2024年8月

2024.08.25
遺産税・贈与税

例外もあります

アメリカでは財産をあげる人が課税される。日本は財産をもらう人が課税される。贈与(または相続/遺贈)を受ける多くの人が、アメリカも日本と同じで財産をもらった人が課税されると考えてしまう。これは正しくはないのだが、アメリカの税務であっても、日本の頭でいる方が安全な場合がある。 一つは財産から生ずる収入だ。 仮に叔母が家を贈与してくれたとする。一般的なルールでは、家そのものの価値は総所得に含まれない。つまり、家を贈与された時にその価値に対して税金を払う必要はない。 ところが、その家を賃貸して賃貸収入を得た場合、その賃貸収入は総所得に含まれ、賃貸収入に対して税金を払う事になる。 もし叔母が家そのものではなく、家からの賃貸収入を贈与してくれた場合、その賃貸収入は総所得に含まれる。賃貸収入に対して税金を払う必要がある。 さて、この叔母が元々アメリカ市民またはグリーンカードを持っていた場合だ。現在は市民権やグリーンカードを放棄してしまっている。この場合の贈与や遺贈には特別な税金が適用される場合がある。 特別譲渡税(Section 2801 Tax)があり、元アメリカ市民であった叔母から受け取った贈与や遺贈が、特別譲渡税の対象となることがある。この税金は、贈与や遺贈の価値の40%に相当する税金が課される。 贈与の価値が1,000,000ドルだと、贈与された財産の価値に対してざっと400,000ドルの特別譲渡税を支払う事になる。しかも税金を払う人は贈与を受けた人だ。 叔母が30年前、50年前にアメリカ市民権を放棄していたとしても、この規定の対象になるのだろうか。特別譲渡税の適用には時間的な制限がある。特別譲渡税は2008年6月17日以降にアメリカ市民権を放棄した人に適用される。したがって、30年前、50年前に市民権を放棄した人からの贈与や遺贈は、この特別譲渡税の対象にはらない。 こうした財産から生ずる所得や贈与そのものに対する課税は、アメリカ市民やグリーンカードを持っている人だけに発生するものではない。 全くアメリカに足を踏み入れたこともない、日本で暮らしている普通の日本人にもアメリカの税金が発生する。知らなかったので何もしていませんでしたではすまない。

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2024.08.18
その他

どこかもったいない

Form 1040のバリエーションにForm 1040-SRがある。このForm 1040-SR は、米国の申告を行う65歳以上の納税者が利用できる所得税申告書だ。始まってもう5年は経過している。 年齢を重ねるにつれて視力が低下することが多く、小さな文字を読むのが難しくなる。この申告書のフォントは大きく、ゆったり書いてあるので高齢者には間違いなく見やすい。 しかしながら、見た目と言っても、片手に電卓を持って紙の申告書を作成する人は、現在どれくらいいるのだろうか。多くの人はPC の画面でフォームを見る。フォントの大きさを任意に変えられる。画面で見ている人にはあまり関係ないだろう。 見た目以外に税務上、Form 1040-SRのメリットはあるのだろうか。 65歳以上になれば標準控除の金額が増額される。2023年の実績では次のとおりだ。65才以上の増額:独身 $13,850+増額$1,850結婚して夫婦別々 $13,850+増額$1,850所帯主 $20,800+増額 $1,850夫婦合算 $27,700+増額 $3,000 この増額は機械的に適用される。Form 1040-SRだからこの金額で、Form 1040なのでこの金額を使えないというものではない。 さらに65才以上の高齢者であれば、老齢のクレジットを取れる可能性はある。老齢のクレジットを使うために必ずしもForm 1040-SRを使わなければならないということはない。Form 1040を使うことに制限はない。 申告書のフォームをForm 1040からForm 1040-SRにかえたので税金が小さくなったということはない。課税年度の最終日の時点で65歳以上であれば、Form 1040でもForm 1040-SRでも、どちらのフォームも使用できる。 Form 1040SRはすべての状況に対応できず、複雑な申告の場合、Form 1040を使用する場合がある。何とか高齢者の申告を簡潔にして、分かりやすくするという狙いはわかるのだが、見た目以外にこのフォームのメリットを感ずることがない。何かもったいない気がする。

