申告書を作成する際、まずは名前、住所、社会保障番号(SSN)などを記入する。この部分は申告書の入り口となる重要な項目だ。しかし、ここでミスを犯すと、申告書を受け付けてもらえず却下される可能性がある。 1.名前 結婚した人に多いのは、新姓を記入してしまうことだ。IRSは最初に社会保障局(SSA)の記録と申告書の名前と番号を照合する。社会保障カードの名前と番号が正しいとされるので、これと合っていない場合は、申告書が受理されない。 社会保障局(SSA)の記録を直さないといけないのだが、修正する時間がない場合、旧姓のまま申告を余儀なくされる。 名前にハイフンが入る事がある。このハイフンを抜かして記入してしまう。これもエラーとなってしまう。 最初の記入欄は完璧でも、最後の署名や日付を忘れたまま郵送しまった場合、申告書が無効扱いになって送り返される。 2.SSN(社会保障番号)・ITIN(個人納税者番号) 思い込みでいい加減な番号を記入したり、数字の倒置で番号を間違えることがある。自分の番号ではなく家族の番号をうっかり書いてしまうこともある。社会保障カードと不一致ならば、これも申告書が返却されてしまう。Married Filing Jointlyの場合、配偶者のSSNを記入せずにいると申告が即時却下される。 ITIN(個人納税者番号)で申告をしていた人がSSNを取得したら、必ずSSNを記入する必要がある。IRSは「SSNを取得したら、以降の税務申告ではITINではなくSSNを使用する」と明記している。ITINを記入した場合、IRSは申告書を受理することができず、その申告書に関する処理に問題が発生する可能性がある。 3.住所 自分が居住していない住所を書いてしまう。日本に居住しているのにアメリカの住所を借りて申告してしまう。実際は住んだこともない州から州税の申告も求められてしまう。 IRSからの連絡や還付金の小切手がその住所に行ってしまう。不足している書類の追加や税金の納付通知、還付小切手等が所在不明になる。気が付いて調べたら何年も前から税金が未納付で延滞金、金利が雪だるまという事もあり得る。 還付小切手がいつまでも届かない。調べてみたら、旧住所に配達されるも、あて先不明とされ、アメリカまで戻されていることもある。 税務申告は些細なミスが大きな損失に繋がることがある。特に氏名とSSNは、IRSと社会保障局の記録と完全一致させる必要がある。この点をしっかり確認することが重要だ。
アメリカの税金申告、初めてだと何から始めたらいいのか迷いがちだ。 まずは時間の枠組みを意識 しながら、一つずつ手順を踏んでいくことになる。 アメリカの確定申告を始めるにあたり、最初に行うべきことは「データ集め」だ。何をどのように進めたら良いか迷っている場合は、まず重要な期限を把握して、その期間内に必要な処理を進めていくことが大切だ。 アメリカの申告期限は通常4月15日で、日本から申告する場合には、2か月の自動延長があり、6月16日が期限となる。一方、日本の申告期限は3月17日なので、アメリカの申告に取り組む前に、日本の申告を終わらせることが推奨される。 日本の申告が年末調整で完了している場合、すぐにアメリカの申告に取り掛かることができる。しかし、給与以外の所得がある場合は、日本の確定申告を先に完了させる。 申告の準備で一番大切なのは、 必要なデータを漏れなく集めること。アメリカ市民やグリーンカード所有者、長期滞在者の場合は全世界所得が申告対象だ。それ以外のアメリカ非居住者の場合は、アメリカ源泉の所得が申告対象となる。 データがなければ、スタートラインに立てない。以下のような書類を集める。 【日本のデータ】 給与の源泉徴収票預金利子、配当金の明細株式等の譲渡に関する書類賃貸事業を行っている場合は決算書日本の確定申告書の写し・税金の納付実績等々 【アメリカのデータ】 給与の源泉徴収票 (Form W-2、1099-NECなど)利子・配当金の明細 (Form 1099-INT、1099-DIVなど)証券口座の取引明細書 (statement)その他、収入や控除に関する書類等 これらの書類は、1月末から2月中旬にかけて発行される。 金融機関に住所変更を届けていない場合は、書類が届かない可能性があるので、オンラインでダウンロード する。 データ収集段階で不備があると、後工程で大きな修正が必要になることがある。今の段階では、しっかりデータを揃え、データが揃ったら申告書の作成に進んでいく。
