2024年9月

2024.09.15
その他

住所の記入

日本に帰国して日本の居住者となっている方が、アメリカの申告書を提出する時に、アメリカの知り合いの住所を使って申告をして良いだろうかと質問さる。アメリカでのことで、なんとなく縁遠いと言うか、判断がつかないのでそう思うのかも知れない。 日本に住んでいるのに、アメリカの住所を使用することは、不具合を引き起こす可能性がある。 困って相談されたケース: ① 州税の申告と支払いを求められた。日本に住んでいる人は、実はその州に足を踏み入れたことがない。その州での所得もない。普通ならば、その州の申告とは無縁だ。しかし、その州の住民として住所を記入しているので、全世界所得を申告しなさいと言われた。 ② Form 2555において、外国(日本)で働いて得た所得は2023年ベースだと12万ドルの控除が取れる。条件としては330日以上、外国に居住していなければならない。実際にこの控除を取ることができるのにも関わらず、外国に居住している人が日本に330日以上居住しているのは説明がつかず、せっかくの控除を使えない。 ③ 申告後、IRSからの還付小切手や書類はアメリカの住所に送られる。税額の追加払いや書類の追加提出を求められることもある。30日以内に回答を求められても、書類が転送されないので本人は全く分からない。自分の手元に書類が届いた時には回答期限が過ぎてしまっている。書類をタイムリーに確実に受け取れるかどうか何とも言えない。結果的にペナルティが雪だるまということもあり得る。 実際に居住していない州で申告することは、税務上の虚偽申告と見なされる可能性があり、将来的な税務調査のリスクがある。 このケースを立ち位置を変えて考えてみたらどうだろう。仮に日本に住んで日本の確定申告書を提出する人がロサンゼルスやニューヨークの住所で日本の税務署に申告すると置き換えてみる。そもそも不自然で不可能と思うだろう。少なくとも頭の中では注意信号が灯り、赤信号がともってもおかしくはない。 アメリカの州の住所を使って申告をする場合、それなりの理由があってのことかも知れないが、慎重な判断が必要だ。

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2024.09.08
その他

亡くなったら申告しなくて良いのか

亡くなってしまったらすべてそれでお終い。何もしたくてもすることができない。行為能力がないのだから、はいさようならとなるのだろうか。そんなことはなく遺産管理人や相続人が、亡くなった人の代わりに申告義務を果たすので、そうはいかないだろうと考えるだろう。 Form 8854(出国税)は、米国市民や米国長期居住者が市民権や永住権を放棄した場合に、資産や税の情報をIRSに報告するためのフォームだ。このフォームは通常、自発的な市民権放棄を原因として提出される。 アメリカ市民が死亡した場合、死亡はアメリカ市民権の喪失の事由となる。市民権を喪失したのだから亡くなった方は、出国税の対象と言えるのだろうか。 死亡: 自然に市民権を失う。これは出国とは異なり、故人が意図的に行うものではない。市民権放棄: 本人が生前に意図的に市民権を放棄する。 死亡による市民権喪失は自然なプロセスだ。しかし市民権放棄は本人が生前に意図的に行うものであり、出国税の手続きが必要だ。 結果的に市民権の喪失は同じでも、生前に自発的な意図のもとに放棄を行う場合と、死後では話が違うということにならざるを得ない。 すると亡くなった場合はほとんどの場合、出国税の提出を要さないだろう。 しかし死亡の場合でも、死亡前に市民権放棄の手続きを完了して、死亡によって出国税が未完となった場合だ。IRSはForm I-407が提出され、その後の手続きがないために税務上の処理としてForm 8854の提出を求めて来るかもしれない。状況によっては遺言執行者がForm 8854を提出する義務が発生することもあり得ると言う事だろう。 出国税に関しては、亡くなってしまったら、珍しくはいさようならかも知れない。しかし、基本中の基本のForm 1040は亡くなったから、決して何もしなくても良いということにはならない。遺産管理人や相続人が、亡くなった人の代わりに申告義務を果たすことが鉄則だ。

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2024.09.01
その他

知りませんでした

米国で生まれた場合、自動的に米国市民となる。米国社会の一員として果たさなければならない義務が発生する。米国の憲法や法律を守るのは当然として、税金の申告納税を行わなければならない。 しかし、幼児期に日本に帰国し、それ以降米国に足を踏み入れたことがない人もいるだろう。米国への申告義務が全く頭になく知りませんでしたということもあり得る。 交通ルールで考えると、私たちは赤信号では交差点を渡ってはいけないとみんな知っている。どうして知っているのだろうか。 教育: 親から「赤信号では渡ってはいけない」と言われるし、幼稚園、小学校でも教わる。社会体験: 信号無視をして事故を起こしたり、警察官に注意されたりすることで、そのルールを守る重要性を身をもって体験する。法制度:自動車の免許を取れば、 道路交通法で、赤信号で進行が禁止されていることが常識的にわかる。 社会生活の中の様々な場面を通じて、交通信号のルールを学び、それを守る行動をとる。 米国に住んでいれば、同じように税金が認識される。 教育:税金は、民主主義社会を支える重要な要素の一つで、税金は、社会を支える基礎となる。社会科の授業で税金がどのように集められ、どのように使われているかについて学ぶ。社会体験:買い物をすれば売上税がかかる。アルバイトをすれば、給与から税金が差し引かれることを実感し、税金について否応なく理解を深める。 学校教育、社会体験等を通して多角的に認識する。 さて、米国では市民権をベースに申告納税制度ができている。たまたま米国で生まれただけの人でも、全く同じく普通の米国な市民だ。ただ、日本に住んでいて米国に足を踏み入れたことがほとんどなければ、米国の社会体験もなく、米国の納税義務は縁遠いだろう。 しかし、米国から見れば、米国の申告義務を知らなかったことを免罪符に、申告から除外することはできない。一般の米国市民が納税義務を知らないから、税務申告をしないと言うことに歯止めをかけられなくなる。これは足元から社会の基盤を崩壊させかねない。 いろいろ気の毒な事情があっても、米国市民であるならば、最後はきちんと米国の申告の義務を果たしてくださいとしか言いようがない。日本に住んでいる場合は、米国の申告を行ってもほとんど税金が発生しないことが多い。あまりその点は心配せずに、きちんと申告義務を果たしてくださいと申し上げたい。

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