アメリカのコロナウイルスの給付金のドル小切手をもらって、机の中に入れて忘れていないだろうか。 2020年では$1200と$600での2回小切手が発行されている。最近は$1=130円あたりなので2枚合わせると、23万円程度もらえるはずだ。 そこで、机の中から小切手を探し出して銀行に持って行く。日本国内でドル小切手の現金化の案内がある。 しかし、銀行は小切手の買取に応じてくれない。小切手の有効期間が過ぎてしまっていると言う。 確かに確認してみると小さな字で金額があるところの下にVOID AFTER ONE YEARと書いている。財務省の発行する小切手は発行日から1年間有効で、州の還付小切手は6カ月しか有効でないこともある。 23万円がただの紙屑になってしまった。困ったと思うかも知れないが、もう一回、新しい小切手を発行することをIRSに依頼することができる。 「これこれの理由によって小切手を現金化する前に1年過ぎました。お手を煩わせてすみませんが、新しい小切手を送ってください」と手紙を書く。期限切れの小切手の裏側にVoidと記入して、手紙と共に発行元に送る。 新しい小切手を日本にいつ送ってくれるかは、現状では時間がかかると見た方が良いだろう。新しい小切手を入手したらすみやかに銀行に持ち込む。 2021年に$1,400の小切手も発行されている。これも1年をすぎないように注意が必要だ。
申告関連の仕事をすべて電子申告で処理できるとありがたいのだが、必ずしもそうはいかない。仕方なく郵便局に行ってIRSに書留やEMSで書類を送ることがある。日本からはテキサス州の処理センターに送付する。 あて先はIRSのサイトに次のように書かれている。 Department of the Treasury Internal Revenue Service Austin, TX 73301-0215 この住所は、日本で言えば“東京都東京都庁”のような書き方だ。郵便局ではちゃんとした地番がわからないと困るので、きちんと記入してくださいと求められる。United States Postal ServiceはIRSのサービスセンターに、固有のZIPをつけているので大丈夫といってもらちが明かない。 IRSのサイトで地番を探すと次のように書いている。 Austin - Internal Revenue Submission Processing Center 3651 S IH35, Austin TX 78741 日本からはTX州Austinに送付する。これで大丈夫だろうと思いきや、電話番号が書いていないとダメだという。インターネットで探しまくり、コスタリカの米国大使館で下記の電話番号を発見する。 For Courier Service (DHL, FedEx., UPS, etc…) IRS 3651 S. IH 35 Austin, Texas 78741 Phone: (512) 460-7948 さて、やっとこれで何とかなると思ったら、あて先は手書きでは受け付けてもらえない。 <米国宛て> 手書きラベルでは通関電子データが送信されないため、引き受けができません。 と言う事で国際郵便マイページサービスに入り、ラベルを作成する。 これでやっとの事で出口に出られると思ったら、国際郵便は配達に時間がかかり、いつ到着するかは明言できないとのこと。 こうして苦労して提出した書類はIRSの倉庫に保管される。コロナウイルスのため、一体、IRSがいつ処理をしてくれるのか読めない。2022年になってまだ1,640万件の個人所得税関連の書類が未処理だと言う。これじゃ、どうみても1年はかかるだろう。戦争のためにさらに国際的な物流が混乱する。コロナウイルス、戦争とその影響は計り知れない。このところ、ごく当たり前だった日常が、実は危ういものに乗っていた脆弱なものかと思えてしまう。
