ずいぶん以前のことだが、バルチモアに1ヶ月ほどいた時に、土日になるといろいろなところに出かけた。名所というわけでもないが、港に係留されている3本マストのフリゲート艦USS Constellationにも行って見た。レプリカの軍艦だというのはわかっていたが、内部は製材所のようだったなあということを今でも覚えている。今にしてみればあれがアメリカ海軍の最初の木造軍艦であった。確かに近所には海軍士官学校もあり海軍に縁が深いという印象だけはあった。
この軍艦はどうも2代目でもともとの1代目は1797年に就役したと物の本に書いてある。この船と他の5隻の軍艦がアメリカ海軍の出発点となったわけだが、1794年Naval Actがそもそもの始まりで、フランスとの戦いのために海軍力が求められた。
海軍を作り船を建造するためにはお金が必要になる。6隻の船を作るために$688,888.82の予算が必要だった。この予算をどうするかというのが問題だった。もともと予算があるわけではなかったので、この目的のために歳入を増やさなければならない。そこで作られたのが1794年印紙税法であった。印紙税法はもともとイギリスによりアメリカを植民地として1765年に作られたものである。これがアメリカ独立戦争の一つのきっかけになっているわけで、印紙税法といえばこれを思い出すが、この法律はアメリカが独立戦争を行うと同時に廃止されている。
つまり、第2次印紙税法で、今度ばかりはアメリカが自らのために税収を上げるために作られた。その課税対象になったものが遺産税と贈与税であった。すなわち、州のベースではそれまでも遺産税と連邦税に課税をすることはあったが、連邦レベルではこの1794年印紙税法が初めて遺産税と贈与税を作ったことになる。その意味ではまさに特定目的税である。
戦争が終わり軍事費が要らなくなれば、この連邦遺産税と贈与税は廃止される運命にあった。そして実際に1802年に廃止されている。さらにもう一度生き返ったのは1862年で、この時は南北戦争のためであった。そして1980年にまた廃止されている。近代的な意味合いで贈与税や遺産税が恒久的に作られたのは1930年代となる。
こうした背景から、遺産税や贈与税は戦争と深いかかわりを持った。もともとの税収でカバーしきれない部分を、この税金がうめるのだから、リリーフピッチャーのようなものである。さらに、課税対象は印紙税であるがゆえに、財産を移転することの権利を客体としている。直接の所得とかに課税をしているのではなく、権利に課税し、その文書に対して収入印紙を貼っているのと同じであったといえる。
それゆえに、もともとの歴史的な経緯が、連邦遺産税や贈与税の中に組み込まれている。その意味では2010年になって連邦遺産税が1年間廃止されるというのは、とんでもなく奇抜なことをするというのではない。200年以上も前から繰り返されていることを、ここでもう一度行うだけで、歴史の中から見れば今までも何度かあったことである。
連邦遺産税と贈与税が、アメリカの海軍を作ったのかと思えば、なるほどそうだったのかと思わずにはいられない。初めの6隻のうちで、その1隻のレプリカが今でもバルチモアの港に浮かんで博物館になっている。連邦遺産税や贈与税がとっても身近に、形あるものに思えてくる。
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