アメリカの出国税は、個人が保有する資産が高額の含み益を累積し、資産を売却する前に利益を税金なしで国外に持ち出すことを防ぐことを目的としている。一見すると合理的な制度だが、その仕組みは、納税者を不公平に扱う可能性を秘めている。
出国税の対象となる資産は世界中の試算を対象とする。例えば日本で20年前に3,000万円で購入した不動産が、現時点で1億円に値上がりしていたとする。出国税では、この未実現の利益7,000万円に対して課税される。一定の控除額があるのだが、この控除額を越えてしまうと、実際に売却していなくても多額の納税義務が発生する。
この出国税が、日米間の税務上のズレを生み出す要因となりえる。例えば、アメリカの出国税を支払った後、日本で実際に不動産を10年後に売却する場合を考えてみる。日本では譲渡益に対して課税が発生するが、これはアメリカの出国税を支払ってから10年後の出来事となる。
アメリカ側から見ると、既に出国税で課税は完了しており、納税者は既にアメリカ市民・グリーンカード保持者ではなくなっている。そのため、日本の譲渡益をアメリカに申告する必要はなく、日米間の税務上の接点はないと見なされる。
一方、日本側から見ると、10年前にアメリカで発生した出国税を、日本の確定申告で控除することには無理がある。なぜなら、日本の税法上、外国税額控除は「所得に対して課された外国の税金」に対して認められる。出国税は、あくまでアメリカの税制上の「見なし譲渡」に対する課税であり、日本の税法上は「所得に対して課された税金」とは認められない。
仮に、アメリカで発生した出国税を、日本の譲渡益計算時に経費として入れることができれば、個人としては10年してから日米間の精算が行われることになる。しかしながら、これは本来日本で発生して日本に納めるべき税金を、アメリカにすでに税金を払っているから日本の税金は無くなりましたと言う形になる恐れがある。日本の所得に日本の税金はなく、アメリカだけの税金となるなら、どう考えてもあり得る話ではない。
アメリカの不動産でアメリカの出国税が発生した場合、アメリカの非居住者となっても、アメリカ源泉の不動産所得があるわけだから、アメリカに申告をしなくてはならない。その税金は出国税で10年前に納付している。税額が全く不変ならば追加の税額は発生しない。しかし、日本の確定申告ではアメリカの不動産の譲渡益に対する課税は発生する。譲渡した年には外国で支払った税額がない。外国税額控除を使うべき外国の税がない。
もしもこの不合理を避けようとするならば、実際に不動産を譲渡すれば、単純な日米間の税額控除となる。あるいは対象の不動産を贈与して、事前に自分の財産から外すことができれば可能だろう。しかし、こうした場合は不動産譲渡に時間がかかったり、贈与税の話になるので慎重な検討が不可欠となる。
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