申告内容を間違える、ミスがあるという事は避けようがない。完全で誤りがないのは理想だが、人間の行うことで、間違いを修正しなければならないと言うのはしかたがない。 情報申告のFBARで、申告するべき口座を申告しなかった・残高を間違えていた・為替レートを間違えていた・転記ミスがあった等々が起きることがある。 FBARも修正申告をできるようになっている。 修正するためには、FBARの申告用紙Form 114の3ページ目の行番号1の所に、修正する対象年とAmendにチェックを入れる。さらにその右側にオリジナルのIDナンバーを入れなくてはならない。 オリジナルのID?そんな番号があったっけ?と思うかも知れない。FBARを送信してConfirmationも残してある。それを見ればわかるだろうとチェックしてもそれらしい番号はどこにもない。 実はFBARを送信してからFinCEN はメールで受信結果をメールで通知してくれている。その中に書いてある。 Type: FBARX Receipt No.:FX22-00XXXXXX Filing Name: 2021-XXXXXXX Your FBAR submission has been acknowledged by FinCEN and assigned the BSA Identifier: 3100021XXXXXXX. といった情報が含まれている。FBARを修正しなければならない時は、この Identifier番号を記載することになる。 さて、FBARの申告が終わったところで安心してしまっている。FinCENからこうしたメールが届いているなんて思いもかけていない。古いメールも削除されてしまっている。修正できないではないかと頭を抱えてしまうかもしれない。 FinCENのデータベースで最終的には確認できる道は残っている。これも簡単には行かない場合は、この番号にゼロを14桁入れてくださいとIRSは言っている。
納税者は正確な税額だけ税金を払う権利があると、納税者の権利に記載されている。 Taxpayers have the right to pay only the amount of tax legally due, including interest and penalties, and to have the IRS apply all tax payments properly. と言う事は、払わなければいけない税額以上を納付することはない。仮に納付するべき税金の100%ではなく、90%しか納付しなければ、未払いの部分の10%に延滞金利などが上乗せで追加の納付を求められる。 では、税額以上に納税したらどうなるか。例えば、納付期日に間に合わず延滞金が出る。IRSから延滞金の請求が来るのが必至だ。払うのはいいにしても、また日本からその精算分を支払う手続きが大変だ。金額的にはわずかな金額でしかない。多少多く支払っても1回で済んだ方がありがたい。こうして納付する税額以上の税金を払う。 IRSのコンピュータでは税額が$XXXから$YYYとは記録されていない。そのものずばりの金額だ。そうなると、送金したお金と税額が不一致だから受領出来ないとなることもあり得る。するとこの郵便事情が良くない時に、何カ月もかかってリカバリーをしていくことになり、その間の延滞金がさらに変動する。こうなるとせっかくの考えが墓穴を掘ることになりかねない。 正確な税額を納付する。そしてIRSがさらに延滞金を求めてきたらその正確な金額を納付する。納税者は正確な税額以上に税金を払わない権利があると言うわけだから、申告書の納税額以上に多少大目に支払うことはない。 余談ながら、いかに正確な税額を支払ってもIRSは受け取りを拒否することがある。本当かと思うかも知れないが100万ドル(約1.3億円)を超える小切手は受領してもらえない。この場合は、小切手を分割して1枚の額面を100万ドル以下にしなくてはならない。
アメリカの個人所得税の最も重要な一丁目一番地が市民権課税だ。この市民権課税は世界広しといえども、ほぼアメリカだけの仕組みだ。世界中の諸国が居住地課税なのに、アメリカのスタンダードだけが異なっている。 居住地課税だと国を越えて引越すと、住んでいる国に軸足を置いて申告を考えればよい。一方、市民権課税だと、アメリカ市民である限り世界中のどこに行ってもアメリカの税務が追いかけて来る。 どうしてこんなになったかと言えば、アメリカの独立戦争と関係していたらしい。アメリカは18世紀に独立をかけてイギリスと戦争をしていた。この時に、お金を持っている人たちは、自分の子供が血を流さないために、アメリカの外に逃がしたらしい。お金を出させることで人々を囲い込み、外にいる人でさえアメリカの人ならば、みな犠牲を払って独立に貢献しようとなったと言いう。