アメリカの税務上、不動産賃貸事業に実質的に関与しているか、またはほとんど関与せずに賃料から経費を控除した純額のみを受領しているかによって、税務上の扱いが異なる。つまり、アメリカ非居住者の賃貸活動が受動的であるか能動的であるかという点が焦点となる。 受動的賃貸活動 外国に居住するオーナーが不動産の管理や維持にほとんど関与しない場合、その賃貸活動は「米国の事業または商業に実質的に関連する」とはみなされない。この場合は受け取った賃料総額に対して一律30%の源泉徴収税が課され、経費や減価償却などの控除は認められない。 能動的賃貸活動 オーナーが不動産の管理や維持に実質的、継続的、定期的に関与する場合、その賃貸活動は「米国の事業または商業に実質的に関連する」とみなされる。これはオーナー自身が直接活動していなくても、オーナーの代理として不動産管理会社が以下のような業務を積極的に行っている場合も、能動的な活動と判断される。 賃借人の募集 賃貸契約の交渉 賃料の徴収 修繕の手配 費用の支払い等 能動的賃貸活動の場合の税務上の利点として、賃料収入から、不動産税、修繕費、減価償却費、管理費、住宅ローンの利息などの関連費用を控除できる。結果として、賃貸事業が税務上マイナス(損失)になることも一般的だ。 能動的賃貸活動の場合は、Form W-8ECIを不動産管理会社に提出する。これは事業活動の宣言となり、源泉徴収が免除される。非居住者オーナーはForm 1040-NRをIRSに提出して賃貸所得を申告する。 Form W-8ECIを提出していない場合は、賃料から源泉徴収されて不動産管理会社からオーナーに源泉徴収票(Form 1042-S)が発行される。Form 1040-NRを申告することで最終的な税額が計算され、過剰に徴収された税金は還付されるが、還付金の受け取りまで半年程度かかる場合がある。

東京都心のマンションの値上がりは驚くほどで、もはや普通のサラリーマンが購入できるレベルを超えてしまっていると言われる。そうしたマンションは外国人投資家や一部の投資家が購入し、実際に居住していない空き部屋が70%というマンションもあるという。マンションの購入が投資となっている。70%が空き家というのは驚いてしまうが、何も東京に限ったことではなく、ソウルは東京以上に激しく80%が空き部屋というケースもあるというので、世界的な流れなのだろう。 アメリカの投資家も多いと聞く。アメリカの観点では為替だけではなく、1031 交換(section 1031 exchange)も影響していると思う。この仕組みは、特定の事業用または投資用不動産を売却し、得られた利益を別の同種不動産に再投資した場合、キャピタルゲイン税の課税を繰り延べできる制度だ。アメリカだけでなく日本を含む海外の不動産も対象となる。 1031交換の本来の目的は、経済活動の促進にある。投資家が不動産を売却する際、その利益に多額の税金が課されると、次の投資に回せる資金が減少し、不動産市場の流動性が低下する。しかし、1031交換を利用すれば、売却益を税金として納めることなく、次の物件に再投資できるため、不動産市場の活性化を促す効果が期待される。これにより、投資家はより長期的な視点で不動産を保有・管理し、資本を効率的に再配分できるようになる。 しかしながら、現実の投資家にとり最大の関心事は、この制度が提供する課税の繰り延べだろう。つまり投資用不動産を譲渡してキャピタルゲインが発生しても、1031交換を繰り返すことで、投資家はキャピタルゲイン税の支払いを事実上、無期限に先送りすることが可能となる。 これは大変なインパクトがあり、生きている限り拡大再投資していけばそのキャピタルゲイン税を支払わない。でも生きているうちにどこかでその不動産を譲渡したら、キャピタルゲインが実現すると言われるだろう。 ならば相続で子供に渡したらどうなるか。アメリカは相続開始日の市場価格が取得コストとして塗り替えられる。ということは、キャピタルゲインの課税がないままに、相続でも税金がかからずにその財産は配偶者や子供のものになってしまう。これは富の集中を助長してしまう。1031交換は本来の目的から外れてしまっているのではないかと思える。

