このところ、日本在住の米国納税者のもとに、IRSから申告内容の修正や追加税額の支払いを求める通知が届くケースが目立つようになっている。従来から情報照合による通知制度(Matching Program)は存在したが、IRSでは近年、自動照合や紙書類のデジタル化が進められており、人手による確認を経ずに通知が発行される場面が増えている。 一方で、人員不足や郵便処理の滞留は依然として課題であり、納税者が提出した説明資料や修正申告の処理には時間を要することがある。その結果、納税者からは「否認通知はすぐ届くのに、こちらの反論や修正申告はなかなか処理されない」と感じられるケースも少なくない。 もっとも典型的な例が、米国社会保障年金(Social Security)を受給している日本在住者への通知である。SSAは受給者に対しSSA-1099やSSA-1042Sを送付し、その情報はIRSにも報告される。IRSはこの情報を基に、納税者の申告内容と突き合わせる。日本と米国の租税条約では、社会保障年金は基本的には居住国で課税されるため、日本在住者は日本で申告し、米国申告では課税対象外となる形が大勢だ。 しかし自動化された照合システムは、条約の適用を理解しているわけではない。 「IRSに年金の情報が届いているのに、申告書に記載がない」 という表面的な差異だけでフラッグが立ち、否認通知が発せられる。人間の目で条約を確認すれば一瞬で解決する問題が、機械判定では「未申告」「所得漏れ」と扱われてしまう。 納税者にとって問題はここからだ。IRSからの通知を無視することはできず、内容を理解し、条約適用を根拠として反論しなければならない。反論が遅れれば、追加税額の請求が確定し、場合によっては督促や徴収措置に進む可能性もある。実務上、通知の意味が分からず放置してしまうケースや、少額だからと支払ってしまうケースも見られる。しかし、数十万円から数百万円規模の誤課税が生じることもあり、看過できない問題である。 IRSの自動化は、業務効率化という点では理解できる。しかし、条約適用が前提となる国際課税の領域では、機械的な照合は誤判定を生みやすい。日本在住者の米国申告は、海外住所・海外口座・紙提出・条約適用など、そもそも標準処理から外れやすい構造を持つ。そこに自動化された否認通知が加わることで、納税者は申告書作成とは別次元の負担を抱えることになる。 日本から米国申告を行う個人にとって、IRSからの通知は大きなストレスであり、対応には専門的な知識が求められる。自動化が進むほど、条約適用の説明や反論の重要性は増す。機械的な照合がメインとなる現状は、納税者にとって決して望ましいものではない。国際課税の複雑性を踏まえ、IRSには自動化と人手による判断の適切なバランスを求めたいところだ。

日本に居住する者がアメリカの社会保障年金(Social Security)を受け取る場合、その課税関係は日米租税条約第17条により明確に定められている。同条は社会保障給付について「居住地国のみ課税」と規定しており、日本居住者が受け取る米国社会保障年金は日本で課税され、アメリカでは課税されない。この点は条約本文に明記されており、解釈の余地はない。 しかし、実務において IRS が条約の規定を自動的に認識するわけではない。IRS は米国税法の通常ルールに従えば、米国源泉の年金は米国課税対象であると理解するため、申告者が条約に基づく課税権の排除を明示しない限り、通常ルールを適用しようとする傾向がある。このため、申告者は Form 8833 を添付し、「条約に基づき米国課税権を排除する」という立場を IRS に通知する必要が生じる。 ここで重要なのは、Form 8833 が「条約の効力を発生させる書類」ではないという点である。日米租税条約は国家間の合意であり、その効力は国際法に基づき自動的に発生する。条約の効力は個人の書類添付の有無で左右されるものではなく、国家間の合意に基づき常に有効である。 では、なぜ IRS は Form 8833 を要求するのか。それは、米国国内法である Treasury Regulation §301.6114‑1 が、条約によって米国税法の通常ルールを変更する場合には、申告者が IRS に対してその旨を通知する義務を課しているためである。Form 8833 は国際法上の条約適用要件ではなく、米国国内法上の「通知義務」と言える。 したがって、Form 8833 を添付しなかったとしても、条約は常に有効であり、申告者が条約に沿う処理を行っている限り、その内容は正しい。しかし、IRS は申告者が条約を使っていないと考えて、米国課税を適用しようとする。この誤解を解消するためには、後日であっても Form 8833 を提出すればよい。ただし、ここで注意すべき点がある。条約適用は常に有効であるが、還付請求には別の法律による「還付の時効」が存在する。もし条約適用により本来は米国税がゼロであるにもかかわらず、Form 8833 の提出漏れにより IRS が課税扱いとし、後日修正申告によって還付が生じる場合、還付請求がオリジナルの申告期限から3年を過ぎていれば、還付は時効により消滅する可能性が高い。条約適用は認められるが、還付は戻らないという状況が起こり得る。 日本から見れば「日米租税条約に書いてあるのだから、それで十分ではないか」と感じるかもしれない。しかし、アメリカは世界中から申告書を受け取る国であり、各国との租税条約の内容によって年金の扱いも多岐にわたる。IRS がすべての条約内容を自動的に把握し、申告者の意図を正確に読み取ることを期待するのは難しいかもしれない。 その意味では、横断歩道を渡る際に「横断中」の黄色い旗を掲げることが交通事故を未然に防ぐのと同じである。IRS に対して「私は条約に基づいて横断しています」と示すことで、誤解や不必要なトラブルを避けることができる。そう考えると、Form 8833 はまさに「横断中の黄色い旗」と言えるのかもしれない。

