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所得税

2026.05.10
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修正申告と6月15日

アメリカに本来納税義務がないにもかかわらず、年金などに対して源泉徴収が行われ、結果として過大に税金を納めているケースが散見される。特に年金の場合、源泉徴収額が大きくなることがある。 これらの誤りを修正すれば、源泉徴収された税金を還付してもらえる。しかし、還付請求には期限があり、IRS は「原則として当初の申告期限から3年以内」に限り還付を認めている。2026年5月時点では、還付可能な年度は次のとおりだ。 2022年度の還付申請:2026年4月15日まで 2023年度の還付申請:2027年4月15日まで 2024年度の還付申請:2028年4月15日まで 還付期限の原則: IRS の還付請求は「申告書提出日から3年以内」または「納税後2年以内」のいずれか遅い方である。ただし、申告書を未提出の場合は「原申告期限(4月15日)に提出したものとみなされ」、還付可能額はその3年前までに限定される。 この原則から、2022年分の還付期限は 2026年4月15日 であり、2026年5月時点ではすでに期限切れとなっている。 では、日本居住者の自動2か月延長(4/15 → 6/15)はどう扱われるのか。 海外居住者は申告期限が自動的に6月15日まで延長される。しかし、これはあくまで「提出期限の延長」であり、税金の支払日や還付期限を延長するものではない。 源泉徴収税や予定納税は、法律上 4月15日に支払われたものとみなされる。 したがって、提出期限が6月15日に延びても、源泉徴収の支払日(4月15日)は動かない。 結果として、還付期限も動かず、2022年分の源泉徴収税は2026年4月15日で還付期限を迎える。 しかし、救えるケースもある。 海外居住者が、例えば 2023年6月15日に実際に税金を納付していた場合、この納付は「実際の支払日」がそのまま支払日として扱われる(源泉徴収とは異なる)。 2026年6月15日までに修正申告を提出すると、提出日から3年以内に支払われた税金として扱われ、この部分は還付対象となる。 つまり: 源泉徴収 → 支払日は 4/15 に固定 → 期限を過ぎれば救えない 実際の納付 → 実際の支払日が採用される → 期限内なら救える このため、今からでも修正申告を行えば、源泉徴収分は救えなくても、実際に納付した税金の一部は還付される可能性がある。

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2026.04.26
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シニアボーナスの違和感

アメリカの新しい$6000のシニア優遇税制は、奇妙に思える点がある。 日本在住の非居住者(Form 1040-NR 提出者)は標準控除を使えないのに、条件を満たせばシニアボーナス控除だけは利用できる構造になっているからだ。 1. 非居住者は「標準控除」を使えない 日本在住の多くの日本人は nonresident alien(NRA)であり、Form 1040-NR を使う。 このフォームでは次の制限がある。 • 標準控除は使えない • 65歳以上・盲人の追加標準控除もなし • 夫婦合算申告(MFJ)も不可 つまり、非居住者は標準控除をそもそも使えない。 2. 新制度「シニアボーナス控除」は別枠の追加控除 OBBBA によるシニアボーナス控除)は次のとおりだ。 • 対象:65歳以上 • 金額:1人最大 6,000 ドル(夫婦とも 65歳以上なら 12,000 ドル) • 所得制限:所得に応じて段階的に減額 重要なのは、この控除が 標準控除の延長ではなく、まったく別の「追加控除」 として扱われている点である。 3. Schedule 1-A 追加控除をまとめているのが新フォーム Schedule 1-A(Additional Deductions) である。シニアボーナス控除が含まれる。 Schedule 1-A の上部には次の文言がある。 Attach to Form 1040, 1040-SR, or 1040-NR. さらに最終行には、 Form 1040-NR の line 13c に転記せよ と明記されている。 つまり、Schedule 1-A は 非居住者用の 1040-NR にも添付する前提で設計されている。 4. なぜ「3階だけ」使えるのか • 標準控除(1階)と高齢者追加標準控除(2階)は → 標準控除システムという同じ建物 → 非居住者はこの建物に入れない • シニアボーナス控除(3階)は → 「追加控除」という別棟 → 入口は Schedule 1-A → 1040-NR line 13c つまり、標準控除の建物には入れないが、別棟の「追加控除の建物」には入れる構造になっている。 法律文書では対象を citizen/resident と説明しつつ、フォーム側では 1040-NR にも入口を設けているため、制度としては変則的である。 5. 日本在住の非居住者は実際に使えるのか フォーム構造だけを見ると、次を満たせば 1040-NR でも利用可能となる。 • 65歳以上 • 所得が基準以下 • 法律上の適格な個人に該当 • 社会保障番号を保有 ただし、日本在住の 非居住者は ITIN のみで 社会保障番号がなかったり、要件を満たさないことが多い。 制度上の入口は存在するが、実際に適用できる人はかなり限られる。 外国に住む65歳以上非居住者に対して6,000ドルの控除を与えなければいけない理由はない。そうした人を救うならば1階と2階を使えるようにするべきだ。アメリカに住んでいる税務上の非居住者を救おうとしたのだと思うが、外国に居住する高齢者も結果として救われる。とても違和感があるシニアボーナスだ。

