アメリカの標準控除は、まず誰れにでも適用される「基本部分(1階)」がある。従来の「高齢・盲人の追加標準控除」は、65歳以上や視力に重い障害がある人なら、原則、誰だれでも少しだけ標準控除が増える“基本の上乗せ(2階部分)”だ。
OBBBA の新しい6,000ドル控除は、夫婦がともに65歳以上で、双方が SSN を持ち(ITIN は不可)、 MFJ (夫婦合算申告)を選択し、所得が一定の範囲内に収まっている人だけがもらえる“ボーナス的な増額(3階部分)”になっている。
しかし、この3階部分は MFS (夫婦個別申告)では完全に適用外となる。1階・2階部分はMFJでもMFSでも中立なのに、3階部分だけ MFJ 専用という非対称性は、非常に分かりにくい。
なぜ IRS はこのような構造を採用しているのか。
その理由は、フェーズアウト(所得制限)の管理にある。高齢者追加控除は、所得が一定水準を超えると段階的に減額される仕組みになっている。具体的には、単身の場合は MAGI 75,000ドル以下で満額、175,000ドルでゼロ。MFJ では 150,000ドル以下で12,000ドル満額、250,000ドルでゼロとなる。
このフェーズアウトは、世帯の合算所得を前提に設計されている。つまり、制度は夫婦の所得を一体として把握し、その世帯の経済状況に応じて控除額を調整する。MFJ であれば、夫婦の所得が一つの申告書にまとまり、フェーズアウトの計算も一貫して行える。夫婦が別居・別住所・別会計でMFSの申告すると、相手の申告内容を知らずにフェーズアウトで満額$6,000 をとれないのに、両方が $6,000 を申告しても IRS は判断がつかない。
この フェーズアウトを正確に適用するには、夫婦の合計所得を正確に把握すること、減額幅を世帯単位で計算すること、夫婦双方の申告内容が整合していることを確認することとなる。
日本在住者への影響
日本に住む米国市民・永住者にとって、この構造は特に影響が大きい。配偶者が非居住者である、情報提供が難しいなどの理由で MFS を選ばざるを得ないケースは少なくない。この高齢者追加控除は、原則として SSN 保有者のみが対象であり、ITIN しか持たない高齢者は対象外とされる。MFS を選ぶと、その時点でこの6,000ドル控除は二人とも使えない(SSNであっても対象外)。MFJならSSNの1人分6,000ドルまでは取れることになる。
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