2025.05.04
遺産税・贈与税
Form 3520
アメリカの贈与や相続では課税主体が贈与者、被相続人となる。これに対して、日本は贈与税や相続税の課税を受ける人は受贈者、相続人となる。
仮に相続が発生し被相続遺族人から相続人に1000万円が渡されたとする。アメリカの税制では亡くなった人が課税対象となり、日本では相続をした人が課税を受ける。
つまり、アメリカでは相続や贈与で財産をもらった人は、課税の対象ではないので相続税や贈与税を原則として支払うことはない。これでお終いとなれば簡単だが必ずしもそうならないことがある。
Form 3520という書類がある。非居住者から相続や贈与で1年間に10万ドル以上の財産を受け取った場合に、その事実の報告をしなくてはならない。ごく簡単な報告だ。
ではなぜこの報告を求められるのか。
IRSはアメリカの市民権やグリーンカードを捨てた人のうち、特にアメリカの税金をたくさん払っていたり、財産を持っていたりする人が市民権やグリーンカードを捨てることで、税金を逃れるのを防ぎたいと考える。
市民権やグリーンカードを捨てた人に対しては、税金をかけることが難しくなる。しかし、お金や財産を受け取ったアメリカ市民やグリーンカード保持者に対しては、まだ税金をかけることができる。そこで、Transfer Taxという仕組みを使って、アメリカからお金が逃げるのを防ごうとする。
Transfer Taxは、市民権やグリーンカードを捨てた人が、アメリカ市民やグリーンカード保持者にお金や遺産を渡したりした時に、そのお金や遺産を受け取った人が払う税金だ。
つまりForm 3520の報告を通じて、IRSは市民権やグリーンカードを放棄した人からの贈与や相続を把握し、Transfer Taxの対象となるかどうかを判断する。
その意味で、アメリカでは相続や贈与で財産をもらった人は、課税の対象ではないので相続税や贈与税を支払うことはないとは簡単に言えなくなる。税金を払う人は財産をもらった人となってしまうことがある。