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2026.04.12
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全額納付してもペナルティが課される

米国で申告を行う際、納税者が直面する驚きがある。それは、「4月15日の期限までに税金を100%支払ったのに、なぜペナルティを請求されのか」という事だ。一見理不尽に思えるこの仕組みの背後には、米国の「申告納税制度」の根幹をなす考え方がある。 1.所得発生時に納税する原則 米国の税制は、所得を得たその時に支払うという原則に基づいている。これは、1年分の税金を翌年の4月にまとめて払えばよいということではなく、所得が発生したら、その分に見合う税金を国に納める義務があるという考え方だ。 • 会社員の場合: 毎月の給与からの源泉徴収で、この義務を自動的に果たしている。 • 自営業者・投資家の場合: 源泉徴収がないため、自ら計算して年に4回予定納税を行う。 2. なぜ「全額納付」でもペナルティになるのか 問題は、納税の「タイミング」だ。例えば、年間の最終的な税額が $2,000 だとする。これを4月15日に一括で支払った場合、IRSの視点では本来、4月・6月・9月・翌年1月に分割して受け取るべきだった資金を、最長で1年間貸し付けていたとみなす。この「支払いの遅れ」に対して利息が課される。 3. ペナルティを回避する安全策 IRSは、予測困難な所得変動に配慮し、以下のいずれかを満たせばペナルティを免除する仕組みを設けている。 1. 当年度の税額の90%以上を期中に納付していること。 2. 前年度の税額の100%(調整後総所得が15万ドルを超える高所得者は110%)を期中に納付していること。 4. 実務的な対策 ペナルティを回避するためには、以下のやり方が有効だ。 • 給与の源泉徴収額の調整 会社員は、勤務先に提出するW-4で、給与からの源泉徴収額を多めに設定することで、予定納税の手間を省く。源泉徴収は「年間を通じて均等に支払われた」とみなされる。 • 予定納税 自営業者の場合、4月・6月・9月・翌年1月の各期限に、自ら予定納税として納付する。 4月15日に税金をまとめて払えばいいと考えると、米国ではペナルティを伴うことがある。所得が発生したら、その時点で払わなければならないという意識を持つことが大切だ。

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2026.04.05
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交通事故の和解金

交通事故で身体的な傷害や休業、精神的苦痛、懲罰的損害を含む 10 万ドルの和解金を受け取ったとする。一見すると「事故の補償」としてまとめて受け取るだけのように思えるが、アメリカ税務ではどの部分が非課税で、どの部分が課税かを明確に区分する必要がある。 アメリカ税務の基準となるのは IRC §104(a)(2) で、ここでは「身体的傷害または身体的病気に起因する損害賠償金は所得から除外される」と定められている。つまり、治療費や休業補償など、身体的損失を回復するための金銭は「原状回復」とみなされ、非課税となる。 ただし、すべてが非課税になるわけではない。身体的傷害を伴わない精神的苦痛の補償や、加害者への制裁として支払われる懲罰的損害賠償は課税対象となる。 10 万ドルの和解金が次のようになっていたとする。 身体的傷害・医療費:3 万ドル 休業・給与損失:2 万ドル 精神的苦痛:3 万ドル 懲罰的損害賠償:2 万ドル このうち、医療費、休業補償、身体的傷害由来の精神的苦痛は 非課税となる。事故による身体的損傷とその結果生じた損失は、すべて「身体的傷害の延長」と考えられる。しかし和解金であっても、それが「身体的傷害・病気」を補償する部分に当たらない限り、和解金は課税所得として扱われると考えられる。この区別がわかりにくいことがある。また、懲罰的損害賠償の 2 万ドルは課税される。これは被害者の補償ではなく、加害者への制裁としての性質を持つため、税務上は「所得」と扱われる。 交通事故の和解金は、単なる「補償金」ではなく、税務上は複数の性質を持つ金銭の集合体だ。和解金の課税・非課税を明確にするためには、和解契約書や控訴状などで、「身体的傷害」「精神的苦痛」「給与の未払い」などどう割り振られるかを明記しておくことが重要とされる。