日本では受験シーズンがピークで、小学生や中学生ではすでに進学先が決まっている人も多いと思う。この時期はまた祖父母が孫のためにお祝いを贈る時期でもある。 こうしたお金はアメリカの贈与税務上どのような形になるのか。大前提として、アメリカの贈与税は贈与する側が課税を受けることになる。一方、日本の贈与税は贈与された側が課税を受ける仕組みだ。 もともと親には子供に対する法的な扶養と教育の義務がある。そのため、親が未成年の子供のために支払う通常の生活費や基礎的な教育費は、通常、贈与とは見なされない。 一方で、祖父母には孫に対する法的な扶養義務はない。そのため、祖父母が孫に対して提供する経済的支援(教育費の支払い)は、贈与税の観点からは贈与と見なされることがある。特に多額のお金を子や孫に直接渡すことは贈与と見なされる可能性がる。 ただし、年間非課税贈与枠があり、2024年ベースでは$18,000/人までは非課税だ。この枠は贈与者ごとに設定されているため、祖父と祖母が孫に贈与する場合、合計$36,000まで非課税となる。 この枠を超えた部分は、贈与者の生涯贈与税控除額(2024年は$12.92 million)から差し引かれるか、贈与税(18~40%)が発生する事になる。 また、この枠を超えても、祖父母が孫の通う学校(小中高・大学など)に授業料を直接教育機関に支払う場合、その金額は贈与税の対象外となる。ただし、以下の条件が必要となる。•支払いが「授業料」に限定される(教科書代・寮費・生活費は対象外)。•支払いを祖父母が直接学校に行う(例:学校の口座に振込む)。•対象は「教育機関」のみ(IRSが認める学校・大学など)。 具体的に$50,000を贈与する例で考える。 •祖父母が学校に$50,000を直接支払う。この場合、贈与税の対象外となり、全額が非課税だ(授業料全額が対象外)。•祖父母が親を通じて孫に$50,000を渡す。この場合、年間非課税枠を超える$32,000が贈与税の対象だ。また授業料以外の費用(例:寮費・教科書代・制服代・生活費)は、年間$18,000の非課税枠内を超えると贈与税対象となる。たとえ教育機関に直接払っても非課税とはならない。 これはあくまでもアメリカの税務に焦点を当てた説明で、日米間では贈与税に関するルールが大きく異なる。そのため、日米両方の税務を考慮した上で、贈与計画を立てることが重要となる。
アメリカに不動産を保有している個人が日本に帰国する場合、夫が先に日本に帰国し、妻が子供の教育のためにアメリカに残ることがある。このように夫婦が日米で別々に住んでいる中で、アメリカの不動産を譲渡する場合、不動産の譲渡益控除を受けられるのだろうか。 アメリカの税法上の居住者は、以下の要件を満たす場合には、居住用不動産の譲渡益を控除できる。 要件: 所有要件(Ownership Test): 直近5年間のうち、2年以上その家を所有していること居住要件(Use Test): 直近5年間のうち、2年以上その家に住んでいること 控除額: 夫婦個別: 最大$250,000夫婦合算: 最大$500,000基本的に、日常的に住んでいる主たる住居(Main Home)であることが必要で、投資物件や別荘の場合には譲渡益控除を受けることはできない。 夫の日本の家が主たる住居となれば、アメリカの家はセカンダリー(secondary home)になり、別荘や別宅のような位置づけになってしまう。 アメリカに残っている妻と子供が、夫の帰国から数年後に日本に帰国し、その際にアメリカの家を売却する。家族として主たる家ではないので控除ができないかと言えば、譲渡益控除を完全に失うわけではない。 その理由は、夫と妻が別々に適用条件を判断できるという点にある。たとえ夫にとってアメリカの不動産がセカンドホームであっても、妻にとっては主たる住居であるため、妻が単独で所有要件と居住要件を満たせば、最大25万ドルの控除を受けることができる。ただし、妻に不動産の所有権がない場合は、この控除は利用できなくなる。 もし最大50万ドル(約7500万円)の控除を利用したい場合、夫婦の両方が所有要件と居住要件を満たす必要がある。夫が所有要件を満たして、過去5年間のうち2年以上住んでいる居住要件が問題だ。これを満たすためには、帰国後3年以上経過すると居住期間が2年未満になってしまうため、帰国後3年以内に譲渡する必要がある。 例外として、「やむを得ない理由」により売却する場合、居住期間の要件を満たしていなくても部分的な控除が認められることがある。健康上の理由、仕事上の理由、予期しえない理由などがあれば、部分的な控除が適用されることがある。 税務上の処理を簡単にするために、日本に帰国する前にアメリカの家を譲渡することを検討するのも一つの方法だ。日本の非居住者であるうちに不動産を譲渡すれば、日本での税務申告に直接影響しない。帰国後にアメリカの不動産を売却すると、譲渡益があれば日本の税金の対象になりえる。 最終的には税金の面だけで判断できるわけでもなく、税金以外の要素 (子供の教育、生活環境など)総合的に状況を考慮して判断することは言うまでもない。
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