米国は、市民や長期居住者に対して世界中の所得を課税する国である。その一方で、株式や投資資産の値上がり益は、実際に売却するまで課税されない。 ところが、米国の出国税には少し不思議な仕組みがある。 たとえば、1,000万円で購入した株式が、市民権やグリーンカードを放棄する時点で3,000万円になっていたとする。本来であれば売却しない限り利益は確定しない。しかし出国税では、その株を売っていなくても2,000万円の利益が生じたものとして税金を計算する。 手元に現金はないのに税金だけが発生するため、このような含み益への課税は「幽霊利益への課税」と呼ばれることがある。 米国が幽霊利益に課税する理由 一般に、非居住者が得る株式等のキャピタルゲインには、米国で課税されないことが多い。 そのため、富裕層の中には、市民権やグリーンカードを放棄して非居住者となった後に資産を売却し、米国課税を回避するケースがあった。 米国政府から見ると、米国に住んでいた期間に生じた値上がり益であるにもかかわらず、その利益に課税できなくなってしまう。これを防ぐために導入されたのが「みなし譲渡課税」である。 covered expatriate(対象者) に該当する人については、出国日の前日に時価で財産を売却したものとみなして利益を計算する。つまり出国税とは、米国の課税権を守るための最後の精算制度なのである。 納税者にとっては厳しい制度 もっとも、この制度には大きな問題もある。最大の問題は、利益がまだ現金化されていないことである。株式や不動産の評価額が上昇していても、売却しない限り手元にお金は入らない。しかし税金だけは先に支払わなければならない。 非上場株式 事業の持分 流動性の低い不動産 長期間保有する予定の株式 などは負担が大きくなりやすい。 さらに、出国時に3,000万円として課税された株式が、その後1,000万円まで値下がりすることもある。その場合、実際には利益を得ていないにもかかわらず税金だけを支払ったことになる。 また、日本へ帰国した後にその株式を売却すると、日本でも課税される可能性があり、場合によっては二重課税の問題が生じることもある。 「合理的だが厳しい」──これが出国税 出国税は、米国の課税権を守るという意味では合理的な制度である。 納税資金を確保しなければならない 財産評価をめぐる争いが生じる 出国後の値下がりリスクを負う 国際的な二重課税の問題が起こり得る といった負担も納税者に課している。したがって、出国税は「不合理な制度」でも「完全に公平な制度」でもない。米国の課税権を守るという目的には合理性がある一方で、納税者には相当の負担を求める制度と理解するのが適切であろう。 まず確認すべきこと もっとも、幽霊利益への課税はすべての人に適用されるわけではない。対象となるのは、一定の条件を満たす covered expatriate(対象者) に限られる。 代表的な判定基準は次の三つである。 純資産が200万ドル以上であること(純資産基準) 過去5年間の平均所得税額が2026年では21.1万ドル以上であること(納税額基準) 過去5年間の税務申告を適正に行っていないこと(適正申告基準) 多くの日本人のグリーンカード保有者は、純資産基準や納税額基準には該当しないことが多い。しかし、過去5年間の申告が適正に行われていなかったために対象 と判定されるケースには注意が必要である。 毎年の申告と納税をきちんと行うことは、将来グリーンカードや市民権を離脱する可能性がある人にとって重要な準備の一つだ。 また、長期間米国外に居住しているグリーンカード保持者が米国へ入国する際、永住意思の欠如を理由としてグリーンカードの自主返納を求められるケースもある。税務上の影響を十分理解しないまま返納手続に応じてしまうと、思わぬ形で出国税の問題に直面する可能性もある。 幽霊利益への課税は、米国に住んでいた間に生じた値上がり益を課税の網から逃さないために設けられた制度である。制度の趣旨は理解できる。しかし、実際には売却していない財産に課税する以上、納税資金や値下がりリスクといった問題は避けられない。出国税を考える際に最も重要なのは、「幽霊利益がいくらあるか」ではなく、まず自分が covered expatriate (対象者)に該当するかどうかを確認することである。そこが、出発点になる。

