日常、いろいろな形でありがとうございましたとお礼を渡すことがある。この時期は、お世話になっているからとお歳暮を贈ったり、お世話になった人にお礼をあげたりもらったりする。 こうしたお礼はアメリカ税務上、どうなるのだろう。贈与税と所得税の切り口で考える。 贈与税で言えば、社会通念上の通常のお礼ではまず贈与税の対象とはならない。 アメリカでは日本と異なり、あげる人が贈与税を支払う。しかも、あげる人一人あたりで2022 年の贈与税の年間非課税控除額16,000 ドルがある。夫婦であげるとこの2倍となる。非課税の枠を超える贈与はしていないだろう。 一方、会社、雇用主から社員への現金や現金同等物の贈り物は、たいていの場合は報酬としてみなされる。特別ボーナスとかインフレ一時金とかは課税対象の所得となる。違和感はないだろう。 しかしながら、現金以外のお菓子や誕生日祝いをもらったり、会社のコピー機、携帯電話をたまに私的利用する事はどうか。私的利用は許されるかどうかは脇に置くと、ごく少額なら税務処理が現実的でないと見なすため、税金の対象にしていない。 少額とはいくらかと言えば、明快な線引きはない。2001 年IRS のフリンジ ベネフィットガイドでは、 少なくとも 1回、100 ドルは少額ではないとしている。金額が小さくとも恒久的に何度も繰り返されるとこれも課税対象になることもある。

ずいぶん昔の事だが、給料は現金で支払われていた。給料袋にお金が入れられて、給料日には上司からその給料袋を受け取るものだった。懐に現金があると気が大きくなって、あっという間にお金がなくなったり、給料袋を紛失してしまうとか、逆に、使いかけの給料袋が机の中から出てきたと言う人もいたりしてにぎやかな時代だった。 しかし、いつの間にか給料は「銀行口座」「証券口座」に振り込まれる。口座の残高だけが動いて記載される。 そして今、給与を○○Payなどスマートフォン決済サービスで受け取る「デジタル給与払い」が近々実現しそうだと新聞で伝えられている。「決済サービス」に給与が直接振り込まれると、ATMに現金を下ろしに行くことがなくなる。スマホがまるで金融機関のATMだし、自分の財布となっている。 キャシュバックやポイントなどの特典もつくならありがたい話だ。ますますお金を支払ったり、受け取ったりするのではなく、情報だけがやり取りされて決済が終わってしまう。何とも便利なものだと思える。 そこで、気になるのはFBARやFATCAの報告の時に、決済サービスをどう扱うのだろう。金融口座で給与を受けて、そこから○○Payに残高が移る場合、金融口座の残高把握は可能だ。しかし給与支払元から給与がスマホの○○Payに振り込まれるなら、金融機関を通過しない。 決済サービスゆえに金融機関じゃなく、残高報告の対象から外れるのかよくわからない。しかし、趣旨としては決済サービスでも、情報申告の対象に入れると言う方向なのだろうと思う。金融機関の住所や支店名を書くのも戸惑うし、口座番号をどう書くのか疑問を持つ。 とは言え○○Payの残高をすべて報告して特段の不都合はない。申告しないで後から何かを言われるより、そのまま申告するのが安全運転と思える。

年内も1か月を切り、来月には2022年分の2023年申告が始まる。今月はクリスマスでお休み気分になりがちだが、そろそろ申告の資料もそろえなければならない時期に来ている。アメリカの税務から早く解放されたいならば、ここは大事な月だ。 グリーンカードを持っている人が日本に帰国して、そのままグリーンカードを持ち続けていれば、今までのようにずっとアメリカへの申告がついて回る。グリーンカードが期限切れでも、正式な放棄手続きなしには、税務上のステータスは変わらない。 日本だけではなく全世界の所得がアメリカへの申告の対象になる。日本の所得もアメリカに申告しなければならない状況が続く。グリーンカードを放棄するか決断できなければ、アメリカへの申告はこの先もついて回る。 日本に帰国して、もうアメリカに戻ることはないとはっきり決断できているならば、グリーンカードの放棄を行い、アメリカの税務から解放されたらどうだろう。日本の申告に加えてアメリカの申告を行う事は面倒だろうと思う。 グリーンカードの放棄はアメリカ大使館でのサイトに掲載されている。難しいことはなく方向さえ決まっていたら、手続きは書類を郵送するだけで、書類の作成は20分か30分あれば終わるだろうし、あっけないほど簡単だ。年内に十分行うことができる。そうすれば2022年分の2023年申告(出口税も含めて)が最終申告となる㊟。 この手続きを1月以降に行うと、さらに最終申告が1年延びて2024年まで延びてしまう。 一方で、積極的にこれからアメリカで生活されると言うも当然、おいでになる。年令に関係なく70歳半ばになってグリーンカードを取得され、これからアメリカに移るという方にもお会いした。この場合は、日本の年金も含めてしっかりアメリカで申告を行うことになる。 ㊟グリーンカードを放棄しても、アメリカに不動産があって賃貸所得があるとか、その不動産を譲渡して譲渡益の課税を受ける場合は、アメリカ非居住者としてのアメリカへの申告は残る。この場合は、完全にアメリカの税務と接点がなくならない。

