2025年3月

2025.03.30
所得税

ありがたい標準控除だが

課税所得を減らすには、主に標準控除(standard deduction)と項目別控除(Itemized deduction)の2 つの選択肢がある。標準控除は固定金額(独身で$14,600とか)を引いてくれるもので、個々の経費をレシートを集めて計算する必要がない。一方、項目別控除ではSchedule Aを用いて、医療費、住宅ローン利息、州税と地方税、慈善寄付などを計上する。 標準控除と項目別控除のうち、いずれか高い方を選択できる。統計的に90%の人が標準控除を使い、残り10%の人が項目別控除を使っている。 確かに高額の医療費や固定資産税やローンの利息等を払っている場合は、項目別控除が有利だ。しかしそれに対しても制限が設けられている。 医療費は 調整後総所得(AGI) の 7.5% を超える分のみ控除対象となる。これ以下の場合は医療費の控除を使えない。住宅ローンの利息は、住宅ローン債務の最高 75 万ドルまでの部分に制限される。州税や固定資産税等の控除の上限は 10,000 ドルで、これ以上の部分は使えない。現金寄付は 調整後総所得(AGI) の 60% までで領収書が必要となる。 多くの場合、標準控除がシンプルでメリットが大きい。これは簡単でありがたいものだ。 ところが、外国人がアメリカに申告を行う場合は話が全く違う。日本に住んでいるアメリカ市民でもなくグリーンカードホルダーでもない人は、Form 1040NRを使う。 Form 1040NRに標準控除はない。初めからSchedule A(Itemized deduction)を用いるしかない。 さらに制限が出る。 医療費であれば、治療が「米国で合法的に認められた医療行為」と同等であること。領収書や診断書など、英文または翻訳済みの証明書類が必要で、為替レートは支払い時の公式レートで換算する。AGIの7.5%基準はそのまま適用される。 日本の所得税は、アメリカの州税または地方税にあたらない。但し外国税額控除を残している。固定資産税の控除は米国内の州・地方のものに限定され、日本の固定資産税は控除できない(賃貸事業では使用できる)。 寄付金控除は、米国の税制に基づく規定がある。寄付を受け取る団体は、IRSより適格団体として事前に認定されている場合に限り控除が認められる。 こうやってみるとSchedule Aで控除を取れるものはほとんどない。この場合、たくさん時間を使ってレシートを集めて整理しても、ほとんど無駄に終わってしまう。

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2025.03.23
所得税

Form 2555での所得控除

Form 2555は、外国に住んでいるアメリカ人やアメリカの税務上の居住者が、外国で働いて得る所得を控除してくれる。2024年では$126,500だ。$1=150円レベルだとほぼ1900万円まで所得から差し引いてくれるので、多くの場合、課税対象の所得が無くなる。 もちろんこれを使うためには条件がある。 納税者がアメリカ以外の国(例えば日本)に通年にわたって居住しているか、連続する12ヶ月間に330日以上をその国で過ごしていると言う条件がつく。 外国での所得を控除してくれるなら、不動産譲渡益や株式譲渡益までも控除してくれると良いのだがそうはいかない。 対象はアメリカ市民や税務上の居住者が海外で働いて得た所得で、次のようなものが含まれる。 給与および賃金: 海外の雇用主から支払われる給与や賃金。自営業の利益: 海外で事業を行い得た利益。ボーナスや手当: 海外の勤務に関連したボーナスや特別手当。 働いて得たものではない所得には次のようなものが含まれる。これは対象外だ。 利子所得: 海外の銀行や金融機関から得た利子。配当金: 外国企業から支払われる配当。賃貸収入: 海外の不動産を貸し出して得た収入キャピタルゲイン: 海外の資産の譲渡益。年金や年金受取: 海外の年金制度から得た収入。 給与が1000万円だと、所得控除で課税される所得がゼロになってしまう。ならば申告書を提出しなくても良いのだろうか。Form 2555を提出して初めて課税所得がゼロになる。申告書類を提出しないと、IRSから見れば無申告の状態でしかない。申告書を提出して初めてForm 2555使えるので税額は発生しないことになる。 さらに外国税額控除Form 1116があるので二重にアメリカに税金を払う必要がないと考えるかもしれない。しかし、Form 2555で所得控除を受けて、さらに所得控除したものに発生した外国税額を控除すると、二重の控除になってしまう。所得で落とした分に相当する外国額は控除することはできない。 またForm 2555を用いるとchild tax creditを取れなくなることもある。Form 1116の方がメリットが出ることもあり得るので、細かくは自分の状況に応じて判断することが必要となる。

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2025.03.16
その他

どの為替レートを使うか

米国の申告書に記載される金額は米ドルで表示することが義務付けられている。これは、日本で得た給与、事業所得、利子、配当金など、あらゆる種類の収入に適用される。収入が日本円で支払われた場合でも、Form 1040に報告する際には、適切な為替レートを使用して米ドルに換算しなければならない。 内国歳入庁(IRS)は、外国通貨の換算に関して、一貫して使用されている公表された為替レートであれば受け入れている。 次のようなレートが使われている。もちろん日本の金融機関のレートでも問題ない。 IRSのサイト:https://www.irs.gov/individuals/international-taxpayers/yearly-average-currency-exchange-rates米国財務省のウェブサイト:https://fiscaldata.treasury.gov/datasets/treasury-reporting-rates-exchange/treasury-reporting-rates-of-exchange連邦準備制度(Federal Reserve):http://www.federalreserve.gov/RELEASES/XE.comなどの為替レート: http://www.xe.com/ 収入が年間を通じて均等に得られている場合は、その課税年度の年間平均為替レートを使用して日本円を米ドルに換算することが認められる 。一方、不動産や株の売却など、単一の日に発生した取引については、その日の為替レートを使用する必要がある 。 年間平均レートが一般的に適している収入の例:給与所得: 年間を通じて毎月または隔週など、定期的に支払われる給与年金: 年間を通じて定期的に支払われる年金収入定期的な賃貸収入: 毎月定期的に受け取る賃貸収入 情報申告のFBARでは12月31日のレートが指定されている。換算した時の小数点以下は四捨五入とされている。一方FATCAでは12月31日のレートが指定されているわけではなく、小数点以下は切り上げとされる。 FBARは指示がはっきりしていて、たとえ日本円の残高が最も大きい日が6月30日であっても、為替換算レートは12月31日のレートとなる。 結果として、同じ申告書の中でFBARとFATCAでは異なる数字になってしまう可能性がある。しかしながら日本円では同じなのに、FBARとFATCAでは異なるドル金額と言うのは違和感があるので、FBARの数字に合わせるのが落としどころと思える。