1. 今年は「いつもと違う」 例年、IRSからの還付やレターは“忘れた頃に届く”のが普通だった。 1〜2年前、場合により数年前の申告について突然手紙が届くことも珍しくなく、処理にはとにかく時間がかかるのがIRSの常だった。ところが今年は、申告を終えた直後にIRSから手紙が届くというケースが発生している。 「IRSの処理が改善したのでは?」と期待したくなるスピードだ。しかし、届く手紙のほとんどが Letter 5447C(本人確認レター)だ。 2. Letter 5447C 目的は非常にシンプルで、 「この申告書を提出したのは本当にあなたですか?」 という本人確認だ。近年、他人の個人情報を使って勝手に確定申告を行い、還付金をだまし取る「なりすまし詐欺」が増加している。 そのためIRSは、一定の条件に該当する申告書を自動的にストップし、本人確認を行う仕組みを強化している。 対象になりやすい条件 • 海外住所(日本など)からの申告 → 海外在住者はこれだけで高確率で対象 • 引っ越しをして住所が変わった • 申告ステータス(独身・夫婦合算など)を変更した • ランダム抽出によるチェック 申告内容が間違っているわけではなく、 単に「あなたが本人かどうか」を確認しているだけだ。ただし、本人確認を完了するまで申告処理は完全にストップする。 3. なぜ今年はこの手紙ばかり届くのか 理由は公表されていないが、考えられる背景は次のとおりかもしれない。 可能性①:IRSが慢性的な処理遅延の改善に本気で着手した IRSはここ数年、業務遅延が深刻化していた。 大量の職員退職・解雇も続いており、従来の人力処理では限界が見えていた。 可能性②:AIによる自動判定が導入された 推測ながら、 人手不足を補うためにAIによる自動スクリーニングが強化された可能性がある。 もしアルゴリズムが変更された場合、 「海外住所」「ステータス変更」「住所変更」などの条件に該当する申告が、以前より高頻度で本人確認に回されることは十分あり得る。結果として、 本当に本人が申告しているのに、本人確認レターが大量に届く という現象が起きているのかもしれない。 本人確認レターが届いたら必ず対応しなくてはならない。放置すると処理は動かない。還付金はいつまでたってももらえない。海外在住者にとっては面倒な手続きだが、 IRSの処理が全体として早くなるのであれば、今年の状況は歓迎すべきことかもしれない。しかし、状況が改善しなければさらに重荷を背負うことになる。

日本で税金といえば、確定申告期限の3月15日を思い浮かべる人が多い。一年分の所得を計算し、税額を確定させ、その金額を納めれば一段落する。税金とは「金額が決まってから支払うもの」という感覚が、日本では自然だ。 ところが、米国の税務は発想が違う。「申告期限までに全部払ったのに、なぜペナルティなのか」と疑問に思うことがある。米国では税金は申告時にまとめて払うものではなく、「所得が生じるにつれて納めるべきもの(Pay-as-you-go)」という考え方が基本になっている。この違いは、予定納税制度を見るとよく分かる。 日本の予定納税は、前年の所得税額が一定額以上であれば、その税額を基準に通常7月と11月の2回前払いする。今年の所得がいつ増えたか、年の途中で大きな利益が出たかといったことは、ほとんど問題にならない。個人所得税は、一年分を確定させてから納税するという流れが中心だからである。 一方、米国では、給与以外の所得など源泉徴収されない税金は、所得が生じるのに合わせて予定納税で納めることが求められる。そのため、通常は4月15日、6月15日、9月15日、翌年1月15日の4回の納付期限が設けられている。各期限までに十分な税額を納めていなければ、その不足額について遅れた日数に応じて金利が計算される。翌年の申告期限までに税額を完納しても、「もっと早く納めるべき」と判断されれば、その間のペナルティは残る。 もっとも、米国には救済策もある。一般には、前年の税額の100%(一定の高所得者は110%)を期限どおり納めていれば、最終的に税額が不足していても予定納税不足ペナルティは原則として課されない。所得を正確に予測することが難しいことを前提に設けられた仕組みだ。 日本と米国の違いは、税金を「いつ支払うべきもの」と考えるかにある。日本では、一年分の税額を確定させてから納税する。一方、米国では所得の発生に合わせて税金も納めていく。国が違えば「税金が流れる時間」は異なる。予定納税制度は、その違いを分かりやすく示している。