イーロン・マスクがTwitterを買収し、週40時間はオフィスで勤務することを指示したとニュースになっている。逆に言えばすっかり自宅勤務が定着している。何より通勤時間がなく、人ごみに入ってコロナウイルスに罹患することを心配しなくて良い。また自分で時間をうまく使い生産性も上がるとありがたい限りだ。 さてリモートで働く場合、仕事を行うために費用が発生する。この費用は税務上、控除対象になるのだろうか。当然のこととして、仕事に付随して合理的に発生する次のような費用は控除できる。 コンピュータ、周辺機器、ソフト、消耗品等 部屋代、机、椅子、サイドテーブルなど 電気代、水道、ガス、通信費、電話、オンライン会議費用 修繕費、メンテナンス費用 車両の燃料代と修理サービス費用 交通費、郵便料金、宅配便等 但し、私的な費用とビジネスをきちんと分けて、私的目的に発生した分は差し引かなければならない。自営業の人には当然のことだし、経費の対極には売り上げがある。 問題は給与をもらって働いている人が、こうした費用を税務上控除できるかだ。控除できるなら、リモートワークはとても魅力的に見える。 しかし、会社に雇用されている人が自宅で働いていても、自宅で発生する費用を差し引くことはできない。州税においては何らかのローカル・ルールがあるかも知れないが、連邦税においては可能性はない。 この場合は、会社に対して発生した費用を請求し、会社から発生した費用を肩代わりしてもらうしかないだろう。会社が発生した費用を支払ってくれた場合、その分を所得に加算して課税を受けることはない。

アメリカに長年住んで株等のキャピタル資産を持っている人が、それを譲渡して譲渡益が発生すればアメリカの課税対象となり、アメリカに納税する。連邦税で20%課税だと1億円の譲渡益があれば連邦税だけでも2,000万円の税金が発生する。 しかし、資産を譲渡しないままアメリカの非居住者になると、アメリカの譲渡益課税の対象から抜け落ちてしまう。 だから、これはありがたい節税策とばかりに市民権やグリーンカードを放棄する。IRSはこうした経済的な利益のために、アメリカ市民・グリーンカードを放棄するのはいかがなものかと考える。そこでExit Taxを持ち出して出国にあたり、まだ資産を譲渡していない場合でも、あたかも譲渡をしたものとして譲渡益に課税を行う。 アメリカに長年住んで働いている間に資産の値上がりを享受している。アメリカでの生活、過ごした時間なしには財産が膨らむことはなかった。それを考えれば、アメリカに税金を払いなさいと言う事だろう。そこで、市民権やグリーンカードを放棄した人はForm 8854(出国税)の提出を求められる。 但し、グリーンカードを持っている人では、過去15年において8年以上グリーンカードを持っていたのかどうかという条件がつく。8年以上の場合はForm 8854を提出する。ところが8年未満の場合は提出をすることがない。 ではEビザで10年とか20年アメリカに住んでいる人はどうだろう。その間に資産の値上がりを享受している。しかし、移民ビザではない。もともと移民ではないのでExit Taxの対象ではなく、Form 8854を提出しない。 移民ではない事が大きな分水嶺になっている。アメリカ市民やアメリカ市民とほぼ等しいグリーンカードを持っている人たちの、税務上の責任は重く、納税の義務を果たして国家に貢献しなさいということか。

電子申告を送って申告書がIRSや州に受理されたかどうかはすぐわかる。まれにだが、電子申告がIRSや州から拒絶されることが起きる。代表的な理由は社会保障番号を間違えている事だ。 社会保障番号の間違いは、数字の倒置などの入力ミスによるものだとすぐに修正が効く。しかし、いくら見ても正しく入力されているのに、その社会保障番号で既に申告がされてしまっている場合は面倒だ。 これは自分のミスではない。他の誰かが納税申告書に他人の社会保障番号を入力してしまっている。IRSのチェックを潜り抜けて、申告書は受け入れられている。夫婦間でそれぞれ別に申告書を提出して、子供を二重に扶養に入れたとかならまだわかる。 しかし、どう見てもそう思えない事がある。社会保障番号だけなら、入力の間違いはかなりの確率であるだろう。しかし、名前までとなると簡単ではない。日本人の名前のスペリングは、英語圏の人には必ずしも容易ではない。名前と社会保障番号まで完全一致となると、相当慎重に入力しないといけない。指が滑ったくらいでは日本人の姓名を間違えて第三者の米人が入力してしまったとは考えにくい。 どこかで個人情報を盗まれているなら大変だ。大人はそれなりに、注意も働くけど、子供の場合、そうした注意が働くかどうか心もとない。子供の情報が盗まれて誰かの扶養家族にされて、給付金や税額控除を取られていたら困ってしまう。 とりあえず、にっちもさっちもいかない場合は、紙の申告書を提出する。さらに、明らかに社会保障番号の不正使用があった場合は、Form 14039を一緒に提出して報告する。 翌年、また同じことが発生するならたまったものではない。そこでIRS から IP-PIN を取得して二重認証にする。これは1年しか有効ではないので毎年、取得することになる。2023年1月中旬にはIP-PIN をオンラインで申込みできるので、早めに動くのが良いだろう。