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2026.03.29
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住宅控除益に注意

自宅を売却した場合、所有条件・居住条件を満たせば、独身では25万ドル、夫婦であれば50万ドルまでの譲渡益が非課税となる。これは Internal Revenue Code Section 121 に定められた、極めて強力な税制優遇である。 では、夫が死亡した場合、この50万ドル控除はどうなるのかという疑問が生じる。生存配偶者は Married Filing Jointly の資格を失うため、通常の独身者と同じ25万ドルしか使えなくなるのではないかという懸念がある。 しかし、税法はこの点について特別な救済措置を設け、死亡後2年間は50万ドル控除が維持される。 厳格な三条件 死亡後特例を利用するためには、次の三条件をすべて満たす必要がある。 配偶者の死亡から2年以内(730日以内)に売却すること 所有要件・居住要件を満たすこと 再婚していないこと この三つ目の条件が極めて重要である。再婚した瞬間に「surviving spouse」としての地位が失われ、死亡した配偶者との仮想的な夫婦関係が法的に終了したとみなされる。その結果、たとえ所有・居住要件を完全に満たしていても、50万ドル控除の資格は即時に消滅し、25万ドルの Single 枠に強制的に戻される。 再婚のタイミングによる具体例 2023年3月15日:夫死亡(所有・居住要件は満たしている) 2025年3月14日:売却(再婚前) → 50万ドル控除が適用 2025年3月13日:再婚 → 同日に売却 → 25万ドル控除しか使えない この死亡後特例は、未亡人・寡夫の生活を保護するための制度であり、「surviving spouse」という地位が本質だ。再婚は新しい家族単位の形成とみなされ、亡配偶者との法的関係が終了したと判断されるため、特例の根拠が消滅してしまう。 売却のタイミング、再婚の有無、所有・居住要件の充足状況は、譲渡益の非課税枠に大きな影響を与えるため、これらを正確に把握しておくことが重要である。

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2026.03.15
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日本のポイントは課税されるのか

日本ではポイント還元が生活の一部になっている。クレジットカードのキャッシュバックだけでなく、楽天ポイントやPayPayポイント、航空マイルなど、さまざまな形で消費者への還元が行われている。では、こうしたポイントは米国税務上どのように扱われるのだろうか。 結論から言えば、日常のカード利用や買い物によって得られるポイントの大半は、米国税務上課税所得にはならない。 米国国税庁(IRS)は、クレジットカードの報酬を「支出に基づく還元(rebate)」と「支出を伴わないボーナス(income)」に分けて考えている。カード利用によるキャッシュバックやポイントは、通常は購入代金の値引きとして扱われる。例えば1,000ドルの買い物をして20ドルのキャッシュバックを受けた場合でも、税務上は20ドルの所得があったとは考えない。あくまで980ドルで商品を購入したのと同じという扱いである。 この考え方は日本のポイント制度にもほぼ当てはまる。楽天市場のポイントやQR決済の還元など、購入金額に応じて付与されるポイントは、米国税務の観点でもリベートと考えられるため、通常はForm 1040に申告する必要はない。 ただし例外もある。銀行口座の開設ボーナスやクレジットカードの紹介報酬のように、支出を伴わずに受け取る報酬は所得として扱われる可能性がある。米国ではこうした支払いに対してForm 1099-MISCや1099-INTが発行されることもある。日本の金融機関は通常これらを発行しないが、1099が届かなくても所得は申告義務がある点には注意が必要である。 ポイントの税務判断は実はそれほど複雑ではない。確認すべき点は一つである。そのポイントが支出によって得られたものかどうかである。買い物の結果として付与されたポイントであれば通常は非課税であり、支出を伴わないボーナスであれば課税の可能性がある。 キャッシュレス社会が進むなか、ポイント還元はますます身近な存在になっている。その多くは税務上問題にならないが、報酬の性質を理解しておくことは、日本に住む米国市民やグリーンカードホルダーにとって大切なポイントと言えるだろう。