アメリカの出国税は、個人が保有する資産が高額の含み益を累積し、資産を売却する前に利益を税金なしで国外に持ち出すことを防ぐことを目的としている。一見すると合理的な制度だが、その仕組みは、納税者を不公平に扱う可能性を秘めている。 出国税の対象となる資産は世界中の試算を対象とする。例えば日本で20年前に3,000万円で購入した不動産が、現時点で1億円に値上がりしていたとする。出国税では、この未実現の利益7,000万円に対して課税される。一定の控除額があるのだが、この控除額を越えてしまうと、実際に売却していなくても多額の納税義務が発生する。 この出国税が、日米間の税務上のズレを生み出す要因となりえる。例えば、アメリカの出国税を支払った後、日本で実際に不動産を10年後に売却する場合を考えてみる。日本では譲渡益に対して課税が発生するが、これはアメリカの出国税を支払ってから10年後の出来事となる。 アメリカ側から見ると、既に出国税で課税は完了しており、納税者は既にアメリカ市民・グリーンカード保持者ではなくなっている。そのため、日本の譲渡益をアメリカに申告する必要はなく、日米間の税務上の接点はないと見なされる。 一方、日本側から見ると、10年前にアメリカで発生した出国税を、日本の確定申告で控除することには無理がある。なぜなら、日本の税法上、外国税額控除は「所得に対して課された外国の税金」に対して認められる。出国税は、あくまでアメリカの税制上の「見なし譲渡」に対する課税であり、日本の税法上は「所得に対して課された税金」とは認められない。 仮に、アメリカで発生した出国税を、日本の譲渡益計算時に経費として入れることができれば、個人としては10年してから日米間の精算が行われることになる。しかしながら、これは本来日本で発生して日本に納めるべき税金を、アメリカにすでに税金を払っているから日本の税金は無くなりましたと言う形になる恐れがある。日本の所得に日本の税金はなく、アメリカだけの税金となるなら、どう考えてもあり得る話ではない。 アメリカの不動産でアメリカの出国税が発生した場合、アメリカの非居住者となっても、アメリカ源泉の不動産所得があるわけだから、アメリカに申告をしなくてはならない。その税金は出国税で10年前に納付している。税額が全く不変ならば追加の税額は発生しない。しかし、日本の確定申告ではアメリカの不動産の譲渡益に対する課税は発生する。譲渡した年には外国で支払った税額がない。外国税額控除を使うべき外国の税がない。 もしもこの不合理を避けようとするならば、実際に不動産を譲渡すれば、単純な日米間の税額控除となる。あるいは対象の不動産を贈与して、事前に自分の財産から外すことができれば可能だろう。しかし、こうした場合は不動産譲渡に時間がかかったり、贈与税の話になるので慎重な検討が不可欠となる。

