この時期にはクリスマスプレゼントやお年玉をもらったり贈ったりする機会が増える。アメリカの税金の観点ではこれに対しては税金がかかるのであろうか。 結論から言うと、多くの場合、クリスマスプレゼントやお年玉のような少額の贈与であれば、税金の心配をする必要はない。 アメリカの贈与税は、贈与者が負担する税であり、年間控除額や生涯免税額を超える場合にのみ課税される。贈与を受ける側は税金を払う人ではない。 アメリカには「年間贈与税控除額」(Annual Gift Tax Exclusion)という制度がある。この制度では、毎年一定額までの贈与は税金の対象外となる。2024年では、年間非課税額は1人当たり$18,000だ。この金額までは贈与税を支払う必要はない。この金額は贈与者一人当たりの金額で、例えば贈与をする子供が3人だとすると、$54,000までが非課税で贈与できる。 多くの場合、クリスマスプレゼントやお年玉の金額は非課税贈与の枠内だろうから、税金の心配をすることはまずない。 さらにこれからの時期、祖父母が孫の小中高や大学の入学祝をあげたり授業料を払ってくれることがある。入学祝いや教育費として受け取った贈与は、直接教育に使用される場合や社会通念上妥当と認められる場合には、贈与税の対象とならない可能性が高い。 しかし、高額な贈与の場合には注意が必要だ。高額な入学祝いをしたり、多額の教育資金を一度に贈与する場合、年間非課税枠を超えてしまい、贈与税の対象となる可能性がある。 贈与税の対象となるかどうかは、贈与の金額、贈与者と受贈者の関係、贈与の目的など、いくつかの要素によって総合的に判断される。 特に、贈与者と受贈者の関係は、税法上、親族間での財産の移転を優遇する傾向があるため、重要な要素となる。これは、親族間の助け合いを促進し、家族の経済的な安定を図るという政策的な意図があるとされている。 年間非課税枠を超える贈与を行ったとしても、すぐに贈与税が発生するわけではない。贈与者には生涯の贈与と遺産に対する総非課税枠(2024年時点で1,361万ドル)があり、この枠内であれば、実際に税金を支払う必要はほとんどの場合ない。 しかし、注意が必要なのは、贈与者がアメリカの非居住外国人である場合だ。生涯非課税枠を利用できない事を知っておく必要がある。 さらに、アメリカ市民やグリーンカードホルダーが、非居住外国人から年間$100,000を超える贈与をもらった場合には、Form 3520を提出する必要がある。これを怠るとペナルティの対象となる可能性がある。 多くの場合、贈与税の心配は必要はないが、年間非課税控除額を超える贈与の場合は注意が必要となる。
アメリカの税務では、アメリカ市民または居住者が外国から贈与や相続を受けた場合、必ずしもその財産に対して税金を支払う必要はない。日本とは異なり、課税を受けるのは財産をあげる人で、財産を受け取る人は基本的には課税されない。しかし、財産を受け取る人には報告義務があり、基準となる年間受領額が10万ドルを超える場合には、Form 3520を提出しなければならない。これを怠るとペナルティを受ける可能性がある。 従来は、Form 3520を適切に提出しなかったり遅れて提出した場合、その理由に関係なく、機械的にペナルティが課されることがあった。 2024年でこの度、IRSは納税者のForm 3520遅延に対して事前に理由を審査する手続きに変更したようだ。問答無用ではなく、理由を聞く姿勢に改善されたのはありがたいことだ。 しかし、その理由を認めてくれるかどうかは別問題となる。 遅れて提出するForm 3520に対するペナルティを回避するためには、納税者は「正当な理由」を立証する必要がある。これは、その不履行がわざとやったのではないと示さなければいけない。 Form 3520の提出をしていないことの合理的な理由を挙げるのは必ずしも容易ではない。あえて考えられる合理的な理由としては、死亡や重篤な病気によるものだ。本人や家族の死亡により手続きをすることができなかった場合や、肉体的、精神的に動く事がままならず、助けてくれる人がいなかった場合などだろう。また、天変地異により書類や記録が失われ、その回復に時間がかかった、あるいは戦争や内乱に巻き込まれたといった理由も考えられるだろう。 