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2026.03.01
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もう一つの4月15日

4月15日は、米国市民や税務上の居住者にとっては、個人所得税申告の締め切り日である。日本で生活しながら米国の申告義務を果たす人にとっては、二重課税の調整や計算ミスによる「払いすぎ」が起こりやすく、後から修正が必要になることも珍しくない。 正しく手続きを行えば、払いすぎた税金は還付として戻ってくる。しかし、この還付を受けるには期限があり、時間の経過とともに消滅する「時限付きの権利」であることを忘れてはならない。 1. 還付を受けられる期限は「3年」 修正申告(Form 1040 X)によって還付を受けるためには、オリジナルの申告期限から3年以内に手続きを完了する必要がある。 たとえば2022年分の申告であれば、還付を受けられる期限は 2026年4月15日 である。 海外居住者が陥りやすい誤解がある。「日本に住んでいるから申告期限は自動的に6月15日まで延びる。だから還付の期限も6月15日まで延びるはずだ」という思い込みである。しかし、これは誤りである。6月15日の自動延長は、あくまで「遅延ペナルティを課さないための猶予」であり、還付請求の時効を延ばす効果はない。 一方、Form 4868 による正式な延長申請を行った場合は、法定期限そのものが10月15日まで延びるため、還付期限もそれに合わせて延長される。 この仕組みが、海外居住者を含む多くの納税者を混乱させている。 2. もうひとつの壁「Look back Rule」 3年以内に修正申告を提出しても、還付が必ず受けられるわけではない。Look back Rule(遡及期間ルール) と呼ばれる規定が存在するためである。 IRS は、修正申告を受け取った日から遡って 過去3年間に“支払われた”税金 しか還付の対象にしない。 ここで重要なのが「支払日」の扱いである。給与からの源泉徴収(W 2)や予定納税は、実際の支払日がいつであっても、税法上はその年の4月15日に支払われたものとみなされる。 例:Look back Rule によって還付が消えるケース 2022年分の税金(みなし支払日:2023年4月15日) 申告期限:2023年4月18日 延長申請あり2023年10月15日まで延長 修正申告の提出日:2026年5月1日 • 還付請求の時効:2026年10月15日 → 3年以内で問題ない • Look back Rule の遡及期間:2023年5月1日まで • 税金の「みなし支払日」は 2023年4月15日 → 遡及期間より前である このため、還付を受ける権利が消滅してしまう。還付を確実に受けるには、みなし支払日から3年以内(2026年4月15日まで) に修正申告を提出する必要がある。 3. 還付と納付の「非対称性」 還付には3年の時効があるが、納付にはこのルールはない。申告から原則10年間(無申告や虚偽の場合は無期限)追いかけてくる。「還付は3年で時効だが、納付は10年経っても逃げられない」。これが米国税制の現実である。

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2026.02.08
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6,000ドルの高齢者追加控除に注意