最近、IRSから身元確認を求める手紙が多く発行されている。例年にはなかった現象で今年は特に頻発している。特にITIN(個人納税者識別番号)を使用している場合や、還付金額が大きい場合にこれらのレターが送付される傾向がある。 職員削減と自動確認の強化 2025年にIRSの職員が約25%削減される予定で、手作業での確認が減少した結果、ITシステムによる自動確認が増加している。これにより、申告書の内容に少しでも不一致や疑わしい点がある場合、自動的に本人確認のレターが送付されることが多くなっている。 詐欺防止対策の強化 近年、IRSは還付詐欺や身分盗用の被害増加に対応するため、納税者の本人確認プロセスを厳格化した。特に電子申告(e-file)やITINを使用した申告では、追加の確認が要求されることが増えている。 本人確認レターの増加は、職員削減によるシステム依存の強化、詐欺対策の厳格化、新しい本人確認プロセスの導入等が複合的に作用した結果だ。最近では確認書類要求率が前年度比で300%増加しているということも聞く。 対応の重要性 本人確認の手続きを行わないと、IRSは申告内容を処理できず、還付金の返金がスムーズにいかないことがある。また、詐欺の疑いがある場合は、さらに追加の確認が求められることがある。 特に問題となるのは、IRSが発行する手紙には通常30日以内の回答期限が設定されていることだ。日本に居住している場合、国際郵便の遅延により手紙を受け取った時点で回答までの時間がわずか1週間程度、あるいはほとんど残っていないケースもある。 幸いなことに、これらの手紙への回答は「発信主義」が適用される。つまり、期限日までに書類を送付すれば、IRSへの到着日は問われない。時間的余裕がないケースが多いが、IRSからレターが届いた場合は、内容を確認し、速やかに対応することが求められる。

トランプ大統領が、不動産の譲渡益をすべて非課税にする可能性があると報じられている。とても大きな話に思えるが、現行制度でも多くの人は不動産譲渡益の課税を免れている。 現時点では、自宅を売却し譲渡益が発生した場合、独身なら最大25万ドル、夫婦なら最大50万ドルまで譲渡益を所得から控除できる。このため、多くの人が自宅売却による譲渡益については課税対象外となっている。 ただし、これには条件がある。売却日までの5年間のうち、少なくとも2年間、対象不動産を所有し、かつ主たる住居(main home)として居住している必要がある。 夫婦の場合、所有期間については配偶者のいずれか一方が満たせばよいが、居住期間の要件は両方の配偶者が2年間、その住宅に居住している必要がある。ただし、5年間のうち合計2年以上であればよく、2年間が連続している必要はない。また、居住期間については所有者がどちらか一方であっても両方に適用される。 この控除は2年に1回しか利用できない。これは、短期間に複数回の不動産譲渡を行って課税を回避することを防ぐための規定だ。 さて、日本人が仕事の都合などでアメリカに渡り、アメリカで不動産を取得するケースがある。一定期間アメリカで働いた後、夫は既に日本へ帰国し、妻と子どもだけがアメリカに住み続けていることがある。この家を売却した際に50万ドルの非課税控除を受けられるのか。 この場合、夫が過去5年のうち2年間アメリカの家に住んでいたのであれば、たとえ3年前に帰国していたとしても、夫婦合算で50万ドルまで控除を受けることができる。つまり、2年以上の所有・居住要件は「5年間の期間内で通算2年以上」でよく、主たる住宅であった場合は、売却時点で必ずしも居住している必要はない。 なお、譲渡益が50万ドルを超える場合には、超過分について課税される。よって、これを上回る譲渡益が見込まれる場合、もしもトランプ大統領による譲渡益非課税の制度が実現すれば、大きな恩恵となる。 また、日本人の場合、帰国して日本の税法上の居住者となると、アメリカの不動産を売却しても日本側で課税される可能性がある。したがって、帰国する前、すなわちまだアメリカの居住者であるうちに不動産を売却した方が有利になることもある。不動産の売却も時期を見極めることが大事だ。