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2025.03.09
所得税

税務申告はTax return

日本では、会社員の場合、年末調整で税金に関する手続きが行われる。しかし、アメリカでは、自分自身で税金の申告を行う必要がある。アメリカには源泉徴収制度があるものの、年末調整のような制度はない。 この税務申告は「tax return」と呼ばれる。この言葉は、納税者が政府に財務情報を「返す(return)」行為と、政府が過剰に支払った税金を「返す(return)」行為の二重の意味を持つ表現だ。 アメリカの税務上の居住者は、全世界所得に基づいて課税される。居住者の判定は、市民権やグリーンカードの保有、アメリカ滞在日数等を基準に行われ、この基準を満たす限り、世界のどこに居住していても基本的にアメリカの税務上の居住者とみなされる。したがって、アメリカの所得だけでなく、日本の所得もアメリカに申告する必要がある。日本の所得が含まれない場合、適正な申告とはならない。 アメリカの税務上の居住者は、日本の確定申告の期限が早いため、まず日本で確定申告を行うことになる。日本の申告を終えただけで、アメリカの申告が未提出となると無申告になるので注意が必要だ。 日本の申告でも全世界の所得に対して課税を受ける。その後、アメリカの申告を行うと、アメリカでの税額が発生することがある。二カ国で二重に課税されるため、外国税額控除などで二重課税を避けることが重要となる。日本の申告で外国税額控除を取るケースや、アメリカの申告で外国税額控除を取るケースがあり、この外国税額控除の処理は複雑になりやすい。 アメリカの申告は不慣れで、わからないことが多いため、とにかくこの税務申告を終わらせようと一生懸命になる。何とか終えたら、「よかったよかった」となり、もう一つのReturnであるInformation Returnがすっかり抜け落ちていることが散見される。 Information Returnとは、FBAR(海外銀行口座報告)やFATCA(外国口座税務コンプライアンス法)など、情報提供義務を含むもので、アメリカの税務当局(IRS)が海外の金融資産に関する情報を収集し、適切に税金を徴収するために設けられたものだ。これらの申告は特に難しいものではなく、事実を列挙するだけだが、提出しなければペナルティが課せられる可能性がある。但しアメリカの税務上の非居住者にはこの申告は不要だ。 アメリカの税務上の居住者:Tax return(全世界所得)+Information returnアメリカの税務上の非居住者:Tax return (アメリカ源泉所得だけ) この枠組みをしっかり押さえて申告を行うことになる。

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2025.03.02
所得税

分かれ道

アメリカの個人所得税では、アメリカの居住者か非居住者かの区別が大きな分かれ道になる。アメリカの居住者である場合、全世界の所得がアメリカの申告対象となる。非居住者の場合は、アメリカを源泉とする所得のみが課税対象となる。 一般的にはアメリカの居住者と言えば、アメリカに住んでいる人と考える。アメリカに住んでいるわけだから日本には住んでいない。つまり物理的に日本に身を置いて暮らしていれば日本の居住者だし、日本から出国して日本には住んでいないと日本の非居住者だ。 しかし、アメリカの税務は個人の属性で判断する。即ち、アメリカの市民権を持つ人、グリーンカードを持つ人、さらに「実質滞在テスト」において一定期間以上アメリカに滞在している人が税務上の居住者となる。したがって、市民権やグリーンカードといった属性が居住者の判断に影響を与える。 日本からアメリカに引っ越した場合、日本には住んでいないため、アメリカの居住者と見なされることは、日本及びアメリカの税務において自然に受け入れられる。 しかし、アメリカ市民やグリーンカードを持っている人が日本に引っ越した場合だ。日本の居住者となるので、アメリカの非居住者と考えたくなる。日本の国土に足をのせて同時にアメリカの国土に足をのせることができないからだ。一方の国の居住者=他国の非居住者とならないので感覚的にわかりにくい。 日本の税務は、日本に住んでいる人を居住者と定義しているため、アメリカ市民やグリーンカード保有者をその視点で考えようとする。一方、アメリカの税務では、日本の税務が定義する居住者のみに依存せず、個人の属性に基づいて居住者を決定する。結果として、居住者である限り、日本の定義においてもアメリカの定義においても、それぞれの国で居住者と見なされる。 どちらの国でも居住者である場合、全世界の所得が課税対象となるため、所得が一つしかないところに二つの国の税金が併存する厳しい状況が生じる。この問題を解消するために、どちらの国の税金を優先すべきかを調整するために租税条約が設けられており、二重課税を回避しようと試みている。しかし、この調整機能が効かない場合、二重に税金が課せられることになる。 申告書を作成するデータは、日本の税務でもアメリカの税務でも、居住者である限り世界中の所得のデータを集めることになる。アメリカの非居住者の場合、アメリカの申告書の対象となるのは、世界中の所得ではなくアメリカを源泉とする所得になる。

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