アメリカから日本に帰国する場合、アメリカの不動産をどうするかと言う選択に迫られることがある。 日本に帰国して新たに日本で家を購入する資金が必要で、帰国前にアメリカの家を譲渡するならはっきりしている。しかし様々な理由で日本に帰国して、それからアメリカの家を譲渡せざるを得ないということもあるだろう。 帰国前に家を譲渡して良かったということもあれば、帰国後の譲渡で価格や為替変動で良かったということもあるだろう。税務は判断する軸の一つだが、実態に合わせて処理をすることになる。 仮に日本に帰国してからの譲渡だと、アメリカの申告だけではなく日本の申告も発生する。これがとても大きい。二カ国の課税となり税額が発生すると、外国税額控除を使って二重課税を受けないようにしなくてはならない。 2024年の不動産譲渡では、アメリカの申告・納税は2024年分(2025年申告)で発生する。日本も同じなのだが、申告期限が異なる。日本の確定申告の期限が日本は3月15日で、アメリカの申告期限は4月15日とアメリカの申告期限が遅い。さらに日本からの申告は2か月の延長があり、6月15日期限となる。 日本の確定申告書では、アメリカの納税の証拠書類として申告書を添付する。この場合、アメリカの申告が日本よりも遅くなると、日本の2024年分税額がアメリカに先行して発生してしまう。すると2024年分の申告では二重課税が起きてしまう。 もちろん、アメリカで納付した税金により日本で外国税額控除を取ることができる。これが2024年の申告ではなく、2025年分(2026年申告)の申告となると、1年の期ずれで2026年にアメリカの税額を還付してもらうことになる。還付まで2年間かかると、資金計画上予期しない負担が発生することになりかねない。 この点からは日本に帰国する前の不動産譲渡だと、アメリカだけの申告で日本の税務が入らずにシンプルだ。
アメリカの個人所得税の大原則は市民権課税だ。アメリカ市民、グリーンカードを持っている人ならアメリカの申告を行い納税してくださいとなる。 アメリカ市民(含むグリーンカードを持つ人)で、日本に住んでいる人は日本への申告が必要になるし、アメリカにも申告をしなくてはならない。多くの人はこの仕組みを変えてもらいたいと望んでいるのは確かだろう。 10月に入り、ドナルド・トランプ前大統領はこの問題を認め「海外アメリカ市民の二重課税を終わらせる」と述べている。しかしながら、新しい政策がどのようなものになるのか詳細は一切、明らかにしていない。 アメリカ市民はどこに住んでいて、どこでお金を稼いだかに関係なく、全世界の所得に課税される。課税はされるが、現実に二重課税が起きているのかと言えばそうではない。外国所得控除(Form 2555)や外国税額控除(Form 1116)があるためだ。 海外に住むアメリカ市民は、2024年に1人あたり最大126,500ドルの外国所得を除外することができる。一年以上日本で働いている人で言えば、$1=150円として約1,900万円程度までの働いて得た所得を、申告を行うことにより控除してもらえる。 この金額を越えても、さらに外国税額控除も一定部分は利用できる。結果として多くの人には、その所得に対して二重課税とならない。それゆえに税金の負担と言う点ではあまり変わり映えしないだろう。 申告と言う点では、さらにFBARやFATCAの情報申告がある。これは海外の金融口座を報告させるもので、海外に住んでいる人は、アメリカ国内に住んでいる人に比べて圧倒的に申告をしなくてはならない。 税金の二重課税と言う点では、現状でもほとんど手が尽くされている。申告書の作成や提出の負担を軽減すると言っても、情報申告が残っている限り効果は限定的だろう。 看板は良いかも知れないが、実際はなかなか容易ではないだろう。