こうした理由は、どうしようもなかったと思えるものの、ほとんどの場合はForm 3520の提出義務があることを知らず、何もしていなかったと言うのではないだろうか。 「知りませんでした。ごめんなさい。」と言うしかない事は合理的な理由となるのだろうか。子供の場合はそうかも知れないが、大人の場合にはそうも簡単にはいくまい。一生懸命に調べたがわからなかった、普段から適正に申告を行っており、未払いの税金もなく、いつもすみやかに対応していると言えれば、IRSの印象も多少は良くなるかも知れない。 ケースごとに事情が異なり、IRSの担当者ごとに判断が異なる現状では、明確な一線を引くのは難しいだろう。同じようなケースである人がOKで、別の人はダメということでは公平性が失われる。IRSの立場としては「法を守らないことに対する言い訳はない」となってしまうかも知れない。 確かに、フォーム3520の提出遅延にIRSは機械的なペナルティ処理をしないと明言しものの、合理的かつ正当な理由を主張することが残っている。雲間から太陽が差し込んでも、雲一つない青空ではない。確実にForm 3520を提出することが肝心だ。
アメリカの出国税は、個人が保有する資産が高額の含み益を累積し、資産を売却する前に利益を税金なしで国外に持ち出すことを防ぐことを目的としている。一見すると合理的な制度だが、その仕組みは、納税者を不公平に扱う可能性を秘めている。 出国税の対象となる資産は世界中の試算を対象とする。例えば日本で20年前に3,000万円で購入した不動産が、現時点で1億円に値上がりしていたとする。出国税では、この未実現の利益7,000万円に対して課税される。一定の控除額があるのだが、この控除額を越えてしまうと、実際に売却していなくても多額の納税義務が発生する。 この出国税が、日米間の税務上のズレを生み出す要因となりえる。例えば、アメリカの出国税を支払った後、日本で実際に不動産を10年後に売却する場合を考えてみる。日本では譲渡益に対して課税が発生するが、これはアメリカの出国税を支払ってから10年後の出来事となる。 アメリカ側から見ると、既に出国税で課税は完了しており、納税者は既にアメリカ市民・グリーンカード保持者ではなくなっている。そのため、日本の譲渡益をアメリカに申告する必要はなく、日米間の税務上の接点はないと見なされる。 一方、日本側から見ると、10年前にアメリカで発生した出国税を、日本の確定申告で控除することには無理がある。なぜなら、日本の税法上、外国税額控除は「所得に対して課された外国の税金」に対して認められる。出国税は、あくまでアメリカの税制上の「見なし譲渡」に対する課税であり、日本の税法上は「所得に対して課された税金」とは認められない。 仮に、アメリカで発生した出国税を、日本の譲渡益計算時に経費として入れることができれば、個人としては10年してから日米間の精算が行われることになる。しかしながら、これは本来日本で発生して日本に納めるべき税金を、アメリカにすでに税金を払っているから日本の税金は無くなりましたと言う形になる恐れがある。日本の所得に日本の税金はなく、アメリカだけの税金となるなら、どう考えてもあり得る話ではない。 アメリカの不動産でアメリカの出国税が発生した場合、アメリカの非居住者となっても、アメリカ源泉の不動産所得があるわけだから、アメリカに申告をしなくてはならない。その税金は出国税で10年前に納付している。税額が全く不変ならば追加の税額は発生しない。しかし、日本の確定申告ではアメリカの不動産の譲渡益に対する課税は発生する。譲渡した年には外国で支払った税額がない。外国税額控除を使うべき外国の税がない。 もしもこの不合理を避けようとするならば、実際に不動産を譲渡すれば、単純な日米間の税額控除となる。あるいは対象の不動産を贈与して、事前に自分の財産から外すことができれば可能だろう。しかし、こうした場合は不動産譲渡に時間がかかったり、贈与税の話になるので慎重な検討が不可欠となる。