日本国内で住所が変わる。東京から外に転出したり、県外から東京に転入する。こうした時はすみやかに区役所や市役所に行って住民票の変更手続きを行うし、電気、水道、ガスなどの手続きを行う。 さて、こうした国内での手続きが、アメリカの住所変更通知と連動していると考える人はいないだろう。日本の区役所や市役所での住所変更手続きは、あくまで日本国内の話だ。新住所を日本の区役所や市役所が、IRSやNY州やCA州に自動的に通知してくれるわけではない。何とも当たり前の話だ。 ところが申告書となると、日本の確定申告をしたので、お終いと考えてしまう方がまれにいる。日本の税務署に申告書を提出したら、税務署がアメリカのIRSやNY州政府、CA州政府などにアメリカの申告書を提出してくれると考えるようなものだ。 住所変更手続きでは、当たり前の判断ができるのに、申告書では当たり前の判断ができない。 しかし、心底、そう信じて疑っていない方はいないだろう。税務申告、ましてやアメリカの税務申告となると、訳が分からない、知識もないということが頭の中に拒否反応を起こさせる。居心地の悪いもの、わからないもの、不安を引き起こすものからは離れたいと思うのが自然な反応だ。すると、日本の確定申告を行ったので、私はきちんと義務を果したので一件落着としているのだろう。それでも、それでいいのかなあ、自信がないなあと心の隅では不安を抱えているに違いない。 そう思う原因の一つは日本の税務が属地的な課税を行い、アメリカの税務は属人的な課税を行うというスタートラインがわかりにくいからだと思う。日本の考え方だと、住んでもいない国に申告、納税をする事はほとんどない。例外的に、アメリカに不動産があって賃料があるとか、不動産を譲渡したとなれば別だ。 アメリカは市民権やグリーンカードという属人的な属性が申告の基準となる。日本に住んでいても、アメリカの市民権やグリーンカードを持っている人はアメリカに申告を行う。いかに日本の確定申告をきちんと行っていても、アメリカから見れば無申告となっている。 多くの場合、アメリカへの申告は書類の提出だけで終わり税金が発生しない。申告さえしていればあまり心配することはない。無申告のままだと適法に行動していないことになる。 時間的な余裕がある、夏のこの時期から年内に無申告の状態を脱するいい時期ともいえる。

この所J-1ビザを持っている方から、アメリカ入国後2年もたっていないのに、報酬に課税されるが間違いではないかと言う質問を受ける。 これは日米租税条約の第20条のいわゆる教授条項の事だ。日本からアメリカに出かけて大学等で教育や研究を行う対価としての報酬は、従来アメリカに入国してから2年間は、アメリカでの課税は免除されると言うものだった。 これについて2019年8月30日に「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約を改正する議定書」が発効し、従来の第20条の教授条項は廃止となっている。8ページ目の第7条だ。 ただし、改正議定書の発効日の8月30日において現行条約の特典を受ける権利を有する教授等については、同日以後も、その特典を受ける権利を失う時まで、その特典を受ける権利を引き続き有するとしている。 今までは日本の非居住者で、なおかつアメリカで2年間課税の免除と言うのは、両国の課税からすり抜けてしまう所得があったかも知れない。それからすれば、普通の課税関係に入るわけで、わかりやすいとも言える。日米租税条約の第20条廃止に気を付けてアメリカの申告を忘れないでいただきたい。 アメリカの大学のサイトを見ると、依然として日本との租税条約で教授条項が有効と記載しているものもある。個別の国との租税条約の改訂までなかなかフォローアップできないのだろう。