2026年6月にTIGTAが公表したレポートは、現在の米国税務行政の構造的変化を示している。わずか1年で3.1万人、IRS職員の約30%が職場を去った。新規採用はわずか2,000人にとどまり、結果として人員は28%の純減となった。しかも離職は、あらゆる部門に及び、紙申告や修正申告、国際案件を担う日本在住者には直接影響を与える。 表面的には、米国内の多くの納税者にとって大きな変化は見えにくい。e-fileとダイレクトデポジットを利用する給与所得者にとって、還付は依然として数週間で処理される。IRS自身も「大多数の納税者への影響は軽微」と説明している。アメリカの税務の本丸はできる限り影響を受けないようになっている。 しかし、海外は蚊帳の外に置かれているようだ。 日本居住の米国申告は本質的に人手依存である。海外住所、ITIN、租税条約、Form 1116、紙提出、修正申告、さらには国際郵便。これらはいずれも自動化が難しく、人的処理に依存する領域である。その担い手が3割いなくなっている。 影響はすでに顕在化している。TIGTAの2026年1月・2月の報告が示す未処理案件は象徴的だ。修正申告は54.8万件、紙申告は30万件、エラー処理待ちは12.6万件超、コレスポンデンスは37.5万件超に積み上がる。さらに深刻なのは、紙のデジタル化がほとんど進んでいない。2025年に受領した570万件の紙書類のうち、スキャン処理されたのはわずか7%に過ぎない。つまり、紙で送付された書類は、システムに取り込まれるまでに数か月単位の遅延を前提とすることになる。 この遅延は、単なる「時間の問題」では終わらない。通知制度そのものにも歪みが生じている。IRSの申告内容に対する通知は、本来であれば処理状況を反映したものであるはずだ。しかし現実には、回答済みの案件に対して同一通知が再送される、処理が途中で停止する、ITINが発行されても既存アカウントに紐づかない、期限内に返送したにもかかわらず期限切れと扱われる、といったことが起きる。1か月以内に回答せよという通知が期限直前や期限を越えて手元に届くこともある。ここにあるのは、個別のミスではない。制度的な処理能力の低下だ。すなわち「正しく申告しても処理されない可能性」が、例外ではなく構造として存在し始めている。 海外からの申告はアメリカ国内の税務だけでは終わらずに、複雑な申告になりがちだ。こういうところは機械処理ではなく、IRSの中でもともと人手をかけて慎重に処理される。人員削減は国際部門だから行われないということではない。その結果、海外在住者の申告は「遅れる」「止まる」「誤る」というリスクにさらされることになる。不動産の譲渡時に源泉徴収される税金の還付が数か月で行われると見ていたものが、1年たっても、それ以上になっても還付されないこともあり得る。しかも金額が大きい。 米国内の単純な給与所得者には依然として大きな影響はないかもしれない。しかし、海外在住者、複雑案件、紙提出、修正申告に関わる者にとっては、大きな変化である。これからは、「正しく申告してもうまく処理されない可能性がある」ことを心しておく必要があるだろう。

申告書を紙でIRS送る場合、迷うのが IRS の住所に番地がないことだ。 Department of the Treasury Internal Revenue Service Austin, TX 73301-0215 USA 日本でいえば「東京都 東京都庁 160-0023」とだけ書き、 「新宿区西新宿〇丁目〇番地〇号」がない。郵便が住所ではなく ZIP Code で動く仕組みとなっている。 ZIP Code は「住所」ではなく“行き先コード”になっている。 アメリカの ZIP は、 • 12345(基本) • 12345-6789(ZIP+4:細分化) という構造で、 • 最初の5桁:地域・郵便局 • 後ろ4桁:建物内の部署・私書箱・処理ライン を示す。 IRS Austin の 73301-0215 は、 • 73301 → IRS Austin センター • 0215 → その内部の特定部署 という意味で ZIP だけで行き先が決まる。 IRS は毎年、数億通の郵便物を受け取る。 番地を探して配達する方式では処理できない。 そのため USPS と連携し、郵便物は次のように流れる。 1. ZIP 73301 に到着 2. IRS 専用搬入口へ 3. ZIP+4 で自動仕分け 4. 各部署へ配送 73301 = IRS Austin センターそのもの。 日本でいえば、「160-XXXX → 東京都庁の郵便集中センター」に自動的に仕分けされるようなものだ。 FedEx / DHL / UPS等は別住所が必要となる。 民間のデリバリ―サービスは 道路住所(番地)が必須になっている。 そのため IRS は民間宅配用に別住所を持っている。 3651 S IH 35 Austin, TX 78741 USA IRS の住所は「番地がない」のではなく、そもそも「番地を使わない仕組み」となっている。 日本: 番地 → 建物 → 部署 アメリカ(IRS): ZIP → 専用搬入口 → 自動仕分け → 部署 という順番で郵便が届く。 郵便局で「番地がない」と言われても、 IRS の仕組みではそれが正しい住所で、なかなか理解してもらえないかもしれない。

