トランプ大統領が、不動産の譲渡益をすべて非課税にする可能性があると報じられている。とても大きな話に思えるが、現行制度でも多くの人は不動産譲渡益の課税を免れている。 現時点では、自宅を売却し譲渡益が発生した場合、独身なら最大25万ドル、夫婦なら最大50万ドルまで譲渡益を所得から控除できる。このため、多くの人が自宅売却による譲渡益については課税対象外となっている。 ただし、これには条件がある。売却日までの5年間のうち、少なくとも2年間、対象不動産を所有し、かつ主たる住居(main home)として居住している必要がある。 夫婦の場合、所有期間については配偶者のいずれか一方が満たせばよいが、居住期間の要件は両方の配偶者が2年間、その住宅に居住している必要がある。ただし、5年間のうち合計2年以上であればよく、2年間が連続している必要はない。また、居住期間については所有者がどちらか一方であっても両方に適用される。 この控除は2年に1回しか利用できない。これは、短期間に複数回の不動産譲渡を行って課税を回避することを防ぐための規定だ。 さて、日本人が仕事の都合などでアメリカに渡り、アメリカで不動産を取得するケースがある。一定期間アメリカで働いた後、夫は既に日本へ帰国し、妻と子どもだけがアメリカに住み続けていることがある。この家を売却した際に50万ドルの非課税控除を受けられるのか。 この場合、夫が過去5年のうち2年間アメリカの家に住んでいたのであれば、たとえ3年前に帰国していたとしても、夫婦合算で50万ドルまで控除を受けることができる。つまり、2年以上の所有・居住要件は「5年間の期間内で通算2年以上」でよく、主たる住宅であった場合は、売却時点で必ずしも居住している必要はない。 なお、譲渡益が50万ドルを超える場合には、超過分について課税される。よって、これを上回る譲渡益が見込まれる場合、もしもトランプ大統領による譲渡益非課税の制度が実現すれば、大きな恩恵となる。 また、日本人の場合、帰国して日本の税法上の居住者となると、アメリカの不動産を売却しても日本側で課税される可能性がある。したがって、帰国する前、すなわちまだアメリカの居住者であるうちに不動産を売却した方が有利になることもある。不動産の売却も時期を見極めることが大事だ。

グリーンカードを保持し続ける限り、毎年の米国への申告義務がある。グリーンカードを持っている人が日本に帰国して日本に納税すると、米国の納税義務が終了したと誤解している場合がある。特に、グリーンカードの有効期限が切れてしまった場合に、米国での納税義務も自動的になくなると考えてしまうケースがよく見られる。 しかし、これは誤りだ。税務上は非常に明確に規定されている。グリーンカードで税務上の「居住者」ステータスを取得したら、グリーンカードが取り消されるか、本人が正式に放棄しない限り、そのステータスは継続する。 米国の税法では、永住権の放棄は、個人がForm I-407または永住権放棄の意思を記載した書面にグリーンカードを添えて米国移民局に提出する手続きが必要だ。グリーンカードを紛失してしまい、返納できないと心配される方もいるが、手続きは可能で、紛失して提出できないことを説明する文書を添付すれば問題ない。 グリーンカードの放棄日はいつかについても誤解が多い。グリーンカードの放棄はForm I-407を提出した日に基本的に有効となる。 Form I-407を提出した後に、Form 797-Cが送られてくるので、Form 797-Cの発行日が放棄日だと誤認されがちだ。Form I-407は発信主義であり、提出日に効力が生ずる。 グリーンカードを放棄すると、Form 8854(出国税)の対象となり得る。もちろんこの対象になるには3条件がある。いずれかの条件に当てはまると、出国税の対象になるのだが、それでも出国税の対象にならないことがある。それは過去15年において8年以上グリーンカードを持っていなければ、原則として出国税の対象から外れることができる。 この時の1年の数え方は、単純に暦年でカウントする。クリスマスの時期にグリーンカードを取得した場合でも、わずか数日でも1年経過となってしまう。 日本に帰国された方の中には、年齢を重ね、将来的に米国で生活や仕事を再開する可能性が低いと判断し、グリーンカードの必要性を感じなくなるケースが多く見られる。しかし、その一方で米国への納税申告義務だけは残り続け、ご自身での手続きが難しくなると大きな負担となり得る。そのため、グリーンカードが不要となった段階で、思い切って整理することが良い選択となる場合が多く見受けられる。