日本にはない夫婦が一つのユニットとして申告を行うことができる夫婦の合算申告がある。夫婦が二人ともアメリカ市民とかグリーンカード等の場合、一緒に1通の申告書で申告できる。 配偶者がアメリカ市民で、片方の配偶者が日本に住んでいるアメリカ市民ではない日本人の夫婦の場合がある。この場合でも日本人の配偶者をあたかもアメリカ市民のように税務上扱い、夫婦合算で申告することは認められている。日本人の配偶者に所得がほとんどなければ、控除だけ使って納税額を引き下げる効果はある。 アメリカ市民と結婚している普通の日本人が、夫婦合算申告を行うには特別に手続きが必要だ。税務申告の上では自分をみなしアメリカ市民とする申請をして受理されなければならない。勝手にはできず手続きがある。 さて、この場合の情報申告(FBAR/FATCA)はどうなるのか。日本人の配偶者はあくまでも情報申告の義務を負うのだろうか。 FBAR:申告を行う人はUS personだ。上述の特例を使っても、その人がアメリカの市民権を有している事にはならない。非居住配偶者が米国の税務申告で共同申告を選択しても、そのこと自体ではFBARの提出義務が生じない。 FATCA(Form 8938):非居住配偶者が米国の税務申告で共同申告を選択した場合は、FATCAの報告条件に合致する限り非居住者であっても申告をしなくてはならない。Form 8938はForm 1040の付表であり、そもそもForm 1040を夫婦合算で申告することを宣言している。 情報申告では泣き別れてしまう事になる。FATCAで申告を怠れば非居住配偶者はペナルティの対象になってしまう。 みなしアメリカ市民となれば、やめるためにはアメリカ市民と見なさない逆の手続きが必要だ。その手続きを怠れば、極端に言えば死ぬまでその申告義務は継続する。何十年もアメリカに申告をし続ける。 夫婦合算で申告を行うことは、納付する税金に責任を取ることを意味する。相手に負担する能力が失われたら、自分が納付しなくてはならない。 アメリカに申告をする必要がない日本人が、アメリカに申告を行い納税する事は慎重に判断するべきだろう。
子供税額控除を取るのは当たり前だと思うのだが、日本からアメリカに子供を連れて赴任する場合などはハードルが高い。 何が問題かと言えば社会保障番号だ。 子供の税額控除や追加子供税額控除を申請するには、子供が社会保障番号を持っていることが前提になっている。しかし、EビザやLビザ等でアメリカに滞在する人の子供は、アメリカで働くわけではなく社会保障番号は難しい。 子供が社会保障番号を取得できない場合、唯一の代替手段は、個人納税者番号(ITIN)になる。これはもともと社会保障番号を持たない人が、所得を申告する場合にITINを用いることになっている。しかし、学校に通っている子供に申告をすべき所得はない。控除を取るためにだけITINを申請するのはハードルが高い。 仮に子供がITINを取れたとしてどうなるか。 IRSのQ&A社会保障番号 (SSN) ではなく個人納税者番号 (ITIN) を持つ子供に、子供税額控除を取ることができますか?IRSの答えいいえ、ITIN を持つ子供に子供税額控除を取ることはできません。その子供が社会保障番号 を持っている必要があります。 ITINでもダメだと言う。 ITINを持っている場合、その他扶養家族税額控除を取る道は残っているが、これは最大で1人あたり500ドルの控除に過ぎない。これは非還付型であるため、税額を超えた場合、超過分を還付として受け取ることはできない。 子供税額控除の1人あたり最大2,000ドルに比べてはるかに少ない額だし、こっちは還付金として受け取り可能だ。この制限があるのでその他扶養家族税額控除はあまりメリットがない。 それでも、ITINを取得しようとすると、申請のプロセス自体が複雑であり、書類の手間や処理の遅延が発生しやすく簡単ではない。投入する時間や労力、ストレスと得られるものが見合うのか容易ではない。
〒103-0016
東京都中央区日本橋小網町4-8-403
Phone:03-6231-0301
相続税:資産家のための相続税相談申告センター
日本の税務:星泰光・杉沢史郎税理士事務所
水天宮前駅 | ― |
東京メトロ半蔵門線 6番口 4分 |
---|---|---|
茅場町駅 | ― |
東京メトロ 東西線 A4出口 徒歩5分 |
人形町駅 | ― |
東京メトロ 日比谷線 / 都営浅草線 A2出口 7分 |