2018年から海外の会社の未処分利益に対し、米国の株主に課税を行うGILTIが導入された。その結果、株主は配当をもらっていなくても課税されてしまう可能性がある。 こうした課税を受けるのは、海外の会社の支配持ち分を持つUnited States Personsだ。アメリカ国内法で作られた会社・パートナーシップ・トラスト・財団等々である。さらにアメリカ市民又はアメリカ居住者が含まれる。 この大改正で困ってしまうのは、アメリカ市民やアメリカ居住者が日本において会社を作って事業を行っているケースだ。個人事業と変わらない規模の人たちがたくさんいる。日本で自分が100%(または配偶者と50%ずつ)株を所有する会社を作り、英語を教えているとかというケースもある。 こうした人たちは、GILTIで想定する節税スキームを駆使しているわけではない。アメリカ市民又はアメリカ居住者ゆえに巻き込まれてしまっている。そればかりではなく、アメリカ滞在日数でアメリカ居住者となる人やアメリカで生まれたばかりにアメリカ市民となっている人も対象になる。 もともとアメリカに利益を還流させる目的故に、ターゲットとされた大きな企業は控除を使える。アメリカ還流された配当を個人に行えば、その段階で一般の株主は課税を受ける。 しかし、日本において会社を作って事業を行っている人は、みなしの配当に課税を受けてしまい、企業では使える控除を個人では同じように使えない事があり得る。 個人レベルでGILTIに巻き込まれると、その申告はかなり大変な作業になりえる。

Form W-8 BENを個人が提出する場合、従来は、外国納税者番号が必ずしも必須ではなかった。しかし、昨年から源泉徴収義務者の金融機関は、口座を持っている人の外国の納税者番号を集めなければならなくなった。 2018年1月1日以降、金融機関が外国人に支払う際に、源泉徴収票に外国の納税者番号が記載されていない場合、金融機関は、なぜ外国人が外国の納税者番号が取得できないのか合理的な理由を聞かなければいけなくなった。 例えば、日本人がアメリカの証券会社を利用して株式投資を行い、配当をもらう場合、租税条約の低減税率を適用してもらうためにForm W-8BENを提出する。 このForm W-8BENに日本のマイナンバーが記載されていなかったら、証券会社は、その人にどうして日本国が日本の納税者番号を付与しないのか合理的理由を求める。かなり執拗に聞かれ始めている。 日本のマイナンバーを記入しないばかりに、支払いがスムーズ行われないことも考えられる。 Form W-8の記入に際しては、日本のマイナンバーをきちんと記入するべきだ。

あなたはアメリカ市民になりたいだろうか。多くの方がアメリカの市民権が欲しいというかも知れない。反対にアメリカ市民権を放棄したいと言う方も多くいる。アメリカの市民権を放棄したいという方は、グリーンカードを放棄したいという方も同じだが、日本に帰国しており、アメリカにはもう住むつもりがないと言う理由の方が多い。 20歳台、30歳台あるいは40歳台の方ならば、アメリカでこれから自分の人生をどう切り開いていくかということを十分考えられるだろう。50歳台や60歳台は微妙かも知れないが、孫ができてから、いざアメリカで新たな人生を切り開こうというのは、なかなか大変だと思う。70歳台や80歳台では自分の人生の引き際を考えるようになる。年令が高くなるにつれてアメリカの市民権やグリーンカードを放棄されるのは自然な傾向だと思える。 市民権やグリーンカードにアメリカへの税務申告がついて回るため、なおさら、面倒だと思われてもおかしくはない。自ら望んでアメリカの市民権を取得したり、グリーンカードを取得した人ならば、自らの責任において市民権やグリーンカードを放棄することに抵抗はないだろう。 しかしながら、自分が望まないのにアメリカ市民になってしまっている人も多く存在する。即ち、アメリカは出生地主義を取るため、親の仕事の都合でアメリカに駐在している時にアメリカで生まれた人である。あるいは、両親の少なくとも一人以上がアメリカ市民だと、子供もアメリカ市民と言う事もある。いずれも、子供の意志は反映されているわけではない。アメリカで生まれても帰国したのは1歳とか2歳で、そこからアメリカには片足も踏み入れたことがないという方も多いだろう。 当然、自分は日本人だと思っているわけで、アメリカの市民と言う意識はない。となれば、アメリカに税金の申告をする義務があるとは全く想像もしたことが無いかも知れない。しかしながら、自分がアメリカ市民でアメリカへの税金の申告義務を果たしておらず、税金を払わなければならないと分かったら、どんな気持ちになるか想像に難くない。 自分がアメリカ市民になった経緯はともかくも、それ故に、アメリカへの税金の申告義務が免除されるわけではない。アメリカは二重国籍を認めているので、日米の二重国籍でもアメリカからは構わない。アメリカ市民ならば、きちんとアメリカに対する申告義務を果たしてくださいということになる。 自分はアメリカ市民だということが分かったならば、アメリカ市民としての義務を果たしアメリカ市民でいることが選択肢の一つだ。別の選択肢は日本の国籍を選択し、アメリカには市民権を放棄する手続きを行い、完全にアメリカ市民でなくなることだ。 日本に住んでいる以上、日本の国籍を選択しているケースが圧倒的に多いだろう。この場合でも、日本の区役所や市役所には届け出をしても、アメリカには届け出をしていない場合がある。さらに、国籍の選択届さえしていない人も相当いるのではないだろうか。 アメリカから見た場合は、アメリカ市民には違いなく、ならば、そうしたケースでは税務上の義務を果たすことを求められても仕方がない。数十年も日本に住んでいて、突然、アメリカの税金を払わなければいけないとなると大変なことだ。そうした事実に悩むならば、きちんとアメリカの市民権を放棄したほうが良い。あるいは、きちんとアメリカの申告義務を積極的に果たしていけば良い。グリーンカードを持って日本に住んでいる方もこれに準ずると思う。