6月16日は日本からの申告期限だ。同時にこの日は2025年分申告の第2期予定納税の申告期限でもある。2024年分の申告も青息吐息でやっとたどり着いているのに、2025年分の予定納税まではとても手におえないと言う事もあるかも知れない。 アメリカの estimated tax(予定納税) の納付期限は下記となっている。 現行の期限は、各課税期間の終了から15日後に設定されている。第1四半期(1月~3月):4月15日第2四半期(4月~5月):6月15日(2か月分)第3四半期(6月~8月):9月15日第4四半期(9月~12月):1月15日(翌年) 第2四半期が2か月分と短く第4四半期が4ヶ月分と長い。 第2四半期が短い(2か月分)アメリカの個人所得税の確定申告期限は4月15日だ。この時期は税務処理が非常に集中する。第2四半期の対象期間を短くすることで、予定納税額を計算・準備する時間的余裕を持たせている。 第4四半期が長い(4か月分)年末にかけて、その年の総所得や控除額が固まってくる。投資収益の確定や年間の税額に影響することがこの時期に集中することが多い。4か月という期間で、それまでの3回の予定納税で過不足があった場合に調整しやすくなる。 歴史的、実務的な経緯もあり現状の形になっているが、分かりにくいと言うのもその通りだろう。 6月15日までの予定納税が準備できていなくとも、次の条件に合致していれば、もともと予定納税は必要がない。 ① 源泉徴収額や税額控除を差し引いて、当年の税金が$1,000未満となる。$1,000未満なら予定納税は必要がない。② 源泉徴収等で納付している金額が当年の税金の90%をカバーしている。③ 前年(フル12ヶ月)の税金の100%(高額所得者は110%)以上を納付している。いずれにしても2024年分の申告で、頭がいっぱいになっているかも知れないが、2025年分の申告も同時並行で動いている。

日本からアメリカの連邦個人所得税の申告を行う場合は、2か月の自動延長が認められている。ちょうどあと1週間で期限がくる。 もともと 米国の個人所得税(Form 1040)の通常の申告期限は、毎年4月15日だ。 米国市民やグリーンカードホルダーなどが米国外(海外)に居住している場合、IRSによって自動的に2ヶ月の延長が認められる。これにより、申告期限は6月15日となる。 さらに申告期限が土曜日、日曜日、または米国連邦政府の祝日に当たる場合、期限は翌営業日に繰り延べられる。2025年6月15日は日曜日なので、申告期限は翌営業日である2025年6月16日(月曜日)に繰り延べられる。 Form 1040-NRの申告期限はどうか。Form 1040-NRは非居住外国人が申告を行う場合に使用する。Form 1040-NRと言えども、米国内に住んでいる人で、居住者の要件を満たさない人がこのフォームを使うことがある。申告期限は、通常の個人所得税申告期限と同じく4月15日となる。 多くの場合、Form 1040-NRを提出する人は、米国に居住していない。非居住者外国人は、6月15日の申告期限で、米国市民や居住外国人が海外に居住していることで得られる2ヶ月の自動延長に相当すると考えられる。 もしも、6月16日までに申告が間に合わない場合は、Form 4868を提出する。これで10月15日まで申告期限が延長される。税務は通常、発信主義となっている。紙でForm 4868を提出する場合は、6月16日までの日付のスタンプがあれば大丈夫だ。時間が必要な場合は、迷わず延長申請を行うのが良い。 6月16日の期限で、わずか一日と言えども申告期限が延びて助かっている人も多いはずだ。

税金の申告データとしてForm 1042-Sが提供されることがある。Form 1042-S の目的は、アメリカの源泉徴収義務者(大学や企業など)が、アメリカの非居住者外国人対して支払った所得(利子、配当、奨学金、報酬等)とそれにかかる源泉所得税を報告するための書類だ。受け取る側はアメリカの税務上の非居住者としてForm 1040-NRを提出する事が通例だ。 しかしながら米国市民や米国居住者に対してForm 1042-Sが発行されていることが散見される。アメリカ市民や居住者(resident alien)はForm 1042-Sをもらうことはなく、Form W-2やForm 1099をもらう。それにより米国市民や米国居住者はForm 1040-NRではなくForm 1040を提出する。 支払いを受ける側と支払う側のいずれにも情報が不十分だったり間違いがありえる。結果として1042-Sによる支払では、30%の固定源泉徴収税(あるいは租税条約による軽減)が適用され、アメリカ市民や居住者としての源泉徴収率より高額の源泉税が差し引かれる場合がある。 仕方なしにForm 1042-Sの内容をForm 1040に手動で転記すると、申告ミスのリスクが出てしまう。Form 1042-Sの所得がForm 1040に反映されないと、所得の落ちを指摘される。また、源泉徴収税額がForm 1040に記載されないと過少納付とみなされる。 さらに支払い元が租税条約を誤って免税処理すると、IRSから否認される。日米租税条約の「教授条項」(廃止済み)を根拠に免税 すると 追徴課税の対象になってしまう。 米国市民や米国居住者が、支払を受けた際に米国市民や居住者であることを証明できる書類(たとえばW-9等)を提出せずに、Form W-8BENを提出する事もあり得る。 支払者側が外国住所をもとに機械的に非居住者とみなし1042-Sを発行するケースも多い。これを防ぐには支払者と市民権やグリーンカードの有無、住所・ビザステータス・実質滞在テスト(183日テスト)判定結果等を共有し、書類の誤発行を防止することが必要だ。

