2026.07.12
所得税
アメリカの不動産をいつ売るか
アメリカで長く暮らし、家を買い、そこで生活してきた方が本帰国するとき、意外と大きなテーマになるのが「この家をいつ売るか」だ。不動産の相場だけの問題と思われがちだが、実際には売る時期によって税金の扱いが大きく変わる。
アメリカに住んでいるあいだの譲渡は、アメリカの税金を考えればよい。しかし日本へ帰国したあとに譲渡すると、その利益は日本でも課税対象になる。
同じ家でも、帰国前に譲渡するか、帰国後に譲渡するのか、あるいは賃貸に出してから譲渡するのかで、税務の見え方はかなり違ってくる。10年前に50万ドルで買った不動産が100万ドルで譲渡されたとする。譲渡益が50万ドルというケースで考えてみる。
アメリカ側の特例
アメリカには、主たる居住用財産の譲渡益を一定額まで除外できる制度がある。譲渡前5年のうち2年以上所有し、かつ2年以上居住していれば、夫婦合算申告では最大50万ドル、単身では最大25万ドルまでの利益を除外できる。夫婦合算申告だとアメリカでは税金が発生しない。帰国前に譲渡すれば、アメリカだけの税務で話はシンプルである。
帰国後に譲渡する場合
帰国後に譲渡すると、アメリカと日本の両方で税務が関わる。日本では取得価額と譲渡価額をそれぞれ取引日の為替レートで円換算して譲渡所得を計算するため、円安になると課税所得が大きくなりやすい。例えば、50万ドルで取得した自宅を取得時1ドル=110円、100万ドルで売却した時の為替が1ドル=160円であれば、取得価額は5,500万円、譲渡価額は1億6,000万円となり、譲渡益は1億500万円となる。海外の自宅であっても、日本の居住用財産の要件を満たせば3,000万円特別控除を適用できる可能性があるが、それでも課税譲渡所得は約7,500万円となり、税負担は約1,500万円に達する。日本では円換算により大きな譲渡益が生じる点に注意が必要である。
賃貸に出す場合
譲渡が思うように進まないとき、いったん賃貸に出す判断は珍しくない。ただし、賃貸に出した時点でその家は少しずつ自宅としての性格を失うため、何年後に売るかが重要になる。3年後ならまだ自宅譲渡の特例が残る余地があるが、4年後になると米日ともに自宅譲渡の特例が外れる。不動産は、売れるまで待てば有利とは限らない。長く持ちすぎると税務上の特例を失うことがある。帰国後に譲渡すれば、日本とアメリカの両方で税務が出てくる。為替の動きも、日本側の税額にそのまま影響する。
アメリカの不動産を譲渡するのも簡単ではないかもしれないが、帰国の時期と一緒に考えるべきである。その一点を意識するだけで、余計な税負担や手間をかなり減らせる。
