アメリカの所得税においては、個人がアメリカの居住者か非居住者であるかが税務における重要な分岐点となります。アメリカの居住者である場合、全世界の所得がアメリカの申告対象となります。一方、非居住者の場合は、アメリカを源泉とする所得のみが課税対象となり、範囲が限定されます。 日本人の感覚では、アメリカに住所を有し住んでいる人がアメリカの居住者でしょう。もちろんそれも正しいのですが、ベースは市民権課税でアメリカ市民権を持つ人(グリーンカード保有者を含む)がアメリカの居住者とされます。さらに「実質滞在テスト」において一定期間以上アメリカに滞在している場合も、税務上の居住者となります。 この場合、日本に住んでいるアメリカ市民権を持つ人(グリーンカード保有者を含む)も、アメリカ税務上は居住者とみなされ、日本で得た所得もアメリカに申告する必要があります。 次に、相続税(アメリカでは遺産税)と贈与税についてですが、これらにおいては所得税とは異なる要素があります。居住者の定義は「Domicile」に基づきます。アメリカにおいて、Domicileとは「その地に居住し、かつその地を恒久的居所とする意志を有すること」と定義されます。 この定義の違いにより、所得税上の居住者でも、贈与税や相続税では非居住者とみなされる可能性があります。アメリカに居住して恒久的な居所とする意志があるのかです。 この「意志」は、判断が難しいことがあります。例えば、日本人がアメリカ人と結婚して40年ないし50年もアメリカに住んでいる場合を考えてみましょう。配偶者が亡くなり、一人残されたとき、子や孫がアメリカに住んでいればアメリカで暮らし続けるかもしれません。しかし、子供がいない場合、日本に戻って兄弟姉妹の近くに住みたいと思うかもしれません。親から相続した不動産やお墓が日本にあるとか、日本の方が暮らしやすいなどの事情も影響します。 そうなると、たとえアメリカに長期間住んでいても、恒久的にアメリカに住む気持ちがないならば、贈与税や相続税についてはアメリカの居住者ではないとみなされる可能性もあるでしょう。 逆に、難民としてアメリカに到着し、ごく短期間で亡くなる場合も存在し得ます。その場合、国を捨て、全てを振り切ってアメリカに住むことを決めたのであれば、アメリカの居住者として贈与税や相続税が課されることになります。 こうしてみれば、アメリカに居住している期間が長くても、贈与税や相続税では必ずしも居住者ではないことになります。贈与税、相続税の世界では所得税の居住者とは一致せず、結果として相続での課税対象財産の範囲が限定的になることもあり得ます。
所得を得た時に税金を払うやりかたを言う。会社に雇用されている場合、毎月の給料から税金が引かれている形が一例だ。会社が税金を源泉徴収してIRSに支払っている。 給料の他に自営業の所得、投資、賃貸事業、退職口座からの分配などがあれば、予定納税を行う潜在的な対象となる。給料をもらっていない自営業の人は、会社にかわって自分が予定納税を行うことになる。 Form 1040を提出する際に、少なくとも$1,000の税金を支払う必要があると予想される場合、IRSは通常、年間を通じて予定納税を行うことを求める。 IRSは、前年の納税額の100%または今年の納税額の90%のいずれか少ない方を支払うことを求めている。ただし夫婦合算申告で調整後総所得が$150,000(夫婦個別の申告では$75,000)を超える場合、前年の納税額の110%を支払う必要がありある。これが満たされていれば、予定納税のペナルティは生じない。 前年度が12か月の課税年度でなかった場合、または個人が前課税年度に申告書を提出していなかった場合には、前年の納税額の100%は適用されない。 予定納税の支払いスケジュール4月15日:1月1日から3月31日までの収入に対して6月15日:4月1日から5月31日までの収入に対して9月15日:6月1日から8月31日までの収入に対して翌年の1月15日:9月1日から12月31日までの収入に対して さて、例えば年末に大きく所得が増加するかも知れない。今日現在は11月半ばなので2025年1月15日まで待たないといけないのか? 冒頭のように、もともと所得を得た時に税金を払う形がベースだとすると、年に4回は少ないと思うかも知れない。所得があったら支払うとなれば4回ではなく、5回でも6回でも良さそうなものだ。 年間の予定納税額が過少と判断されたら、いつでも追加の支払いを行うことができる。標準の4回の支払いよりも多くの支払いを行うことは問題ない。仮に月1回支払いをすれば、給与所得者の毎月の給与での源泉徴収と回数では同じとなる。 余裕をもって納付しておきたい。
