに、1900年代初頭から続く所得税中心の制度から脱却し、関税を連邦政府の歳入源として増やすことに関心を示していた。 トランプ大統領の支持者の中には、関税によって外国が税金を負担するため、自分たちの税負担が軽減されると考える人々がいる。「関税によってアメリカの税収が賄えるならば、自分たちが支払っている税金を払う必要がなくなる。税金は外国が払うもので、自分たちが払うものではなくなる」というわけだ。まるで「おとぎ話」のように聞こえるのだが、実際にこのようなメッセージを受け取り、支持していた人々がいたことは事実だ。 関税は、輸入品に課される税金であり輸入者が支払う。外国の貿易相手国に関税を課す言う場合、実際には米国の輸入者がその関税を支払う。それを商品の価格に上乗せするため、米国の消費者が間接的に負担することになる。海外旅行で外国産高級ワインを持ち帰ったとする。税関に申告すると、税金を課せられるのは持ち帰った人であり、ワインを作った外国のブドウ園ではない。 関税引き上げによって保護される産業がある一方で、輸入品を原材料とする産業はコスト上昇に苦しむ可能性がある。さらに関税引き上げは、貿易相手国との報復合戦を招き、世界経済に悪影響を及ぼす可能性がある。 今まで関税をつかさどる機能は米国関税国境警備局(CBP)や米国国際貿易委員会(ITC)が果たしている。これを一つの組織としてERSを作ることは、できるだけ組織の無駄を省こうとするイ―ロン・マスクとは逆の立場だ。 関税により個人所得税が無くなるとも思えない。トランプ大統領の政策が引き起こすかもしれない変化と混乱にもかかわらず、現状を変えようとする姿勢には注目すべき面もある。どんな結果になるかは別として、その試みは一部の人々の支持を集めている。

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2025.01.19
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グリーンカードの放棄日

グリーンカードを持っている人がその放棄手続きをすると、出国税(Form 8854)を提出する必要がある。出国税で国外退去日を間違えるとForm 8854の提出時期をあやまることになりかねない。 出国税における国外退去日は、次のうち最も早い日付とされる。 ① Form I-407 を提出した日Aさんは2024年11月1日にForm I-407 を郵送した。この場合、2024年11月1日が国外退去日になる。 ② 永住権放棄の最終的な行政命令の日付Bさんの永住権が2024年12月15日に行政命令で取り消された。控訴は行わなかったため、この日付が国外退去日になる。 ③ 米国からの退去命令の日付Cさんは裁判所の命令により、2025年1月20日に米国からの退去を命じられた。この場合、2025年1月20日が国外退去日になる。 ④ 米国との租税条約に基づく扱いを通知した日Dさんは2025年2月10日に IRS に通知を行い、租税条約に基づいて日本の居住者として扱われることを選択した。この場合、2025年2月10日が国外退去日になる。 仮に次のケースで具体的に考える。 2024年11月1日に Form I-407 を提出し、その後、2024年12月15日に行政命令が下る。2025年1月20日に退去命令があり、2025年2月10日に租税条約に基づく通知を送った場合、最も早い日付である 2024年11月1日が国外退去日となる。 永住権を自発的に放棄するために Form I-407 を提出した場合、米国移民局 は受領通知として Form I-797C を発行する。この場合、重要なのは I-407 を提出した日付であり、Form I-797C(Notice of Action)は、米国移民局から申請者に送付される受領通知だ。Form I-797C は永住権の終了や国外退去日そのものを直接決定するものではない。 Form I-797C は、永住権の終了に関連する手続きの途中で受け取る通知書にすぎない。国外退去日を決定する4つの基準(I-407 の提出日、行政命令の日、退去命令の日、租税条約に基づく通知の日)には該当しない。 例えば、2024年中にForm I-407を提出し、2025年になってからForm I-797Cを受け取った場合でも、国外退去日はForm I-407を提出した2024年内の日付となり、2024年分の出国税申告(2025年提出)が必要となる。これを誤って2025年分の申告(2026年提出)としてしまうと、予期せぬ遅延ペナルティが発生する可能性があるため注意が必要だ。