日本に住んでいるアメリカ市民やグリーンカードホルダーなどが贈与や相続を受けた場合、アメリカの贈与税や遺産税(相続税)はどうなるのか。アメリカの贈与税や遺産税(相続税)を課税される人は、日本とは異なり財産をあげる人が課税される。もらう人は課税されないのが基本だ。もちろん基本から外れるケースはあるのだが、多くは課税を受けない。 それで話が終われば簡単なのだが、たとえ日本で贈与や遺産を受け取った場合でも、年間合計$100,000以上である場合、アメリカ市民やグリーンカードホルダーには、その年にForm 3520の提出義務がある。これは贈与税や遺産税の申告ではなく、情報開示義務だ。面倒なのは申告しないとペナルティが課される。 Form 3520の提出義務は、多くのアメリカ市民やグリーンカード保持者にとって「寝耳に水」となるケースが後を絶たない。日本で親からごく普通に贈与や相続を受けただけなのに、なぜアメリカでペナルティのリスクを負わなければならないのか、という気持ちはよく分かる。 「知らなかった」は免罪符になるのか? しかし残念ながら、「知らなかった」という理由は原則として免罪符にはなりえない。アメリカの税法では、「その法律を知らなかった」という主張だけでは、法律違反の責任を免れることはできないという考え方をとる。 もし「知らなかった」がすべて通用してしまうと、誰もが「知らなかった」と主張するだろう。知っている人だけが法律を守り公平でなくなるし、自ら法律や規則を学ぼうとすることがなくなってしまう。こうして税制をはじめとする法制度そのものが成り立たなくなってしまう。 アメリカで法律や規則が作られて、世界中に住んでいる米国市民やグリーンカード保持者がその影響を受ける。それならばその法律を作る、執行する側もそのことを周知徹底させることが必要ではないかという声も根強くある。 たとえ毎年きちんと確定申告を行っていても、この義務の存在に気づくのが困難な状況であったことを合理的に説明し、かつ、義務を知った後すぐに誠実な対応をとれば、ペナルティが免除される可能性は十分にありえる。重要なのは、問題を認識した時点でそのまま放置せずに、すみやかに行動を起こすことだと思う。 。

7月4日にトランプ大統領がthe One Big, Beautiful Billにサインして立法化された。Social Security Agency (SSA)の7月3日付のプレスリリースが何ともセンセーショナルな書き方をしている。https://www.ssa.gov/news/press/releases/2025/#2025-07-03 この法案の中で高齢者向けの減税が盛り込まれている。社会保障年金受給者の90%は連邦所得税を払う必要がなくなり「これは高齢者の経済的安定を守る歴史的な進歩だ」と称賛している。 これを読むと、アメリカの社会保障年金が課税対象ではなくなったと読んでしまうかも知れない。しかし、これは社会保障年金自体が課税の対象ではなくなったという事ではない。無税になるのではなく、控除額の上乗せにより高齢者の課税所得がゼロになる人が増えるという仕組みだ。標準控除額の違い:2024年:個人 $14,600/夫婦 $29,200+高齢者控除($1,950/人)2025年では2024年のベース金額がインフレ調整されて、高齢者控除が大幅増加($1,950→$6,000/人)するので、中〜低所得の高齢者に大きな免税効果がある。結果的に課税所得がゼロになる高齢者が大多数という意味だ。2025〜2028年分の確定申告(申告は2026年春から)での期間限定の所得控除だ。 実際には 社会保障年金は引き続き課税対象であり、年金そのものが無税になるということではない。 この発表は「社会保障年金に課税されない」という印象を与え誤解を招きやすい。実際には、一時的な控除措置によって結果的に課税所得がゼロになる仕組みだ。 さて、アメリカの年金を日本でもらっている日本人にとってはどんな影響があるのか。もともとアメリカの社会保障年金は日米租税条約で居住している国で課税を受ける。即ち日本の確定申告でアメリカの社会保障年金に課税されている。 アメリカで社会保障年金に課税を受けなくなったとしても、日本の課税であることには変わりがない。基本的には従来の申告と変わることはない。

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