2024.12.01
所得税
なぜ二つの仕組みがあるのか?
アメリカは市民権をベースにした課税を行う。アメリカ市民や永住権保持者は、世界中の所得に対してアメリカに税金を納める必要がある。海外で働いている場合、その国でも所得税を納めるため、同じ所得に対してアメリカとその国の両方で税金を支払うことになる。これが二重課税の問題だ。
この二重課税を避けるために、アメリカには外国所得控除(Foreign Earned Income Exclusion)という制度がある。一定の条件を満たせば、海外で得た所得の一部または全部をアメリカの課税所得から除外することができる。2024年の場合、除外できる最大額は$126,500となっている。
一方で外国税額控除(Foreign Tax Credit)という制度もある。これもアメリカ市民や永住権保持者が海外で得た所得に対する二重課税を緩和する。
外国税額控除は1962年の歳入法で導入され、外国所得控除は1978年の税制改革法(Revenue Act of 1978)で設立されている。歴史的には最初に外国税額控除があるのに、なぜ外国所得控除という制度が追加されたのだろう。
この理由をアメリカ市民が日本で働いて所得を得ている例を考えてみる。日本での所得が50,000ドルであり、日本の所得税率が20%、アメリカの税率が25%という仮定だ。
外国税額控除:日本で支払う税金は50,000ドル x 20% = 10,000ドルだ。アメリカでの税金は50,000ドル x 25% = 12,500ドルだ。アメリカの税は、外国税額控除後に 2,500ドル(12,500ドル - 10,000ドル)となる。
外国所得控除:2024年の外国所得控除の上限は126,500ドルなので、50,000ドルの外国所得はこの限度内で全額除外され、アメリカでの税金は発生しない。
この例からわかるように、外国税額控除は外国で支払った税金を控除するが、すべてを控除できるわけではなく、追加でアメリカの税金を支払う可能性がある。
一方、外国所得控除は海外で稼いだ所得そのものを除外するため、二重課税を回避する効果が高い場合がある。ただし外国所得控除を使った部分は外国税額控除と二重使用はできない。外国所得控除を超える部分について超える部分については外国税額控除を使うことができる。
外国所得控除があることで、海外で働くアメリカ市民や永住権保持者は、より効果的に二重課税を回避し、税負担を軽減することができる。