2018年5月末にIRSは新たに非居住者の監査を強化する方針を打ち出している。 次の点をしっかり見ていくとしている。 きちんとアメリカの所得が申告されていること 条約の不適切な濫用がないこと Schedule Aが適切に記入されていること 不適切な税額控除が行われていないこと 実際、小さな金額だとあまり考えないで、機械的に申告してしまっているかも知れない。 一つの例で、預金利子を申告する場合、Form 1040と同じ感覚でForm 1040NRの9行目に入れてしまうと適正ではない。ここはあくまでアメリカの事業活動によって発生した利子だ。例えばアメリカで不動産を賃貸し、賃料を受けたり、経費の支払いなどをしている口座から発生した利子だ。 単純に預金口座があって利子が付いた場合、Form 1040NRの4ページ目に記入し、Form 1040NRの54行目に入れる。 いずれにせよ、このところIRSから手紙をもらう人が増えているような感じがする。

アメリカの申告は市民権やグリーンカードを基礎に行われる。そうした人たちが日本に住んでいるから、アメリカに申告することはないと考えていると、とんでもなく間違えてしまう。市民権やグリーンカードという属人的な属性で申告をしないといけないからだ。 すると、社会人になって10年も20年も申告をしていなかったというケースが発生する。次のように考えるかも知れない。「徴税の時効があり、10年を越えて税金を払うように命じられることはないと聞く。あと数年、じっとしていたら10年に達するので、このまま頭を低くしていよう」。 徴税の時効は申告書を提出した時点をスタートラインとしてカウントダウンが始まる。全く申告をしていないと、そもそも時効と言うことはない。 もう一つは、アメリカの中にいた場合に時効の時計は進む。海外にいる場合は、時計はストップしたままだ。 申告書を出していない限り、時効をあてにすることはできない。 そうではあっても、申告書を作成してみると、納税額が発生しないことが多い。その場合は書類だけの提出で終わるので、拍子抜けだったと思うはずだ。

FBARの報告を行う場合の預金残高の要件は、外国にある金融口座を寄せ集めて残高が$10,000を超えることだ。 例えばAと言う銀行の口座に$8,000に相当する円の残高があるとする。他に口座がなければ$10,000未満で報告の対象にならない。 ところが、1年の期間中にA銀行の口座を解約して、$8,000に相当する円をB銀行に移した場合はどうなるか。残高としては$8,000で一定のままだ。しかし金融口座を寄せ集めるとA銀行にあった$8,000とB銀行の$8,000の合計は$10,000を超えてしまう。 気持ちとしては釈然としないかも知れないが、機械的に二つの口座を合計し、$10,000を超えるので、それぞれの口座を報告することになる。 これだとペナルティとなった場合に、両方の口座が対象だと気になるかも知れないが、必ずしも単純にペナルティと言うことにはならない。

183日以上アメリカに滞在しないようにして、アメリカの税金を課税されないようにしていますと言われることがある。 183日で云々と言うのは、アメリカの税務上の居住者になるのかならないのか(非居住者)と言う判定につながる。 アメリカの税務上の居住者:全世界所得が課税対象になる (アメリカ源泉の所得だけではなく日本の給与等もアメリカへ申告する) アメリカの税務上の非居住者:アメリカを源泉とする所得が課税対象になる (アメリカで発生した所得をアメリカに申告する) アメリカでは実質滞在テストと言うやり方で183日次の算式で計算する。 (X-2年)÷6+(X-1年)÷3+X年≧183日 1年で183日になるか気にされる方もいるが、当年で183日に満たない場合でも、過去2年の滞在日数で居住者となってしまうことがある。 そもそも183日とか数えず、アメリカ滞在日数がゼロであっても、アメリカを源泉とする所得があればアメリカに申告をしなくてはいけない。アメリカに貸家を持っていて賃料が発生するとか、配当をもらうような場合だ。 アメリカの市民権やグリーンカードを持っている人は、滞在日数のカウントはなく、属人的にアメリカ居住者となる。183日をもとより考えることはなく、アメリカの全世界所得課税の対象になりえる。

