2026年9月9日、トランプ大統領が「Trump Dividend」と呼ぶ5,000ドルの給付構想を発表した。内容は、2026年11月の中間選挙で共和党が上下両院を維持した場合、すべての成人の米国市民(adult U.S. citizens)に5,000ドルを支給するというものである。ただし、これはまだ成立した制度ではない。支給方法や所得制限、財源、そしてCongressによる立法も決まっていない。成人約2億4,000万人を対象とすれば、総額は1兆ドルを大きく超えるとされている。
それでも、日本に住む米国市民やGreen Card holderにとっては、税務上興味深い問題である。
日本に住む米国市民も対象になるのか
現在公表されている説明で重要なのは、「adult U.S. citizens」という表現である。ここには、少なくとも現在の発表上、「米国居住者に限る」という条件は明記されていない。したがって、最終的な法律がこの資格要件をそのまま採用するのであれば、日本に住んでいる米国市民も対象になる可能性がある。日本に住み、米国にはほとんど行かない米国市民であっても、「海外居住だから対象外」とは現在の発表からは判断できない。最終法案で居住地要件が追加されれば話は変わる。
Green Card holderはどうか
ここは米国市民とは区別する必要がある。Green Card holderは、米国税法上resident alienとなり、米国市民と同様に1040を提出するなど、広範な米国税務上の義務を負う。しかし、今回のTrump Dividendは現在のところ「adult U.S. citizens」を対象としているため、Green Card holderが対象になるかははっきりしない。
「Dividend」だから配当所得?
税務上もう一つ注意したいのが、「Dividend」という名前である。株式の配当であればdividend incomeだが、今回の5,000ドルは政府からの給付である。したがって、Trump Dividendという名称だけで配当所得になるわけではない。米国で課税されるかどうかは、最終的に議会がどのような法律を作るかによって決まる。
日本ではどうなるのか
日本に住んでいる米国市民にとっては、さらに日本の所得税が問題になる。仮に5,000ドルを米国の所得税上非課税としたとしても、日本でも自動的に非課税になるわけではない。
日本の居住者については、日本の所得税法に基づいて、
* 非課税所得なのか
* 一時所得なのか
* 雑所得などになるのか
を別途判断する必要がある。米国で非課税になったから、日本でも非課税とは考えない方がよい。
所得の再分配
ところで、この5,000ドルの財源は関税収入だと説明されている。関税を法律上支払うのは輸入業者だが、その負担は価格上昇を通じて米国の消費者や企業にも転嫁される。つまり、「関税で政府が集めたお金を国民に配る」というのは、政府が新たに5,000ドルを生み出すという話ではなく集めたお金を国民に再分配する仕組みともいえる。
その意味では、「右手で関税を取り、左手で5,000ドルを配る」という見方もできなくはない。ただし、関税をどれだけ負担するかと、5,000ドルを誰が受け取るかは同じではない。関税をほとんど負担しない人が5,000ドルを受け取ることもあり得るため、実際には所得の再分配という側面を持つ。
そして、日本に住んでいる米国市民まで対象になるとすれば、さらに興味深い。日本で生活している人が米国の関税による価格上昇をほとんど負担していないにもかかわらず、米国政府から5,000ドルを受け取る可能性があるからである。
そもそも、この5,000ドル給付はまだ存在する制度ではない。トランプ大統領が、2026年中間選挙で共和党が上下両院を維持した場合の政策構想として示しているものである。したがって、選挙結果によっては、この話自体が実現に向けて進まない可能性がある。
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