IRSは、米国財務省の機関である内国歳入庁 (Internal Revenue Service) の略称だ。IRSは、連邦税の徴収、納税者が納税義務を理解し履行することを支援すること、そして公平な税負担を確保するために税法を執行することを任務としている。 Internal Revenue Service(=IRS) という名称を見て、昔からなぜ Internal があるのに External Revenue Service(=ERS) がないのかと、素朴に疑問をもっていた。 トランプ大統領は、関税、外国からの収入を含むあらゆる収入を徴収するための新しい機関として「外税庁」を設立するという計画を発表している。大統領選挙中から繰り返し関税について言及し、「関税」を「辞書の中で最も美しい言葉」と呼んでいた。そのため、彼が大統領に就任してすぐにこのような動きに出たスピードには驚いた。 トランプ大統領は、関税を「米国経済の周囲に保護の壁を作る」ものだと表現し、グローバリゼーションによって打撃を受けた地域に雇用を取り戻すことができるとしている。さらに、1900年代初頭から続く所得税中心の制度から脱却し、関税を連邦政府の歳入源として増やすことに関心を示していた。 トランプ大統領の支持者の中には、関税によって外国が税金を負担するため、自分たちの税負担が軽減されると考える人々がいる。「関税によってアメリカの税収が賄えるならば、自分たちが支払っている税金を払う必要がなくなる。税金は外国が払うもので、自分たちが払うものではなくなる」というわけだ。まるで「おとぎ話」のように聞こえるのだが、実際にこのようなメッセージを受け取り、支持していた人々がいたことは事実だ。 関税は、輸入品に課される税金であり輸入者が支払う。外国の貿易相手国に関税を課す言う場合、実際には米国の輸入者がその関税を支払う。それを商品の価格に上乗せするため、米国の消費者が間接的に負担することになる。海外旅行で外国産高級ワインを持ち帰ったとする。税関に申告すると、税金を課せられるのは持ち帰った人であり、ワインを作った外国のブドウ園ではない。 関税引き上げによって保護される産業がある一方で、輸入品を原材料とする産業はコスト上昇に苦しむ可能性がある。さらに関税引き上げは、貿易相手国との報復合戦を招き、世界経済に悪影響を及ぼす可能性がある。 今まで関税をつかさどる機能は米国関税国境警備局(CBP)や米国国際貿易委員会(ITC)が果たしている。これを一つの組織としてERSを作ることは、できるだけ組織の無駄を省こうとするイ―ロン・マスクとは逆の立場だ。 関税により個人所得税が無くなるとも思えない。トランプ大統領の政策が引き起こすかもしれない変化と混乱にもかかわらず、現状を変えようとする姿勢には注目すべき面もある。どんな結果になるかは別として、その試みは一部の人々の支持を集めている。
グリーンカードを持っている人がその放棄手続きをすると、出国税(Form 8854)を提出する必要がある。出国税で国外退去日を間違えるとForm 8854の提出時期をあやまることになりかねない。 出国税における国外退去日は、次のうち最も早い日付とされる。 ① Form I-407 を提出した日Aさんは2024年11月1日にForm I-407 を郵送した。この場合、2024年11月1日が国外退去日になる。 ② 永住権放棄の最終的な行政命令の日付Bさんの永住権が2024年12月15日に行政命令で取り消された。控訴は行わなかったため、この日付が国外退去日になる。 ③ 米国からの退去命令の日付Cさんは裁判所の命令により、2025年1月20日に米国からの退去を命じられた。この場合、2025年1月20日が国外退去日になる。 ④ 米国との租税条約に基づく扱いを通知した日Dさんは2025年2月10日に IRS に通知を行い、租税条約に基づいて日本の居住者として扱われることを選択した。この場合、2025年2月10日が国外退去日になる。 仮に次のケースで具体的に考える。 2024年11月1日に Form I-407 を提出し、その後、2024年12月15日に行政命令が下る。2025年1月20日に退去命令があり、2025年2月10日に租税条約に基づく通知を送った場合、最も早い日付である 2024年11月1日が国外退去日となる。 永住権を自発的に放棄するために Form I-407 を提出した場合、米国移民局 は受領通知として Form I-797C を発行する。この場合、重要なのは I-407 を提出した日付であり、Form I-797C(Notice of Action)は、米国移民局から申請者に送付される受領通知だ。Form I-797C は永住権の終了や国外退去日そのものを直接決定するものではない。 Form I-797C は、永住権の終了に関連する手続きの途中で受け取る通知書にすぎない。国外退去日を決定する4つの基準(I-407 の提出日、行政命令の日、退去命令の日、租税条約に基づく通知の日)には該当しない。 例えば、2024年中にForm I-407を提出し、2025年になってからForm I-797Cを受け取った場合でも、国外退去日はForm I-407を提出した2024年内の日付となり、2024年分の出国税申告(2025年提出)が必要となる。これを誤って2025年分の申告(2026年提出)としてしまうと、予期せぬ遅延ペナルティが発生する可能性があるため注意が必要だ。
