2026年2月

2026.02.01
所得税

日本在住者から見たOBBBAの残業代・チップ非課税

2025年7月に成立した米国の大規模税制改正法 OBBBA(One Big Beautiful Budget Act) には、残業代とチップに対する所得税軽減が盛り込まれた。一見すると分かりやすい減税策だが、日本に住み、日本で働くアメリカ市民やグリーンカードホルダーがこの恩恵を受けるのは、実務上きわめて難しい。 残業代非課税の内容 OBBBAで非課税(正確には所得控除)の対象となるのは、残業代の全額ではない。時給1.5倍で支払われる残業代のうち、通常賃金に相当する1.0倍は課税対象で上乗せ分である0.5倍(プレミアム部分)のみが控除対象となる。 この制度は 2025年から2028年末までの時限措置 で、控除上限は独身者12,500ドル、夫婦合算申告25,000ドル。調整後総所得(AGI)が一定額を超えると段階的に縮小・消滅する。 なお、対象は連邦所得税のみで、社会保障税・メディケア税(FICA)は通常どおり課税され、管理職など残業代支給対象外の従業員も含まれない。 制度が想定する労働者像 この残業代控除が想定しているのは、米国労働基準法に基づく残業代を米国内で受け取る労働者である。この前提が、日本在住者にとって大きな壁となる。 日本在住者に適用できない三つの理由 第一に、源泉地の問題である。 雇用所得の源泉は役務提供地で決まるため、日本で働いて得た給与や残業代は日本源泉所得となり、米国内源泉の賃金に該当しない。 第二に、残業代の法的根拠である。 この制度が想定しているのは、米国労働基準法に基づく残業代をる従業員だ。労働時間のすべてを米国外で行う労働者を適用除外としている。 第三に、外国所得控除等との競合である。 日本在住のアメリカ市民の多くは、外国給与所得控除や外国税額控除により二重課税を回避しており、すでに給与全体が除外されている場合、残業代控除を重ねて適用する余地はない。 チップ非課税も日本在住者には無縁 OBBBAにはチップ収入の非課税措置もあるが、日本にはチップ文化がほとんど存在しない。この制度が想定しているのは、米国内の飲食・配車・宿泊などのサービス業で、顧客から直接支払われ、W-2や1099に計上されるチップ収入である。政策目的は「米国内でチップに依存する労働者の可処分所得の引き上げ」であり、日本で給与を得る人が対象となる余地はほぼない。 以上から、日本に住み、日本で働くアメリカ市民・グリーンカードホルダーにとって、OBBBAの残業代・チップ非課税は 原則として適用外の減税措置といえる。

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