アメリカの税金を日本から納付する場合、クレジットカード払いが一番手軽だ。下記から入って、ネットショッピングの支払いをするように支払いができる。https://www.irs.gov/payments/pay-your-taxes-by-debit-or-credit-card さてこのクレジットカード払いを行う時に、あれ?と思うかも知れない。オンラインショッピングの場合、クレジット会社からショッピング会社に直接お金が支払われる。IRSの税金を払う場合は、クレジット会社とIRSの間に中間会社(Pay1040、PayUSATaxなど)が入る。そして2%程度の手数料がかかる。大きな金額ではないので気にはならないかも知れないが、普通のオンラインショッピングとは異なる。 クレジットカード会社は加盟店に対して、取引ごとに一定の割合の手数料を請求する。これでクレジットカード処理サービス、不正利用防止、顧客へのポイント還元などのコストを賄う。 クレジットカード会社は同じようにIRSに手数料を求めると、IRSは税額が$100ならば手数料を引いた金額しか収受できない。しかし、IRSは政府機関であるため、税金納付における決済手数料を直接負担することができない。IRSは税額の$100(それ以上でもそれ以下でもなく)収受する必要がある。 そこで登場するのが中間会社となる。(例えば、Pay1040、PayUSATaxなど)こうした会社はIRSと納税者の間に立ち、クレジットカード決済を行う。中間会社自体にも自社の技術的なインフラ、リスク管理、運営費用などの費用が発生する。 納税者がこれらの費用をバラバラに払うのは面倒だ。仮に中間会社が納税者から2%の手数料を徴収する場合、その中には自社のサービス費用とクレジットカード会社への手数料が含まれる。中間会社は、この2%の手数料から必要な分をクレジットカード会社に支払い、残りの分を自社の収入とする。 したがって、IRSは決済手数料を直接負担することはなく、中間会社がこれを管理し、納税者に転嫁する形で運用されている。 こうして考えてみるとまあ仕方がないかと思う。
アメリカは市民権をベースにした課税を行う。アメリカ市民や永住権保持者は、世界中の所得に対してアメリカに税金を納める必要がある。海外で働いている場合、その国でも所得税を納めるため、同じ所得に対してアメリカとその国の両方で税金を支払うことになる。これが二重課税の問題だ。 この二重課税を避けるために、アメリカには外国所得控除(Foreign Earned Income Exclusion)という制度がある。一定の条件を満たせば、海外で得た所得の一部または全部をアメリカの課税所得から除外することができる。2024年の場合、除外できる最大額は$126,500となっている。 一方で外国税額控除(Foreign Tax Credit)という制度もある。これもアメリカ市民や永住権保持者が海外で得た所得に対する二重課税を緩和する。 外国税額控除は1962年の歳入法で導入され、外国所得控除は1978年の税制改革法(Revenue Act of 1978)で設立されている。歴史的には最初に外国税額控除があるのに、なぜ外国所得控除という制度が追加されたのだろう。 この理由をアメリカ市民が日本で働いて所得を得ている例を考えてみる。日本での所得が50,000ドルであり、日本の所得税率が20%、アメリカの税率が25%という仮定だ。 外国税額控除:日本で支払う税金は50,000ドル x 20% = 10,000ドルだ。アメリカでの税金は50,000ドル x 25% = 12,500ドルだ。アメリカの税は、外国税額控除後に 2,500ドル(12,500ドル - 10,000ドル)となる。 外国所得控除:2024年の外国所得控除の上限は126,500ドルなので、50,000ドルの外国所得はこの限度内で全額除外され、アメリカでの税金は発生しない。 この例からわかるように、外国税額控除は外国で支払った税金を控除するが、すべてを控除できるわけではなく、追加でアメリカの税金を支払う可能性がある。 一方、外国所得控除は海外で稼いだ所得そのものを除外するため、二重課税を回避する効果が高い場合がある。ただし外国所得控除を使った部分は外国税額控除と二重使用はできない。外国所得控除を超える部分について超える部分については外国税額控除を使うことができる。 外国所得控除があることで、海外で働くアメリカ市民や永住権保持者は、より効果的に二重課税を回避し、税負担を軽減することができる。
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