アメリカの申告書を作成する場合に、日本人の配偶者を税務上、見なしアメリカ市民として扱うことができる。それによりアメリカの申告書を夫婦合算で作成することが可能になる。 この場合、FBARにおいても同じように、夫婦が一緒に申告できるのだろうか。日本にある金融口座で考えると、夫婦の共有口座はないので、FBARを夫婦一緒に申告することはない。ということは夫婦個別でFBARを考えることになる。 しながら、日本人の配偶者はアメリカ市民でもなければグリーンカードを持っているわけではない。この場合は、日本人の配偶者はもともとFBARの申告対象者ではない。 一般論だがアメリカの申告を行う必要のない日本人が、特にメリットがないのであれば、あえてアメリカの税務申告を行うことはないだろうと思う。

米国に住んでいる人が申告をする場合、対象となる外国金融資産が、その人一人につき年末時点で5万ドル、年のどこでも7.5万ドル以上で申告要件を満たす。夫婦合算申告だとこの2倍となる。 外国に住んでいる人の場合、対象となる外国金融資産が、その人一人につき年末時点で20万ドル、年のどこでも30万ドル以上だ。夫婦合算申告だとその2倍となる。 さて、通常はこの申告要件以上の金融資産を持っている場合は、Form 8938の申告が必至だ。しかし、報告を要さないケースもあり得る。アメリカの金融機関だから除外するということではない。 申告書の提出を要さない場合だ。例えば、預金利子だけしか所得がない。金融資産が大きくとも、超低金利なために利子の金額が小さく申告を要さない場合があり得る。仮に預金の金利が年に0.010%で、1,000万円を預金して、利子が1,000円だ。この5倍の5,000万円のケースで、利子が5,000円だ。 5,000万円のケースなら対象となる外国金融資産が、その人一人につき年末時点で20万ドル、年のどこでも30万ドル以上という要件は軽々超える。しかし、所得税の申告書の提出要件以下なので、Form 8938を申告する必要がない。 ただし、FBARは所得税を申告する必要がなくとも、単独で提出を要する。

2018年分の個人所得税を2019年春に申告を行う時に、新しいForm 1040が使われる予定だ。最終的にはまだこれからながら、IRSは簡略だという案を発表した。 Form 1040・Form 1040A・Form 1040EZが一つのフォームに統合される。確かに現行のForm 1040は79行あるのに対して23行しかない!これは簡単になると思えるのだが、付属表が6つあって、個々の状況に応じて付属表を使うのだと言う。 この簡略化されるForm 1040に記入してお終いとなるのは、アメリカ市民の単純なケースだけだろう。となると、現行のフォームでもあまり面倒なく終わるわけだから、この新しいフォームにしたから、劇的に何かが改善されるというわけではないだろう。 もともと日本人(外国人)の場合は、例外に属する事項が多い。付属表がつけられて、簡単には終わらない。相変わらず、こうした簡素化の蚊帳の外で、実態は変わらないように思える。 むしろ、IRS自体のソフトウエア更新が混乱し、IRSの処理も不慣れなフォームゆえに落ち着かないことが思いやられる。このフォームの変更で、恩恵を受けるかどうかは何とも言い難い。

日本に住んでいてアメリカ人でない人は、通常はアメリカの居住者とはならない。アメリカの社会保証番号や、納税者番号もなく、アメリカ源泉所得(家賃収入など)がなければアメリカに申告することはない。 しかしながら、全くの日本人が、みなしアメリカ人としてアメリカに夫婦合算申告をすることは可能である。配偶者が市民権保有者だけではなく、グリーンカードや長期居住者でも同じだ。 ただし、極めて異例であり、その選択をすると、基本は一生続くことになる。その後は毎年、アメリカ人として申告をすることになる。それが正しいかどうかはわからない。 それによってアメリカの税金が少なくなれば構わないだろう。ところが却って、何年かしたら税金が増えるならば、必ずしも賢い選択か疑問となる。 その夫婦合算の場合は構わないとしても、別の配偶者と夫婦合算をしたくても不可能となる。これが良いのか悪いのかは、容易には判断できないこともある。

仮想通貨はFBARの申告対象になるのだろうか。2018年2月現時点では明快な線引がなされていない。 FBARはFincenが管轄し、外国の金融口座を報告するために用いられる。IRSはFATCAを所轄する。IRSは仮想通貨を通貨としてみるのではなく、資産として見るためにFATCAでは申告するべきという見方もあるかも知れない。ただし、不明瞭であることも事実で株式とみなすのか、それ以外なのかははっきりしない。 アメリカ以外に金融口座が存在し、口座番号もあれば、保守的に考えると(現時点では開示するのか不明瞭だが)FBARでは開示しておく方がより安全と見るべきかも知れない。 決め手がなく、悩ましいところだ。

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