もしも本当ならば、国ができる時からアメリカのDNAの中に市民権課税が組み込まれているようだ。 日本に住んでいると言うことで我々は日本の税金の中で生きている。一方、アメリカの市民権やグリーンカードを持ちながら日本に住んでいれば、アメリカの税金の対象でもある。二カ国の税金を払うのは大変なことだ。だから国同士が話し合って二重課税を回避しようとする。 アメリカが一方的に日本に譲歩すれば、市民権を基礎として課税をしているアメリカの根本に風穴があく。即ち、外国に出ることによってアメリカの税金の外に出られるとなる。独立戦争当時に当てはめると、アメリカの外に出れば血も流さず税金も払わずいられる。これを良しとするならば、国の根幹が揺らぐ。そうしてできた国の市民権課税を容易に取り下げられまい。世界中に例のない孤高の市民権課税だ。
配偶者がアメリカ市民で、片方の配偶者が日本に住んでいる日本人の夫婦がいる。日本人はアメリカに居住しておらず普通の日本人だ。 アメリカでは夫婦仲良く一緒に申告を行うと考えることができる。日本にはない夫婦合算の申告だ。 しかし、アメリカに申告をする必要がない日本人がどうして、アメリカに申告を行い納税するのだろう。わざわざ他国の税務の義務まで背負い、他国に税金を払う必要はないと思うことが自然だろう。 夫婦が一体だという精神的な充足感だけではなく、実際にメリットがある場合、夫婦合算すること自体はおかしくはない。 日本人の配偶者に全く所得がなければ、合算しても所得金額は増えない。その上で標準控除2021年申告では$12,550を使えるので、その分、税額が減少する方向に効く。 アメリカ市民と結婚している普通の日本人が、アメリカの税務に入り込むには、特別に手続きを行い、税務申告の上では自分をみなしアメリカ市民としてくださいと言う申請をして受理されなければならない。勝手にはできないことになっている。手続きが面倒だ。 税務上、みなしアメリカ市民となることでアメリカには全世界の所得を申告しなければならない。日本の所得も全部アメリカに申告を行う。それにより夫婦としての所得金額は大きくなる。結果、アメリカの税額が大きくなる方向だと、意味がないだろう。 一見よさそうに見えても慎重に判断する方が良い。というのは申請をして、みなしアメリカ市民としてもらった以上、極端に言えば死ぬまでその申告義務は継続する。何十年もアメリカに申告をし続ける。 夫婦合算で申告を行うことは、納付する税金に責任を取ることを意味する。相手に負担する能力がなければ、自分が納付しなくてはならない。既に相手の配偶者がいなくなっても、アメリカの税金が追いかけて来ることもあり得る。 今は良くても将来どうなるのか。日本人配偶者に所得が出たら税金を払う方向になる。場合によってはアメリカ市民の配偶者の所得が少なくなれば、そもそもアメリカに申告しなくてもよくなる。婚姻関係に波風が立つこともあるかも知れない。そうなっても、本来申告する必要のなかったアメリカに申告をするのか。あるいは不幸にしてアメリカ市民がなくなることもあり得る。アメリカの事はアメリカ市民の配偶者にまかせっきりだったのが、一気に自分に押し寄せる。 こうした望まない事態になれば、みなしアメリカ市民であることを解消しなければならない。書面により申請をして受理されなければならない。 短期的に良いと思えたものが、時間の経過で中長期では逆の方向になることもある。そもそも入り込む必要のないアメリカの税金の世界に、それでも足を踏み入れるか慎重に考えてみるべきだろう。
確かにそう考えて大筋ではあっている。しかしながら、アメリカの税務においては市民権に基づく課税を行うので、外国に住んでいる=税務上の外国人とはならない。 IRAの解約をして日本に送金すると、異なる源泉徴収票のForm 1099-RかForm 1042-Sが発行される。これをもとに申告書へ展開することになる。 Form 1042-Sは、所得税の源泉徴収の対象となる外国人(外国人と推定される人を含む)に支払われた金額を報告するために使用される。その所得は、利子、配当、ロイヤルティ、役務の報酬、年金等の所得が対象だ。年金だと基本的にはForm 1042-Sでは源泉税率が30%で、Form 1099-Rではゼロだ。 