日本で静かに暮らしてきた人が、ある日突然「あなたは米国納税者である」と告げられることがある。いわゆる意図せず米国籍を持つ人 の問題である。本人に米国とのつながりはほとんどない。米国で生まれただけ、あるいは米国籍の親を持つだけで、米国の税務義務が課される。 この構造は、国際税務の世界でも特異であり、当事者にとっては理不尽だ。 米国は世界でも珍しい 市民権ベース課税を採用している。居住地に関係なく、米国籍を持つ者は米国税法の適用を受ける。日本に住み、日本で働き、日本で税金を納めていても、米国は「あなたは米国市民である以上、米国税務申告を行う義務がある」と主張する。 出生時に米国籍を得た人に対して出生証明書を発行する病院も、パスポートを発行する国務省も、 税務義務についての説明は基本的にはしない。 IRS も税務義務・FBAR・FATCA等の説明を積極的に行っているとは言いがたい。 申告義務を知らずに長年放置していた場合、申告書の提出だけではなくFBAR(外国銀行口座報告) やFATCAの未提出が問題となる。未提出にはペナルティがあり、ここで困ってしまう。 実際には、故意でなければ救済策が存在するが、仕組みがわかりにくい。 こうした状況の中で、米国市民権の放棄を選ぶ人も増えている。今般、 国務省が市民権放棄手数料を 2,350ドルから 450ドルに引き下げたことは、市民権を放棄しようとする人にとってはありがたい話だろう。それでも放棄には Exit Tax(出国税) の問題がつきまとう。資産が一定額を超えると、放棄時点で含み益に課税される。これは「自分の意思で取得したわけでもない国籍を手放すために税金を払う」という、逆説的な構造である。 根本的な問題は市民権ベース課税という制度そのものにある。米国籍を持つというだけで、世界中のどこに住んでいても税務義務が生じる。この制度は、グローバル化した現代社会において、ますます多くの「意図せざる納税者」を生み出している。

Form 1040 のprimary taxpayer とspouseはどんな意味があるのかと思うことがあるかも知れない。米国では、「家族は一つの経済単位である」という考え方が強い。世帯単位での課税・管理が行われ、その中心としてprimary taxpayerが設定される。 一方、日本では「所得は個人に帰属する」という思想が強く、そもそも“代表者”を置く必要がない。この違いが、primary taxpayerという概念の有無を分ける。 Primary taxpayerとspouse primary taxpayerとは、夫婦合算申告における「主たる申告者」を意味する。申告書には必ず次の二者が並ぶ構造となる。 • Primary taxpayer(主たる申告者) • Spouse(配偶者) ここで重要なのは、「どちらがprimaryになるか」に明確な法的基準は存在しない点だ。実務上は過去の申告でprimaryだった者 、主軸として登録されている者 がIRSのデータ管理上の起点になる。つまりこれは、「家計の中心」や「収入の多い方」を意味するものではない。 責任の重さは異なるのか 結論から言えば、責任の重さは全く同じである。米国の合算申告には連帯責任の原則が適用される。これは、申告内容の誤りや追加税額について、夫婦のどちらに対しても全額請求できるという意味だ。したがって、primaryだから責任が重い 、spouseだから責任が軽い という関係は存在しない。 日本在住者にとっての実務的な意味 日本に住んでいると、米国税務ではIRSからの郵便物の受領 、過去申告との整合性 、離婚・別居などによるステータス変更 などで影響が出ることがある。 特に海外在住者の場合、IRSからの郵送物の管理や本人確認が難しくなるため、「誰をprimaryにするか」は単なる形式ではなく、実務の安定性に直結する。 日本在住者はどう決めるべきか 日本在住者にとって実務上の優先順位は次のとおりだ。 1. 過去の申告でprimaryだった者を継続する 2. IRSからの郵便物を確実に管理できる人 3. 本人確認をスムーズに行える人 4. 将来も米国税務の中心となる人 特に重要なのは「一貫性」である。primary taxpayerを変更すると、IRS側で混乱が生じ、実務上のトラブルにつながる可能性は十分にある。IRSは“primary taxpayerを中心とした申告”として履歴管理をしている。Primaryの変更でIRSの記録との不整合が生じ、思わぬ手続きトラブルの原因となることがある。