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2024.08.11
所得税

183日を超えても

米国の税務上の居住者となるかどうかは、米国の税金の処理で大きな分かれ目となる。市民権やグリーンカードを持っていれば、米国の税務上の居住者だ。これ以外のケースだと、183日ルール(実質滞在テスト)に基づいて、納税者が米国の居住者とみなされるかどうかを判断する。このルールでは、過去3年間で183日以上米国に滞在している場合、米国の居住者とみなされる。 しかし、機械的にこの計算で線引きをしてしまうのが合理的でない場合もあり得る。病気や入院などの理由で米国外に出られなかった場合、その日数をカウントから除外できる場合がある。同じく、自然災害やその他の不可抗力による理由で米国外に出られなかった場合も同様だ。 機械的なテストだけでアメリカの居住者となれば、税金の処理上、実態に合わないことも出てくる。そこを補完するために、実質的滞在テストを満たした場合でも、米国の税務上、米国の非居住者として扱われる道が残されている。次のようなケースだ。 年間を通じて米国に滞在した日数が183日未満であった米国よりも外国と密接な関係を持っていた年間を通じて外国にタックスホームを持っていた永住権(グリーンカード)申請がなされていなかった 実態を見て米国居住者とするべきか、米国非居住者とするのが目的に合っているのか、個別に判断される余地がある。 183日を超えて米国非居住者となっても、全く米国の税金の外に出るというわけではない。課税される所得の範囲が異なる。米国を源泉とする所得があれば、どの道、米国非居住者として米国に申告をすることになる。 実際は米国居住者として税額を計算する方が、標準控除を取ることができたりするので、税額が少なくなることもある。米国居住者となるのが必ずしも税務上不利となるわけではない。個別のケースごとに考えないといけない。 せっかく夏休みを家族と米国旅行を楽しんでいてるなら、あまり、税金とか考える事なく大事な時間を過ごしてもらうのも一案だ。

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2024.08.04
その他

オリンピックとForm 1040

毎日、とても暑いのだが、今年の夏はオリンピックの応援でTVを見ながら、一緒になって盛り上がり応援している。勝っても負けてもわが事のように喜んだり悲しんだり、興奮して一層暑苦しい夏だ。 さて、盛り上がっている時に税金の話も合ったものではないと思うが、アメリカの申告書Form 1040は、しっかりとオリンピックと結びつきがあることをご存じだろうか。 Form 1040を見るとSchedule 1- Part 1, line 8mにオリンピックとパラリンピックのメダルとアメリカオリンピック委員会の賞金をしっかり記入する欄がある。パリ・オリンピックでの金メダリストなら、現時点での評価額は約$1,027とか記入しなさいと言う。 書かなければいけないなら、書かざるを得ないのだろうが、メダルは、単なる金属ではなく、名誉や象徴の価値や、希少性、歴史的価値、経済的な価値を持つとみなされる。メダルを獲得した選手には金銭で表せない価値があるはずだ。 オリンピックに出て活躍した選手は、申告書に記入する所得を得るためにオリンピックに出場したはずではない。しかし、アメリカの税法はすべからく、メダルの価値や米国オリンピック委員会から支給される賞金をForm 1040に記入しないといけないという。 これは多くの方の感覚から見ればいかがなものかということになろう。そこで2016年以降、Adjusted Gross Incomeが100万ドルを超えない選手の場合、メダルや賞金に課税を免除するようになっている。現実にはほとんど課税をされないということだ。 日本においては、オリンピックメダルに対して、直接的な課税を行っていない。これは、メダル獲得が国民全体にとっての喜びであり、選手を励ますためという考え方だろう。日本人のメンテリティからすれば、アメリカのメダルをもらったら、申告書に記載して提出することには距離を感じてしまうのではないだろうか。 アメリカでは、メダル獲得が必ずしも非課税とは限らないという事実を知って、少し意外に思われたかもしれない。しかし、このことは、メダルというものが、単なる名誉や象徴ではなく、経済的な価値を持つ財産であるということを示唆している。 他の所得と同様に、メダルによって得られる経済的な利益に対しても税金を課すことは、税制の公平性という観点から妥当であるという考え方が根底にあるからだろう。

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