アメリカのMain Homeを売った時に、条件を満たせば、夫婦合算申告なら50万ドルまでの譲渡益控除を受けられる。 50万ドル控除を取れる要件: ①所有要件:過去5年のうち、少なくとも2年以上その家を所有していた(夫または妻のどちらかが満たせばOK)②居住要件:過去5年のうち、少なくとも2年以上その家に居住していた(売主が満たす必要あり)③申告ステータス:50万ドルの控除を受けるには、夫婦合算で申告する。 アメリカに住んでいた夫婦で、夫が日本に帰国し、妻がアメリカに残る。妻もその後、日本に帰国する際に不動産を譲渡するケースがある。 夫婦で同じ屋根の下に住んでいるので、アメリカに住んでいた時の家がMain Homeというのは迷わないだろう。片方の配偶者が日本に帰国してしまったら、さてどっちがMain Homeなのかと考えてしまう。 家族として考えたら夫の仕事や経済的な結びつきやら、もともと日本に生まれているので日本こそMain Homeと考えるかもしれない。しかし、アメリカに残っている妻が経済的に家庭を支え、子供の学校もアメリカとなればアメリカがMain Homeと考えるのが自然かもしれない。 実は所帯に1つのMain Homeと考える事はない。夫婦それぞれが異なるMain Homeを持つことができる。ただし、一人につき1つのMain Homeしか持つことができない。 夫が帰国後、日本で新しいMain Homeを持つと、アメリカの家は夫にとってSecond Homeと見なされる。一方で 妻はそのままアメリカに住んでいるので、引き続きMain Homeとして扱える。 この場合でも夫が所有要件、居住条件を満たすことができれば、たとえ日本にMain Homeを持っていたとしても、夫は居住要件を満たす可能性が残る。ただし、これは時間の経過とともに要件を満たさなくなるため、タイミングが重要と言える。

Form 2555(外国所得控除)は、米国市民または居住者が海外に居住し、一定の要件を満たす場合に、海外で得た所得を米国所得税から控除することを可能とする。2024年では126,500ドルだ。 これは日本で働いている人だと、$1=150円で約1900万円の働いて得た所得を控除でいるので、課税対象の税額がなくなることが多く、実にありがたい精度だ。 米国は全世界所得課税制度を採用しており、米国市民および居住者は、全世界で得た所得に対して米国所得税を支払う。日本で得た所得に対して、日本で税金を支払い、アメリカの税金も支払うので、二重課税が発生する可能性がある。Form 2555は、この二重課税を軽減する。 海外で働く米国人は、現地の生活費が高かったり、米国にいる家族を扶養する必要があったりと、経済的な負担が大きい。Form 2555は、これらの負担を考慮し、海外勤務者を優遇する目的も含まれる。 さて、このありがたいForm 2555に5年ルールが存在する。Form 2555(外国所得控除)を自主的に使用をやめると、向こう5年間は再び利用することが制限される 納税者が頻繁にForm 2555を利用・放棄すると、IRSは、それぞれの状況を個別に審査し、適切な税額を決定することになる。これは、税務行政の負担を増大させ、税金の徴収・管理にかかるコストを増加させる。 納税者が頻繁に税制上の地位を変更すると、税収の予測が困難になり、政府の財政運営に支障をきたす。5年ルールは、Form 2555の利用を一定期間制限することで、税収の安定性を確保し、税制全体の予測可能性を高める。これにより安定的な財政運営を行うことができるようになる。 知らずにForm 2555を放棄すると、5年ルールで向こう5年間使えなくなる事になりかねない。 ただし特定の年に所得がなく、Form 2555を使うことができない場合は、控除の対象となる条件を満たしていないだけで、Form 2555の放棄ではない。したがって、5年ルールの制限対象にはならない。

〒103-0016
東京都中央区日本橋小網町4-8-403
Phone:03-6231-0301
相続税:資産家のための相続税相談申告センター
日本の税務:星泰光・杉沢史郎税理士事務所
| 水天宮前駅 | ― |
東京メトロ半蔵門線 6番口 4分 |
|---|---|---|
| 茅場町駅 | ― |
東京メトロ 東西線 A4出口 徒歩5分 |
| 人形町駅 | ― |
東京メトロ 日比谷線 / 都営浅草線 A2出口 7分 |