(申告開始と申告期限) 2025年1月27日(月)が申告開始日 2025年4月15日(火)が申告期限 (海外からの申告) 2か月の自動延長可能 2025年6月16日(月)が申告期限・ただし納付は4月15日期限 (延長申請した場合) 2025年10月15日(水)が申告期限・ただし納付は4月15日期限 (州税) 州税の申告期限は連邦と一致している。下記の州は一致していない。 (連邦と異なる申告期限) ハワイ州:2025年4月20日 デラウエア州:2025年4月30日 アイオワ州:2025年4月30日 バージニア州:2025年5月1日 ルイジアナ州:2025年5月15日
今年のアメリカの申告シーズンは1月27日(月曜日)に始まり、IRSへの申告書の提出と納付の期限は例年通り4月15日だ。日本からは2か月の申告書提出の自動延長がある。6月15日が日曜日なので、6月16日が申告期限となる。 初めてアメリカの申告をされる方もいるだろうし、アメリカの申告をしなければいけないという事を初めて知ったという人もいるはずだ。 アメリカ市民またはグリーンカード保持者であれば、世界中のどこに住んでいても、毎年アメリカの連邦所得税の申告義務がある。その理由は、アメリカが「全世界所得課税」を採用している事による。これは、アメリカ市民またはグリーンカード保持者は、世界中の所得に対してアメリカの税金を支払う義務があることを意味する。世界中の所得と驚くかもしれないが、日本も同じで、日本に住んでいる人は世界中の所得が申告対象になり得る。 アメリカに住んでいれば、社会生活でアメリカの税金と接点があるため、申告・納税について社会生活の中で身につく側面がある。しかし、海外在住者は、アメリカの社会や文化、税制から離れた生活を送っているため、アメリカの税務申告の必要性を実感しにくい。特に、アメリカで生まれたが、生まれてこの方ほとんど日本に住んでいる人には、アメリカの税金は意識されていないこともあろう。 アメリカの税金に関しては膨大な情報があるものの、日本語のものは少なく、内容も複雑で理解しにくい。アメリカの社会や文化、税制から離れた海外で生活しているため、アメリカの税務申告の必要性を実感しにくい状況にある。 それでも申告・納税をしていなければ、ペナルティの対象になってしまう。ペナルティがあるから申告をすると言うのも一面的過ぎるが、交通ルールと同じで信号を守らないと交通事故にあってしまう。 アメリカ市民やグリーンカード所持者でない、ごく普通に日本に暮らしている人でも、アメリカに不動産を持ち、賃貸をしたり、不動産を譲渡すれば、アメリカの申告をしなくてはならなくなる。 あと、2週間もすればアメリカの個人所得税の申告が始まる。交通事故にぶつかって初めてアメリカの申告義務を知るという事がないように、微力ながら今年もサポートしたいと思いを新たにしている。
アメリカのトランプ次期大統領の就任式が、今月20日に行われる。大統領選挙期間中、彼は2017年の減税の継続、法人税の減税、特に社会保障給付の非課税化、残業代の非課税化、チップを課税対象から外すこと、そして国際的な二重課税の解消などをアピールしていた。 しかし、トランプ次期大統領就任後に早期着手が予想される政策は、不法移民対策やエネルギー生産の規制緩和、ウクライナの停戦などであり、減税や税制改革は最優先課題ではないと思われる。 2017年に成立した税制改革(減税・雇用法)の多くの条項が2025年末に期限を迎えるため、2025年中にトランプ減税の延長などの税制改革法と予算の成立を目指すと考えられる。個人所得税の改革に関しては、財源確保が大きな課題となり、進展は遅れる可能性が高い。 日本に住んでいる人に対するアメリカへの申告への影響については、国際的な二重課税の解消や社会保障給付の非課税化は注目されるが、現状ではあまり影響がないと考えられる。 海外在住の米国人に対する二重課税の解消は、アメリカの市民権に基づく課税制度に触れることになる。アメリカは歴史的に、市民ならばアメリカに申告・納税しなければならないという市民権課税を採用している。 領土的課税は、個人が居住する国で課税される制度であり、アメリカではこの制度に移行したことは歴史的にない。アメリカ市民や永住権保持者は、どこに住んでいても米国の税法に従う必要があるという原則が維持されている。 個人の申告の観点では、現状でもForm 2555や外国税額控除があるため、アメリカに納税する必要はほとんどないのが実情である。Form 2555の効果では、2024年を基準にすれば、日本で働いていれば給与を約1900万円程度までは課税対象から控除される。 これが実現されれば、アメリカへの申告書の提出の手間が削減されるが、それ以上の効果は期待しにくい。同様に、日本への申告義務は変わらず続くことになる。 また、社会保障年金は日米租税条約で居住地課税となっているため、日本に住んでアメリカの年金を受給している人は、アメリカではなく日本で課税される。 ここで思い出されるのは2018年のForm 1040の変更である。当時、トランプ大統領は「葉書サイズの申告書」にすると約束した。これは期待を抱かせたが、実際には従来と大差ないものであった。申告の骨格のみを1ページにまとめたが、詳細を記入し税額を算出するためには従来通りの手続きが必要であり、結局複雑な作業が残った。また、計算が自然な流れに沿っていないため、ページ間を行き来する使いづらい形式となっており、案の定、2019年からは元のフォーマットに戻された。 野心的でチャレンジする所はさすがと思うも、実際は現状の変革は難しいと言わざるを得ない。選挙期間に公約しているだけに、何らかの結果を出そうとするだろう。 ともかくも1月末には従来通り2024年分の2025年申告が始まることになる。
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