良く言われる。「グリーンカードはもう十年近く前に切れているので、とっくに関係ないと思っていました」。永住者としての税務上のポジションは、本人が放棄の手続きをするまで、原則として続く。日本に帰国して何年も経っていても、米国の税法の上では、まだ永住者のままということがある。
手続きの日が、区切りの日になる
放棄の手続きはForm I-407で行う。日本からでも手続きできる。この手続きには、提出期限がない。遅れてもペナルティはなく、出した日が、永住者でなくなる日になる。ただし、日付をさかのぼって出すことはできない。つまり、提出期限がないのでペナルティを心配することはない。ただし、先送りするほど、アメリカの申告をしなければならない年は増えていく。永住者のままの間は、毎年の申告とFBARの義務が続くからだ。期限がないことは、安心の理由にはならない。
本当の関門は、手続きの前にある
長年、米国に住んでいた人が永住権を手放すときは、「出国税」の対象になるかどうかを判定される。この判定では、過去5年間、米国の税金の義務をきちんと果たしてきたことを、本人が証明することになっている。ここで、申告が止まっている年があると、問題になる。証明ができないと、資産や納税額の大小に関係なく、対象者として扱われてしまう仕組みだ。つまり、永住権を手放すという一つの行為の前に、過去の申告を整えるという作業が先にある。
順番を間違えないこと
私は、次の順番を考えている。まず、過去の申告を整える。未提出の年があっても、故意ではなかった場合には、海外在住の人向けの救済手続きがある。それで足りない古い年は、通常の遅延申告で補う。次に、I-407を出す。そして最後に、その年の申告と、出国税の判定書類を、期限までに出す。
最後の書類が遅れた場合は、ペナルティの対象になり得る。ただし、合理的な理由があれば、免除される余地もある。しかし、「知らなかった」と言うだけでは通らない。いつ気づき、何を確認したのか。そして気づいてから、どれだけ早く動いたのか。そうした事実の積み重ねが問われる。
グリーンカードの手じまいを先送りにしている人の多くは、迷った末に出していないのではなく、日々の生活に紛れて、時間が経過しているだけなのだと思う。けれど、放棄は、将来に対する明快な選択だ。日本での暮らしが確立するほど、年齢を重ねてからアメリカでもう一度暮らし直すことは、簡単ではなくなる。一方で、子や孫がアメリカに住んでいるなら、その近くで暮らしたいと思う日が来るかもしれない。放棄すれば、戻るには、あらためて在留の手続きが必要になる。
どちらの道を選ぶにしても、年齢が高くなるほど、自分の中で明快に答えを出しておくのがよいだろう。放棄するのか、維持して毎年きちんと申告するのか。何もしないまま、毎年の義務と、整えるべき年だけが積み上がっていく状態がいちばん重い。税務申告の負担は続いていくものの、日本に住んでいる限りその恩恵があるのかどうかは疑問だ。
財布の奥の期限切れのカードを、捨てるのは簡単だ。けれど、グリーンカードは、捨てても終わらない。
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