今シーズンの米国申告について、IRSの為替レートがようやく発表された。例年より遅れたため、申告の準備が進められず足止めとなった方も多かったはずだ。 IRSが抱える未処理申告の状況は深刻で、TIGTAレポートによれば、2026年申告シーズンの開始時点で約200万件の個人関連在庫(バックログ)を抱えている。内容は修正申告、紙によるオリジナル申告、納税者からの問い合わせ、エラー処理中の案件、拒絶案件など、人手を要するものが中心で、コロナ前の2019年末と比べて約129%に膨れ上がっている。さらに追い打ちとなったのが、2025年の政府閉鎖と構造的な人員不足だ。閉鎖後も滞留案件を抱えたまま2026年シーズンの準備に入ったため、今季の処理遅延リスクは例年以上に高いと見ておくべきだろう。 日本在住の納税者が特に意識すべきなのは、「紙の申告書」と「人手」を可能な限り避けることだ。2025年末の時点で、紙で提出された個人申告の在庫は約29万件あり、修正申告の在庫は50万件以上になっている。日本からの申告は、海外住所・海外口座、ITIN取得や更新、Form 1116、条約適用などの要因から紙提出になりやすい。いったん紙の申告書になると、バックログの渦中に組み込まれるリスクが高まる。また今シーズンから、個人所得税の還付は原則として「米国内銀行口座への振込」のみとなり、米国口座がない場合は例外処理として小切手が発行される。日本からの申告は電子申告ができないケースも多く、米国預金口座も持たない方が多い。加えて申告内容が複雑になりがちなため、IRSにとっては初めから「標準処理」から外れやすい構造にある。 特に米国不動産の譲渡が絡む場合、過大な源泉徴収の還付を受けるケースがあるが、バックログが大きい局面では還付遅延が生活費やローン返済に影響する可能性もある。本来は電子申告と米国口座への直接振り込みで、紙提出や修正申告による遅延要因を事前に排除することが重要だ。しかし現実には、日本からの申告は電子化に乗らないことがあり、米国口座も持てず、内容も複雑化しやすい。 IRSの処理遅延、米国口座以外への還付小切手送付、国際郵便の配送や日本側での取立てなどを考えると、今シーズンは日本からの申告で還付が生じる場合、相応の時間がかかると覚悟しておく方がよいだろう。

トランプ・アカウントは、2025年成立のOne Big Beautiful Bill Actで導入された、米国市民の18歳未満子供向けの税優遇投資口座だ。2026年7月開始で、米国政府が新生児に1,000ドルを拠出し、S&P500連動の低コストETF(手数料0.1%以下)で子供が18歳になるまで運用させる仕組だ。Child Tax Creditの「現金支援」から「資本蓄積」への進化形となる。 政府拠出1,000ドルの受け取り手順 起点: 親の米国確定申告(Form 1040)で子供を扶養控除対象として申告する。 自動開設: 子供に口座がない場合、IRSが自動で米金融機関(Fidelity等)に口座を作成する。親が申告するだけで口座を開設してもらえる。 入金: 2026年7月4日以降、米国政府から1,000ドル(パイロットプログラム、2025-2028年生まれ限定)が限度額外で非課税の入金がなされる。 口座運用・引き出しルール 管理: 親・保護者が子供名義で米国の指定機関で運用する(日本の金融機関は不可)。 投資: S&P500連動ETF/ファンドに限定される。 制限: 18歳まで引き出し不可。以降は教育・住宅・起業資金でIRA相当の課税を受ける。 全年齢対象: 4歳以上(~17歳)も開設可だが、政府からの1,000ドルはないが、この口座を開設することは可能で、投資の成長を享受できる。 所得が低く米国市民として、米国申告書の提出要件を満たさない場合であっても、米国市民の子供がいるのであれば、トランプ・アカウントの1,000ドル拠出や子ども税額控除の還付を受けるために、Form 1040をあえて提出(任意申告)することが、経済的なメリットを受ける手段となる。 SSN優先の排他性と日本人の現実 OBBBAは子供だけでなく親のSSNを必須にし、ITINを排除する。米国市民ではない駐在員の子供は対象外で、両親非市民・非永住者の米出生児でも米国市民権を否認される可能性がある。一方で、日本在住米国市民の親子には朗報となり得る。米国市民でなければ国籍格差があり、子供の市民権が未来の富を決めるアメリカ・ファーストになりかねない。

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