2024年大統領選でトランプ次期大統領は税金の政策で、2017年減税の継続、法人税減税と特に社会保障給付の非課税化、残業代の非課税化、国際的二重課税の解消等を打ち出した。しかし政策をどうやって実現するのかには踏み込んでおらず、果たしてどこまで実現できるのだろうか。 中間層向けの減税は幅広い支持を得やすく、共和党の伝統的な政策にも合致するため実現可能性は高いだろう。さらに法人税減税を継続し、企業活動を活性化させる政策は、共和党の支持基盤であるビジネス界からも歓迎され、これも実現の可能性は高いと言える。 一方で、社会保障給付の非課税化や残業代の非課税化は、有権者へのアピールとしては効果的でも、財政負担や企業への影響などを考慮すると、実現可能性は低いのではないか。 さて、その施策の中で海外在住の米国人に対する二重課税の解消をあげられている。これはアメリカの市民権をベースとする課税に踏み込む。基本的にはアメリカ市民であるならばアメリカに申告、納税しなければならないと言う建国以来の基本の考え方を、根底から覆そうというのだろうか。 日本に住んでいるアメリカ市民は日本の申告を行い、同時にアメリカの申告も行う。税金を二カ国に支払えば二重課税になる。これを日本の税金だけ払い、アメリカの税金を払わなくても良いとする狙いだとする。 現実的に言えば、現状でもForm 2555や外国税額控除があるので、ほとんどアメリカには納税することがないのが実態だ。Form 2555の効果は日本で働いていれば、2024年ベースでは給与を1900万円程度は課税対象から差し引いてくれる。 アメリカに住む人には給与から1900万円程度、課税対象から差し引く優遇はない。それならば自分たちも同じように扱ってほしいという声が起きるかもしれない。それができないならば、海外に住んでいる人の優遇をなくして平等にしてほしいと言うかも知れない。扱いを間違えると両刃の剣になりかねない。 アメリカは日米租税条約や多くの国際条約を結んでいる。租税条約にも波及すると両国政府が合意し国内的な手続きも必要になる。日本だけではなく世界に与える影響は極めて大きい。膨大な作業が必要になるだろう。 個人の税金に関する項目では社会保障給付の非課税・残業代の非課税・チップの非課税とかアメリカ市民の生活に直結する。約6,700万人が高齢者・障害者向けの退職年金や医療保険(メディケア)を受給しており、そのうち約4割が給付に対する所得税を支払っている(約2,680万人) 海外に住んでいるアメリカ市民は約300万人だ。影響する範囲は限られる。国際的二重課税の解消は、ごく限定的な結果で終わるかも知れない。
親が子供のアメリカの税金を支払うことができる。小切手・クレジットカード・銀行振り込みで支払う時には子供の名前と社会保障番号(SSN)を明記する。これにより、子供が税金を納付したことになる。 ただし、親が子供のために税金を支払う場合、それは贈与と見なされる可能性がある。IRSは、等価の見返りなしに他人に財産やお金を譲渡する行為を贈与としている。これには他人の税金を支払うことも含まれる。 さて、アメリカの場合贈与税は贈与者が支払う。日本は受贈者が贈与税を払うので、全く正反対だ。親がアメリカの贈与税を負担することになる。 しかし、年間および生涯の遺産税・贈与税の控除が適用されるため、支払った金額が必ずしも贈与税の対象になるとは限らない。2024年の年間控除額は受贈者1人あたり18,000ドルある。この金額以内だった場合は、親はアメリカの贈与税を支払うことはないのでアメリカの贈与税の申告書を提出する事はない。 支払った金額がこの控除額を超える場合、贈与税の申告が必要になる。生涯控除が1人当たり$13,610,000($1=150円で約20億円強)あるために必ずしも贈与税を支払う必要はない。 これはどういうことかと言えば、この生涯控除額を先食いするからだ。財産が20億円以上で相続の時に生涯控除を満額使いたい場合は、18,000ドルを超える部分の贈与税を支払えばよい。 さて、これはアメリカ市民の親子間での話となる。日本に住んでいる日本人の親がアメリカに住んでいる子供というケースではどうなるか。 非居住外国人たる日本の親にはアメリカの生涯控除はない。そのため、$18,000の非課税枠を超えてしまうと、課税対象となってしまう。 さらに日本の贈与税が出てくる。2024年の日本の非課税贈与枠は110万円だ。アメリカの非課税贈与枠だけ見て贈与を行うと、日本の非課税贈与枠を超えることがある。この場合、日本の贈与税を払うのはアメリカに住んでいる子供となる。日本の税金を支払うためには、日本に納税管理人が必要となる。 日本人の親が子供にかわってアメリカの税金を支払う事はできるけど、贈与の話を頭に置いておきたい。
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