2026.08.09
所得税
「還付される」と「受け取れる」は別問題
日本に住みながら米国の確定申告を行っていると様々な問題にぶつかる。いかに正しい申告をしていてもIRSが処理をしてくれない、適正でない判断で追加の対応を迫られる、還付金をいつまでたっても受け取れないとか枚挙にいとまがない。そのうちの一つが、税金が還付されるかどうかではなく、還付金を実際にどのような方法で受け取るのかという問題がある。特に注意が必要なのが、米国不動産を売却するケースだ。
不動産譲渡の還付金
日本在住者などの外国人が米国不動産を売却すると、買主または決済関係者が、売却額に対して源泉徴収を行うことがある。一般的な源泉徴収率は15%だ。
これは必ずしも最終的な米国所得税額を意味しない。売却年に対応する米国所得税申告において、取得価額、改良費、売却費用、減価償却、損失、その他の所得および控除を考慮して最終的な税額を計算した結果、源泉徴収額が最終税額を上回ることがある。その場合、差額が還付されることになる。
つまり、米国不動産の売却では、売却時に多額の税金がいったん源泉徴収され、その後、米国の確定申告を通じて過納付分の還付を受けるという流れになる。
紙小切手から電子決済へ
この時に近年の米国政府による支払方法の変更が重なっている。米国財務省およびIRSは、2025年9月30日以降、連邦政府による紙小切手の発行を原則として縮小し、アメリカの金融機関への振り込みだけに移行を進めている。IRSは、個人納税者に対する紙の還付小切手についても、原則としてこの日以降、段階的に廃止する方針を示している。
もっとも、紙小切手が完全に消滅したわけではない。電子的な代替手段を利用できない場合など、限定的な例外では紙小切手が発行される。例外なので時間がかかりがちだ。
日本在住者が直面する課題
米国に居住していた時に使用していた銀行口座が残っていれば、「その口座に還付金を振り込めばよい」と考える。しかし、米国を離れた後も、その口座を従来どおり維持できるとは限らない。金融機関によっては、海外居住者に対してサービスを制限したり、住所、納税者情報、本人確認、電話番号などについて追加手続を求めたりすることがある。「米国の銀行口座を持っているから、還付金も問題なく受け取れる」とは限らない。
紙小切手の場合
紙小切手が発行された場合にも、日本在住者には別の問題が生じる。日本国内で米国発行の小切手を取り扱う金融機関は限られている。SMBC信託銀行Prestiaは、一定の条件のもとで外国小切手の取立を取り扱っているが、すべての小切手を無条件に受け付けるわけではない。小切手の発行元、通貨、券面、受取人名、発行日、裏書などを確認したうえで、取扱可否が判断される。
また、米国財務省小切手は、通常、発行日から1年を過ぎると無効となる。さらに、金融機関には独自の受付期限があるため、米国財務省上の有効期間内でも残存期間が少ないと取立を受け付けてもらえない可能性がある。
また注意が必要なのが、夫婦合算申告などにより、夫婦2名が受取人として記載された小切手である。実際にどの口座へ入金できるか、夫婦の一方の個人口座へ入金できるか、双方の来店や同意書が必要かとか、よりハードルが高くなる可能性がある。
「還付される」と「受け取れる」は別問題
米国税務では、「正しく申告し、還付を受ける」だけではなく、日本在住者の場合、その先まで考えておく必要がある。IRSが還付を認めることと、納税者がその還付金を実際に受け取れることは、別の問題だからである。
米国不動産の売却では、還付金の金額が大きい・海外の申告者ということでIRSのチェックが厳しくなる。IRSの慢性的な処理遅延で還付金を受取るまでに年単位の時間がかかってもおかしくはない。さらにその先も頭においておきたい。
• 日本の金融機関で米国小切手を取り扱ってもらえるのか
• 夫婦2名宛ての小切手を一方の個人口座へ入金できるのか
• 小切手が期限切れになった場合どのするのか等々
これらは、税額計算そのものとは別の「還付金受領の問題」である。
日本在住者にとっては、「還付される」ことと「実際に受け取れる」ことは、別の問題だ。特に、還付金額が大きくなりやすい米国不動産の売却では、最終的な税額だけでなく、還付金を受け取るまでを含めて資金計画を立てることが、これまで以上に重要になっている。