まったくその国で所得がないのに、税金がどっと発生するということが考えられるだろうか。どう考えたって理解を超える。支払うべき過去の税金があり、当年度は所得がないとかといったことではない。もっと、自然な形でそういうおかしな状況になるので、なおのこと感覚的には、そんな事があるんだと思ってしまう。例えばその国で所得がゼロなのに、100万円の所得税がかかる、1000万円だってありえるというようなケースだ。どういう状況でこんな椿事が起きるか。 属人的課税がいたずらをする。アメリカの課税方式は日本と異なり、アメリカ人である限りアメリカの税金を払わなければならない。日本は外国に住むようになって日本の非居住者になってしまえば、日本を源泉とする所得がない限り日本の税金は考えなくても良い。つまり、とても大雑把に言えば、日本という地理上の土地の上に住んでいる事がなくなれば、日本の税金の外に出てしまう。日本は属地的な課税を行うからだ。 アメリカはアメリカ人である限り、世界中のどこに住んでいようとアメリカに申告をしなければいけない。言ってみれば、世界中がアメリカだと言っているようなもので、南極だろうが北極だろうがおかまいなしだ。はなはだしきは、宇宙空間だって税務上の扱いはアメリカなのだ。宇宙空間がアメリカの課税権が及ばないことになると、宇宙空間で役務を提供して所得を得る宇宙飛行士は、仕事をしても税金が課税されなくなってしまう。 要は、属人的な課税を行う事が大前提だ。それゆえに、アメリカに住んでいない場合、アメリカ源泉の所得はない。仮にそのアメリカ人はアジアのある国で働いて、所得を得てその国で所得税を支払っているとする。 こうした場合に、アジアの国で得た所得がアメリカの所得総額の中に組み入れられてしまう。それによって、アメリカの税金が計算される。しかしながら、外国で課税された所得に、もう一度アメリカが所得税を二重課税することは過酷なため、外国税額控除を使って、アメリカの税金から外国の税金が引かれてアメリカの税金が発生しない形となる。 ところが、税率の差がいたずらをする。同じ所得について、外国の税率が20%であるにもかかわらず、アメリカの税率が25%だとすると、この5%の差がアメリカの税金として出てきてしまう。結果的に、アメリカ源泉所得はないにもかかわらず、アメリカの所得税だけが発生してしまう。 アメリカの属人的課税+(アメリカの税率>外国の税率)という条件下では、冒頭のような事が起きてしまう可能性が出る。アメリカの属人課税が不具合であるゆえんだ。これを抜け出るにはアメリカの市民であることを辞めなければならない。さらに、その事由が租税回避ならば、アメリカの市民権を放棄してもなお、10年間はアメリカ市民として税務上は扱われる。 こうしてみると、税金を課税する側の観点では、アメリカの仕組みはうまく出来ている。

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