2024.08.04
その他
オリンピックとForm 1040
毎日、とても暑いのだが、今年の夏はオリンピックの応援でTVを見ながら、一緒になって盛り上がり応援している。勝っても負けてもわが事のように喜んだり悲しんだり、興奮して一層暑苦しい夏だ。
さて、盛り上がっている時に税金の話も合ったものではないと思うが、アメリカの申告書Form 1040は、しっかりとオリンピックと結びつきがあることをご存じだろうか。
Form 1040を見るとSchedule 1- Part 1, line 8mにオリンピックとパラリンピックのメダルとアメリカオリンピック委員会の賞金をしっかり記入する欄がある。パリ・オリンピックでの金メダリストなら、現時点での評価額は約$1,027とか記入しなさいと言う。
書かなければいけないなら、書かざるを得ないのだろうが、メダルは、単なる金属ではなく、名誉や象徴の価値や、希少性、歴史的価値、経済的な価値を持つとみなされる。メダルを獲得した選手には金銭で表せない価値があるはずだ。
オリンピックに出て活躍した選手は、申告書に記入する所得を得るためにオリンピックに出場したはずではない。しかし、アメリカの税法はすべからく、メダルの価値や米国オリンピック委員会から支給される賞金をForm 1040に記入しないといけないという。
これは多くの方の感覚から見ればいかがなものかということになろう。そこで2016年以降、Adjusted Gross Incomeが100万ドルを超えない選手の場合、メダルや賞金に課税を免除するようになっている。現実にはほとんど課税をされないということだ。
日本においては、オリンピックメダルに対して、直接的な課税を行っていない。これは、メダル獲得が国民全体にとっての喜びであり、選手を励ますためという考え方だろう。日本人のメンテリティからすれば、アメリカのメダルをもらったら、申告書に記載して提出することには距離を感じてしまうのではないだろうか。
アメリカでは、メダル獲得が必ずしも非課税とは限らないという事実を知って、少し意外に思われたかもしれない。しかし、このことは、メダルというものが、単なる名誉や象徴ではなく、経済的な価値を持つ財産であるということを示唆している。
他の所得と同様に、メダルによって得られる経済的な利益に対しても税金を課すことは、税制の公平性という観点から妥当であるという考え方が根底にあるからだろう。