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マグナカルタ

2016年10月27日

アメリカの租税を考える場合に、その歴史的な背景はイギリスのコモンローにある。さらにその土地保有制度や税金の扱いについては、1215年のマグナカルタ(大憲章)にさかのぼることができる。封建領主が憲章にまとめたものをジョン王に認めさせた。同憲章では自由教会、封建制度法、都市、商業および商人、法と秩序の改革、国王の役人の行動、王室所有林などについて61か条の条文が王権に対する社会の権利を明確に表明する。マグナカルタはイングランドの法律の一部となり、国王も法の上に立つ存在ではないという重要な原則を確立した。

その抜粋:

(7)夫の死で、未亡人はすぐに、問題なしに結婚持参金と遺産を持つことができる。彼女は、寡婦産、結婚持参金または彼女と夫が、その亡くなった日に共有していた遺産に何も払うことはない。彼女は夫の死後、40日の間、夫の家にいることができ、そして、この期間内に、彼女の寡婦産は彼女に譲渡される。

この考え方は、今日でも基本的に生きている。結婚持参金はPrenuptial Agreementと考えられる。結婚前に女性が持っていた財産はその人のものである。また、亡くなった夫との共有財産に対しては、相続税を払わない。これは、現在の相続における配偶者控除そのものであり、生存配偶者は故人からの財産贈与については課税を受けることはない。寡婦産の考え方も、現代まで続く。即ち、現代においては相続権になっているが、相続権や遺留分の考え方は、寡婦産とオーバーラップする。一般に、相続権となったのは20世紀に入ってからである。

(8)未亡人は再婚を望まない限り、彼女は結婚することを強要されない。しかし、彼女が国王の土地を保有するならば、国王の同意なしに、あるいは土地を保有するいかなる他の君主からの同意を得ることなく、結婚しないと言う保証をしなければならない。

再婚を強要されないのは今日でも同じである。もともと、土地は国王のもので、論功行賞で家臣の男性がもらっているものだから、本来、死亡した時には返還させられることもあった。これをそのまま保有し続けることは国王の了解を得ておきなさいということだった。

(9)債務者が負債を返済するのに十分な動産を持っている限り、我々も我々の当局も負債の支払いに対し、いかなる土地または使用料を徴収しない。債務者自身が彼の負債を返済することができる限り、債務者の保証は差し押さえられない。財産が無いために、債務者は負債を返済することができないならば、彼の保証はそれに対する責任がある。彼らがそう希望するならば、債務者がその債務を完済し、それをなし終えたと言うことを示せない限り、それまで債務者の土地を保有することができる。

債務の返済は動産からしなさいと言う。国王から預かっている不動産で、債務を返済することはできない。また、債務を返済できない場合は抵当をとられてしまう。これも、今日となんら変わるものではない。

(10)ユダヤ人からお金を借りて、負債がなされる前に死ぬならば、相続人が未成年の場合、彼がその土地を誰から得ているのかにかかわらず、彼は負債の利子を払わない。そのような負債が国王からの場合、それはボンドで特定された元本を除いて何も取らない。

あえて、ここにユダヤ人が出てくる意味合いを、ヨーロッパ社会にいたことがないので、肌で感ずることはできない。マグナカルタから数えても800年である。それだけ、ユダヤ人がお金を貸す業務を行っていた歴史の重みには驚かざるをない。いずれにしても、元本だけは残るものの、利息は免除されるので優しい扱いだ。

(11)男性がお金をユダヤ人に借りて死ぬならば、彼の妻は彼女の寡婦産をもち、寡婦産から負債へ何も払わなくても良い。彼が未成年である子供たちを残して去るならば、子供たちのニーズは彼が土地を保有していた大きさにふさわしく提供されるべきである。負債は、残余財産(取りおいたもの)から払われ、封建君主のための役務のために取りおかれる。ユダヤ人以外の人に借りられている負債は、同様に対処される。

当時の女性の立場は極めて弱いように思える。しかし、実際は亡くなった夫が債務を抱えていたとしても、相続した財産は一切、訴求されることがなく守られていた。その上でそれを除く残余財産があれば、債務が払われる。その場合であっても、国王に対する債務が優先債務となる。

(12)賠償金でない限り、そして、長男を騎士とし、長女と結婚するためならば、いかなる『兵役免除金』または『援助』も一般的な同意なしでは課されない。この目的のためにのみ、理にかなった『援助』は課されるかもしれない。ロンドン市からの『援助』は、同様に扱われる。

賠償金はとにかく、長男を立派な騎士にするためには、インセンティブが用意されていた。男子の長兄だけが不動産を相続する権利を有した。

こうした条文を読む限り、今日においてもなお、大まかにはリーズナブルと思える内容がある。このマグナカルタが作られていた当時の日本は鎌倉時代であった。当時の日本人の財産権や相続権がどうだったのか、人権はどうだったのか逆に興味がつきない。

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