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2025.01.05
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2025年が始まる

アメリカのトランプ次期大統領の就任式が、今月20日に行われる。大統領選挙期間中、彼は2017年の減税の継続、法人税の減税、特に社会保障給付の非課税化、残業代の非課税化、チップを課税対象から外すこと、そして国際的な二重課税の解消などをアピールしていた。 しかし、トランプ次期大統領就任後に早期着手が予想される政策は、不法移民対策やエネルギー生産の規制緩和、ウクライナの停戦などであり、減税や税制改革は最優先課題ではないと思われる。 2017年に成立した税制改革(減税・雇用法)の多くの条項が2025年末に期限を迎えるため、2025年中にトランプ減税の延長などの税制改革法と予算の成立を目指すと考えられる。個人所得税の改革に関しては、財源確保が大きな課題となり、進展は遅れる可能性が高い。 日本に住んでいる人に対するアメリカへの申告への影響については、国際的な二重課税の解消や社会保障給付の非課税化は注目されるが、現状ではあまり影響がないと考えられる。 海外在住の米国人に対する二重課税の解消は、アメリカの市民権に基づく課税制度に触れることになる。アメリカは歴史的に、市民ならばアメリカに申告・納税しなければならないという市民権課税を採用している。 領土的課税は、個人が居住する国で課税される制度であり、アメリカではこの制度に移行したことは歴史的にない。アメリカ市民や永住権保持者は、どこに住んでいても米国の税法に従う必要があるという原則が維持されている。 個人の申告の観点では、現状でもForm 2555や外国税額控除があるため、アメリカに納税する必要はほとんどないのが実情である。Form 2555の効果では、2024年を基準にすれば、日本で働いていれば給与を約1900万円程度までは課税対象から控除される。 これが実現されれば、アメリカへの申告書の提出の手間が削減されるが、それ以上の効果は期待しにくい。同様に、日本への申告義務は変わらず続くことになる。 また、社会保障年金は日米租税条約で居住地課税となっているため、日本に住んでアメリカの年金を受給している人は、アメリカではなく日本で課税される。 ここで思い出されるのは2018年のForm 1040の変更である。当時、トランプ大統領は「葉書サイズの申告書」にすると約束した。これは期待を抱かせたが、実際には従来と大差ないものであった。申告の骨格のみを1ページにまとめたが、詳細を記入し税額を算出するためには従来通りの手続きが必要であり、結局複雑な作業が残った。また、計算が自然な流れに沿っていないため、ページ間を行き来する使いづらい形式となっており、案の定、2019年からは元のフォーマットに戻された。 野心的でチャレンジする所はさすがと思うも、実際は現状の変革は難しいと言わざるを得ない。選挙期間に公約しているだけに、何らかの結果を出そうとするだろう。 ともかくも1月末には従来通り2024年分の2025年申告が始まることになる。

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2024.12.08
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あれ?これはどうして負担するの