アメリカの標準控除は、まず誰れにでも適用される「基本部分(1階)」がある。従来の「高齢・盲人の追加標準控除」は、65歳以上や視力に重い障害がある人なら、原則、誰だれでも少しだけ標準控除が増える“基本の上乗せ(2階部分)”だ。 OBBBA の新しい6,000ドル控除は、夫婦がともに65歳以上で、双方が SSN を持ち(ITIN は不可)、 MFJ (夫婦合算申告)を選択し、所得が一定の範囲内に収まっている人だけがもらえる“ボーナス的な増額(3階部分)”になっている。 しかし、この3階部分は MFS (夫婦個別申告)では完全に適用外となる。1階・2階部分はMFJでもMFSでも中立なのに、3階部分だけ MFJ 専用という非対称性は、非常に分かりにくい。 なぜ IRS はこのような構造を採用しているのか。 その理由は、フェーズアウト(所得制限)の管理にある。高齢者追加控除は、所得が一定水準を超えると段階的に減額される仕組みになっている。具体的には、単身の場合は MAGI 75,000ドル以下で満額、175,000ドルでゼロ。MFJ では 150,000ドル以下で12,000ドル満額、250,000ドルでゼロとなる。 このフェーズアウトは、世帯の合算所得を前提に設計されている。つまり、制度は夫婦の所得を一体として把握し、その世帯の経済状況に応じて控除額を調整する。MFJ であれば、夫婦の所得が一つの申告書にまとまり、フェーズアウトの計算も一貫して行える。夫婦が別居・別住所・別会計でMFSの申告すると、相手の申告内容を知らずにフェーズアウトで満額$6,000 をとれないのに、両方が $6,000 を申告しても IRS は判断がつかない。 この フェーズアウトを正確に適用するには、夫婦の合計所得を正確に把握すること、減額幅を世帯単位で計算すること、夫婦双方の申告内容が整合していることを確認することとなる。 日本在住者への影響 日本に住む米国市民・永住者にとって、この構造は特に影響が大きい。配偶者が非居住者である、情報提供が難しいなどの理由で MFS を選ばざるを得ないケースは少なくない。この高齢者追加控除は、原則として SSN 保有者のみが対象であり、ITIN しか持たない高齢者は対象外とされる。MFS を選ぶと、その時点でこの6,000ドル控除は二人とも使えない(SSNであっても対象外)。MFJならSSNの1人分6,000ドルまでは取れることになる。

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2026.02.01
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日本在住者から見たOBBBAの残業代・チップ非課税

2025年7月に成立した米国の大規模税制改正法 OBBBA(One Big Beautiful Budget Act) には、残業代とチップに対する所得税軽減が盛り込まれた。一見すると分かりやすい減税策だが、日本に住み、日本で働くアメリカ市民やグリーンカードホルダーがこの恩恵を受けるのは、実務上きわめて難しい。 残業代非課税の内容 OBBBAで非課税(正確には所得控除)の対象となるのは、残業代の全額ではない。時給1.5倍で支払われる残業代のうち、通常賃金に相当する1.0倍は課税対象で上乗せ分である0.5倍(プレミアム部分)のみが控除対象となる。 この制度は 2025年から2028年末までの時限措置 で、控除上限は独身者12,500ドル、夫婦合算申告25,000ドル。調整後総所得(AGI)が一定額を超えると段階的に縮小・消滅する。 なお、対象は連邦所得税のみで、社会保障税・メディケア税(FICA)は通常どおり課税され、管理職など残業代支給対象外の従業員も含まれない。 制度が想定する労働者像 この残業代控除が想定しているのは、米国労働基準法に基づく残業代を米国内で受け取る労働者である。この前提が、日本在住者にとって大きな壁となる。 日本在住者に適用できない三つの理由 第一に、源泉地の問題である。 雇用所得の源泉は役務提供地で決まるため、日本で働いて得た給与や残業代は日本源泉所得となり、米国内源泉の賃金に該当しない。 第二に、残業代の法的根拠である。 この制度が想定しているのは、米国労働基準法に基づく残業代をる従業員だ。労働時間のすべてを米国外で行う労働者を適用除外としている。 第三に、外国所得控除等との競合である。 日本在住のアメリカ市民の多くは、外国給与所得控除や外国税額控除により二重課税を回避しており、すでに給与全体が除外されている場合、残業代控除を重ねて適用する余地はない。 チップ非課税も日本在住者には無縁 OBBBAにはチップ収入の非課税措置もあるが、日本にはチップ文化がほとんど存在しない。この制度が想定しているのは、米国内の飲食・配車・宿泊などのサービス業で、顧客から直接支払われ、W-2や1099に計上されるチップ収入である。政策目的は「米国内でチップに依存する労働者の可処分所得の引き上げ」であり、日本で給与を得る人が対象となる余地はほぼない。 以上から、日本に住み、日本で働くアメリカ市民・グリーンカードホルダーにとって、OBBBAの残業代・チップ非課税は 原則として適用外の減税措置といえる。

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