金融機関にしてみると、外国の住所が記載されていれば、すべて外国人と見なすかもしれない。あるいはForm W-8BENを提出していれば、非居住外国人として認識するはずだ。 IRAだと一般には非居住外国人はForm 1042-Sをもらい、Form 1040NRを提出する。アメリカ市民に対する源泉徴収票はForm 1099-Rで、Form 1040を提出する。アメリカ市民がForm 1040NRを提出することはない(市民権を放棄した後はあり得る)。 しかし、適正ではない源泉徴収票が発行され混乱していることがある。個人の要因と、金融機関の要因と複合して、つかみどころがない。結果として日本に住んでいるアメリカ市民に対してForm 1042-Sが発行されている。外国人たる日本人夫婦でも夫に対してはForm 1099-R、妻に対してはForm 1042-Sが発行されていたりする。 源泉徴収義務者に源泉徴収のFormが違っているので、修正してくださいと言っても、既に30%源泉徴収してIRSに納付してしまっている。そうした事態を解消するにしても、多大な時間がかかる事であり、川上の混乱は川下で精算するのが現実的だ。
日本に住んでいる人がアメリカに税金を支払う時にどうやって支払うか。簡単なことのようだが、なかなか苦労する。 申告書を作ってForm 1040-Vが出る。これは税金の支払伝票で、ドル小切手をつけてIRSに送付する。アメリカの銀行口座を持ち、小切手帳を持っていれば、自分でドル小切手を発行すればいい。しかし、日本住んでいる多くの人はアメリカの銀行口座を持っていない。 以前は銀行に行ってIRSをあて先とするドル小切手を作ってもらう事ができた。しかし2年ほど前から銀行はこのサービスを廃止している。郵便局に行っても同じことだ。小切手はアメリカの銀行口座を持ち、小切手帳を持っていない限り使えないことになってしまう。 日本の銀行口座から電信送金は、できないことはないが手続きが大変だ。IRSもこのやり方はお勧めではないと、できればクレジットカードで納付してくださいと言う。 デビットカード、クレジットカード払いが便利だ。オンラインショッピングをするように税金をクレジットカードで払えてしまう。これが一番近道だろう。しかし、英語のサイトで情報を打ち込んでいくのも、慣れていないとなかなか難しいかも知れない。 IRSが紙の申告書を処理するのがめちゃくちゃ遅れている。今頃2019年の申告書を処理している。肝心の申告書の処理が全く進んでいない。その結果、IRSはクレジットがあるけど申告書が届いていないから、早く申告書を出すようにという奇怪な督促状を発行していることにも注意が必要だ。
アメリカの市民権やグリーンカードを持っている人が、市民権やグリーンカードを放棄する。放棄した年に出国税を含めて最終のForm 1040を提出する。これでアメリカの非居住者となったのでアメリカの税金と接点がなくなるのが通常だ。 しかしながら、アメリカの非居住者となっても、アメリカに申告をしなければならないことがある。 代表的なケースがアメリカに不動産を所有し、賃貸事業を行っている、あるいはその不動産を譲渡した場合だ。これはアメリカの申告の対象となる。あるいは、アメリカで自ら事業を行っている場合などだ。 それもなければ、アメリカを源泉とする所得はなく申告の必要はないはずだ。 でも、忘れてはいけない。アメリカに投資口座を持っている場合がある。利子やキャピタルゲインは居住地での課税となる。しかし、配当がある。これはアメリカでも課税となる。 これはアメリカの金融機関に、非居住者となった旨の届け出をForm W-8BENで行う。これにより、配当をもらう時に10%の源泉徴収が行われる。源泉徴収でアメリカの申告は完了だ。Form W-8BENも3年しか有効でない。3年ごとに再提出なので注意を要する。 ところが、Form W-8BENを提出していない場合、金融機関は従来通りアメリカの居住者として扱い、源泉徴収をしない。この場合はアメリカ非居住者となっても、配当については申告を継続することになる。 全く予想もしていない状況にならないためにも、市民権やグリーンカードの放棄時には、Form W-8BENの提出を忘れてはいけない。
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