日本で個人用のPayPalアカウントを持っていたら、FBAR および Form 8938 で報告する必要があるのだろうか。 もちろんこれはUS Personを対象としての話だ。US Personとは米国市民、米国居住者、米国法により設立された会社、パートナーシップ、有限責任会社、信託および遺産財団を言う。 PayPalは銀行と同等の金融機関というよりか、海外送金・決済の手段と思える。それならばFBARやForm 8938で申告をしなくて良いように思える。 しかし、送金を受けて出金されないと、PayPalにはそのまま残高が残る。これに対して、PayPalは送金に利用しない残高はすみやかに引き出すよう求めている。2021年12月から、PayPalは、対象となる人の資金をPayPal残高から銀行口座に自動的に引き出すことができると言う。 自動的に引き出されるのであれば、月末時点では送金に用いない余剰資金の残高は残らず、銀行口座に資金は移動する。PayPalには残高は残っていない。その資金は銀行口座の残高として報告が行われる。 送金用で残っている分で銀行口座に移動しないものは、PayPalで報告しないと落ちてしまう。 はっきりしない場合、PayPalの残高をすべて報告して特段の不都合はない。口座の動きを報告したと割り切れば、二重の報告でも、そのまま申告するのが安全運転と思える。

住宅ローンの残債一括返済時に為替変動により債務免除益が発生し、課税所得になり得ることを前回は書いた。 住宅ローンは毎月返済している。そうすると為替差損益は毎月発生している。借り入れ時のドルでの住宅ローン返済額と、実際に毎月支払っている時点での為替差損益が発生している。 これを細かく追いかけていくのは面倒だ。幸いにも個人的な住宅ローン支払いでの為替変動による債務免除益は、支払っている都度に$200未満のものは非課税としてくれる。実際はあまり影響しないのではないだろうか。 もしも計上することになるとForm 8949に差益を出して、Schedule Dに反映される。通貨と言うよりキャピタルゲインの扱いをなる。 さて、為替が円安に動いているので債務免除益となるのだが、為替が円高になることもあり得る。仮の話だが全く正反対に為替が動いたとしてどうなるか。 $1=150円の時に3,000万円($200,000)のローンを借りたとする。残債を2,000万円とすれば$133,333だ。完済時に$1=79.33円だと残債2,000万円は、ドルでは$252,111となる。$118,778の住宅ローンを余計に支払わなければならない。 完済時には円高となれば、ドルに直せば余分に住宅ローンを払うことになる。実際は円で動いているので、余分にお金を払うことはないが、幽霊みたいな話となる。 アメリカの申告書上では、その幽霊みたいな支払い分を控除として使えるといいのだが、個人的な費用には控除を使わせてくれない。

この所、一時的に$1=150円を越えて円安の進行がものすごく早い。この影響はアメリカの申告にも影響する。 日本の不動産を譲渡した場合に次のような例が起こり得る。今から10年前にマンションを5,000万円で購入した。このマンションを現時点で、8,000万円で譲渡する。経費、減価償却費とかを計算に入れず、単純に3,000万円の譲渡益が発生したとする。日本の税金は20%とすれば600万円の税金が発生する。アメリカも同じように譲渡益に課税されるので、大変だと思うかも知れない。 アメリカの申告はドルで行うために、譲渡額8,000万円は$1=150円だと$533,333だ。購入した5,000万円は10年前の10月22日の為替レートのTTMで$1=79.33円で計算すると$630,279だった。$533,333-$630,279=▲$96,946の譲渡損となる。 日本だと3,000万円の譲渡益が出ているのに、アメリカから見れば▲$96,946の譲渡損となっている。譲渡損だからアメリカの税金は発生しない。為替による損益の別れ方が激しくてびっくりする。 ここまでは良い。 住宅ローンがある場合だ。住宅ローンを3,000万円借りて、1,000万円を返済してローンが2,000万円残っているとする。譲渡額8,000万円でローンの残債2,000万円を返済しやれやれ一段落と思う。日本円では3,000万円を借りて3,000万円を完済している。 この住宅ローンも為替の影響を受ける。$1=79.33円の時に3,000万円($378,167)のローンを借りた。完済時には$1=150円なので、残債2,000万円はドルでは$252,111だ。 アメリカから見れば、2,000万円の残債は$1=150円となったために、$133,333を返済しただけで、住宅ローンが無くなっている。 あたかも$252,111-$133,333=$118,778だけ住宅ローンを減額してもらっている。これは債務免除益で立派な所得だ。為替差益に対する課税となる。キャピタルゲインの税率ではなく通常の所得の税率が適用される。 日本の税務上は円で動いているので、為替差益はない。実際にそのお金を手にしていないアメリカだけに発生する幽霊所得だ。幽霊所得に課税され、アメリカに納付しなくてはいけないなら恐るべし為替レートだ。

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