アメリカの税金を日本から納付する場合、クレジットカード払いが一番手軽だ。下記から入って、ネットショッピングの支払いをするように支払いができる。https://www.irs.gov/payments/pay-your-taxes-by-debit-or-credit-card さてこのクレジットカード払いを行う時に、あれ?と思うかも知れない。オンラインショッピングの場合、クレジット会社からショッピング会社に直接お金が支払われる。IRSの税金を払う場合は、クレジット会社とIRSの間に中間会社(Pay1040、PayUSATaxなど)が入る。そして2%程度の手数料がかかる。大きな金額ではないので気にはならないかも知れないが、普通のオンラインショッピングとは異なる。 クレジットカード会社は加盟店に対して、取引ごとに一定の割合の手数料を請求する。これでクレジットカード処理サービス、不正利用防止、顧客へのポイント還元などのコストを賄う。 クレジットカード会社は同じようにIRSに手数料を求めると、IRSは税額が$100ならば手数料を引いた金額しか収受できない。しかし、IRSは政府機関であるため、税金納付における決済手数料を直接負担することができない。IRSは税額の$100(それ以上でもそれ以下でもなく)収受する必要がある。 そこで登場するのが中間会社となる。(例えば、Pay1040、PayUSATaxなど)こうした会社はIRSと納税者の間に立ち、クレジットカード決済を行う。中間会社自体にも自社の技術的なインフラ、リスク管理、運営費用などの費用が発生する。 納税者がこれらの費用をバラバラに払うのは面倒だ。仮に中間会社が納税者から2%の手数料を徴収する場合、その中には自社のサービス費用とクレジットカード会社への手数料が含まれる。中間会社は、この2%の手数料から必要な分をクレジットカード会社に支払い、残りの分を自社の収入とする。 したがって、IRSは決済手数料を直接負担することはなく、中間会社がこれを管理し、納税者に転嫁する形で運用されている。 こうして考えてみるとまあ仕方がないかと思う。

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2024.11.10
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国際的二重課税の解消というものの

2024年大統領選でトランプ次期大統領は税金の政策で、2017年減税の継続、法人税減税と特に社会保障給付の非課税化、残業代の非課税化、国際的二重課税の解消等を打ち出した。しかし政策をどうやって実現するのかには踏み込んでおらず、果たしてどこまで実現できるのだろうか。 中間層向けの減税は幅広い支持を得やすく、共和党の伝統的な政策にも合致するため実現可能性は高いだろう。さらに法人税減税を継続し、企業活動を活性化させる政策は、共和党の支持基盤であるビジネス界からも歓迎され、これも実現の可能性は高いと言える。 一方で、社会保障給付の非課税化や残業代の非課税化は、有権者へのアピールとしては効果的でも、財政負担や企業への影響などを考慮すると、実現可能性は低いのではないか。 さて、その施策の中で海外在住の米国人に対する二重課税の解消をあげられている。これはアメリカの市民権をベースとする課税に踏み込む。基本的にはアメリカ市民であるならばアメリカに申告、納税しなければならないと言う建国以来の基本の考え方を、根底から覆そうというのだろうか。 日本に住んでいるアメリカ市民は日本の申告を行い、同時にアメリカの申告も行う。税金を二カ国に支払えば二重課税になる。これを日本の税金だけ払い、アメリカの税金を払わなくても良いとする狙いだとする。 現実的に言えば、現状でもForm 2555や外国税額控除があるので、ほとんどアメリカには納税することがないのが実態だ。Form 2555の効果は日本で働いていれば、2024年ベースでは給与を1900万円程度は課税対象から差し引いてくれる。 アメリカに住む人には給与から1900万円程度、課税対象から差し引く優遇はない。それならば自分たちも同じように扱ってほしいという声が起きるかもしれない。それができないならば、海外に住んでいる人の優遇をなくして平等にしてほしいと言うかも知れない。扱いを間違えると両刃の剣になりかねない。 アメリカは日米租税条約や多くの国際条約を結んでいる。租税条約にも波及すると両国政府が合意し国内的な手続きも必要になる。日本だけではなく世界に与える影響は極めて大きい。膨大な作業が必要になるだろう。 個人の税金に関する項目では社会保障給付の非課税・残業代の非課税・チップの非課税とかアメリカ市民の生活に直結する。約6,700万人が高齢者・障害者向けの退職年金や医療保険(メディケア)を受給しており、そのうち約4割が給付に対する所得税を支払っている(約2,680万人) 海外に住んでいるアメリカ市民は約300万人だ。影響する範囲は限られる。国際的二重課税の解消は、ごく限定的な結果で終わるかも知れない。

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